一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

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第三十六話

 雨が降り出してきた。

 大粒の雨粒が荒れる海原に叩きつけられて爆ぜる。

 ラウラを先頭にして、少女達は激しい豪雨の暗闇の中を突き進む。

 

「朗報だ!自衛隊が作戦を延期したぞ!」

 

 ラウラが背後の仲間達に叫んだ。

 

「何が在ったのよ!?」

 

「雨の影響だ!自衛隊はナーバスに成っている!我がドイツからも大使館を通じて交渉を試みたが功を奏した様だ!」

 

 世界最強の兵器と呼ばれるISに対して、自衛隊は実態以上に恐れを抱いている節がある。

 それは、件の白騎士事件においての損害と、失敗した際に受けうる損害による世論からの批判を嫌と言うほど分かっているからだ。

 自衛隊は、作戦において絶対の自信を持っているとは言い難く、それ故に、少しでも作戦の成功率を上げるために天候の不順を問題視したのだ。

 現場の各部隊は士気旺盛にしてこの作戦実行の見送りに不満を覚えた物で、泣く泣く延期を命じた統合幕僚監部も再三にわたって延期の撤回を防衛省及び内閣に具申している。

 しかし、内閣では今後の野党からの突き上げや市民団体からの抗議を恐れており、慎重な態度を取る官房長官が早期の作戦決行に強固に反対していた。

 これらの事態は、正に少女達にとっては天佑だった。

 

「わたくしはそろそろ別れますわ!」

 

 セシリアが集団から離脱した。

 当初、火力支援を担う予定だったのはラウラなのだが、準備時間の少なさと戦闘地域に強固な地盤を持つ射撃位置が無いことから、代わりにセシリアが長距離からの狙撃支援に着く事に成った。

 セシリアの抜けた四人は、それぞれ、ラウラと鈴、箒とシャルロットの二組のツーマンセルに分かれてゴスペルに挑む。

 

「そろそろだ!」

 

 ラウラが叫んだ。

 声を聞いた三人に緊張が走り、各々、武器を確りと握って瞬間に備える。

 ゴスペルは強い。

 それは一度戦った箒は勿論の事、オタクを退けた事からも他の者も確りと認識している事だ。

 特に、シャルロットは人一倍ゴスペルに対する敵愾心を燃やしており、普段は使用しない様な重装の兵装を背面に二つ背負っている程で、その表情も険しく、眉間に深い皺を寄せている。

 

「・・・タク」

 

 シャルロットは小さく呟きながら、右手に握るライフルを見た。

 普段使う小口径のサブマシンガンやアサルトライフルとは比べ物に成らない25mmの強力なそれは、フランス製装備で固める彼女には珍しく、アメリカ製の物だ。

 

「見えた・・・!」

 

 箒が声を上げて発見の第一報を伝える。

 この中で最も高性能な箒の駆る紅椿のセンサーが、最も早く目標を捉えたのだ。

 

『此方でも確認しましたわ』

 

 次いでセシリアが発見を報告し、その情報を全機にデータリンクで送る。

 

「・・・!」

 

 弾かれたように、シャルロットがマーカーで示されたゴスペルを睨んだ。

 

「ゴスペルゥゥゥゥ!!!!」

 

 遂にシャルロットの我慢が限界を向かえ、彼女は咆哮を上げてゴスペルに突進した。

 

「シャルロット!!」

 

 突然のシャルロットの暴挙にラウラが驚いて静止の声を上げるが、シャルロットは静止の声を振り切って最高速度で目標に向かった。

 

「タクの仇!!」

 

 初撃、シャルロットは普段ならば残しておくはずの切り札であるグレー・スケールを一番最初に出してきた。

 

「!!」

 

 ゴスペルはこの一番最初のシャルロットの攻撃に対して、直撃の寸前に成って漸く反応を示した。

 直撃の寸前、持ち前の高機動でゴスペルが回避行動を取ろうとした刹那、シャルロットはスラスターを噴かして更に追い縋る。

 

「逃がさないよ!!」

 

 上方へ逃げようとするゴスペルに対して、シャルロットも同じ様に瞬時に上昇しつつ、アッパー気味に左の掌底を放つ。

 一瞬、ほんの一瞬の運動の中で、シャルロットの動きのそれがゴスペルの判断を上回った。

 それは、心を燃え滾らせながらも尚、努めて頭の冷静さを保ち続けたシャルロットの思考の賜であり、反応して漸く判断を下したゴスペルに対する僅かなアドバンテージだった。

 

「!!」

 

「っああああ!!」

 

 ゴスペルとラファールが空中で激しく激突する。

 金属と金属の打つかり擦れ合う嫌な音が大きく響くと、次の瞬間には撃発音と共に杭が撃ち出されてゴスペルの機体がくの字に折れ曲がって打ち上げられた。

 

「まだまだ!!」

 

 シャルロットは追撃の手を弛めない。

 右手に握っていたライフルを構えると、ゴスペルに向けて銃口を向けて引き金を引く。

 

「っ!」

 

 コレまでの装備とは、正に雲泥の差としか言い様の無い強烈な反動がシャルロットを襲う。

 シャルロットの使ってきた銃器の殆どはブルパップ方式であり、全身で包み込む様に構えるため反動を文字道理全身で押さえ込む様に受ける事が出来る。

 だが、今回装備してきた25mmライフルはオーソドックスなストレートストックにピストルグリップの構成で、反動はほぼ肩だけで受ける様な形に成る。

 この勝手の違いと習熟度の不足は、実戦においては致命的だった。

 

「!!」

 

 反動と照準に一瞬だけシャルロットが戸惑ってしまうと、その僅かな隙にゴスペルは一気に加速してシャルロットから距離を取る。

 

「っ!逃がすか!!」

 

 ゴスペルの加速と機動力は凄まじく、瞬きほどの間に確りと安全圏にまで移動して見せた。

 シャルロットは、無駄だと頭で理解しても尚、やるせない気持ちを打つける様にゴスペルに銃口を向けて引き金を引き続けた。

 しかし、放たれた砲弾は、虚しく夜の闇の中に吸い込まれて行くばかりで、決して目標を捉える事は無かった。

 

「・・・」

 

 一方のゴスペルは、回避行動を取りつつシャルロットから距離を取ると、その間に状況を判断した。

 ゴスペルに搭載された広範囲を索敵する為のセンサー類が、周囲の敵性戦力の位置を把握し、得られる情報から機体と操縦者を特定する。

 ゴスペルのAIが下した周囲の敵は全部で四機、シャルロットのラファールの他、鈴の甲龍と箒の紅椿までは完全に認識したが、ラウラのレーゲンに関しては機体と操縦者の情報を掴むことは出来なかった。

 コレは、ラウラが特殊部隊所属と言う、非常に秘匿性の高い彼女の所属故に、データベースには載っていないと言うのが理由だ。

 シャルロットのラファールと鈴の甲龍に関しては、どちらもデータベース上に上方があり、また両パイロットに関しても、フランスと中国の公式な情報として発表されている為に直ぐに判断が付いた。

 箒に関しても、先の戦闘によって得られた自身の情報から判断した物だ。

 

「・・・」

 

 背後にシャルロットからの射撃を感知しつつ、ゴスペルはその脅威度を問題ないレベルと判断して、本格的な反攻に移る。

 

「!」

 

 速度はともかくとして、ゆったりとした軌道を描いて飛行していたゴスペルは、一挙に鋭角の軌道で方向を転換する。

 方向転換と同時にゴスペルは翼を広げて、攻撃態勢に入ると、直ぐさま射撃を始めた。

 

「っ!?ちょっ!?なんでコッチにくんのよ!!」

 

 ゴスペルが最初に攻撃目標に選定したのは鈴だった。

 ゴスペルは現状において、未知数のラウラと脅威度の低い箒を無視して、判明している中で最も脅威度の高い鈴を早期に撃破する事を決めたのだ。

 

「クソッ!!」

 

 高速で飛翔するゴスペルの射弾を、鈴は悪態を吐きながら回避した。

 広域攻撃を目的としたシルバー・ベルは非常に強力な面制圧力を持つ反面、精密な攻撃には御世辞にも向いているとは言い難く、また距離もあったために回避の為の間隔が開いてしまった。

 だが、それはゴスペルも承知の事だ。

 

「!!」

 

 鈴が回避行動に一瞬の隙を取られると、ゴスペルは一気に距離を詰めて白兵戦の構えを取った。

 

「舐めてくれるじゃ無い・・・」

 

 鈴は小さく呟いて口許に笑みを浮かべた。

 白く輝く犬歯を光らせて、ギラつく眼光を敵に向けて、そしてそれから、下腹に力を込めて雨粒の叩きつける中で吼えた。

 

「来いやああああ!!!」

 

 鈴は一連の戦闘と情報からゴスペルは近接戦は不得手と心得ていた。

 そのゴスペルからの近接戦の誘いは、近接戦ならば代表にも負けないとすら自負する彼女に取って酷い侮辱であり、激昂してゴスペルの誘いに乗った。

 

「!!」

 

 初手、ゴスペルが繰り出したのは右手の貫手だった。

 

「っ!」

 

 速度の乗ったゴスペルの貫手は鈴の意表を突くのには充分な物で、一瞬だけ鈴の反応が遅れる。

 

「らあっ!!」

 

 だが、鈴は直ぐに頭を切り替えて身体を半身にして貫手を躱し、それと共にゴスペルの懐に入って左半身全身で叩きつける様に打撃を加える。

 

「!?」

 

 ゴンっと言う鈍い音と共にゴスペルは激しい衝撃に見舞われるが、しかし、鈴はそのゴスペルに追撃を仕掛ける事は出来なかった。

 

「っつつつ!!」

 

 鈴は叩きつけた自身の左の腋を抑えて苦悶の表情を浮かべている。

 見れば、彼女の機体の左脇腹付近の装甲に四本の指が突き刺さった後が残っていた。

 

「クソッ・・・!」

 

 衝突の瞬間、鈴が左半身を叩きつけると同時に、ゴスペルも反撃に出ていた

 ゴスペルは、自身に向かってくる鈴のタックルを躱せないと判断すると、相打ち狙いで鈴の衝突に遭わせて左手で貫手を見舞っていたのだ。

 結果的に鈴は自身の勢いも合わせた強力なカウンターを受ける事に成り、そのダメージは数字上の物よりも遥かに強烈な物だった。

 

「っつぇああああ!!」

 

 鈴は気合いを入れてゴスペルに斬り掛かる。

 最早、侮りは無い。

 鈴は、全身全霊を込めてゴスペルに挑み掛かる。

 接近戦ならば有利であると言う自負を棄てて、格段に上位の相手に挑む心持ちで攻撃に出た。

 全身の筋肉に力を込めて一挙に締め上げ、それから力を抜いて弛緩させると、連結させた双天牙月を上段から振り下ろした。

 勢いに乗り、それでいて程良く肩の力の抜けた素晴らし斬撃は、しかし、ゴスペルを捉える事は無く、最小の動きで躱されて空を斬る。

 

「ッフ!」

 

 しかし、それは鈴も分かっていた。

 鋭く吐いた息と共に、今度は刀を振り上げて二撃目に移り、それが躱されれば今度は横薙ぎにと言う風に、鈴は流れる様な動きでゴスペルに連撃を掛ける。

 ともすれば舞っているかの様な動きは、初めて学園に来た頃から考えれば遥かに洗練された物となり、それは、彼女の鍛錬を現す鏡と言える。

 

「破ッ!!!」

 

 打ち合いの八合目、気合いを込めた声と共に左から叩き付ける様な一撃を放つ。

 両手で握る青竜刀は、全身の力を確りと乗せてゴスペルに襲い掛かり、その威力たるは成る程と言わせしめる迫力がある。

 

「!!」

 

 それに対してのゴスペルは、コレを躱すのでは無く敢えて受けて見せた。

 

「っ!?」

 

 正に達人もかくやと言うべき鋭さを持った貫手は、その指先を正確に双天牙月の刃に合わせて受ける。

 その妙技に、鈴はただただ驚愕する他無かった。

 一瞬、驚愕する鈴の身体が硬直したコンマ一秒程の僅かな隙を、ゴスペルのAIは見逃しはしない。

 

「!!」

 

 ゴスペルは、鈴の腹に鋭い蹴りを見舞う。

 

「っああああ!!」

 

 衝撃と共に吹き飛ばされた鈴に対して、ゴスペルが更に追い打ちを掛け様とするが、フォローに入ったラウラによって阻まれる。

 

「!!」

 

 ラウラは鈴とゴスペルの間に入ってAICを展開しようと手をかざす。

 その動きに反応して、ゴスペルは直ぐに距離を取った。

 

「・・・」

 

 情報が少ないからこそ、ゴスペルのAIは不確実性の高い行動を嫌い、追撃を諦めた。

 その動きをラウラは確りと見ていた。

 

「凰!カバーしろ!!」

 

 言い放って直ぐ、ラウラは飛び出してゴスペルに向かった。

 

「っ!しょうが無いわね!!」

 

 鈴はラウラに言われた通り、衝撃砲を連射してサポートに入る。

 

「!!」

 

 弾体の見えない衝撃砲はゴスペルのAIを持ってしても軌道予測は難しく、数発の被弾を許してしまう。

 明確な直撃弾を許すと言う事は無かったが、それでも掠めた衝撃でゴスペルは体勢を崩してしまう。

 

「ハアッ!!」

 

 そこへ間髪入れずにラウラが手刀を振りかざして接近する。

 

「!!」

 

 ラウラは体勢を崩したゴスペルに手刀の突きを見舞うが、ゴスペルも不安定な体勢ながら貫手で応じる。

 

「っ!」

 

 ゴスペルとラウラ。

 互いの右手が交差し、擦れ合って火花を散らすと眼前で鋒が止まる。

 互いの手が交差した状態で動きを止めると、ラウラが肘を折ってゴスペルの腕を払い、今度は左腕を振るってゴスペルの首を狙った。

 

「ハッ!!」

 

 この手刀の一撃にも、ゴスペルは直ぐさま反応を見せる。

 

「!!」

 

 自身の右側から迫る手刀の突きに対して、ゴスペルは上体を左に逸らす様にして躱し、カウンター気味の左突きを返した。

 

「・・・っ」

 

 ラウラは、迫る貫手を開いている右腕でガードする。

 空手の受けの要領で左側に逸らし、今度は左手の手刀の突きで逆襲に移る。

 

「!!」

 

 しかし、ゴスペルはそのラウラの突きを上体を後ろに反らせて躱した。

 

「っ!!」

 

 ゴスペルがラウラの攻撃を躱した瞬間、ラウラが右手を伸ばしてゴスペルに向ける。

 ここが好機とばかりに、ラウラはゴスペルの一瞬の隙を突いてAICを発動し様と言う素振りを見せる。

 その動きを見逃さないゴスペルは、身体を反らした上体から後方に宙返りする要領で距離を取る。

 その瞬間、ラウラは思わずと言う風に口角を上げた。

 

「ちぇすとおおおおお!!!!」

 

 ゴスペルが回避行動を取って移動した先で、箒は右手に握った空裂を気合いと共に一閃する。

 

「!?」

 

 ゴスペルは最後まで攻撃を回避しようと動き続けるが、事ここに至っては最早、どの様な動きを取ろうとも回避は間に合わない。

 

「!!」

 

 回避が間に合わないと判断するや、ゴスペルは最後の足掻きと右側のウィング・スラスターをガードに使う。

 一瞬、空裂の刃が機械の翼の表面に打つかって火花が散ると、その後は、まるで豆腐でも切り裂くかの様に刃が滑る。

 

「つぇえああああああ!!!」

 

「!!?」

 

 刀を振り抜いて直ぐ、箒はその場から後へと飛び去る。

 昼間の様な奢りも高ぶりも無く、箒は本来の集中を見せて確りと残心を取る。

 この一撃に、ゴスペルのAIは箒に対する評価を情報に修正し、また、全体的に相対する敵に対しての戦闘評価を高脅威と変更した。

 

「・・・」

 

「まだまだ!!」

 

 箒は動こうとしないゴスペルに対して、もう一度接近して斬り掛かる。

 両手で確りと空裂を握り、上段から一直線に振り下ろした。

 

「!!」

 

 真っ直ぐな箒の面を、ゴスペルは首だけを反らして躱す。

 それは箒も織り込み済みの事で、直ぐさま返す刀で下段からの切り上げ、袈裟の振り下ろしと連続して攻撃を仕掛けた。

 しかし、ゴスペルはそれらの攻撃を難なく躱すと、今度は自身の右手を振って突きを繰り出した。

 

「・・・!」

 

 鋭く素早い突きは、箒の首を狙って放たれるが、箒もまたその攻撃を危なげなく躱し、その直ぐ後にカウンターに刀の柄の石突きでゴスペルに撃ち込んだ。

 

「!!」

 

 通常の剣道には無い動きにゴスペルは、敢えて受けて見せてから自分で後に飛んで衝撃を殺す。

 

「ハッ!!」

 

 そこに、箒は空裂を振るって二撃、衝撃波を飛ばした。

 

「!!」

 

 コレに応じて、ゴスペルは残った左側の翼を動かして、エネルギー弾を放った。

 放たれた光弾は二つの斬撃と打つかって相殺され、爆ぜたエネルギーの塊が雨粒を吹き飛ばして一瞬だけ雨が止まる。

 

「っ!!」

 

 爆発の衝撃が箒を襲い、一瞬、彼女が隙を生む。

 

「!!」

 

 それを見逃すような甘さはゴスペルには無く、直ぐさま追撃にゴスペルが接近して右手を振り抜いた。

 

「させないわよ!!」

 

 無防備な箒をゴスペルの貫手が襲う寸前、今度は鈴が現れて青竜刀を振るう。

 鈴は双天牙月を下から振り上げてゴスペルの手を弾き上げる。

 

「!!」

 

「そこだぁあああ!!!」

 

 鈴の背後から箒が雨月を抜き放って突きを繰り出す。

 

「!!」

 

 雨月の鋒から一条の光線が放たれ、その光線がゴスペルの腋を穿つ。

 流石にコレには溜まらずゴスペルも二人から距離を取るが、その先では、ラウラが待ち構えている。

 

「シッ!!」

 

 突き出された手刀をゴスペルは躱し、そのまま横を擦り抜ける。

 

「逃がさないよ」

 

 ラウラの横を通り抜けた瞬間、待っていましたとばかりにシャルロットが現れてライフルを構えた。

 

「!!」

 

 ゴスペルはシャルロットが銃口を向けてくるのを確認して、即座に回避行動を取る。

 バレルロールの軌道を取って照準から逃れようと動き、そのまま海面スレスレまで降下したゴスペルは、ラウラ達の方を見上げようと動く。

 メインカメラでより正確に相手を捉えようと下のだが、次の瞬間、海面が爆発して海水が巻き上げられて視界を全て潰された。

 

「!?」

 

 更に二度、三度と海面が爆発してその度にゴスペルのセンサーがフラッシュする。

 この爆発の正体は、ラウラがレールカノンで榴弾を海に向けて撃ち込んだ事による物で、ゴスペルの目を奪う事が目的だった。

 

「!!!」

 

 ゴスペルは混乱した。

 余りにも想定外な自体に、AIの思考に過負荷が掛かり、その結果、ゴスペルは数秒の間、完全に動きを止めてしまう。

 

『頂きましたわ』

 

 ゴスペルは最初から一つのミスを犯していた。

 ゴスペルは敵の数を四機と判断していたのだが、探知圏外のセシリアの存在を予測できなかったのは、最大のミスだった。

 

「!!」

 

 そのセシリアからの長距離狙撃は、暗闇と悪天候の中であるにも関わらず確りと標的を捉え、左側のウィング・スラスターを撃ち抜いた。

 

「!!!!!?」

 

 予想外な、余りにも予想外な苦戦に、ゴスペルのAIは更に負荷が掛かった。

 それは混乱などと言うレベルを通り越して、最早、恐怖と言い換えても良いのかも知れない。

 本来ならば、決して経験する事の無い感情に支配されたゴスペルは、それはまるで初めて戦場に得た新兵の様に狂乱して、一番に視界に捉えたラウラに向かって遮二無二突っ込んだ。

 

「・・・」

 

「!!!!!!」

 

 ラウラは、この状態に成った相手に対しての動きを良く心得ていた。

 冷静に此方に向かうゴスペルを見据えて、ラウラは右手を真っ直ぐに伸ばして掌を広げる。

 

「!!!!!」

 

 AIC展開の予兆であるその動きは、ゴスペルもメインカメラで捉えていた。

 だが、混乱したゴスペルのAIは先の二度の動きからラウラの動きをただのフェイントか虚仮威しだと判断して、そのまま一直線に突進する。

 右手を構えて勢いそのままにラウラの眉間目掛けて貫手を放つ。

 

「・・・!」

 

 ゴスペルは最初の敵を撃破したと予め判断を下す。

 だが、現実は、撃破判定を下した筈の相手を撃破する事は出来ず、それどころか動きを完全に止められて無防備を敵の真っ正面で晒す。

 

「!!!!????」

 

 ゴスペルの眼前にシュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンの砲口が向けられた。

 

「コレで終わりだ」

 

 そして、闇夜の中に砲声が響き渡った。

 まるでゴングの様に良く響いて空気を震わせて、何時の間にかに空が晴れ渡って月が夜の海を照らした。




久し振りに書いたけど、相変わらずの文章力のなさで、泣けてきます。
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