一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

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あらすじにキャラ崩壊が追加されました。
どんどん別物に成っていく・・・


第十四話

 ラウラが転入してきた二日後、オタクが二日休みを取った次の日の事だった。

 久し振りに学園外で羽を伸ばし、憂鬱な気分を引き摺って登校したオタクは、教室に近づく度に奇妙な違和感を覚えていた。

 

「・・・」

 

 学園全体が妙に浮き足立ち、同学年の女生徒達が時折、黄色い声を上げて身悶え、何やら妄想にふける生徒も見受けられた。

 

「コレは・・・一夏君が何かしたか?」

 

 この異常事態に際してオタクが一番始めに思いついたのが、年の離れた友人が何らかの問題を起こしたと言う事であり、奇しくもその予想は正しい物だった。

 

「オープンセサミー」

 

 そう言いながら扉を開けるオタクは、気分はどこぞの吸血鬼だが、見た目的には寧ろウォーモンガーのSSで、密かに誰かが突っ込みを入れる事を期待していたが、その期待に答える者は無く、教室の中はここまでの廊下よりも奇怪な雰囲気が充満していた。

 

「コレは・・・」

 

 まず目に付いたのが一夏である。

 普段ならば声を上げてオタクに挨拶をしてくる筈の彼は、かなり集中した様子で机に向かい、ISに関するテキストやマニュアルを読み耽っている。

 次に目が行くのが一夏の幼馴染みの篠ノ之箒だ。

 彼女も自分の席に着いて机に向かうのは一夏と同じだったが、一夏とは違い、何やら苦悩した様子で頭を抱え、しかし、時折頭を掻いてみたり髪を弄ってみたりと、随分忙しそうに青春の熱いパトスを現している。

 

「やあ、おはようタク」

 

「オッフwおはようで御座るシャルル氏www」

 

「昨日は如何したの?」

 

「ちょっと野暮用がありましてwww」

 

 オタクはシャルルは何時も通りの雰囲気である事に密かに安心し、気になる事を尋ねる。

 

「シャルル氏」

 

「ん?何?」

 

「色々尋ねたい事はあるで御座るが、何があったので御座るか?」

 

「ああ~、それは・・・」

 

 シャルルは、オタクに昨日起こった出来事を話す。

 曰く、放課後にラウラが鈴とセシリアをボコボコにした挙げ句、一夏に喧嘩を売り、それを買った一夏がアリーナの障壁を破壊して乱入、済し崩し的にラウラVS一夏・シャルルの戦闘に発展、見かねた千冬の仲裁により学年別トーナメントで決着をと言う事に成る。

 しかし、話が更に拗れたのはここからで、箒が一夏に交際を申し込むが、その事が学園中に知れ渡り、何処かでねじ曲がったのか、優勝者は一夏と付き合えると言う噂が流れてしまった。

 色々と紆余曲折を経て、一夏はシャルルとペアを組んでラウラを打倒しようと言う事になった。

 

「とどのつまり何時もの一夏氏で御座るな」

 

「何時もの事なんだ・・・」

 

 オタクが一言で纏めると、シャルルはゲンナリとした風に呟く。

 オタクとしては、正直な所とを言うとシャルルか一夏とペアを組めればと思いもするが、既に決まっているならば仕方が無く、後はランダムに決められると言うらしいペアに成る人物と如何向きあおうかと悩んだ。

 その後の授業も全員が上の空状態であると言う事以外は恙無く進み、放課後にオタクは千冬に呼び出されて職員室に姿を現した。

 

「拙者のペアが決まったで御座るか?」

 

「ああ・・・正直言って貴様のペアを決めるのには非常に苦心した。貴様と組むと聞かされた相手が正気を失いかねんからな」

 

「オッフwww手厳しいwww」

 

「・・・まあ、私が選んだ者ならば貴様とペアと言われても特に問題は無いだろう」

 

「ほほう。織斑女史が言うとは、随分信頼しているご様子」

 

「まあな」

 

「それで、拙者のペアは何方で御座ろうか」

 

「もうそろそろ来るはずだ」

 

 千冬が言うと、職員室のドアが開けられてそのペアの女生徒が入ってきた。

 

「失礼します。織斑教官、ただ今参りました」

 

「先生と呼べ・・・ボーデヴィッヒ、貴様のペアはこの豚だ」

 

「はっ!」

 

 豚と言って話が通じる辺り、物申したい気分に駆られるオタクだが、言っても仕様が無いと半ば諦め混じりに嘆息する。

 

「よろしく頼むぞ曹長」

 

「此方こそ少佐殿」

 

 まあ、オタクとしては個人的にはラウラには好感を抱いている節があり、他の女生徒と比べれば遥かにやりやすいかとも思って、千冬の判断に感謝する。

 

「では曹長、早速訓練を行う。着いてこい」

 

 非常に軍人らしい、率直で明瞭な物言いのラウラに言われたオタクは、一礼をして職員室を辞し、ラウラの後に続いてアリーナへと向かう。

 特に専用のスーツなどを着用しないオタクはダンボールがあればそれだけで事足りる物で、何の準備もせずに廊下を進む。

 その道中、オタクの前を歩くラウラがオタクに声を掛けた。

 

「曹長」

 

「なんで御座るか?」

 

「曹長は織斑一夏とは親しかったな」

 

「そうで御座るな」

 

「・・・手心を加えるか?」

 

 ラウラの言葉に、オタクは迷う事無く口を開いて言葉を発した。

 

「有り得ないで御座る」

 

「本当か?」

 

「少佐殿」

 

 ラウラの確認する様な言葉に対して、オタクは一度言葉を句切り、それから強い意志を込めて言う。

 

「それは俺に対しても、一夏に対しても酷い侮辱だラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。俺は勝負となった以上全力を尽くして勝利を取りに行く。友人だからこそ手を抜くと言う事はしない」

 

 オタクの言葉を聞いたラウラは立ち止まってオタクに振り向き、その眼を見上げて無言で佇み、それから再び前を向くと、歩きながら言った。

 

「すまなかった曹長。非を認めて素直に謝罪しよう。お前なら共に戦うに値する兵士だ」

 

「wwwありがとうで御座るwww」

 

 背丈だけを見れば、まるで親子の様な二人は、共に並び立って進む。

 目標は共に立ち塞がる敵を倒し、織斑一夏、シャルル・デュノアコンビの打倒、及び優勝である。

 今ここに、一学年最強コンビが誕生してしまった。

 

 

 

 

 

 

「で、なんでお前が敵に回ってんだよ小田」

 

「デュフフフwwwサーセンwww」

 

 夕食時、オタクは何時も通りに一夏と夕食を取っている。

 オタクは学年別トーナメントと普段の生活は別と考えており、オタクの事を信用したラウラもオタクの意志を尊重して何も言いはしなかった。

 しかし、一夏としては思わずにはいられない様で、頭で分かっていても、何処か裏切られたような気分になってしまっていた。

 

「一夏氏は少佐殿・・・ラウラ氏の事は嫌いで御座るか?」

 

「・・・嫌いって言うか、なんて言うか・・・アイツは鈴とセシリアの事を痛め付けたんだ」

 

「まあ、一夏氏の言わんとする事も分からなくはないで御座るよ」

 

「なら」

 

「だけど、拙者は特に少佐殿には何も悪い感情はないで御座る。その時に現場にいれば分からないで御座るが、少なくとも今の拙者は少佐殿には悪感情はないで御座る。寧ろ好感を持っているで御座る」

 

「・・・」

 

「別に、一夏氏にも同じ様に考えろとは言っていない御座る。人によって感じ方思い方は違うで御座る。ただ、折角同じ学び舎で学ぶ者同士、ただ憎しみ会うだけでは寂しいではござらんか」

 

「・・・そうかもな」

 

 まだ、少し納得の行っていない様子の一夏を、オタクは微笑ましく思いながら夕食のラーメンを啜り、一夏も豚カツ定食のカツに手を伸ばした。

 

「隙ありで御座るwww」

 

「あっ!テメェ!」

 

 隙を見て一夏のカツを一切れ奪ったオタクに、一夏はお返しとばかりにチャーシューを奪う。

 

「www」

 

「・・・何か、馬鹿らしくなってきた」

 

 そう言って何時もの通りに食事を終えた二人だが、その後に一夏がもう一度注文をするのをオタクは見逃さなかった。

 

「一夏氏、カツ定食だけでは足りなかったで御座るか?」

 

「え!?あ、いや、実はシャルルが少し気分悪いみたいでさ」

 

 うどんでも持って行ってやろうと思ってと続けて言われたオタクは、ならば自分も見舞いに行こうかと言い掛けて、口を噤む。

 

「そうで御座るか。シャルル氏にはお大事にと伝えて欲しいで御座るwww」

 

 気分の悪いのならば、無理に見舞うのも悪いかと思い、オタクは遠慮する事にした。

 酷いようなら後で別の機会に行けば良いし、直ぐに良くなるなら明日会って聞けば良いと考えたのだ。

 

「あ、ああ、伝えておくよ」

 

 それから、オタクは一夏と別れを告げて何時もの階段下の寝床へと向かう。

 その途中、ふと喉の渇きを覚えて自販機に寄ったオタクに、背後から声が掛けられた。

 

「あの」

 

「?」

 

 聞き慣れない声に戸惑いつつ、オタクが振り向くと、そこにいたのは僅かに見覚えの在る眼鏡を掛けた少女だった。

 

「・・・何処かであったで御座ろうか」

 

「・・・貴方の同室の者です」

 

 そう言われて漸く思い出す。

 初日のあの日以降、一度たりとも近づいていなかった自室の同室者の少女。

 

「あ~・・・確か、更屋敷・・・」

 

「更識です。更識簪」

 

「オッフwコレは申し訳ないwww」

 

 何時も通りに振る舞うオタクだが、内心では突然の襲来に驚いており、一体何の様なのかと訝しむ。

 

「それで、一体拙者に何用で御座いますかな?」

 

 オタクが問う。

 普段の口調や態度を崩さずに、彼女の現れた意図を探る。

 この時、この瞬間に置いて、オタクはこの学園に来てから一番に警戒心を強めており、目の前の少女の一挙手一投足に注視していた。

 そんなオタクに対し、少女が口を開く。

 

「何の用って・・・本気で聞いているんですか?」

 

「と言いますと?」

 

「初日の日から一度も部屋に戻らないのは貴方では無いですか」

 

 少女の言いたい事はオタクが一度も部屋に戻らずに、何処で寝泊まりをしているのかと言う事で、もしも無理をしているのなら気にしないから部屋に戻って来いと言う事だ。

 

「私だけ部屋を独り占めして、貴方を追いやっているみたいで心苦しいです」

 

 恐らく男性の事が余り得意では無いだろうに、少し震えながら言う少女の健気な様子に、オタクは涙を禁じ得なかった。

 

「www拙者は大丈夫で御座るよwww立てばドラキュラ、座れば不死鳥、歩く姿はイモータルと自負しているで御座るwww」

 

 冗談めかしてオタクが言葉を返すと、少女が吹き出すのを堪える様に口を覆った。

 

「くふっ・・・w」

 

「おろ?・・・」

 

 簪の様子に、何か感じ入る物が有ったオタクはもしやと思って言葉を続ける。

 

「更識氏・・・」

 

「な、何ですか?」

 

「流派!東方不敗は!」

 

「!・・・王者の風よ!」

 

 オタクの言葉に簪は一瞬、戸惑うも、直ぐに思い直した様に続く言葉を叫んだ。

 それを聞いて、オタクは更に続く言葉を発する。

 

「全新!」

 

「系裂!」

 

「「天破侠乱!」」

 

 ここまで言い合って、二人のボルテージが上がり、簪は頬を朱に染めながらもイキイキとして口を開き、オタクもノリノリで叫ぶ。

 

「「見よ!東方は赤く燃えている!!」」

 

 賭けだった。

 もしも簪がオタクの言葉に乗らず、若しくは元ネタを知らなければただ単に恥を掻くだけだったのだが、オタクは見事に賭けに勝った。

 

「・・・」

 

「ハア・・・ハア・・・」

 

 悠然と佇むオタクに対して、簪は息を切らせてオタクを見上げた。

 暫く無言で見つめ合う二人だったが、ここで、オタクは更にたたみかける様に再び声を上げる。

 

「ファイナルフュージョン承認!!」

 

「っ!・・・了解!ファイナルフュージョン!!プログラム・・・ドライブ!!」

 

「「よっしゃあ!!」」

 

 またもや乗ってくれ簪に感動すら覚えるオタクは、最後の言葉を掛ける。

 

「・・・やらないか?」

 

「・・・うほっ、いい男」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 次の瞬間、二人は固い握手を交わした。

 大きく音が響く程に互いに掌を打ち合わせてガッチリと握りながら見つめ合う。

 そして、オタクは簪に言葉を掛けた。

 

「今度、マジンガーZInfinityの鑑賞会をしないか?」

 

「鋼鉄神ジーグも用意しておきます」

 

「パーフェクトだ簪氏」

 

「感謝の極み」

 

 その言葉を最後に二人は別々の道へと別れ、オタクは寝床へ、簪は自室へと向かった。

 

「・・・この学園、割とオタク多く無いか?何か俺のキャラ薄くなってきた希ガス」

 

 自身のアイデンティティクライシスを感じつつ、オタクは眠りに着く。

 ほぼ同じタイミングで、自室に戻った簪がベッドに蹲ってバタ足をしているのだが、それを知る者は誰もいない。

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