一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

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リハビリがてら


四十一話

 臨海学校が途中で終わり、生徒達は学園に戻ってきていた。

 シルバリオ・ゴスペルとの戦闘によって、愛機を損傷させた四人娘はそれぞれの機体の修復に専念し、箒は箒で、突然渡された紅椿の検査のために専門機関に赴いた。

 一夏は戦闘が終わって浜に降り立った直後に気を失ってしまい、今は一時帰宅で実家にて養生中だ。

 中心的な生徒を欠いた一年生は意気消沈のまま各々の部屋で待機していた。

 

「さて・・・色々と話を聞かせて貰うぞブタ」

 

「www三ヶ月ぶりでこの仕打ちwww」

 

「何を訳の分からない事を言っている」

 

「いやwwwこっちの話で御座るwww・・・作者失踪で終わりと鷹を括っていたらこの様だよ・・・」

 

「何か言ったか?」

 

「何でもないで御座るwww」

 

 学園の生徒指導室にて、オタクと千冬は向かい合って座っている。

 相変わらずの巫山戯た態度に、好い加減になれてきた千冬が軽く流し、本題に入る。

 

「貴様の機体の事だ」

 

「・・・」

 

「アレは一体何だ?」

 

 千冬の言うオタクの機体とは、ダンボールとゴスペルが融合して出来上がってしまった物の事だ。

 あの一件でダンボールとシルバリオ・ゴスペルは完全に融合して離れなく成ってしまい。

 今現在は修理の為に防衛省の技術研究部に預けられている。

 

「お前が、何故あのタイミングで介入できたのかに着いては聞かないでおいてやろう」

 

「それは助かる」

 

「此方としては確認したいのは一点だけだ。・・・お前は敵か?」

 

 鋭い目でオタクを睨む千冬は、全身から殺気を漲らせながら尋ねた。

 それに対するオタクは、真剣な面持ちで答える。

 

「敵では無い。少なくともこの学園のでは無い」

 

 オタクが答えた暫く後、千冬が殺気を解いて、軽く息を吐きながら背もたれに体重を預けた。

 

「ならこれ以上聞くことは無い」

 

「www」

 

 室内の緊張感が霧散して穏やかな雰囲気が流れると、オタクは立ち上がった。

 

「もう良いか?」

 

「ああ、構わん」

 

 それだけの遣り取りで、オタクは千冬に背を向けて扉に近づく。

 

「小田」

 

 千冬がノブに手を掛けたオタクに声を掛ける。

 

「良く帰ってきた」

 

「・・・」

 

 一瞬、オタクは言葉を詰まらせ、それから振り向いて言った。

 

「拙者、不可能を可能にする男で御座るからwww」

 

 そう言って、オタクは部屋を後にした。

 残された千冬は、懐を探ってタバコを取り出し、一本を口にくわえかけて止める。

 

「・・・ふん」

 

 タバコを懐に戻した千冬は、オタクと同じ様に扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

「如何するかな・・・」

 

 自宅療養中の一夏は、久方ぶりの自室で一人唸る。

 既に体調は万全と言える状態で、家中の掃除も洗濯も終わらせた一夏は、暇を持て余している。

 

「何処かに出掛けるか・・・いや、それはちょっとな」

 

 一応療養と言う名目で帰宅している以上、不用意な外出は憚られる。

 かと言って、やる事も無く唸るばかりで寝転がっているままなのも性には合わず。

 一夏は何も無い休日の過ごし方に頭を悩ませ続けていた。

 そんな時だった。

 

「ん?誰か来たか?」

 

 家の玄関の辺りが俄に騒がしくなるのを感じると、直ぐにチャイムが鳴らされる。

 

「誰だ?」

 

 直ぐに玄関へ降りた一夏が扉を開けると、直ぐにその正体を思い知る。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンwww」

 

「小田!」

 

 今時の若者には通じづらいかと思えばそうでもない言葉と共に、巨体の友人が一夏を尋ねてきた。

 

「暇を持て余している様で御座るなwww一夏氏www」

 

「あ、ああ・・・まあ、暇だったな・・・お前は大丈夫なのか?」

 

「?何がで御座るか?」

 

「・・・いや、それなら良いんだ」

 

 一応オタクの身を按じた一夏に対して当の本人は何処吹く風で応じ、一夏はその様子に小さく笑った。

 

「で、何の用なんだ?」

 

「www一夏氏が暇していると思いましてなwww拙者が遊びにwww誘おうとwww」

 

「・・・何か凄く久し振りな気がするけど・・・取り敢えずムカつくからその話し方は止めてくれ」

 

「wwwサーセンwww」

 

 全く反省した様子が無いオタクに、一夏は諦めた様に溜息を吐いて、それから軽く準備を済ませて家を出る。

 携帯と財布と家の鍵をポケットに捻じ込んで、オタクに尋ねる。

 

「遊ぶって言っても・・・如何するんだ?」

 

「キャンプに行くで御座るwww」

 

「キャンプ?・・・でも道具は?」

 

「もう用意が出来ているで御座るwww」

 

 心配そうな一夏に、オタクは玄関前に止めた車を指した。

 

「アレは・・・」

 

「www拙者の愛車で御座るwww」

 

 太陽を浴びて輝く真っ赤なボディのその車は、天然の革張りのシートに高級感のあるステアリングが、惜しげも無く晒されたオープンカーで、国内では珍しい左ハンドルだ。

 

「コレって・・・キャデラック?」

 

「wwwキャディーはお好き?結構、ますますお好きになりますよwww」

 

 そう言ってオタクが運転席に乗り込むと、鍵を回してエンジンに火を入れる。

 

「どうです?余裕の音だ。馬力が違いますよ」

 

「・・・」

 

 一夏は静かに助手席に乗り込んで車の中を見回す。

 

「良くこんな車があったな・・・」

 

「憧れの76年型エルドラドで御座るwww」

 

 軽く半世紀も前の骨董品は、しかし、以外の程に軽快にエンジン音を響かせている。

 

「じゃあ行くで御座るよwww」

 

 そう言ってオタクがアクセルを踏み込んだ次の瞬間、一夏は車では経験した事の無い急激なGを体感する。

 

「ちょっ!まっ!・・・!!」

 

「wwwご機嫌だぁ!!コイツは!!」

 

 若干ハイになったオタクは、更にアクセルを踏み込んで加速させる。

 

「一体どうなって!!」

 

 一夏は知らなかった。

 このアメリカンヴィンテージカーが、外見だけなのを、エンジンから足回りまで丸々取り替えて、600馬力のV8エンジンを乗せた頭の悪い車だと。

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