ミッドナイトはピシャン!と鞭を鳴らして、壇上で進行を継続する。
「予選通過は42名!ここで落ちちゃった人も安心なさい!まだ見せ場は用意されているわ!さぁ、第二種目行くわよ!!ここからは報道陣も更に加熱するわよ!!キバリなさい!!」
予選を突破した生徒達は、気合を入れ直す。
それに笑みを浮かべたミッドナイトは、スクリーンに顔を向ける。
「さーて、第二種目よ!私はもう知ってるけど~~…何かしら!?」
ドラムロールが鳴り響き、数名がゴクリと唾を飲んでスクリーンを見つめる。
「言ってるそばからぁ!!これよ!!」
ドン!と音と同時に、ミッドナイトがポーズを決めながらスクリーンを指差す。
そこに表示されたのは、
「騎馬戦!!」
その内容に全員が訝しみながら推測を立て始める。
「騎馬戦?」
「個人競技じゃないぞ?」
「……へぇ」
泡瀬や円場が首を傾げる。
物間は面白げに僅かに笑みを浮かべる。
「参加者は2~4人のチームを自由に組んで、騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが先ほどの順位に従って各自にポイントが振り分けられること!」
「ポイント奪取方式か」
「ということは、チームの組み方でポイントが違うのか」
「それによって狙う側か狙われる側か分かれるんだね」
「それは本当に楽しそうだね」
鱗と庄田が腕を組んで唸り、それに切奈も頷く。
それを聞いていた物間が更に笑みを深める。
「ええ、そうよ!そして与えられるポイントは下から5ポイントずつ!ただし!!!」
ピシャァン!!と強く鞭を振り、生徒達の注意を引くミッドナイト。
「上を行く者には更なる受難を。雄英にいる以上何度でも、いかなる場所でも聞かされるよ!これぞPlus Ultra!!」
ビシ!とミッドナイトは生徒達に向かって指をさす。
その先にいるのは……戦慈の肩にいる里琴。
「予選通過1位の巻空里琴さん!!与えられるポイントは……1000万!!!」
『!!』
「……マジ卍」
「アホ言ってんじゃねぇよ」
ミッドナイトの発表に戦慈以外の視線が里琴に集中する。
その内容と視線に、里琴は相変わらずの無表情で謎の反応をして、戦慈にツッコまれる。
それに一佳やB組の者達はガクッ!として、A組の数名も呆れる。
「相変わらずと言え……」
「大物過ぎる」
「ん」
「あははは……」
一佳は右手で目元を覆い、柳がツッコみ、それに唯が頷く。
切奈も流石に苦笑するしかなかった。
鉄哲は右手を握り締めて、里琴を見つめる。
「巻空からポイントを獲れれば、勝利確実ってことかよ……!燃えるぜ!」
「どれくらいが通過するかだな」
「それにどのように組めばよいのでしょう?『個性』の使用や奪われた場合は?」
骨抜は腕を組んで勝利条件を考え、茨も首を傾げてルールを質問をする。
それにミッドナイトが頷いて、説明を続ける。
「制限時間は15分!振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着!終了までにハチマキを奪い合い、ポイントの保持数を競うのよ!取ったハチマキは首から上に巻くこと!獲りまくれば獲りまくるほど管理が大変になるわよ!そして何より重要なのは……ポイントを獲られても、騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!」
最後の言葉に全員が更に唸る。
「つまり制限時間中、ずっと動き続ける必要があるわけですな」
「ポイントが集まれば集まるほど、相手にするチームが多くなるんだねぇ」
「ベリーハード!」
「誰がポイントを集めているのかも把握しねぇとな」
宍田、凡戸が要約し、それにポニーが悲鳴を上げる。鎌切も腕を組んでポイントを語る。
「『個性』ありの残虐ファイト!でも、あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃はレッドカード!一発退場とします!それと2人で組む場合は肩車は禁止!しっかりと背中に張り付く事!」
「……横暴」
「何がだよ」
「それじゃあ、これより15分!チーム決めの交渉開始よ!!」
15分という時間に選手達はそれぞれ顔を見合わせて、行動を開始する。
やはりまずは『個性』を把握している同じクラス同士で交渉が始まる。
「さて、どうするかな」
「『個性』を把握している者同士で組むのが定石と考える」
「問題は4人で組むと『個性』が活かせない奴もいるってところだな」
「俺はやんなら一番を狙う!そして逃げ回るのは趣味じゃねぇ!!」
「これこそA組に思い知らせるチャンスだね」
「だからこそ、メンバーはしっかりしないとね。物間」
B組は一度クラスメイトで集まる。
泡瀬が腕を組んで全員を見回す。庄田がB組内での騎馬作りが的確であると進言する。そこに骨抜が組み方の注意点を語り、鉄哲は両手を握り締めて叫ぶ。
物間は笑みを浮かべて、チャンスであると改めて声を掛けるが、それに切奈も誰相手でも勝てるチーム作りをしなければと声を掛ける。
そして戦慈と里琴はもちろん、
「……戦慈が馬」
「まぁ、俺のデカさだと馬にしか向いてねぇしな。里琴も騎手しか出来ねぇだろう」
戦慈はB組内でも身長が突出しているし、動けば動くほど体が大きくなる。そのため騎手には向かない。
逆に里琴は小さすぎる。馬にはとても向いてない。
そして連携という点でも、2人が組まない理由はない。
すると、未だ戦慈の肩から降りない里琴が、一佳に顔を向ける。
「……一佳。……組む」
「え?私か?」
「……手を大きくして、戦慈を掴む。……そこに私が足を乗せる」
「……う~ん。それだと4人で組んだ方が良くないか?」
「……4人だと戦慈が活きない。……戦慈のパワーは必須」
里琴の言葉に一佳は腕を組んで悩む。
言いたいことは分かるが、他のチームの状況も聞かないと何とも言えない。
すると、戦慈達に近づく者がいた。
「私と組みましょ!1位と2位の人!」
「誰だテメェ?」
声を掛けてきたのはピンク色の髪をし、体に様々なアイテムを装着をしている女子生徒だった。
「私はサポート科の発目明と申します!あなた方の事は知りませんが、利用させてください!」
「ストレートだな!?」
発目の言葉に目を見開く一佳。
それに発目は特にリアクションせず、早口で話し続ける。
「あなた方と組むと必然的に注目度No.1じゃないですか!そうなると必然的に私のドッ可愛いベイビー達がですね、大企業の目に留まるわけですよ!」
「ベイビー?」
「私が開発したアイテム達のことです!」
発目は笑いながら持っているアイテムを見せる。
それを眺めていた里琴は、戦慈の頭をポンポンと叩く。戦慈は顔を顰めて、発目に声を掛ける。
「……わりぃが、テメェのアイテムを活かすタイミングがねぇ。他を当たってくれ」
「もう少し私のドッ可愛いベイビーの説明を!?」
「俺じゃあ、そのアイテム共は壊しちまう。里琴には元々必要ねぇもんばっかに見える。他の連中に使って、俺らと戦わせた方が目立つんじゃねぇか?」
「はっ!!それもそうですね!!では、挑ませて頂きます!!」
「切り替え早いな!?」
戦慈の言葉に発目はハッ!として、アイテムを抱えて他の者達の所へ走り出していく。
その後ろ姿に一佳は唖然とする。
「で?拳藤はどうすんだよ?他の連中は決まり出してんぞ?」
「え!?」
戦慈の言葉に一佳は慌ててクラスメイト達に目を向ける。
切奈は唯、柳、ポニーに声を掛けており、それに3人も納得するように頷いている。どうやら作戦会議をしているようだった。
物間は鉄哲や骨抜に声を掛けていた。
「どうだい?鉄哲、骨抜。一緒にA組を倒さないか?」
「わりぃな、物間!俺は全員と戦うつもりだぜ!もちろんB組で勝ち残りたいけどな!」
「俺もだな。やるならとことんやりてぇ」
「……そうか。仕方がないね」
「俺達B組なら堂々と戦ってもA組を倒せる!俺はそう信じてるぜ!!」
「分かったよ。けど、僕達が勝っても恨みっこ無しだよ?」
「たりめぇよぉ!!」
鉄哲はニカ!と笑って、骨抜と去っていく。
物間も笑みを浮かべて、円場や回原に声を掛ける。
その様子を見て、一佳はもうほとんど余っている者はいないと理解した。
「……仕方ないな。こうなったら覚悟を決める!頼むぞ!拳暴!里琴!」
「テメェもな」
「……いえー」
一佳は覚悟を決めて、戦慈達と組むことを決めた。
そして15分が経過し、それぞれのチームで騎馬を作った。
『さぁ、起きろ。イレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに11組の騎馬が集まった!』
『ん?……中々、面白ぇ組が揃ったな』
「A組は高得点ばかり。『個性』も見させてもらったし、2チーム奪えば十分だ。一番の狙いは……爆豪かな?」
「ちゃんと指示くれよ?」
「ドッキドキだね!」
「巻空達を狙う連中を狙うよ」
「任せろ」
物間チーム:物間(騎手)、円場(前)、回原(左後ろ)、吹出(右後ろ)
ポイント合計:235
「行きましょか」
「ん」
「ファイトデース!」
「疲れそ」
取陰チーム:切奈(騎手)、唯、柳、ポニー
ポイント合計:180
「勝ぁつ!!」
「拳暴達からどう奪うかだな」
「守りはお任せを」
「ハチマキは俺が固定してやるぜ!」
鉄哲チーム:鉄哲(騎手)、骨抜、茨、泡瀬
ポイント合計:670
「僕が前でいいのぉ?」
「凡戸氏の《セメダイン》は重要ですからな!」
「後ろからの敵は斬り殺すぜぇ!」
「……いけるんだろうか?」
鱗チーム:鱗(騎手)、凡戸、宍田、鎌切
ポイント合計:220
「……いえー」
「さて、気合入れるか」
「吹き飛ばさないでくれよ?」
巻空チーム:里琴(騎手)、戦慈、一佳
ポイント合計:1000万と270
「頑張るか」
「「「……」」」
心操チーム:心操(騎手)、庄田、尾白、青山
ポイント合計:270
「皆!よろしく!」
「うん!」
「フフフ!見てぇ!大企業!」
「ああ……」
緑谷チーム:緑谷(騎手)、常闇、麗日、発目
ポイント合計:505
「死ぬ気で走れよクソ共ぉ!!」
「チームメイトにクソとか言うなよ!?」
「不安だよー」
「頼むぜマジで」
爆豪チーム:爆豪(騎手)、切島、瀬呂、芦戸
ポイント合計:620
「まずは他のチームから奪って安全圏を確保する」
「分かった!」
「行きますわ!」
「頼むぜ!エリート達!」
轟チーム:轟(騎手)、飯田、上鳴、八百万
ポイント合計:575
「行けるかなぁ」
「行くしかないんだよ!響香ちゃん!!」
「なんで脱ぐんだよ?」
「腕が見えないじゃん!」
「……」
葉隠チーム:葉隠(騎手)、耳郎、砂藤、口田
ポイント合計:360
「ケロ」
「蹂躙だぁ……!」
「はぁ……やるだけはやろう」
峰田チーム:峰田(騎手)、蛙吹、障子
ポイント合計:390
以上11チーム。
各チームはフィールドを指定するラインの外に待機する。
一佳は両手を巨大化させ、戦慈の胴体を後ろから掴んでいる。里琴はその手を足場にして立っている。
一佳は緊張して、他のチームを見ている。
「特に危ないのは、やっぱりA組の轟か?」
「B組も厄介なのがいるだろが」
「え?」
「……切奈達」
「あ!?」
一佳は里琴の言葉に目を見開いて、切奈達を見る。
メンバーを改めて見て、戦慈達の言いたいことを理解する。
「里琴。奴らの接近には気を付けろよ」
「……もち」
「拳藤。お前もちゃんと動けよ」
「分かってる!」
『さぁ、上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!』
『行くぜ!!残虐バトルのカウントダウン!!』
プレゼントマイクの実況とカウントダウンに全員が顔を引き締めて、構える。
ほぼ全員の視線が戦慈達に集まる。
そして、遂に、
『START!!!!』
同時に全チームが走り出して、フィールドに入る。
そしてやはり複数のチームが戦慈達に迫る。
「実質それの争奪戦だ!!もらうぜぇ!!拳暴!!」
「行っくぞー!」
「常闇君!他のチームが襲った隙を!」
「承知!」
鉄哲、葉隠が迫り、その後ろに緑谷がいる。
それを確認した戦慈は、
「試すか。行くぞ!」
「……やー」
「ああ!」
戦慈が背中を丸めると、一佳が飛び上がって戦慈の腰に足を乗せて跳び乗る。
同時に里琴が目の前に小さいが強めに回転する竜巻を放ち、戦慈は2人を背中に乗せた状態で走り出して、竜巻を右脚で踏んで高く飛び上がる。
「ええ!?」
「2人も乗せてるのに!?」
「やんなぁ!拳暴!!」
「そういえば、あいつ体膨れてたな」
葉隠、緑谷が目を見開いて上を見上げ、鉄哲は笑みを浮かべる。骨抜は戦慈の体が少し膨れていることを思い出した。
しかし、
「響香ちゃん!」
「わってる!」
「行くよ!皆!」
「うん!」
「塩崎ぃ!!」
「束縛を」
葉隠は先頭にいる耳郎に指示を出して、耳郎は両耳たぶのプラグを戦慈達に伸ばす。
鉄哲達は振り返りながら、耳郎同様茨がツルを伸ばす。
そして緑谷達は騎馬ごと飛び上がる。緑谷の背中には発目が背負っていたジェットパックが身に着けられていた。
「サポート科の!?」
「へぇ、マジでやるじゃねぇか。里琴!前と下だ!」
「……ぶっ飛び~」
一佳は目を見開いて驚き、戦慈は感心するように呟いて里琴に指示を出す。
里琴はよく分からないことを呟きながら、前方に次の足場となる竜巻を、下から迫る緑谷達やツルなどには少し大きめの竜巻を放ち、牽制する。
「くっ!」
「っ!黒影!下だ!」
「アイヨ!」
緑谷は悔し気に顔を歪めると、常闇が《黒影》と呼ばれる黒い影を呼び出して、下から迫るツルとプラグを叩き落とす。
「緑谷!油断するな。俺達とて標的だ」
「ごめん!一度降りよう!」
「了解!」
緑谷は戦慈達を無理に追わず、着地することにした。
鉄哲達は引き続き戦慈達を追いかける。
「よし!私達も追うよ!」
「おう!って!?葉隠!?ハチマキがねぇぞ!?」
「はっ!?いつの間に~!?」
葉隠達も追おうとするが、砂藤が葉隠の頭からハチマキが消えていることに気づく。
葉隠はそれに驚いて、慌てて周囲を見渡すと、ハチマキが宙に浮きながら移動していた。
「どういうこと~!?」
「耳郎!急げ!」
「ああ、もう!!」
砂藤の声に耳郎は焦りの表情を浮かべて、プラグを伸ばす。
しかし、プラグがハチマキに届く前に何かが浮かんでいるハチマキを掴む。
それは人の手の先だった。
「今度は何!?」
「悪いね。もらうよ」
葉隠が混乱していると、ハチマキを掴んだ手が飛んでいく。
その先にいたのは切奈達だった。手は切奈の右手に戻る。
「B組の!?」
「どんな『個性』!?」
「逃げるよ皆!」
『開始からまだ2分!地上どころか空中ですら混戦の混戦!!1000万だけじゃなく、2位~4位のハチマキを狙ったって十分勝てるぜぇ!!』
切奈は奪ったハチマキを首にかけて、唯達に声を掛けて未だに混乱している葉隠から離れる。
その先には、轟達がいた。轟達は切奈達ではなく、鱗達を目指して動いていた。
「あらま」
「どうする?」
「やるに決まってるでしょ。頼むよ!レイ子!ポニー!」
「はーい」
「イエーイ!行きマース!」
切奈はいやらしげな笑みを浮かべて、指示を出す。
ポニーの角が外れて、宙を舞う。更に切奈も右手、そして口元を切り離して飛ばす。
轟達の死角に回り、切奈達がいる反対側に口元を飛ばす。
そして叫ぶ。
「隙あり!!」
「っ!!」
「後ろです!!え!?」
「口だけぇ!?」
「っ!?しまった!」
切奈の声に轟達は当然反応する。
しかし、目を向けた先には謎の浮いている口だけ。
それに目を見開いて固まる八百万や上鳴。轟は罠だと気づいて、慌てて周囲を見る。
真横から角のようなものが2本、轟に迫っていた。
それを轟は氷を放って防ぐ。
すると、轟のハチマキが突如独りでに離れて、宙を舞う。
「な!?くそ!」
「ハイ、しゅーりょー」
轟は目を見開きながらも、手を伸ばす。しかし、その前に手だけが飛んできて、ハチマキを掴んで持ち去ってしまう。
もちろん手が戻る先には切奈。
「あいつは……!?」
「なんだよ今のぉ!?」
「『個性』か……!?しかし、どんな『個性』を……!?」
「やっぱ、強いねぇ。レイ子の《ポルターガイスト》」
「どうも」
柳の『個性』《ポルターガイスト》は自分の周囲の物体を操ることが出来る。
ポニーと切奈に意識を向けさせて、その隙に柳がハチマキを浮かせ、更に慌てている隙をついて切奈が回収するという作戦である。
柳が失敗しても、切奈やポニーの『個性』でも十分ハチマキを奪う隙が出来るいやらしい策である。
「ポルターガイスト……。物を操る『個性』ですか!!」
「じゃね~、A組~」
「待て!」
背を向ける切奈達を飯田が叫びながら、追いかけ始める。
その様子を戦慈達は上空で飛び跳ねながら見ていた。
「……轟から奪った!?」
「遠隔操作系が揃ってやがるからな。あいつらが一番やべぇな」
「……こわ」
「調子乗ってんじゃねぇぞクソがぁ!!」
突如爆豪が爆破を起こしながら、上空にいる戦慈達に迫ってきた。
「!! 里琴!!」
「……クソがー」
戦慈は一瞬目を見開くが、すぐに里琴に声を掛け、即座に里琴は竜巻を放って牽制する。
爆豪は竜巻に手を向けて、爆破を放つ。その隙に戦慈はその場を離れる。
「ちぃ!」
爆豪は顔を顰める。
すると爆豪の体にテープが張り付き、引っ張り下ろされる。その先には騎馬の切島達がおり、テープは瀬呂から伸ばされていた。
『おおおお!?なんかテクニカルなことが腐るほどあって、実況追いつかねぇぞ!?で?騎馬から離れたけどあり!?』
「ありよ!!地面に落ちてたらアウトだけど!」
戦慈は地面に降り立つ。一佳も足を下ろす。
そこに再び爆豪や鉄哲達が迫ってくる。
「逃がさねぇ!!」
「1位は俺だぁ!クソ仮面ヤロウ!!」
「オオオオオオオオ!!!」
『!?』
突如戦慈が吠える。
その圧に押されて切島や骨抜達は足を止めてしまう。
「な、なんて気迫だよ……!?」
「敗けるかぁ!!行くぞ!!」
「待て!鉄哲!拳暴をよく見ろ!」
「何ぃ!?……っ!?更に膨れてやがる……!」
「なにアレ!?」
切島が慄くが、鉄哲は叫んで骨抜達に発破をかけるが、骨抜がそれを制止する。それに鉄哲は戦慈をよく見ると、先ほどより体が膨れ上がっていた。
戦慈の変化に爆豪達は目を見開いて、足を止める。
戦慈は両手を前に出して、掴みかかるような姿勢を取る。
その両手が切島達はとても大きく見えた。
「来るなら来やがれ。俺は倒れねぇよ」
「っ!……上等だぁ!!」
「もう敗けねええぇ!!」
爆豪と鉄哲は戦慈の挑発に叫んで構える。
それに騎馬役達も気合を入れて走り出そうとすると、
「単純なんだよ。A組」
「!?」
突如、背後から爆豪のハチマキが奪われる。
鉄哲達は走り出しながら、後ろを振り返る。
爆豪のハチマキを奪ったのは物間だった。
「んだテメェこら!!返せ殺すぞ!!」
「やられた!」
爆豪は邪魔をされた怒りで物凄い形相で物間を睨んで叫ぶ。
物間はそれを涼しい顔で躱して、鼻で笑う。
「ミッドナイトが第一種目と言った時点で、極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」
「あ?」
「だからおおよその目安を仮定して、その順位以下にならないように走ってさ。後方からライバルになりそうな者達の『個性』や性格を観察させてもらった。その場限りの順位に執着したって仕方ないだろ?」
「っ!……クラスぐるみか!」
「全員ではないさ。拳暴達や鉄哲達は今も真っ向勝負してるだろ?でも、いい案だろ?人参ぶら下げた馬みたいに仮初の頂点を狙うよりはさ」
「……あ?」
「それに……僕達だってヴィランを倒してきたんだ。拳暴や君達A組だけが優れてるわけじゃないよ。舐めないでくれるかな?」
薄く笑みを浮かべながら話す物間に、切島達はゾクリと怖気が走った。
確かにB組だって襲われた。しかしニュースではA組ばかりが放送され、それに浮かれていた。
『俺達はヴィラン襲撃を乗り越えた』。
それはB組だってそうだ。その事実を切島達は甘く見ていた。
「あ、あとついでに君も有名人だよね?ヘドロ事件の被害者!今度話を聞かせてよ。どうやってヴィランから耐えていたのか。……あぁ、でも拳暴の方がいいかな?彼は退治していたんだし。耐えているだけだった君よりは参考になりそうだ」
ブチ
切島達は上にいる男から何かがキレる音が聞こえた。
「切島ぁ……予定変更だぁ……!」
「ば、爆豪……?」
「仮面野郎の前に……こいつら全員殺そう……!!」
ゴォウ!とドス黒い気迫と殺気が爆豪から噴き出す。
それに切島達は慌てるが、もはや爆豪は止まりそうではなかった。
『さぁて!!7分が経過だ!現在のポイントを見てみようぜ!?』
プレゼントマイクの実況と共に、観客席にあるモニターに現在の順位が表示される。
『……あら!!?』
プレゼントマイク同様、それを見た観客席にはどよめきが走る。
1位:巻空チーム:10000270ポイント
2位:取陰チーム:1505ポイント
3位:物間チーム:1125ポイント
4位:鉄哲チーム:670ポイント
5位:心操チーム:505ポイント
6位:轟チーム:220ポイント
7位:峰田チーム:0ポイント
8位:緑谷チーム:0ポイント
9位:爆豪チーム:0ポイント
10位:葉隠チーム:0ポイント
11位:鱗チーム:0ポイント
『ちょっと待てコレ……!A組ほぼ全滅……ってか緑谷、あれ?』
緑谷達は困惑して、相手を見つめていた。
「……なんだ?……何が起こったんだ?皆は?」
「わ、わかんない。気づいたら……!ていうかデク君!?指が!?」
「私もです!」
「……俺もだ。緑谷、行けるか?」
「大丈夫……左手の指だけだから……」
緑谷達は気づいたらハチマキを取られていた。
今、向かい合っている……緑谷達のハチマキを首に下げているのは、普通科C組 心操だった。
心操は緑谷を見て、目を見開いている。
「……なんだよ、お前……!?なんで解けたんだ……!?」
「……っ」
緑谷は歯を食いしばって指の激痛に耐えながら、状況を整理する。
(一体何が起こったんだ?気づいたらハチマキが消えてた。恐らく彼の『個性』。でもなんだ?転移?嫌、それが出来るなら全チームからすでに奪っているはずだ。じゃあ何だ?僕達全員が奪われた記憶がない。覚えてるのは声を掛けられた所と……変な景色…知らない人達が頭に浮かんだこと)
緑谷は頭がぼんやりしたと思ったら、体が動かなくなった。それに混乱していたら、突如目の前に黒い人影が複数現れた。それを見た瞬間、頭がはっきりして指だけが動かすことが出来た。
他の部位は動かなかったので、緑谷は無我夢中で指だけ『個性』を発動する。それにより衝撃波が放たれて、指に激痛が走って体が動くようになり、常闇達もハッ!としたようにキョロキョロしていた。
「……常闇君」
「なんだ?」
「君の黒影って、君の中にいても記憶はある?」
「……そういうことか。黒影」
「ナンダヨ?」
緑谷の言葉に常闇は意図をすぐさま悟り、自身の『個性』に声を掛ける。
すると常闇の体から影が飛び出す。
「俺達がどうなったか分かるか?」
「ハァ?何言ッテンダヨ?オマエラガ自分デ渡シタンダロ?アイツニ頼マレテヨ」
「「え!?」」
黒影の言葉に緑谷達は目を見開く。
そんな記憶はないからだ。
しかし、それにより緑谷はある推測が思い浮かぶ。
「……操る『個性』」
「えぇ!?」
「多分……彼の言葉に答えると発動するんだ。……凄い『個性』だ。普通科にこんな人がいたなんて……!」
「くそ!もう一度……!」
「彼の声に応えちゃ駄目だ!常闇君!」
「おう!黒影!黙って奪え!」
「アイヨ!」
黒影が飛び出して、心操に迫る。
心操はそれを振り払うが、黒影の手が先頭の庄田と後ろにいた尾白に当たる。
すると2人は先ほどの常闇達同様、ハッ!として周囲をキョロキョロして足を止めてしまう。
それに心操は焦って声を荒らげる。
「何してんだ!?動けよ!」
「な、なんだこれ……!?」
「僕達は何を?」
「くそ!」
「今だ!黒影!」
「!?」
動きが乱れた隙をついて、黒影が心操のハチマキを奪い返した。
それと同時に心操達の騎馬が崩れる。
地面に落ちた心操は四つん這いで歯軋りをする。
「イタイ!アレ?僕は何を……?」
「……くそ。……恵まれた奴らが……!俺だって……ヒーローを目指しちゃいけないのかよ……!」
「君は……」
「黙れ!恵まれた『個性』を持っただけで、望んだ場所に行ける奴らが!!」
心操の叫びに緑谷達は何も言い返すことが出来なかった。
特に緑谷はその気持ちがよく分かった。少し前までは同じ側の人間だったから。
「……緑谷。今は……競技に集中すべきだ」
「……うん。……まだ、終わってない。諦めちゃ…駄目だ」
「っ!!……くそ……!!」
心操は顔を顰めて、四つん這いのまま動けなかった。
尾白や青山は困惑した顔のまま、心操を見下ろしている。
そこに庄田が片膝をついて、心操に声を掛ける。
「どうするんだい?本当にここでやめるか?それは僕達が困るのだが」
「……操られて組んだチームなのにか?」
「確かに不本意だが……それで諦めるのはもっと不本意だ。いつも望んだ相手と組めるわけではない。だから、まだ諦めたくはない」
「っ!」
「君の『個性』は把握した。それは間違いなく強い力だ。僕達がここから勝つには、君の力が必要だ。今度は……協力しよう」
庄田の言葉に心操は両手を握り締めて、立ち上がる。
庄田は尾白達に目を向けると、尾白達も頷いて騎馬を作る。
「さぁ、行こう!」
「……ああ」
「よくワカラないけど輝きたい☆」
「やるぞ!」
庄田達は再び走り出す。
心操は未だに複雑そうな表情をしていたが、それでもその瞳は力強く前を見つめていた。
『さぁ、残り5分だ!!ここからは更なる激闘!!期待しやがれマスメディア!』
ようやくB組全員の『個性』が分かったので、急いで編集。
恐らく今、原作で体育祭やったら、切奈と柳が大活躍な気がします。
組み合わせに関しては小森さんと黒色くんを不在にしてしまったので、少し無理矢理な感じですね(-_-;)
そして、心操君はユルシテクダサイ。どう考えても緑谷、轟、爆豪を戦慈達を戦わせるには心操君をここでリタイヤさせなければいけなかったのです(__)