一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

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第二十九話

 さる水曜日の放課後、数日後に臨海学校を控えたある日、より具体的に言うと次話辺りに臨海学校編を控えたある日の事、一夏は自主練をしていた。

 親友のオタクのダンボールが破損した事によってオタクと訓練をしなくなって久しく、この日は一夏の他にラウラ、シャルロット、セシリアの欧州組の3人と合同での訓練と相成り、3人と1人ずつの模擬戦で全敗を喫していた。

 今までの訓練はアリーナで行っていたのだが、この日は千冬の許可を得て訓練用の模擬市街で訓練を行っていた。

 この模擬市街地は学園のある島の西側の外れに存在する、より実践的な訓練を行うための施設で、通常は高学年になってから使用する。

 しかし、ここ最近、学園に入学してからと言うもの一夏は事ある毎に戦闘に巻き込まれており、ラウラの進言でこの模擬市街地での訓練をする事になった。

 こう言った事情は千冬を初めとした教職員も理解しての事で、丁度訓練場の使用の予定も無く。

 誰も使っていないためすんなりと使用の許可が下りた。

 そんな普段とは全く違う新鮮な環境での訓練を一頻り終えて、一夏は項垂れて呟く。

 

「・・・全然勝てなかった」

 

 3人との模擬戦で、一夏は何の良いところも見せられないままに終わってしまった。

 最初のセシリアとの戦いでは建造物が乱立したフィールドに一夏は全く対応出来ず、そのまま機動力を奪われた状態でセシリアの巧みなショットアンドムーブに翻弄された。

 その次のシャルロットとの戦いでは少し感覚を掴んだのか、何度か接近戦に持ち込むことは出来たのだが、閉鎖空間でのショットガンの威力をまざまざと見せ付けられる結果になり、敢えなく敗北。

 最後のラウラとの戦いに至っては近接格闘で完封負けと言う、本人にとってかなり情け無い結果に終わってしまう。

 

「まあ、仕方ないかな?コレばっかりは慣れが必要だから」

 

 シャルロットから慰めの言葉を掛けられる一夏だが、それを頭で理解しようとしていても中々飲み込めずにいる。

 自分の実力不足は甘んじて受け容れるしか無いのだが、こうも完敗してしまうと彼我の実力差を分かっていても如何しても落ち込んでしまう。

 一夏の為にフォローすると、そもそも市街地での近接戦闘など一朝一夕で身につくものでは無く、センス云々よりも反復訓練による徹底した理論に基づいた動きが求められ、ハッキリ言えば代表候補生や軍人でも訓練していなければほぼ同じ結果になる。

 素人に息なり市街地戦闘をやれと言うのは土台無理な話だった。

 寧ろ一夏はシャルロットに接近戦を挑めた時点でかなり善戦した方と言えるだろう。

 

「そもそも、一夏さんの白式はCQBには向いていませんわ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、向いているかどうかで言えば向いていないな」

 

 白式のコンセプトは、高い高速性能と加減速による機動と一撃必殺の零落白夜を組み合わせた一撃離脱を基本とし、広く開けた場所で飛び回りながら、敵の隙を見て懐に飛び込んで一撃を見舞うスタイルだ。

 それに対して市街地での戦闘は余計に動き回らず静かに行動し、基本的に攻撃をする側の方が不利な状況になる事が多く、武器の取り回しも最新かつ最小最短の物求められる。

 また、敵の位置が判明していない場合が殆どの為、索敵と戦闘を交互、若しくは同時にこなす必要も有る。

 白式は市街地での戦闘に何一つコンセプトがあっていないのである。

 それに対してラウラのレーゲンは、手刀やワイヤーブレードなど近中距離で柔軟に応用の利く装備で、レールカノンも爆発系の砲弾は相性が良い。

 セシリアのティアーズは高機動で飛び回りながらの長距離の射撃戦で、実はこの中で一番市街地戦に向いていない機体なのだが、そこは操縦時間と経験、一夏の性格を把握した巧みな戦術が上手く噛み合った。

 そして、シャルロットのラファールは装備から機体のスタイルから全てにおいて市街地戦に適した機体で、コレでシャルロット本人が市街地戦の訓練をもっと積んでいれば、それこそ手も足もで無いだろう。

 個人的にラファールやレーゲンの装備やコンセプトを見ていると単純に特殊部隊様の歩兵装備の発展系を見ている様な気がして、ここら辺は最近のフランスの事情を良く反映している様に思える。

 ブルー・ティアーズの方はハッキリ言って地上戦力と戦うのに余り向いていない様に思えてならず、寧ろ戦闘機などの航空機との戦闘の方が向いている様に感じるが、ISの装備全般に言える事として武器の射程と威力が余りにも不足している。

 白式はそもそも兵器として論外も良いところだ。

 

「なんて言うか、一夏は動きが分かりやすいんだと思うよ?」

 

「分かりやすい?」

 

「うん・・・一つ一つの動作が大きいのもそうだけど、姿が見えていない時も、余計な動きとか音とかが多いから、簡単に分かるんだよ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、嫁は不用意に身体を動かしすぎているな。そして、その度に何処かしらにぶつかるから直ぐに分かる」

 

「ですわね。その割には周囲の地形に対して意識が疎かになりすぎていますわ。周りを見ないで避け様とするから、簡単に動きを制御されてしまうのです」

 

「・・・ああ」

 

 ハッキリ言ってぼろくそだった。

 全く良い所が無かったために、3人からの指摘には一切のフォローが無く。

 そこに反論の余地も無く。

 しかし、即座に実行するのは非常に困難だった。

 

「はあ・・・難しいな・・・」

 

「まあ、そうだろうね」

 

「そうだな」

 

 3人も今すぐに一夏が市街地戦に対応するとは一切考えていなかった。

 普通に考えれば一夏が積極的に市街地戦を行わなければいけない状況と言うのも考えづらい。

 今の一夏に求められているのは、敵に襲われた際に早急にその場を離れ味方と合流して、自身の安全を確保する事である。

 最悪の場合、戦闘を放棄して上空に逃げればある程度対抗が可能なのだから、無理して市街地戦に習熟する必要も無いのだ。

 今回は、市街地戦の感覚を肌に感じる事が目的だったのだから、その意味では目的は達せられたと言っても良いだろう。

 

「そう言えば・・・」

 

「如何したの?」

 

 ふと、一夏が疑問を口にする。

 

「小田は如何なんだろうな」

 

「え?」

 

 一夏の呟きにいち早くシャルロットが反応して聞きかえす。

 

「どう言う事?」

 

「いや、アイツ自衛官じゃん。そう言う訓練もすんのかなって思ってさ」

 

 最近の陸上自衛隊の訓練は、野外、野山での訓練よりもゲリコマ対策として市街地戦闘の訓練の比重が大きくなっている。

 そんな中でのオタクの能力はどんな物なのかと言う、一夏の疑問は至極もっともな物だ。

 

「一般に自衛隊の能力は高いと聞くが・・・曹長がどの程度の訓練を受けているのかは想像出来んな」

 

「あの豚はわたくし達の想像の外にいらっしゃいますから」

 

 結局の所、一夏達の出した結論としてはある程度は市街地でも戦えるのだろうが、実際の能力は未知数と言う程度の物に落ち着いた。

 実際、オタクはコレまでにアリーナ以外の場所、特に建物の建っている様な場所での実戦経験が有るのだから一夏よりはマシだろうとは皆思っているが、その場面を見た事が有るわけでは無いため、やはり正確には把握できていない。

 

「一度、小田ともやってみてぇな」

 

 一夏がそんな事を口にした直後、セシリアが何に反応した。

 

「っ!?何か来ます!!」

 

 ブルー・ティアーズは長距離の射撃が主体の機体だけあって、センサー類が一番充実した機体だった。

 その充実したセンサー、電子装備が近付いてくる何者かの反応を検知した。

 そのセシリアの言葉に他の3人は一斉に跳び上がって周囲を警戒する。

 そして、セシリアが接近してくる何かの方を注視すると、その視線の先の空に何かが高速で跳び上がり、一際高い建物の上に降り立った。

 

「あ、アレは?」

 

「デュフフフwww指揮者一、人型三、タンクもどき三・・・じゃないで御座るwww」

 

 非常に特徴的な独特の角張ったシルエット、まるで箱を重ね合わせ積み上げた様な、小学生の夏の工作に提出されていそうな、そんな見た目の機体が4人の眼に映り込んだ。

 

「ダン・・・ボール?」

 

 一夏が呟くと、ラウラが続いて声を上げた。

 

「いや・・・僅かに違うようだ」

 

「カスタムと書いてありますわね」

 

 コレまでのダンボールとは僅かにだが異なる点が有った。

 全体的に装甲部分が多くなった他に、今までは露出していた顔部分にも箱が被せられている。

 

「色もグレーになってるね」

 

「良く見ると前よりもディテールが凝ってるな」

 

 総評して、基本的には色違いのダンボールと言う結論に落ち着いた4人は、改めてオタクを見上げた。

 

「デュフフフwww先ずは挨拶で御座るwww」

 

 そう言いながらオタクが武器を展開すると、いち早くセシリアが動いた。

 

「たった一機でっ!」

 

 直ぐ様スターライトを構えたセシリアは、オタクに狙いを付けて引き金を引いた。

 

「オッフwww」

 

 そのセシリアからの射撃を、オタクは僅かな動きで躱すと同時に後退って建物の後に飛び降りる。

 

「任せろ。落下なら予測できる」

 

 次に行動を起こしたのがラウラだ。

 ラウラはレールカノンの照準を合わせると、オタクの降下速度を予測して狙う。

 

「そこだ!」

 

 叫び声と共に、ラウラのレールカノンが火を噴いて砲弾を撃ち出した。

 

「やりましたの?」

 

 放たれた砲弾は予測通りにオタクの直ぐ目の前のビルの壁に着弾し、そのまま壁の破片毎オタクを吹き飛ばす筈だった。

 

「デュフフフwww道を作ってくれてありがとうで御座るwww」

 

 砲弾の直撃の直前、オタクは一瞬だけスラスターを噴かして難を逃れ、砲撃によって作り出された風穴から歩きでて、皮肉を込めた台詞を投げた。

 

「わたくしとラウラさんが手玉に取られた」

 

「・・・間違いない。曹長はエースだ」

 

「www」

 

 既にオタクの両手には武器が展開されている。

 オタクはその内の片方、左手のその武器を構えてセシリアに向けて引き金を引いた。

 

「ガトリングか!」

 

 一夏が叫ぶのが速かったか、毎分6000発の発射速度で吐き出される50口径の機銃弾がセシリアの目の前の道に雨の様に叩きつけられて土煙を巻き上げた。

 

「っ!前が!」

 

 煙幕代わりに広がった土煙でセシリアの視界が奪われた。

 セシリアは嘗ての経験を許に煙幕で視界を奪われた後の攻撃を警戒する。

 オタクの接近を警戒してスターライトを構え、確りと眼を凝らし、強化された探知センサーに木を配る。

 近くに居る。

 その事は間違いないと確信して、土煙に覆われた視界の中で神経を研ぎ澄ませた。

 

「っ!?」

 

 不意に、セシリアの左側から物音がしたように感じた。

 反射的に首を物音の方に向けた時、その瞬間にセシリアの意識に僅かな空白が出来てしまっていた。

 その事に自身が気が付いた時にはもう遅かった。

 

「しまっ!?」

 

 攻撃は右からだった。

 土煙を弾く様にしてオタクのダンボールが姿を現すとセシリアの握っていたスターライトを破壊した。

 一瞬にして武器を失い無防備になったセシリアに、更にオタクが追撃でショルダータックルを見舞うと、セシリアは近くの建物の壁に叩きつけられる。

 

「こっのぉ!!」

 

 セシリアも研鑽を積んだ。

 怒りや混乱を起こす前に、直ぐに冷静に身体を起こしてビットの内の一機を切り離して反撃に転じた。

 一機のブルー・ティアーズが光線を放つと、その光線は何に遮られる事無く虚空を突き進んでいった。

 

「ええっ?」

 

 オタクの姿がセシリアには見当たらない。

 一瞬の思考の空白の後に、セシリアは直ぐ側に居た人物を思い出す。

 

「っ!一夏さっ!」

 

 慌てて後を振り向くと、白式を纏った一夏がオタクに蹴り倒されて踏み付けられている。

 

「デュフフフwww」

 

 オタクのダンボールの手には、今までにオタクの使った事の無かった剣が逆手に握られている。

 一夏もタダ何もせずにやられまいとして抵抗しようとするが、雪片を握る右腕が踏み付けられていて反撃が出来ない。

 

「一夏ぁ!!」

 

 このままオタクの剣が一夏に振り下ろされると言う瞬間、シャルロットが一夏の名を呼びながら急行してサブマシンガンを構える。

 その姿を見たオタクは直ぐに回避行動に移り、後方に飛び去りながらガトリングで牽制した。

 

「助かった」

 

 起き上がってシャルロットに礼を言う一夏に、シャルロットは手を振って答えるとセシリアに言った。

 

「セシリア、タクの位置を特定してラウラに伝えて」

 

「分かりましたわ」

 

 シャルロットからの要請にセシリアは否も無く答えると行動に移る。

 

「・・・ラウラさん!豚の位置を送りますわ!撃って下さい!」

 

「了解だ!!」

 

 セシリアからの砲撃の諸元を受けて、ラウラがレールカノンによる砲撃をオタクに浴びせる様に放った。

 土煙の巻き上がる着弾地点が回り込むように徐々に一夏達の方へと近寄ってくる。

 そして、歩道橋に砲撃が命中して一際大きな土煙が上がると共に橋が落ちて轟音が響いた。

 誰もが、あの砲撃と歩道橋の瓦礫にオタクが押し潰されたと確信した。

 この後掘り出すのかと、助け出すのが面倒臭い何故こんな事を等と思い思いに頭で考えた。

 だが、その考えは直ぐに雲散霧消した。

 

「っ!」

 

「なぁっ!?」

 

 凄まじい地響きとスラスターそ噴かす音と共に、崩れた歩道橋が動いて押し上げられ始めた。

 そして、そのまま歩道橋が一夏の目の前に押し倒されて、土煙の中からオタクのダンボールが姿を現す。

 

「脅えろ!!竦めぇ!!ISの性能を引き出せないまま死んで行けぇwww!!」

 

 一夏の頬に大粒の汗の雫が伝って流れ落ちる。

 

「護ったら負けだ!!うおおおおおおおおお!!」」

 

 オタクの尋常ならざる迫力に3人が気圧されて固まる中、一夏が自身に気合いを入れるように叫びながら斬り掛かる。

 

「デュフフフwww」

 

 不敵に笑うオタクは単純な一夏の攻撃を最小の動きで躱して後退ると、ガトリングを構えた。

 

「っ!!」

 

「一夏!!下がって!!」

 

 すんでの所で、ガトリングから吐き出された機銃弾の雨を躱した一夏に変わり今度はシャルロットが躍り出る。

 そんなシャルロットに薙ぎ払う様にガトリングで射撃を加えると、シャルロットは上空に跳び上がって回避する。

 そしてそのまま背後の建物に背中を着けて無理矢理ブレーキをかけると、今度は降下しながら両手のサブマシンガンの引き金を引いた。

 

「倍返しだよ!!」

 

「倍返しですわ!!」

 

 シャルロットが撃つと同時に、セシリアも四機のビットを飛ばして一緒にオタクに射撃を浴びせる。

 2人は互いに射線をカバーして、オタクが左右どちらに避けても良い様に撃ったが、しかし、オタクは微動だにせず、2人の射撃は全てが全くオタクに掠る事無く地面を抉った。

 

「www見た目は派手で御座るがwww一夏氏がガラ空きで御座る!!」

 

 再びガトリングを一夏に向けたオタクは躊躇無く一夏に機銃弾を浴びせようとした。

 

「嫁ぇ!!」

 

 しかし、オタクの思惑は外れ、咄嗟に間に入ったラウラによって一夏に当たるはずだった機銃弾は全て防がれる。

 

「www」

 

 この時、オタクは非常に楽しんでいた。

 完全にあのシーンの再現になっている事は、オタクは狙いこそした物の、他の4人は全く知らない事であり、それで尚、再現が叶った事に歓喜せざるを得なかった。

 

「小田ぁ!!」

 

 一夏は雪片を両手で構えてオタクに向かった。

 比較的広い通路故に、限定的ながら白式の能力を生かす事の出来る状況を見極めた一夏のセンスは流石と言わざるを得ず、オタクはガトリングでこの攻撃を受けるしか無かった。

 

「ぬうっ!!」

 

 銃身が剥き出しのガトリングにはオタク特有の銃剣などは着いておらず、当然そんな状態で攻撃を受ければ一撃で使用不能になる。

 オタクはそれを瞬時に判断してガトリングを放棄した。

 態々格納領域の戻すよりもパージしてしまった方が隙が少なく済むと考え、オタクはガトリングを手放すと同時に右手の剣で斬り掛かる。

 刃渡りは120cm程の西洋風の湾曲した刀は所謂サーベルの形式を取っており、片手で構えて素早く振るうのに最適だ。

 一夏の雪片を初めとして、長大に成りがちな剣タイプの近接武器としては、オタクのサーベルは長すぎず短すぎない、実に合理的な形状をしている。

 

「くっ!!」

 

 片手持ちでかつ小回りの利くサーベルの連続した斬撃は、一夏の予想以上に重く響いて反撃の手を封じ込める。

 一夏は正直な所を言えば、剣の戦いになればオタクよりも自分の方が圧倒的に強いと言う自信を持っていた。

 それは曲がりなりにも剣の道を歩んだ事による自負と、学園に来てからの経験に裏打ちされた確かな物だった。

 だが、今のこの状況に置いて、その自信は呆気なく崩された。

 

「一夏さんが圧されていますわ」

 

 意外そうにセシリアが呟くとラウラが反応する。

 

「別に不思議でも無いだろう」

 

「?」

 

 ラウラの言葉にシャルロットも首を傾げて、視線を送る。

 

「今まで銃剣で近接戦をこなしていたのだ。それが剣になったからと言って変わるわけでは無い」

 

 実際、今までの戦いでもオタクは箒や鈴などと銃剣で渡り合い、近接戦や格闘を披露する場面は幾つか有った。

 案外、基本が出来ているオタクに取って剣を使った戦いも別段苦手な事でも何でも無かったのだ。

 因みに、コレを書いている作者は段々オタクが強くなりすぎている様な気がして、やり過ぎた感が出ている。

 

「相変わらず反射神経が良いで御座るなwww」

 

「くっ!」

 

 オタクと一夏の距離が近すぎる所為で3人が援護を出来ないのを分かっていて、オタクは更に攻め手を強める。

 そのオタクの攻撃に持ち前の反射神経と運動センスを以て凌ぐ一夏は、段々とジリ貧になりつつある。

 

「次はこうで御座る!」

 

 一瞬、オタクが動きを止めたかと思うと、オタクは持っていたサーベルを無造作に放った。

 

「っ!!」

 

 一夏は放り投げられたサーベルに意識を向けてしまい、慌ててオタクの方に向くが、そこには既にオタクの姿は無く。

 それから左右に視線を向けてもやはりダンボールの機影は見当たらなかった。

 

「デュフフフwww眼の良さが命取りで御座るwww」

 

 声がした瞬間、一夏が見上げるように声の方に顔を向けると、オタクの手にアサルトライフルが握られているのが見えた。

 一夏も見慣れた何時もの銃剣が取り付けられたライフルだ。

 

「勝ったぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったで御座るwww」

 

「千冬姉に言われたんなら言ってくれれば・・・」

 

「デュフフフwwwサーセンwww」

 

 一夏がオタクによって撃破された後、残りの3人にはオタクの口から事情が説明された。

 丁度、修理と改修が済んだダンボールをオタクが受領して学園に帰ってきた時、千冬から一夏の訓練に乱入するように命じられたのだ。

 

「この前の件の反省文をチャラにすると言われたで御座る」

 

「また何かしたの?」

 

 シャルロットが尋ねると一夏がバツの悪そうに顔を背け、オタクはただただ笑うだけだった。

 

「さて、拙者の目的も終わった事で御座るし、作者のやりたい事も大体終わったで御座るなwww」

 

「曹長は一体何を言ってるんだ?」

 

「さあ・・・」

 

「小田はたまに訳の分からない事を言うんだ。気にするな」

 

「第三の壁ですわね」

 

 この中で唯一セシリアだけがオタクの言葉の意味を理解出来ていた。

 そんな4人の言葉を尻目にしてオタクが次回予告を始める。

 

「千冬の手を逃れたオタクを待っていたのは、また地獄だった。おふざけの後に辿り着いた理想と現実。無能作者が書こうとした水着の話。海と空、ラブとコメとをコンクリートミキサーにかけてブチまけた。ここは恐らく伊豆の某所。次回「臨海」。次話もオタクと地獄に付き合ってもらう」

 

「今、妙に渋い良い声が出てなかったか?」

 

「銀○万○さんの声だね」

 

「サ○ザーですわね」

 

「ギ○ン・○ビだな」

 

「この前は千冬姉に人間辞めてるって言ったけど、小田も大概、人類を卒業してるな」

 

 しみじみと呟くと一夏の胸中でオタクに対する謎が深まりつつ、次回は臨海学校である。




こんなひでぇのは流石の俺も初めてだ
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