一夏の友人は常識人の夢を見る   作:hggj

5 / 42
第四話

「それではコレよりISを使用した実習を始める」

 

 クラス代表決定戦から数日後の事、グラウンドに集合した一組の生徒達は初のIS実習を受ける。

 授業の教材として一機の撃鉄が用意されていたが、先ずは専用機を持っている三人による手本から始まった。

 

「では、先ずは展開から行う。オルコット先ずはお前がやってみろ」

 

 千冬の指示に従って、セシリアが模範的なISの展開を披露して見せた。

 それに続いて、今度は一夏が白式を展開しようとするが、中々上手く行かない。

 千冬の叱責とセシリアのアドバイスによって漸く白式を纏った一夏は、千冬の小言に唇を尖らせつつ肩を落とした。

 

「次はお前だ小田」

 

「アイアイマムwww」

 

 千冬に命じられたオタクは、敬礼と共に返事を返すと、息を大きく吸って肩幅に足を開き、ポーズを決めながら言った。

 

「変っ!身っ!!」

 

「真面目にやらんか!!」

 

 エフェクトが掛けられながらダンボールを身に纏ったオタクは、光が治まると共に出席簿の殴打を喰らい、地面にうつ伏せに沈んだ。

 

「次は武装の展開だ。オルコットやってみろ」

 

 当たり障り無くスターライトを展開して見せたセシリアがドヤ顔を披露すると、千冬は更なる注文を付ける。

 

「近接武器を出してみろ」

 

「えっ・・・」

 

 あからさまに表情を歪めるセシリアは、世界最強の担任の言葉に逆らう訳にも行かず、最終的に端を忍んで武器名を叫んでインターセプターを展開する。

 

「近接武器ももっとスムーズに取り出せる様にしろ。この前、豚にしてやられたばかりだろう」

 

「・・・はい」

 

「次は織斑」

 

 一夏もまた雪片二型を展開して千冬の小言を貰い、それが済むと千冬の視線は倒れているオタクの方へと向けられた。

 

「お前もやれ小田」

 

「おk」

 

 千冬に言われて、オタクは起き上がると息を整えて口を開いた。

 

「ハンマァァアアコネク「巫山戯ないでやれ」はい・・・」

 

 途中まで言った所で千冬に留められた、オタクは意気消沈して肩を落とし、大人しく言う事に従った。

 言われるがままにライフルを取り出したオタクに対して、指摘する所も無いために千冬は何も言わず、何だか妙な空気が流れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「小田!助けてくれ!」

 

 一日の授業終了後、午前中のIS実習の最後に一夏が作ったクレーターを埋める手伝いを終えたオタクは、食堂で食事を取っていたのだが、そこへ助けを求める一夏が駆け寄ってきた。

 

「如何したんだい一夏くん?またジャイアンにいじめられたのかい?」

 

「違う!て言うか俺は、のび太じゃない!」

 

 オタクのノリにも乗ってこない程、切羽詰まっているらしい一夏は、オタクに詰め寄って言った。

 

「大変なんだ!」

 

「取り敢えずもちつけwww」

 

 慌てる一夏を宥めつつ話を聞いてみると、中国人の一夏の幼馴染みが転入してきた為、懐かしく思って暫く旧交を温めていた所、急に怒りだして決闘を申し込まれたと言う事だった。

 

「また決闘wwwここは西部で御座るかwww」

 

「笑い事じゃない・・・鈴の奴、何でイキなり・・・」

 

「何か心辺りは無いので御座るか?」

 

「いや?直前に話してたのは鈴の親父さんの酢豚の話だったが?」

 

「酢豚で御座るか・・・まさかパイナップルを入れるか入れないかと言う事は」

 

「それだ!」

 

 オタクとの話で酢豚のパイナップルが原因ではと思い至ったらしい一夏は、手を叩いて声を上げるなり、何処へやらと走り去ってしまった。

 

「ヤレヤレ一夏氏は騒がしいで御座るなwww」

 

 そうして、オタクは再び食事に戻り、デザートのストロベリーサンデーを食べ終えた頃、一夏が再びオタクの前へと現れた。

 

「オッフwww一夏氏www今はまだ春で御座るwww」

 

 オタクの前に現れた一夏の頬には、見事なまでの紅葉が描かれており、あの後の幼馴染みとの話が決裂に終わった事は言うまでも無かった。

 

「・・・何が行けなかったんだ?」

 

「拙者には分からない話で御座るwww」

 

 自然と一夏はオタクの隣の席に腰掛けると、テーブルに突っ伏してぼやいた。

 

「時に一夏氏」

 

「何だ?」

 

「一夏氏はパイナップルは入れる派で御座るか?」

 

「俺は入れる派だな。小田は?」

 

「拙者もで御座る」

 

 その瞬間、一夏の脳髄に電撃が走り、勢い良く立ち上がった。

 

「そうだ!そう言う事だったんだ!」

 

「もちつけ一夏氏wwwどう言う事で御座るか?」

 

「つまり、鈴は自分と好みが違った事に怒っていたんだよ!」

 

「な、何だってーwww」

 

「そう言う事なら早速行ってくる!」

 

 再び、一夏は幼馴染みと仲直りする為に走り去り、後に残されたオタクは独りごちる。

 

「イヤ、その理屈はおかしいwww」

 

 尚、この数分後に、紅葉を増やした一夏が戻ってきてオタクに笑われたのは、やはり言うまでも無い事だった。

 

 

 

 

 

 

 季節外れの紅葉を見た食堂での遣り取りから少しばかり時は流れ、オタクは学園の外へと足を向けて買い物に出掛け様としていた。

 そろそろ、下着などの着替えが無くなってきているのと、諸々の最低限の必需品を揃えようとしての事だったのだが、それは突然現れた少女の手によって阻まれてしまう。

 

「ちょっと!あんたがオタクって奴ね!」

 

「オッフwww拙者、突然現れたおにゃのこ様に呼び止められたで御座るwwwまさかコレはフラグで御座ろうかwww」

 

「はあ?何気持ち悪いこと言ってんの?」

 

「デュフフフwww辛辣で御座るwwwありがとう御座いますwww」

 

 小柄な身体に茶色いツインテールの勝ち気そうな少女は、オタクに対しても全く物怖じせずに言葉を投げ掛ける。

 

「それよりもあんたがオタクで言いわけ?」

 

「デュフフフwww確かに拙者はオタクで御座るwww本名は小田宅と申すで御座るwwwして、お手前はw何方様で御座いましょうかwww」

 

「・・・取り敢えず、その気持ち悪い笑いを止めて」

 

「オッフwwwサーセンwww」

 

「まあ、良いわ。ちょっと着いてきなさい」

 

 一体少女が誰なのか、何が目的なのかも分からないままに、オタクは目的を果たす事も出来ないで学園内に戻る事になってしまう。

 そうして有無を言わさぬ少女に連れられてオタクが辿り着いたのはアリーナだった。

 

「コレから何が始まるんですか?」

 

「第三次大・・・アンタ、あたしと勝負しなさい!」

 

 某動画サイト界隈で通じる遣り取りに引き込まれそうになる辺り、少女も中々如何して染まっている物だが、傍と思い至った少女がオタクに勝負を申し込んだ。

 

「www」

 

 最早訳が分からなすぎて笑うしか無いオタクだったが、次の瞬間、少女がISを展開して攻撃を仕掛けてきた。

 

「ふぁーwww拙者、ピンチで御座るwww」

 

 寸での所でダンボールを展開して回避できたから良い物の、先程までオタクが立っていた辺りの地面が大きく抉れ、もしも直撃していたら惨事は免れなかった。

 

「さあ、勝負よ!!」

 

 そう、宣言した少女はオタクに対して不可視の攻撃を繰り出してくる。

 恐らくアンロックユニットから何らかの射撃攻撃を出しているのだろうと辺りを付けるオタクだが、だからと言って直ぐに対応策が浮かぶ訳でも無く、数発の被弾の後に、高速で飛び回って当たらない事を祈るという消極策しか取れなかった。

 

「この学校のおにゃのこ様は激しすぎで御座るwww」

 

「こっのぉお!!落ちなさい!!」

 

 少女は、オタクに対して追走する形で飛行しながら不可視の攻撃を続ける。

 ある程度の威力は分かったのだが、射程も弾道予想も発射速度も何も分からず、オタクは内心で舌打ちしながら、この厄介な攻撃に対する対抗策を考えた。

 

「コレ無理ゲーじゃね?www」

 

 しかし、現実は非情である。

 結局の所、何の打開策も考えられないまま、オタクのシールドエネルギーは徐々に削られて行き、あっと言う間に窮地に追い込まれてしまう。

 

「一か八か・・・とぉ~www」

 

 せめて一太刀と思い、オタクは行動に出た。

 急激に体勢を変更して両脚をアリーナ内の障壁にぶつけると、そのまま障壁の内側を滑るようにスライドしながらブレーキを掛け、後続の少女をオーバーシュートさせる。

 

「っ!」

 

 オタクを追い抜いてしまった少女は、直ぐさま反転してオタクの方を向こうとするが、オタクは既に次の手を撃っていた。

 

「フッフーwww」

 

 少女が後を振り返るとほぼ同時に、オタクが少女を再び追い抜いて一気に突き放したのだ。

 

「このぉお!!」

 

 苦し紛れに少女がオタクに向かって不可視の攻撃を連続して撃ち出すが、一撃たりとも当たる事は無く、この攻撃の際に、少女がオタクの方を常に向きながら機体の正面を向くように動き続けた事で、ある程度の攻撃の予想を可能とした。

 

「コッチも撃たせて貰うで御座るwww」

 

 漸く反撃の糸口を掴むことが出来たオタクは、ライフルを取り出すと直ぐに少女に射撃を浴びせる。

 IS用の銃器としては非常に強力な威力の20mm砲弾は、セミオートの射撃でも十分に相手の行動を牽制し、撃破出来るポテンシャルがあった。

 

「っ!豚のくせにヤルじゃ無い!」

 

 もしかしたら、学園に来て一夏以外で初めてオタクの事を認める発言だったかも知れない少女の発言だが、オタク本人としては別の時に言って欲しかったと思わずにはいられない。

 

「ミッソー!ミッソー!」

 

 ライフルの射撃の大きな隙となるリロードの瞬間に、オタクは四発のミサイルを放ってカバーしつつ、格納領域から自動でマガジン内に給弾された砲弾を手動でチャンバーに押し込んだ。

 

「はあっ!!」

 

 その間、少女は迫るミサイルを不可視の攻撃で迎撃しながらオタクに接近し巨大な偃月刀を構える。

 

「覚悟しなさい!!」

 

 オタクに向かって言いながら偃月刀を振るう少女に対し、オタクは冷静さを失わずに対抗措置を取る。

 

「指向性散弾発射!!」

 

 オタクが叫ぶと同時に、両の太腿の側面のカバーが開くと少女に向かって無数の鉄の玉が飛散した。

 

「はあっ!?」

 

 直径凡そ2cmの鉄の玉は嵐の様に少女に殺到して弾き飛ばし、少女を地面に叩き落とした。

 

「っぐう!!」

 

「ミッソー!」

 

 土煙の中で起き上がる少女に向けて、更に二発のミサイルが接近するが、少女は回避行動を取る間も無く直撃を受けた。

 吹き飛ばされて地面を転がりながら壁際まで追い詰められた少女が、瞼を開いて正面を見ると。そこには何も居なかった。

 

「アイツはっ!?」

 

 まず少女は空を見上げてオタクの姿を探すが見当たらず、続いて左右に眼をやってもオタクは居ない。

 では、何処にと言う疑問が浮かぶと同時に、通信が入った。

 

『拙者、用事があるのでコレにて失礼仕るで御座るwwwでは、アデューwww』

 

 完全に逃げられた。

 後半最後の逆襲までの間の優勢状態から、随分と押し返された上に、更なる追撃と留めのチャンスを前にして何もせずに去る事を選んだオタクに少女は理不尽な怒りを覚えながら、何となくオタクの為人を理解した。

 

「やってくれるじゃ無い・・・あの豚ぁ・・・!」

 

 この瞬間、オタクの存在は少女にとって倒すべき相手ランキングの上位に掻き込まれる事となってしまい、以降、事ある毎にオタクは少女による襲撃を受ける事になった。

 

「不幸だー!www」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。