一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

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第十二話

「イクで御座るよ・・・」

 

「だ、ダメだよ・・・」

 

 息を荒げ、汗を滲ませたオタクとシャルルは互いに向き合って言葉を掛け合う。

 緊張した面持ちのオタクに対して、シャルルは少し余裕を持った様子で微笑みを浮かべるが、その額には玉の様な汗が浮かんでおり、少しだけ疲れた様子が見て取れた。

 

「・・・っ!」

 

 動き出したのはオタクからだった。

 オタクは強張らせた身体を無理矢理に動かしてシャルルを攻める。

 

「ひゃっ・・!」

 

 そんな、オタクの突然の動きに、シャルルは驚きに悲鳴を上げて、逃げる様な仕草を見せるが、オタクがそれを許さない。

 まるで猛進する猪の様にシャルルに迫り、逃げようとしたシャルルを後から激しく責め立てた。

 

「逃が・・・さない・・・で・・・御座る・・・よ!

 

「あ、ああ・・・!!」

 

 抵抗する手を失い、最早蹂躙されるのみと言う風なシャルルは、それでも懸命に身を捩ってオタクの魔の手から逃れようとする。

 しかし、既に主導権はオタクにあり、シャルルは徐々に削られていく自身の護りを、ただただ声を上げながらオタクのするに任せるしか無かった。

 

「ああああ・・・だ、ダメっ!」

 

「ダメじゃないで御座るよ」

 

 オタクは嫌らしくネチこっい声を上げながらシャルルを攻め続け、シャルルの願いを無下に否定して更に攻め手を強めた。

 

「だ、ダメぇ!・・・これ以上は・・・!」

 

「さあ、これからがお楽しみで御座るよ・・・拙者の手でヒイヒイ言うが良いで御座る」

 

 シャルルには最早手は残されてはいなかった。

 無垢な蕾を力ずくに手折られるが如く、オタクの手に掛かって蹂躙されて無惨な姿を晒すしか無かった。

 

「デュフフフ。コレで終わりで御座る」

 

 最後の瞬間、オタクが特徴的な笑い声を上げながらトドメとばかりに身を一瞬引いて舌舐めずりをする。

 

「ハア・・・ハア・・・っ!絶対に負けない・・・!」

 

 ここまで来て、それでも尚、心を折られずに強い意志の宿った瞳をオタクに向ける事が出来るのは、真に心の強い証拠であったが、口で言うのとは逆に身体には力が入っておらず、ビクビクと痙攣しているのが見て取れる。

 

「その口も今の内で御座る」

 

 そして、オタクの最後の攻撃が始まった。

 

「ひゃっ!ああああああ!!ダメェエエ!!」

 

「デュフフフ口で如何言おうと、身体は正直で御座るなぁ?」

 

「あああああああああ!」

 

 激しいオタクの攻めに、とうとうシャルルの視界がぼやけ、全くの無抵抗になってその巨体を寄せるオタクの為すがままになってしまった。

 

「コレで・・・!フィニッシュで御座る!!」

 

 最後の一撃、オタクの一撃がまさにシャルルを貫かんとした瞬間、シャルルの瞳に意志が宿り、最後の力を振り絞って声を上げた。

 

「グレー・スケイル!!」

 

「ふぁっ!?」

 

 その瞬間、パイルバンカーの強力な衝撃がオタクとダンボールを突き抜け、アリーナの端から端まで吹き飛ばされた。

 

「www模擬戦ですが何か?www」

 

 余りの衝撃にオタクの頭が可笑しくなってしまったのか、訳の分からない事をほざいて立ち上がる。

 

「大丈夫?オタ君」

 

「デュフフフwww大丈夫で御座るwww」

 

 第二世代機最強の威力の兵装を喰らって尚、無事であると言う、装甲だけは本当に凄まじいと言わざるを得ないダンボールのお陰で、幸いと言うべきか、オタクにも特に怪我らしい物は無く、その様子にシャルルは胸を撫で下ろす。

 

「良かった。オタ君が余りにも強いものだから、つい使っちゃったけど、無事で良かったよ」

 

「デュフフフwwwロマン兵器を装備するとは、デュノア氏も中々鬼畜で御座るwww」

 

 この前、無人機に工業用の杭打ち機で留めを差した癖に、どの口が言うのかと言う突っ込みは、流石の一夏も出来ず、オタクとシャルルは互いにISを解除して汗をタオルで拭った。

 

「はあ・・・流石に五回連続で模擬戦はキツかったかな?」

 

「拙者、このままでは痩せてしまうで御座るwww」

 

「それは良い事なんじゃ無いかな?」

 

「オッフwww一本取られたで御座るwww」

 

 笑い合いながら模擬戦の感想を伝え合う二人の下に、一夏が白式を纏って降り立った。

 

「何か、凄かったな・・・」

 

「デュフフフwww一夏氏も何れは出来るようになるで御座るよwww」

 

「イヤ、そう言う意味じゃ無くて・・・」

 

 若干前屈みの様な気がする一夏が言い淀み、一体何のことか分からないシャルルが首を傾げ、ただオタクだけが笑う。

 

「でも、確かにオタ君は凄いよね」

 

「そうで御座るか?」

 

「そうだよ。操縦時間だって、そんなに多くは無いはずだよね?」

 

 入学から約二ヶ月、授業以外でのISの操縦時間は一日に平均一時間ほどと計算して週七時間、行事や時間の都合により訓練出来ない日なども考慮すれば、どんなに多くても三十時間を超える事は無い。

 代表候補生と比べて十分の一以下の操縦時間で有るにもかかわらず、オタクの操縦技術の向上速度は確かに速く、それに加えて機体の基本スペックも考えれば異常なほどの戦闘能力を持っていると言える。

 

「デュフフフwww飛べねぇ豚は只の豚で御座るwwwまあ、マジレスすれば、人生経験と昔取った杵柄と言うやつで御座るwww」

 

 射撃は特級クラスの腕前を持ち、嘗て受けた訓練の賜と言うべき戦闘に関する知識を武器に戦術を組み立て、更に貴重な実戦経験も糧にして現在の戦法を確立している。

 何気に操縦時間に対しての模擬戦回数が多い事と、只の訓練生や代表候補生では経験していない本物の戦闘を経験している事が非常に大きかった。

 

「まあ、一夏氏の白式よりも融通の利く戦い方が出来るのが大きいで御座るwww」

 

「それだよ!」

 

「オッフwwwどうしたで御座る」

 

 オタクの話を聞いて、一夏が声を上げる。

 何事かと思ってオタクが尋ねると、一夏が常々疑問に思っていた事を尋ねた。

 

「いや、千冬ねぇに銃は使えないのかって頼んだら、何か小難しい事を言われて無理だって言われたんだ。何か、アブソリュートターンがどうのこうのって」

 

 一夏が千冬から言われた事は、要するに偏差射撃の難しさや、携行弾数の計算、コリオリ力、重力、湿度、温度、風向等の干渉による射弾のズレの修正の難しさの事である。

 その事に付いて尋ねられると、オタクは嗤いながら答えた。

 

「デュフフフwww拙者そんな難しい事は考えていないで御座るwww」

 

「ええっ!?」

 

 オタクの言葉に驚いた一夏に、シャルルが説明を付け加える。

 

「そう言う難しい計算が必要なのは超長距離の狙撃の時とか、曲射弾道の砲撃とかの時で、普段の戦いの時はあんまり考えないかな?」

 

「wwwアリーナで戦うだけならサイトに入れて引き金を引けば当たるで御座るよwww」

 

 更に付け加えるのならば、偏差射撃に関してもFCSのサポートを受ければ問題なく修正可能であるし、何なら他の面倒な計算もコンピューターで十分である。

 ここに来て千冬の射撃素人疑惑浮上である。

 

「そんな・・・そんな事って・・・」

 

「ま、まあ、織斑先生にも何か考えがあるんだよ・・・きっと」

 

「www織斑女史は割と適当な所があるで御座るからなぁwww案外、面倒だったと言う線も棄てきれないで御座るがwwwコレもマジレスすると、単に白式の容量不足が理由だと思うで御座るwww」

 

「そう言えば・・・」

 

 オタクの言葉を受けて、一夏は自身の愛機の空容量の少なさに思い至り、結局は銃は装備できないと言う事に思い至った。

 

「あ~あ、結局銃は使えないのか・・・」

 

「あははは・・・残念だったね・・・」

 

「いや、いいさ・・・もう、諦め掛けてたし」

 

 既に時刻は良い頃合い、三人はそろそろ夕食にしようと言う事で訓練を終える事にして、アリーナから立ち去り食堂へと向かった。

 食堂では、相も変わらずオタクが山のような食事を抱え、一夏とシャルルの二人が周りからの注目を受ける。

 

「凄い量だね・・・」

 

「ああ、何時もこんなんだ」

 

 オタクの食事の量に圧倒されるシャルルに、見慣れたと言わんばかりの一夏、しかし、ここで一夏がシャルルの食事を見て尋ねる。

 

「・・・シャルルは随分少ないんだな」

 

「えっ!?そ、そうかな・・・ハハハ!僕、小食なんだ」

 

「?まあ、身体も小さいしな・・・そんなもんか?」

 

 焼き魚定食の一夏に対して、シャルルの夕食はシーザーサラダとポタージュ、バターロールが二つと食べ盛りの男子にしては明らかに少なく、少し変に思った一夏だが、人それぞれかと思って直ぐに興味を無くした。

 この後、三人には特に何事も起こらず、シャルルと一夏は同室のため、一緒に部屋に戻り、オタクは何時も通りの階段下の寝床へと向かった。

 

「はあ・・・シャルル、良い子だったな・・・もしも息子を持つとしたらあんな感じが良いな・・・まあ、結婚も無理だろうが」

 

 言っていて切なくなったオタクは、少し気分転換をしようと外に出て、何時もの人気無いベンチに向かうが、そこには先客が居た。

 

「どうも」

 

「・・・消灯近くだぞ」

 

「固いこと言いなさんな。アンタだって学園は禁煙だろ?」

 

 軽く言葉を交わして、オタクはベンチのそばに立ってマルボロを取り出す。

 友人の人首から貰ったマルボロは既に残りが少なくなっており、それが余計に切なさを増した。

 

「・・・ふう」

 

 ゆっくりと煙を吸い込んだオタクは、紫煙を吐き出しながら溜息を吐き、初夏の夜空を見上げる。

 

「デュノアの事だが・・・」

 

「あ?」

 

「気を付けた方が良いかも知れんぞ」

 

「一体何の事で?」

 

 不意に千冬がオタクに言葉を掛けるが、オタクには何の事か分からず聞き返す。

 

「・・・貴様」

 

「ん?」

 

「いや・・・気付いていないなら別に構わん」

 

「何の事だよ」

 

 意味深な事を言う千冬を怪訝そうに見詰めるオタクだが、千冬からの答えは何も無く。

 その直ぐ後に千冬は吸いかけのタバコを携帯灰皿に落として去って行った。

 

「・・・何なんだ?更年期か?」

 

 大分失礼な事を言いつつ、去って行く背中を見送ったオタクは、フィルターのギリギリ迄少ないタバコを堪能して寝床に戻る。

 翌日の朝、オタクはHRの時間中に予期せぬ衝撃を受ける事になるのだが、そんな事は今の段階では想像も着かない事だった。

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