ありがとうございます!
これからもビクビクしながら頑張ります!
里琴が選手宣誓でやらかして、雰囲気がぶち壊されたが、ミッドナイトはお構いなく進行する。
「さーて!それじゃあ早速第一種目行きましょう!!」
ミッドナイトの後ろにスクリーンが展開され、ドラムロールが鳴る。
「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!!さて、運命の第一種目!!今年は……コレ!!」
ミッドナイトがビシッ!とポーズを決めて、スクリーンを指す。
そして表示されたのは、
「【障害物競争】よ!!」
その内容に全員の顔が引き締まる。
「計11クラスの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周4km!わが校は自由さが売り文句!ウフフフ……コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」
ミッドナイトの説明に戦慈達は顔を顰めながら、スタジアムの一角にあるスタートラインを目指して歩き始める。
「妨害もありってか」
「サポート科はなんかアイテム装備してるぞ?」
「……うらやま」
「ん」
そしてスタートラインを見つめる戦慈は生徒を見渡して、あることに気づく。
「いきなりスタートから嫌がらせかよ……」
「え?」
「ん?」
一佳と唯が首を傾げる。
戦慈は腕を組んで、スタートラインを顎で示す。
「あのスタート直後の通路。あの狭さで200人以上同時に通れると思うか?」
「……無理」
「……そういうことか」
「さて……どうすっかねぇ」
戦慈は対策を考え始める。
そこに後ろから声を掛けてくる者がいた。
「お前……」
「あん?」
戦慈達が振り返ると、そこには右髪が白く、左髪が赤い男子生徒が鋭い目つきで戦慈を見つめていた。
「誰だ?」
「……轟焦凍。1-Aだ」
轟の名前に一佳は目を見開く。
推薦入学者にして、エンデヴァーの息子である。かなりの実力者であるとも噂になっている。それは共に推薦入試試験を受けた骨抜も認めていた。
「なんのようだよ?」
「……お前には悪りぃが、勝たせてもらう」
「……だから、なんで俺なんだよ。里琴が入試1位だぞ?」
「その入試1位がお前を指名した」
轟の宣戦布告に、戦慈はイラつきながら里琴を指差す。
しかし轟はその里琴が原因だと答える。
その答えに里琴は、
「……むふん」
胸を張って得意気にする。
それに戦慈はため息を吐いて、轟を見る。
「まぁ、勝手に頑張れや」
「っ……!」
「そろそろスタートよ!位置に着きまくりなさい!」
戦慈の言葉に、轟は一瞬苛立ったように顔を顰めたが、ミッドナイトの合図にスタートラインに向かっていった。
その光景を爆豪は少し離れた所から顔を顰めて眺めていた。
「っ……あの野郎ぉ……!」
轟も戦慈も自分の事をまるで眼中にない。
それがとてつもなく不愉快だった。
背中を追いかけてくる存在の出現も相まって。
もちろん戦慈達はそんなことなど知る由もない。
「厄介なことしやがって……!」
「……負けるの?」
戦慈は里琴を睨むが、里琴は無表情で戦慈を見上げながら尋ねる。
その質問に一佳や唯達は息を呑む。
それに戦慈は「ふん!」と吐き捨てながら、
「順位には興味はねぇ。けど……負けんのはムカつくからな。勝つに決まってんだろ」
戦慈の勝利宣言に里琴は頷き、一佳達も思わず笑みを浮かべる。
なんだかんだで負けず嫌い。それを知っているからだ。
「……なら同じ。……戦慈が1位」
「てめぇもちゃんとやれよ」
「……もち」
「さて……ふるいをかけてぇなら、蹴散らせてもらうか」
戦慈はスタートラインに近づいて、軽くストレッチをする。
それに里琴や一佳達は習い、準備運動をする。
すると、里琴が一佳に近づく。
「里琴?」
「……戦慈の後ろに付く」
「え?」
「……すぐにわかる」
一佳は首を傾げるが、スタートゲートにランプが点灯したのを見て、意識を切り替える。
周囲の者達も準備をして、構える。
そして最後のランプが点灯する。
『スターートーー!!!』
一斉に走り出す生徒。
すると、
「オラアアアアア!!!」
戦慈が吠えながら、右肩を突き出して全力で突進して、進行方向の生徒達を吹き飛ばして薙ぎ倒していく。
「ひぃ!?」
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
「……楽ちん」
「……なんか申し訳ないな」
「ん」
「でも、確かに楽」
戦慈の真後ろを里琴達が走る。一佳や唯は少し困惑するが、どっちにしろ押し合いながら進まなければならないので、結果は変わらないかとも思う。
「敗けねええ!!」
「どけぇ!斬り刻むぞ!」
「ですなああ!!」
戦慈の姿を見て、鉄哲、鎌切、宍田を筆頭にB組も声を上げて突っ込んでいく。
その姿を物間は苦笑しながら見つめていた。
「やれやれ、乱暴だねぇ。まだまだ先は長いのに」
「あいつらにそんな器用な真似出来るかねぇ」
物間の横で切奈が呆れながら走る。切奈は物間の作戦に協力することにした。
理由は面白そうだからである。
他にも何人かは物間の作戦に参加している。近くには円場や回原などもいる。
「でも、どうして急にA組を?」
「ニュース見たかい?」
「そりゃね、それが?」
「中身のほとんどがオールマイトのことだ。それは当たり前。じゃあ、次は? A組なんだよね。オールマイトと同じ所にいただけなのに」
切奈は物間に理由を尋ねる。
物間は前を見ながら、襲撃事件の報道の内容について語る。
「おかしくない?僕達B組だって、拳暴だってボロボロになるまで戦ったのに。まるでA組のおまけ扱いだ」
物間の言葉に切奈や円場達は少しだけ目を見開く。
つまり物間はB組のために、この作戦を考えたということだ。普段の言動からはあまり想像が出来なかった。確かにあの襲撃以降、挑発的な言動は少なくなった。それでもズバズバと言いにくいことを発言して、呆れてはいるが。
「確かに僕達はクラス関係なくライバルさ。でもね、だからって共に苦難を乗り越えた人が、不当な評価を受けるのを見逃すのは納得が出来ないよね。それは僕だって不当な評価を受けていることになる。僕が在籍しているクラスがA組のおまけ?それは我慢出来ないのさ」
だからA組や周囲に思い知らせる。
B組の凄さを。
物間はそう言いたいのだ。
それに切奈達は物間の印象を少しだけ修正する。
そして……その言葉には大いに同意する。
「なら、気合入れないとね」
「俺、もう一回他の連中に声かけてくる」
「あ、俺も」
「頼む。でも、それに気を取られて予選落ちとかやめてね。全員突破。それは絶対条件だ」
「「もち!」」
回原と円場は物間に感化されて、他のB組の元に行く。
こうして物間の作戦は現実味を帯びてきたのであった。
その間にも全員が通路出口を目指す。
すると、出口付近に氷が張り始める。
それに後ろにいた生徒達は足が凍り、動けなくなる。
氷を生み出しているのは轟だった。
「足止めのつもりか?くだらねぇ」
「……とう」
戦慈は構わず走り抜けようとすると、里琴が戦慈の背中に飛びつく。
戦慈は凍り付いた足を無理矢理引き剥がしながら走る。一佳達はその後ろを走ることで氷結を防ぐ。
「大丈夫なのか?」
「皮膚が剥がれるくれぇ、すぐに治る」
「……相変わらずだなぁ」
「ん」
『さー実況していくぜ!!アーユーレディ!?ミイラマン!』
『無理矢理呼んだんだろが』
他にも氷結を躱して、轟を追いかける生徒が続出する。
戦慈は速度を落として、先頭グループの中盤辺りを維持する。
一佳達とは少し距離が開く。
「まぁ、こればっかりは仕方ねぇか」
「……ん」
「お前は走れよ」
「……駄目じゃない」
確かに誰かに掴まってはいけないとは言われてはいない。
足扱いされている戦慈からすれば、全く納得できないが。
ちなみに戦慈がゆっくり目に走っている理由は、『全力で走り続けるとパワーが溜まりすぎる』からである。発散できるかどうかわからないので、下手にパワーを溜められないのだ。
そして走っていると、先頭集団が足を止める。
その先には、入試で戦ったロボット集団が道を塞いでいた。しかも巨大ロボばかりが。
『さぁ!いきなり障害物だ!まずは手始め!第一関門!ロボ・インフェルノ!!』
ロボットの姿に戦慈が顔を顰める。
「いきなりかよ……!」
「……どっする?」
「……足止めるのもだりぃ。やるか」
「……いえー」
戦慈は足を止めるどころか、スピードを上げる。
すると、轟がしゃがんで一気に氷結を放ってロボットを凍らせて、その下を進み始める。
戦慈はそれを避けるように脇のロボット目掛けて走る。
その横では轟が通った道を行こうとする生徒達が見られる。
その中には鉄哲がいた。
「逃がさねぇぞ!」
「やめとけ。不安定な時に凍らしたから……倒れるぞ」
「うおおお!?」
轟の言葉通り、凍ったロボットが傾き、轟音を響かせて倒れる。
鉄哲はロボットの下敷きになってしまう。
『1-A 轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!』
轟はそのまま先に進もうとするが、
「オオォラアアァァ!!!」
「……てやー」
戦慈が左右のロボットの脚を殴り、脚を浮かしてロボット達のバランスを崩す。そこに里琴が大きめの竜巻を左右に放ち、ロボット達を吹き飛ばして道をこじ開ける。
それに轟はもちろん、足を止めていた生徒達は目を見開く。
「ふ、吹き飛ばした!?」
「あの2人は入試でも吹き飛ばしてた奴らだ!当然だろ!」
「バケモンかよ!?」
「あれが……ヒーロー科……!?」
『1-B 拳暴!同じく巻空!!入試ツートップはものともしねぇー!!このコンビ反則だろぉ!?』
戦慈は里琴を背負ったまま、轟を追いかけて走り出す。
その後ろでは一佳達もロボット達と向き合っていた。
「拳暴の道!」
「ん!」
「ラッキー」
「行きマース!」
一佳は手を巨大化して、小さいロボットを掴んで、迫ろうとしている巨大ロボットの顔面にぶん投げる。
そして戦慈と里琴が開けた道へと走り込む。
それと同時に鉄哲が押しつぶされたロボットを砕いて、飛び出す。
「A組の野郎!!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」
「敗けるかー!」
その横から赤髪の男子生徒も鉄哲同様飛び出してくる。
「「あ」」
『1-A 切島!1-B 鉄哲!揃って潰されてたー!出方も一緒ー!ウケる!!』
「「『個性』ダダ被りかよ!?」」
鉄哲と切島は嘆きながら、同時に駆け出す。
行動も似ている2人だった。
その後ろでは他の生徒達も協力して動き出す。
すると、爆豪が《爆破》でロボットを飛び越え、他にもそれに続く者達が続出する。
茨はツルでロボットを縛って動きを止めたり、骨抜は地面を柔らかくしてロボットを沈めるなど、すぐさま動く。
『A組、B組ヒーロー科が飛び抜けていくぜ!その間に先頭は第二関門に到着してるぜ!』
轟達は第二関門の攻略を開始しようとしていた。
『第二関門はコレ!落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォール!!』
地面に大きな穴が掘られており、その中に柱が乱立している。柱の間を縄で結んでおり、綱渡りしなければ反対側には行けない。
戦慈と里琴は第一関門を突破してから、またスピードを落として走っている。その間に上空を爆豪が飛び越えていき、鉄哲や切島などが追い抜いて行く。
「本当に面倒だな」
「……どっする?」
「ご丁寧に縄を渡るのも面倒だな。それにもう半分は来ただろうしな。行くか」
「……いえー」
戦慈は崖が迫っているが、さらに速度を上げる。
そして縄を渡ろうとしている鉄哲達の横を通り過ぎる。
「拳暴!?」
「落ちるぞ!?」
「……1つ?2つ?」
「1つ。3m先」
鉄哲達は目を見開くも、戦慈はお構いなく飛び出そうとする。
そこに里琴が声を掛けて、戦慈が指示を出す。
そして全力で右脚で踏み込んで、前に飛び出す。
誰もが落ちていく光景を思い浮かべる。
「……てやー」
すると、里琴が小さな竜巻を放ち、戦慈の足元に飛ばす。
竜巻が小さいが、その回転はかなり強めである。
その竜巻の上に、なんと戦慈は左足を乗せる。
そしてまた踏み込んで、前に飛び出して柱に飛び移った。
「はぁ!?」
「マジかよ!?」
「なんて型破りな……!」
『おいおい!?拳暴・巻空コンビ!無理矢理にもほどがあんだろ!?』
『簡単に恐ろしい事やりやがる。一瞬でもタイミングや強さを間違えれば、真っ逆さまだぞ』
里琴は竜巻の強さや大きさを間違えれば、戦慈が踏み抜く事は出来ない。そして戦慈は正確に竜巻を踏まなければ、見当違いな方向に吹き飛ばされるし、バランスを崩せば飛ぶどころではない。
恐ろしく精密なコンビネーションが求められている。
しかし、2人はそんなことを一切感じさせることはなかった。
「次、2つ。3mと5m」
「……ヤー」
今度は2つ放ち、その上を飛び跳ねていく戦慈。
それを続けて、ドンドンと先に進み、轟と爆豪に迫っていく。
戦慈の後ろでは茨がツルで体を持ち上げて柱を移動したり、骨抜や鉄哲達は全力で走り渡る。
「ぬぅ!わ、私の重さで縄が揺れる!?」
宍田は獣化して渡ろうとするが、体が大きくなったせいで縄が激しく揺れてしまい、スピードが出せなかった。
一佳や物間達も大人しく縄を渡っていく。
「B組は機動力が低い奴が多いか」
「こればっかりは仕方がないっしょ」
「君が言うなよ」
「体力使うんだよ」
切奈は足を切り離して浮かび、それを腕で抱えて柱を飛び交う。
その横ではポニーが角に飛び乗って渡っている。
そして轟達は第二関門を突破する。
『先頭が抜けて、下は団子状態!上位何名が通過するかは公表してないから、安心せずに突き進め!!』
そして轟が次に入った関門は、
『そして早くも最終関門!その実態は……一面地雷原!!地雷の場所はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!目と脚を酷使しろ!ちなみに地雷は威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!?』
『人によるだろ』
戦慈達も地雷原に近づいてきた。
「おい、里琴。てめぇ、いつまで張り付いてる気だ?」
「……心行くまで」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「……じゃあ行く」
「さっさと行け」
里琴は戦慈の背中から飛び降りる。
そして前方を確認した。
轟は下を注視しながら、地雷を避けて走っていく。
「氷を張れば後続に道を作っちまう。確かに先頭に不利な障害だな……」
すると、
「はっはー!!俺には……関係ねぇー!!」
「!?」
爆豪が両手を爆破させて飛び、ついに轟に追いついた。
「半分ヤロー!!てめぇ!宣戦布告する相手を間違ってんじゃねぇよ!!」
『ここで先頭が変わったー!!喜べマスメディア!おまえら好みの展開だ!ってぇ、おおお!?来たあああ!!』
轟が爆豪の腕を掴み、それを爆豪が振り払うなど引っ張り合いを始めた直後、2人の真上を影が通り過ぎる。
「「!?」」
「……お先」
里琴である。
無表情のまま足裏に竜巻を生み出して空を飛んで、一気に轟達を抜いて行った。
『シー キャン フラーイ!!今まで人の背中に引っ付いておきながら、ここであざ笑うかのように飛び去ってトップに出たー!!この小悪魔め!拳暴フラれたざまあみろ!!』
『おい』
「ちっくしょ!」
「ちぃ!」
「……いえー」
轟と爆豪は慌てて追いかけようとするが、里琴は両手から弱くも大きい竜巻を後ろに放つ。
それにより轟や爆豪を始めとする、後続の生徒達は飛ばされないように、そして地雷を踏まないように足を止めてしまう。
唯1人を除いて。
ドンドンドンドォン!!
突如轟達の後ろ、地雷エリア中盤辺りにて連続で地雷が爆破する。
前方からは突風、後方からの爆風に轟と爆豪は後ろに目を向ける。
「どうした?その程度で止まるのかよ?」
「拳暴……!」
「来やがったなああ!!」
『ここで更に拳暴おお!!風をものともせず!!爆破もものともせず!!轟達に追い迫るー!!恐えぇな!?フラれた怒りかぁ!?』
『いい加減にしろ』
戦慈は爆破で周囲を牽制しながら、轟達の真後ろに迫る。その体は膨れ上がり、髪が逆立っていた。
轟と爆豪は戦慈を攻撃しようと、手を向ける。
そこに更に事態が動く。
ドオオオオオォォン!!!
「「「!?」」」
戦慈が起こした爆破よりも、更に巨大な爆発が地雷エリア入り口で起こる。
『後方で大爆発!!なんだ!?』
戦慈達は爆発に目を向ける。
爆煙の上から何かが飛び出し、戦慈達に迫る。
それは鉄板に乗った緑髪のモジャ毛の男子生徒だった。
『1-A 緑谷!!爆風で猛追ー!!』
そして、緑谷は先ほどの里琴のように戦慈達の真上を越えていく。
『抜いたアアア!!』
「デクァ!!!!俺の前を行くんじゃねええ!!」
「緑谷……!!」
「無茶苦茶しやがんな……!?」
爆豪と轟は戦慈から意識を外して、緑谷を追いかける。
もちろん戦慈も追いかける。
緑谷は失速してバランスが崩れ、前に投げ出される。
その隙を逃さずに戦慈達は緑谷に迫る。
すると緑谷は脚を振って、体を起こしてケーブルで繋がれた鉄板を地面に向かって振り下ろす。
もちろんその下には地雷。
ドオオォン!!
再び爆発が起こり、丁度追いついていた戦慈達はモロに爆破を浴びる。
緑谷は再び爆風に乗って、前に出る。
『緑谷、間髪入れずに後続妨害!!更に地雷原即クリア!!』
緑谷は数回地面を転がるが、すぐに起き上がって全力で走り出す。
「はぁ!はぁ!はぁ!今のうちに!!駆け抜ける!!」
「そりゃあ、舐め過ぎだぜ」
「っ!?」
『クレイジー拳暴!!緑谷の爆破もものともしねぇー!!バケモノー!!』
戦慈は一切怯むことなく緑谷に追いつき、そして追い抜いて行く。
「そんな……!?っ!負けて…たまるかぁ!!」
緑谷は愕然とするが、すぐに切り替えて力を振り絞って走る。
その後ろからは再び轟と爆豪が迫って来ていた。
しかし、戦慈は緑谷との差を広げていく。
その時、スタジアムでは。
『さぁ、帰ってきたぁ!!』
プレゼントマイクの言葉の直後、高速で飛行しながらゴールを通過する里琴の姿があった。
ワアアアアアア!!!!
『他人が1位になるとか言っておきながら、そいつを踏み台にする鬼畜!!後続を一切引き付けねぇ圧倒的1位ー!!小悪魔戦闘機!!巻空里琴ーー!!』
「……不本意」
里琴は呟きながら真上に飛び上がる。
そして、5分後。
『続いて第2位!!ロボットを殴り飛ばし!!谷を飛び越え!!地雷原を正面突破!!こっちは暴走戦車だな!!拳暴戦慈ーー!!』
戦慈がゴールを駆け抜ける。
「ふぅ。ギリギリだったか」
戦慈は緑谷の爆破に巻き込まれながら地雷原を駆け抜けた時、脚から衝撃波を放ち、スピードを上げていたのであった。
それで1回溜まったパワーをリセットしたが、すぐにまたパワーが溜まってしまった。
すると里琴が上空から、戦慈に肩車する形で落ちてきた。
「……てめぇ……」
「……おつ」
『そして第3位ー!!これは誰が予想できた!?序盤一度として輝くことはなかった地味男!!緑谷出久の存在をー!!』
続いて緑谷が息を荒く乱しながらゴールする。
その直後に轟、そして爆豪がゴールする。
「はぁ!はぁ!はぁ!くそ……!3位……!」
緑谷は悔し気に俯いて、両手を握る。
(1位はあの時すでに駄目だった……!だから2位!なのに……あそこまで圧倒的だなんて……!)
緑谷は戦慈に目を向ける。
自分と……オールマイトにも匹敵しそうな超パワーの持ち主。
先日の襲撃でもオールマイトを追い詰めた脳無と似た奴を倒したとも聞いた。
「これじゃあ……!オールマイトに選んでもらったのに……!」
緑谷は溢れそうになる涙と弱気を必死にこらえる。
そして轟、爆豪は戦慈、里琴、緑谷の3人を悔し気に見つめる。
「くっ……!」
「また……くそ!……くそが……!」
続々とゴールする生徒達。
戦慈は相変わらず里琴を肩車しながら、体を休めていた。
「そろそろ降りろ」
「……疲れた」
「俺もだよ」
「……か弱い」
「てめぇ、最初の数m程度しか走ってねぇだろうが。何がか弱い女だよ」
里琴は全く降りようとしない。
それにため息を吐いて、ゴールしてくる者達を見る。
すると鉄哲や骨抜、茨が近づいてきた。
「やりやがったな!」
「吹っ飛ばされちまった」
「荒々しくも猛々しかったですね」
「わりぃな」
「気にすんな!けど次は勝つ!!」
「おう」
その後も続々とゴールしてくる。
一佳達もゴールして、戦慈達の元に近づく。
「ふぅ。ギリギリかな?」
「さぁな」
「……おつ」
「ん」
「そのままゴール?」
「ちげぇよ」
「……捨てられた」
「おめぇが1位だろうが」
一佳の言葉に戦慈は肩を竦める。
里琴は戦慈の肩の上から、唯達を労う。柳は首を傾げて、2人に質問する。
戦慈がそれを否定すると、里琴が誤解を招く言葉を呟いたので、すぐさま否定する。
そこに切奈達もゴールした。
「いや~……思ったより順位低かったな」
「大丈夫なのか?切奈」
「40位には入ってるし、大丈夫だと思うよ」
「物間も?」
「ああ、B組は全員40位内に入ってるよ」
「ん」
切奈は頭を掻いて苦笑いしながら、近づいてきた。
一佳は心配そうに声を掛けるが、切奈は手をパタパタとしながら軽く答える。
「物間の作戦に付き合うこともないと思うけどなぁ」
「今回は結構真面目な理由だよ。だから他の連中も付き合ってる」
「というと?」
「ん?」
切奈の言葉に首を傾げる柳と唯。
切奈は物間の言葉を一佳達に伝えると、一佳達は目を見開いて物間を見る。
「どうしたんだ?あいつ」
「ん」
「一佳の手刀で壊れた?」
「そこまではしてない!」
「まぁ、言い方がへたくそってことなんだろうね。プライドが高いってのもあるんだろうけどさ。でも、今回は付き合ってもいいかなってね」
「なるほどなぁ」
「まぁ、第二種目が何かにもよるけど」
切奈は肩を竦めて苦笑する。
それに一佳達も少しだけ物間の評価を変える。
「さぁ!結果が出たわ!予選通過は上位42名よ!御覧なさい!!」
ミッドナイトが壇上に立ち、スクリーンを示す。
1位:B組 巻空里琴
「……ブイ」
2位:B組 拳暴戦慈
「ふん」
3位:A組 緑谷出久
「次は……負けない!」
4位:A組 轟焦凍
「……」
5位:A組 爆豪勝己
「くそが!」
6位:B組 塩崎茨
「もっと己を顧みなくては……」
7位:B組 骨抜柔造
「こんなもんかね」
8位:A組 飯田天哉
「ここまで遅れを……!」
9位:A組 常闇踏陰
「奮励努力」
10位:A組 瀬呂範太
「ちくしょー」
11位:B組 鉄哲徹鐵
「まだまだぁ!!」
12位:A組 切島鋭児郎
「まだまだぁ!!」
13位:A組 尾白猿夫
「もっと頑張らないと」
14位:B組 泡瀬洋雪
「中途半端だなぁ」
15位:A組 蛙吹梅雨
「ケロ」
16位:A組 障子目蔵
「……」
17位:A組 砂藤力道
「拳暴やべぇな」
18位:A組 麗日お茶子
「次も頑張る!」
19位:A組 八百万百
「はぁ……」
20位:A組 峰田実
「いい尻だった」
21位:A組 芦戸三奈
「くやしー」
22位:A組 口田甲司
「……」
23位:A組 耳郎響香
「ちょっと不甲斐ないかな」
24位:B組 回原旋
「低すぎたか?」
25位:B組 円場硬成
「こんなもんじゃね?」
26位:A組 上鳴電気
「情けねー」
27位:B組 凡戸固次郎
「皆凄いねぇ」
28位:B組 柳レイ子
「ウラメシい」
29位:C組 心操人使
「やっぱヒーロー科はすげぇな」
30位:B組 拳藤一佳
「次は頑張らないとな」
31位:B組 宍田獣郎太
「不甲斐ないですな」
32位:B組 小大唯
「ん」
33位:B組 鱗飛竜
「くそ……!」
34位:B組 庄田二連撃
「やはり機動力が課題か……!」
35位:B組 鎌切尖
「次は斬ってやるぜぇ」
36位:B組 物間寧人
「ま、こんなところかな」
37位:B組 角取ポニー
「頑張るデス!」
38位:A組 葉隠透
「ギリギリだった……!」
39位:B組 取陰切奈
「次が本番だね」
40位:B組 吹出漫我
「くっそ~……」
41位:H組 発目明
「フフフ……!」
42位:A組 青山優雅
「輝……はうっ!?」
以上、42名が突破。
結果を見て、教師席はそこそこ盛り上がっている。
「ヒーロー科はやはり全員突破ですね」
「当然だな。あれくらいで負けては困るぞ」
宇宙服を着たヒーロー、13号。そしてガンマンスタイルのヒーロー、スナイプが当然とばかりに頷く。
13号の隣では金髪の骸骨のような男が座っていた。
「緑谷少年……」
その男は悔しそうにしている緑谷を見て、心配そうにしていた。
「どうしたんですか?オールマイト。気になる生徒でも?」
「いや……何でもないよ、13号。それを言ったら皆、気になる生徒さ」
「やはり拳暴君は気になるのでは?あなたにそっくりな『個性』ですからね」
「……そうだね」
骸骨の男、オールマイトは13号の問いかけに笑みを浮かべて首を振る。
先ほどの表情を見ていなかった13号は戦慈の名前を上げる。
それにオールマイトは戦慈に目を向けて、頷く。
(確かに私に……緑谷少年とほぼ同じ。いや……扱えている分、圧倒的に拳暴少年の方が、緑谷少年より上!彼と競うことは間違いなく君の糧になるはずだ。だからめげるなよ……緑谷少年!)
オールマイトは心の中で緑谷を激励する。
するとスナイプの横に座って、前のめりで観戦していたブラドが顎を擦りながら唸る。
「む~」
「どうした?ブラド」
「いや……やはりA組と比べると機動力が課題なのは事実だが……下位で通過した連中が妙に手を抜いているように見える」
「ふむ。まぁ、まだ予選は続くんだ。それを見越してじゃないのか?」
「かもしれんか……。裏目に出ないといいが」
スナイプの言葉にブラドは頷くも、妙に嫌な予感がするのであった。
「それにしても巻空と拳暴の連携は凄まじいな」
「巻空は少し拳暴に依存気味なのがな。他の者と協力できないわけではないが……」
「まぁ、昔馴染みと言うのは大きいだろ。特にあの2人の場合は。それにそれで見事な結果が出せている。今すぐ問題があるわけでもないだろ」
「ああ」
施設でずっと共に暮らしてきている。気心が知れている者と一緒にいるのは不思議なことではない。
「さて、ここからどう見せてくれるのか」
「楽しみだな」
教師達も期待を膨らませて、第二種目の行く末を見守るのであった。
第一種目はこんな感じかなと。
ここからは変わっていくので、しっかりと考えていきたいと思います。
ただですね。早く唯、柳、庄田の『個性』を見たい!
と、思っているので、少々お時間くださいm(__)m