『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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ポイント計算頑張ったんです(__)




拳の十二 騎馬戦・その2

 緑谷が心操からポイントを奪い返したのと、ほぼ同時刻。

 

 轟達は切奈達を追いかけていた。

 他にも障子や葉隠達も切奈達に迫っていた。

 

「残り6分弱……もう後は引かねぇ。一気に行くぞ」

「おうよ!」

「了解ですわ!」

「行くぞ!」

「飯田……飛ばせ」

「振り落とされるなよ!」

 

 ドン!と速度を上げて、飯田は切奈達に迫る。

 

「八百万!準備しろ!」

「はい!」

「上鳴!」

「わぁってんよ!しっかり防げよぉ!!」

 

 八百万は轟の声に頷いて、腕から棒を創造して、背中から大きなシートを創造する。

 その様子に切奈は嫌な予感を覚える。

 

「なんか仕掛けてくる気だよ!」

「どうする?」

「邪魔するしかないよね!ポニー!」

「了解デス!」

 

 切奈は両手を、ポニーは角を飛ばして轟を牽制する。

 しかし、その隙をついて障子の背中から蛙吹の舌が、そして耳郎のプラグが伸びてくる。

 

「ちぃ!」

 

 切奈は腕も複数に切り離して、対応する。しかし、蛙吹の舌の方が力強く、ポニーの角でなければ止められなかった。

 その結果、轟の妨害は間に合わず、反撃が始まってしまった。

 轟は八百万に作らせたシートを体に纏う。

 

「無差別放電!!130万Vォ!!」

 

 直後に上鳴が周囲に放電する。

 それに切奈達はもちろん障子達や耳郎達、鱗達、そして復活して走り出していた心操達も放電を浴びる。

 

『~~!!?』

 

 全員が声を出す余裕もなく痺れる。

 その隙に轟は棒を掴んで、地面に氷結を放つ。

 瞬く間に地面に氷結が走り、痺れていた騎馬達の脚が凍る。

 

「しまった!?」

「わりぃな」

「!?」

 

 轟は切奈に近づき、ハチマキを奪うと同時に切奈の上半身も凍りつける。

 

「悪いが我慢してくれ」

 

 そう声を掛けて、轟達は去っていく。

 ご丁寧に切奈達の周囲を氷の壁で囲んで。

 それを見た切奈は顔を引きつかせて、ため息を吐いて項垂れる。

 

「はぁ~……あれが同じ推薦入学ぅ?バケモンじゃん。……流石に取り戻すには時間が無さすぎるな~。ごめんな~、唯ぃ、レイ子ぉ、ポニー」

「んーん」

「あれは仕方ないよ」

「ナイスファイトでしぃた!」

 

 こうして切奈達は悔しがりながらも、どこかやり切った顔で笑い合うのだった。

 

 

 

 

 爆豪と物間の勝負も激しさを増していた。

 物間は、爆豪と切島の『個性』をコピーして抵抗する。

 

「くっそがぁ……!」

「中々だろ?僕の《コピー》も」

 

 物間は不敵に笑いながら、爆豪を見つめる。

 

「この程度で拳暴にケンカを売るなんてさ。3年は早そうだよね」

「リアルな数字だな」

「流石に僕は実力は認めてるよ?実力は、ね」

 

 それに爆豪は更に目を血走らせて、唸り始める。

 

「俺はぁ……1位になる……!完膚なきまでの1位になぁ!!」

 

 その時、

 

ゴオオォウ!!!

 

『!?』

 

 突如、巨大な竜巻がスタジアム内に出現する。

 

『な、なんだーー!?竜巻出現!!これは……巻空か!?』

『……残り時間は2分半ほど。守りに入ったな』

『これは流石に手を出せねぇ!!マジで卑怯だな!!』

 

 戦慈達は竜巻の中で踏ん張っていた。

 当然竜巻の中とて暴風に襲われている。

 

「だ、大丈夫なのか!?」

「問題ねぇよ」

「……がんば」

 

 戦慈は一佳の腕を掴んで、踏ん張っていた。

 里琴は一佳の手によって、戦慈の背中に押しつけられている。

 

 外では鉄哲達が顔を顰めていた。

 

「くっそぉ!!」

「流石に無理だ、鉄哲。地面を柔らかくしたところで、意味がねぇ」

「ツルを伸ばしても、ハチマキの場所が分からなければ……。力不足で申し訳ありません」

「いやいや、塩崎。これは無理だろ」

「鉄哲。時間がない。他の奴を狙おう!」

「っ!分かった!行くぞ!」

 

 鉄哲達は後ろを振り返って、物間達を見据える。

 それに物間達や爆豪達も気づき、三つ巴になる可能性に構える。

 

 鉄哲達は走り出し、物間に迫る。

 

「恨みっこ無しだよな!」

「そうだけどさ!」

「マジかよ!?」

 

 物間達は流石に顔を引きつかせる。

 それに切島が爆豪に声を掛ける。

 

「どうすんだよ!?」

「あぁ?……んなもん、決まってんだろうが……!」

 

 爆豪は目を見開いて物間や鉄哲を見据える。

 

「完膚なき1位だ!!あいつらのポイント全部奪って!!1000万に行く!!」

 

 その言葉に切島達も覚悟を決めて、笑みを浮かべる。

 そして切島達も走り出す。

 

「くそ!吹出!爆豪達だ!」

「任せて!ポヨンポヨン!!」

 

 吹出の口から『ポヨンポヨン』と柔らかい文字が出現し、爆豪達の前に出現する。

 

「邪魔だああ!!」

「ちょ!?爆豪!勝手すなあ!!」

 

 爆豪は1人飛び出して、文字に爆破を叩きつける。文字は消滅するが、同時に爆豪も大きくポヨ~ン!と跳ね返される。

 慌てて瀬呂がテープを伸ばして、爆豪を捕縛して騎馬に戻す。

 

「踏ん張れねぇ!!お前らも行くぞぉ!」

「勝手すぎんだろ!?」

「時間がねぇんだ!!醤油顔、テープ!黒目ぇ、前方に弱め溶解液!」

「瀬呂な!」

「あ・し・ど・み・な!」

 

 爆豪の怒号の指示に瀬呂と芦戸は呆れながらも行動に移す。

 物間の近くの地面にテープを伸ばして固定し、芦戸の溶解液が物間の途中の道に広がる。

 それに物間は訝しむが、鉄哲達に集中する。

 しかし、その直後、爆豪が両手で後ろに向かって爆破して、その推進力とテープの巻取りの力で一気に物間の横にまで移動する。

 

「な!?」

「死ねやあああ!!」

 

 物間は《硬化》をして、円場が爆豪の前に空気の壁を作る。

 しかし、爆豪は腕を振り抜いて爆破でその壁を砕き、物間の首に下げられていたハチマキを全て掴む。

 それを引っ張り、ハチマキを回収する。

 

「ぐぅ!?」

 

『爆豪!!!容赦なしー!!』

 

 物間は自分達のポイントのハチマキも首に下げていた。

 物間は爆豪の攻撃でバランスを崩して、騎馬から落ちそうになり、それを円場達がフォローしようとして、反撃に出れなかった。

 そこに鉄哲達が爆豪に迫る。

 

「お前にぃ!!勝ぁつ!!」

「なめんなぁ!!」

 

 切島達も迎え撃とうとするが、突如足元が沈み始める。

 

「な!?」

「沈んだ!?」

「ちぃ!っ!?」

 

 爆豪は顔を顰めて、鉄哲に空いた左手を伸ばそうとすると、爆豪の右手にツルが伸びて縛り、前方に引っ張る。

 もちろん茨である。

 

「申し訳ありませんが、勝たせて頂きます」

「おおおお!!」

 

 鉄哲は吠えながら爆豪に掴みかかり、左手でハチマキを数本掴む。

 爆豪は左手を鉄哲の顔に伸ばして掴み、爆破する。しかし、鉄哲は鉄化して耐えながら、右腕を振って爆豪の顔を殴る。

 

「づぅあ……!」

「ぐぅ……!こっの程度ぉ!!拳暴の攻撃に比べればああ!!」

 

 爆豪は仰け反り、鉄哲も一瞬仰け反るがすぐに体を起こす。

 鉄哲の左手には2本のハチマキが握られていた。

 しかし、

 

「て、鉄哲!ハチマキが!?」

「なぁ!?」

 

 鉄哲のハチマキがなくなっていた。

 すぐに爆豪に目を向けると、爆豪の左手にはハチマキが握られていた。

 

「っ!?あの状況で!?」

「ポイントは!?」

 

 鉄哲は目を見開いて驚くが、骨抜の声にハッ!として奪ったハチマキを確認する。

 そこには『270』と『235』と記されていた。

 

「駄目だ!俺達のより低い!」

「くそ!」

「またツルを伸ばします!!」

 

 再び茨がツルを伸ばす。

 しかし、そのツルに芦戸の溶解液がかけられて、ツルが溶ける。

 

「くっ!」

「奴らは動けねぇ!焦るな!」

 

 泡瀬が声を出して、落ち着かせる。

 爆豪達も気合を入れて、鉄哲達を睨みつける。

 

 

 

 鉄哲達が爆豪達とポイントを獲り合い始めた頃。

 

 戦慈達は竜巻を維持し続けている。

 

「そろそろ時間か?」

「……まだいける」

「外の状況が分からないからな」

 

 竜巻で視界は一切ない。

 その時、竜巻を突き破って、氷の波が押し寄せてきた。

 

「はあぁ!!」

 

 戦慈が腕を振るい、軽めに衝撃波を放って氷を砕く。

 その衝撃波で竜巻も吹き飛ばされる。

 氷結の先には轟達がいた。

 

「てめぇか」

「もらうぞ……拳暴」

「里琴」

「……ヤー」

 

 里琴が竜巻を轟に向かって放つ。

 轟は氷結を生み出して、相殺する。

 

「くっ……!」

「どうするんだ!?轟君!」

「……一気に行くしかねぇ……!」

「させねぇよ」

「「「「!?」」」」

「おおお!!つぁあ!!」

 

 戦慈が叫びながら右手を開いたままで力強く突き出す。 

 そこから衝撃波が広範囲で飛び出し、轟達に迫る。轟は氷の壁を作るが、それを吹き飛ばして轟達も後ろに押し飛ばす。

 手を開いて放ったのと氷の壁のおかげか、轟達は倒れることはなかった。

 

「くそ!」

「近づかせてもらえないなんて……!」

「流石にあの竜巻を走り抜けるのは無理だぞ!上鳴君もそろそろ限界だ!」

「う……うぇい……」

 

 轟達は戦慈と里琴の攻撃に二の足を踏む。

 

「これで牽制にはなったか?」

「……多分」

「けど、拳暴はもう無理だよな?」

「ああ、今ので出し切った」

 

 戦慈は今の衝撃波でパワーを出し切り、体が元に戻っている。

 そこにはまだ気づかれてはいないようなので、このまま里琴の竜巻で逃げ切る予定である。

 

「向こうもそろそろ限界か?」

「……金髪の奴はそう見えっけど、それ以外は分からねぇ」

「……牽制する」

 

 里琴は竜巻を3本ほど発生させて、轟達との間に障害物として維持する。

 それに轟達は顔を顰める。

 

 その時、

 

「っ!?後ろだ!里琴!」

「っ!拳藤!跳べ!里琴!」

「……てー」

 

 すぐさま一佳はジャンプする。それと同時に戦慈は振り返りながら、後ろに裏拳を振るって、攻撃しながら一佳と入れ替わる。

 弾かれたのは黒い影のようなものだった。

 弾いたと同時に里琴が周囲に竜巻を生み出して、再び壁にする。

 

「さっきのは飛んできたA組の奴か!」

「拳暴!挟まれてる!一度、上に!里琴!」

「……ヤー」

 

 緑谷達の攻撃であると気づいて、一佳はすかさず指示を出す。

 里琴と戦慈もそれに逆らわずに、最初同様に竜巻を踏んで高く飛び上がる。

 

「里琴!真横に出せ!」

「……てー」

 

 戦慈の指示にすぐさま里琴は戦慈の右真横に竜巻を生み出す。

 直後に戦慈は右腕を振り、竜巻に弾かれる形で真横に移動する。

 囲んでいた竜巻が解除されると、緑谷達が飛び上がって待ち構えていた。

 

「読まれた!?」

「上!?」

 

 緑谷は読まれたことを、轟は戦慈達が上空にいることに目を見開く。

 

 下に降りようとする戦慈を見て、緑谷は黒影を、轟は待ち構えるために移動を開始する。

 それを里琴が竜巻で牽制し、かいくぐってきた黒影を一佳が巨大な片手で弾く。

 地面に降り立った戦慈のすぐ目の前に、轟達がいた。

 

「拳藤!そのまま足を乗せてろ!」

「え!?」

「はあああ!!」

「な!?」

 

 戦慈は何と轟に猛スピードで飛び掛かった。

 轟達は目を見開いて、構える。

 

(っ!?左側から!)

 

 戦慈は轟の左側に寄って迫る。

 それにより轟は地面に氷結を放つことが出来なかった。更に八百万の創造でも自分が邪魔で盾が生み出せなかった。

 上鳴はもう限界。

 

「おおおお!!」

「っ!!」

 

 戦慈の気迫に、轟は一瞬気圧されて左手から炎を生み出す。

 それに戦慈は目を見開いて腕を止める。

 その瞬間、

 

「トルク・オーバー!レシプロ・バースト!」

『!?』

 

 飯田のふくらはぎから煙が噴き出した思った直後に、一気に加速をして前に飛び出して緑谷達の真横も走り抜ける。

 それに轟達はもちろん、戦慈達や緑谷達も反応できず、見送るしか出来なかった。

 

「飯田……!?」

「すまない……!勝手に危険と判断した!さらに申し訳ないが……俺はもう使い物にならん……!」

 

 飯田は悔し気に顔を顰めて、轟に謝罪する。

 しかし、轟は左手を見て、首を横に振る。

 

「いや、助かった」

 

『この終了目前で1位を狙って激しいバトルー!けど、流石の1位!そう簡単には奪えねー!そして、飯田速っ!?』

 

「何……!?今のは……!」

「トルクと回転数を無理矢理上げて、爆発的な加速を生む裏技さ。反動でしばらくエンストするがね。切り札に取っておこうと思ったんだが……」

 

 緑谷の呟きに、飯田が苦笑しながら説明する。

 その説明と速度に戦慈も流石に肝を冷やした。

 

「降りた時に使われてたら、獲られてたな……」

「……脅威」

「流石だな」

「全くだぜ」

 

 そして仕切り直しと互いに構える。

 

『タイムアーーップ!!!わりぃ!!凄すぎてカウントダウン忘れてた!!』

『おい』

 

 プレゼントマイクが競技終了と軽い謝罪をする。それに相澤がツッコむが、無視される。

 戦慈達は里琴を下ろして、ゆっくりと息を吐く。

 

「はぁ~、守り切ったな。お疲れ!」

「おう」

「……おつ」

 

『それじゃ!上位4チーム見てみよか!』

 

 プレゼントマイクの言葉に再びスクリーンが展開される。

 

 

1位:巻空チーム:10000270ポイント

 

「……ブイ」

「ふぅ」

「なんか私は申し訳ないな」

 

2位:轟チーム:1725ポイント

 

「……くそ」

「うぇい!!」

「乗り切ったか」

「……少し不甲斐ないですわね」

 

3位:爆豪チーム:1290ポイント

 

「くそがぁ!!」

「よく勝てたぜ……」

「何回、手を踏み抜かれたんだ?」

「手、イッタ~イ」

 

4位:緑谷チーム:505ポイント

4位:鉄哲チーム:505ポイント

 

『あれま!?4位が2チームいるじゃねぇか!!』

 

 結果とプレゼントマイクの言葉にざわつく観客席と選手達。

 それにミッドナイトも腕を組んで、顔を顰める。

 

「困ったわね。決勝は16名を選出する予定だったのだけど……。それにどっちのチームを選んでも結局1人足りないのよね」

 

 ミッドナイトは顎に指を当てて、考え込む。

 そして出した答えが、

 

「ジャンケンして?」

「「「「ジャンケーーン!?」」」」

 

 まさかのジャンケンだった。

 

「その2組だけで騎馬戦したって、1人余るのよ。だったら、もう運に任せましょ。それも大事よ」

「マジでか」

「更にスリルを追い求めるわ!まずはチーム内でジャンケンして、2人ずつ決めなさい!!」

「「「まさかの仲間内!?」」」

 

 鬼畜の所業に目を見開く選手や観客達。

 その内容に鉄哲や緑谷達は顔を見合わせる。

 すると泡瀬が鉄哲の肩に手を置いて、ニカ!と笑みを浮かべる。

 

「だったら俺は鉄哲に譲るわ!お前のおかげでここまで来たし、俺はあまり活躍できなかったしな」

「泡瀬ぇ……!」

「だったら俺も塩崎に譲るか。あの時、塩崎が爆豪の腕を縛らなかったら、駄目だったろうしな」

「骨抜さん……!」

「ミッドナイト。俺達は鉄哲と塩崎を選出します」

 

 泡瀬と骨抜の言葉に鉄哲は感動して涙を流し、茨は直角に頭を下げる。

 ちなみに観客席では、

 

「うおおお~!!泡瀬ぇ!!骨抜ぃ!!」

 

 と、ブラドも感動して涙を流していた。

 

 それにミッドナイトは少し考えて、

 

「そういう青臭い話はさぁ……好み!!」

 

 ピシャン!と鞭を鳴らして、ミッドナイトが声を上げる。

 

「泡瀬、骨抜の辞退を認めます!!」

(((((好みで決めた……!?))))

 

 その言葉に緑谷達も顔を見合わせる。

 

「僕も辞退するよ。ここは常闇君に譲るべきだと思う」

「緑谷……!」

「駄目だよ!デク君も行くべきだよ!そんな指になってまで頑張ったのに!!」

「私は行きたいです!」

「発目さん空気読も!?」

 

 緑谷の言葉に常闇が目を見開くと、麗日が叫ぶ。

 発目は空気を読まずに発言して、麗日にツッコまれる。

 そこにミッドナイトが鞭を振る。

 

「早く決めなさい!」

 

 その言葉に常闇が腕を組んで、緑谷を見る。

 

「麗日の言うとおりだ。この勝利はお前が俺を選び、お前が指を犠牲にして勝ち取ったものだ」

「でも……」

「正直なところ、このチームは全員が等しく活躍したと俺は思う。故に……ここでジャンケンで負けても、勝った者に気持ちよく託せるだろう」

「常闇君……!」

「故に俺達は正々堂々ジャンケンで決めるべきだと進言する」

 

 常闇の言葉に緑谷は麗日と発目を見る。

 麗日は笑顔で力強く頷く。発目を先ほどの発言がなかったかのように頷く。

 それを見て、緑谷も頷く。

 

「分かった……!じゃあ、ジャンケンで!」

 

 そしてジャンケンの結果、選ばれたのは緑谷と常闇だった。

 

「じゃあ、残った4人で最後の1人を決めるわよ!これも恨みっこ無しのジャンケン!!」

 

 これには骨抜と泡瀬も気合を入れて臨む。

 そして数回のあいこの末に決まったのは、

 

「麗日お茶子さん!!」

「……ごめんね」

「悔しいです!けど、ベイビーの改良点も見つかったので、我慢します!」

「ま、仕方ないよな」

「そういうことだな」

 

 麗日が勝ち残り、こうして16名が決定した。

 

『よっしゃー!!これで午前の部が終了!1時間ほど休憩をはさんで、午後の部だぜ!じゃあな!イレイザー、飯行こうぜ』

『寝る』

『ヒュー!!』

 

 プレゼントマイクの言葉に移動を開始する鉄哲達。

 

「骨抜!泡瀬!お前達の気持ち!ぜってぇ無駄にしねぇ!!」

「その思い、必ずや」

「頼むな」

「気張りすぎんなよ」

「一佳~。おめでと~」

「おめ」

「……私は拳暴達に引っ付いてただけだからなぁ。骨抜達の方が……」

「……一佳も頑張った」

「ん」

 

 食堂に向かいながら、鉄哲と茨は泡瀬と骨抜に改めて礼を言い、切奈達は一佳に声を掛ける。一佳は少し困ったような表情を浮かべるが、里琴と唯が十分頑張ったと労う。

 その後ろでは物間が少しだけ肩を落として歩いており、それを回原達が慰める。

 

「そう気を落とすなよ。やれるだけはやったんだぜ?」

「そうだよ!バックバクだったよ!」

「……そうだね。あの執念は少し予想外だった」

 

 ため息を吐きながら、物間はいつも通りの雰囲気に戻る。

 

「こうなったら拳暴にボコボコにしてもらうしかないね!!」

「切り替え早ぇし、人頼みかよ」

「まぁ、物間だしな」

 

 高笑いしながら、他人頼みを堂々と語る物間に苦笑しながらも少し安心する円場達。

 今回で物間が何だかんだでB組を大事にしていると思っていることが分かったからだ。

 半分以上は負けてしまったが、間違いなくA組や周囲にはB組の力を示すことは出来ただろう。

 後はまだ試合が残っている者達に頑張ってもらうだけだ。

 

 庄田は最後尾で歩いていると、そこに近づいてくる者がいた。

 

「……おい」

「君は……」

 

 声を掛けてきたのは心操だった。

 心操は少し居心地悪そうにしながらも、しっかりと庄田と目を合わせる。

 

「俺は……こんな『個性』だ。お前達みたいには輝けない」

「……」

「けど、憧れちまったんだ。仕方ないだろ?」

「そうだね」

「だから、諦めねぇ」

「!」

「今回は駄目だったとしても……俺は絶対にヒーロー科に入って、資格取って、お前らより立派なヒーローになってやる……!」

 

 心操は力強い目で庄田に宣言する。

 その力強い視線を庄田も正面から受け止めて、頷く。

 

「僕も負けない。君だけじゃない。他の者にだって負けない」

「……」

「けど、もし同じヒーローになれたら……君とは肩を並べて戦いたい。君のその『個性』は、僕達にだって負けない輝きがある。君の力は、誰にも血を流させないことが出来るのだから。それは僕には無い力だ。僕も、君のその力が羨ましいと思っている」

「っ……!!」

 

 心操は庄田の言葉に目を見開いて、涙が出そうになった。

 羨ましいとは何度も言われたことがある。しかし、それはいつも悪用出来るからだ。ヴィランのようだといつも間接的に言われていた。

 だが、今の言葉に込められた思いは違う。真逆だ。

 誰も血を流させない。ヒーローとして、これほど素晴らしい力はない。初めて言われた言葉だった。

 

「だから、待っているよ。君がヒーロー科に来るのを」

「……ああ、待ってろよ。すぐにそこまで追いついてやる……!」

 

 心操は背を向けて去って行った。

 庄田はそれを見送って、クラスメイト達の後を追う。

 

(ヒーロー科でない者が、あそこまでヒーローを目指して走り続けている。僕はそれを甘く見ていた。このままでは本当に追いつかれるだろう。僕ももっと精進しなければ!)

 

 庄田は自分が今いる場所の重さを改めて実感する。

 追われていることを自覚して、これからを臨まなければならない。

 そう心に決めながら、庄田は仲間と合流するのだった。

 

 

 

 昼休憩終了後。

 

 スタジアムに戻った戦慈達は、ある者達を呆れた目で眺めていた。

 

『どーしたA組女子!?』

 

 A組女子陣が何故かチア服を着て、並んでいた。

 

「何してるんだ?」

「俺が知るかよ」

「……応援?」

「でも、あいつらだって決勝出るでしょ?」

「謎」

「ん」

「けどキュートデス!」

「誰かを応援する。素晴らしい気持ちの表れですね」

 

 その後、八百万が峰田に叫び、肩を落とす姿が見られたが、誰もそれ以上ツッコむことはしなかった。

 

『最終種目発表の前に予選落ちした皆へ朗報だ!!これはあくまで体育祭!!ちゃんとレクリエーションも用意してるんだぜ!!』

 

「まぁ、そうでもなかったら暇でしかないよな」

「何やんだ?」

「流石に『個性』はもうナシだよな~」

 

 プレゼントマイクの言葉に鱗、円場、泡瀬が首を傾げる。

 

『けど、まずはその前に最終種目の発表だ!その後はレクリエーションを挟んで、お楽しみの最終種目だぜ!』

 

『今回は……16名からなるトーナメント形式!!1対1のガチンコバトルだ!!』 

 

 プレゼントマイクの発表に観客達が歓声を上げて盛り上がる。

 ちなみに昨年はスポーツチャンバラだった。

 

「それじゃあ、組み合わせを決めるくじを引いてもらうわ。レクに関しては進出16名は参加するもしないも、個別の判断に任せるわ。それじゃあ、1位だったチームから引いてちょうだい」

 

 ミッドナイトが箱を持って、説明する。

 その後、里琴から順番に引いて行き、全員が引き終える。

 

「それじゃあ!!まずは一回戦の発表よ!!」

 

 その言葉と同時に音楽が鳴り、スクリーンに火花のような映像が流れる。

 

 

『雄!英!体育祭!決勝トーナメント!!一・回・戦!!!』

 

 

 プレゼントマイクのナレーションが入ると観客や生徒達も盛り上がり始める。

 

 

 

『第一試合!!A組 緑谷出久 VS B組 拳暴戦慈!!!』

 

「あいつか……」

「拳暴君……!」

 

『第二試合!!A組 轟焦凍 VS A組 瀬呂範太!!!』

 

「……どっちかと…か」

「マジかよ~」

 

『第三試合!!B組 塩崎茨 VS A組 上鳴電気!!!』

 

「勝利を目指して……」

「ひゅう♪かわい子ちゃんとか!」

 

『第四試合!!A組 飯田天哉 VS B組 拳藤一佳!!!』

 

「見ててくれ、兄さん……!」

「よし!」

 

『第五試合!!A組 芦戸三奈 VS B組 巻空里琴!!!』

 

「いきなり1位となの!?」

「……ブイ」

 

『第六試合!!A組 八百万百 VS A組 常闇踏陰!!!』

 

「……勝たせて貰いますわ」

「盛者必衰の理……」

 

『第七試合!!B組 鉄哲徹鐵 VS A組 切島鋭児郎!!!』

 

「敗けねぇ!」

「敗けねぇ!」

 

『第八試合!!A組 麗日お茶子 VS A組 爆豪勝己!!!』

 

「ひぃいい!?」

「麗日?」

 

 

 発表された内容に周囲も盛り上がり、予想を立てるなど始める。

 

 その後、レクリエーションとなり、戦慈、里琴、一佳は参加せずに体を休めることにする。

 

「あの速い奴か。……あれは反動あるとか言ってたしな。普通であいつを捕まえられるかだな」

「手をいつデカくするかだろうな。後はあいつが直線的な動きしか出来ないのか」

「……闘牛士になれ」

「まぁ、気持ちはそうだよな」

 

 3人はのんびりジュースを飲みながら、それぞれの相手について話す。

 

「拳暴の相手の緑谷って、『個性』分からないんだよな?」

「まぁな。けど、他の連中を見てると、あいつが入試でロボット殴り飛ばした奴だろ。だったら、俺と同じタイプだな」

「……あいつが……。そうは見えなかったけどなぁ」

「そうだな。まぁ、俺は殴り飛ばすだけだ」

「里琴の相手は……酸を出す奴だっけか」

「……ん」

「里琴は問題ねぇだろ」

 

 ちなみに鉄哲はほうれん草を食べまくって鉄分補充中。

 茨は水を飲んで、日光浴をしながら腕を組んで跪いて、何かに祈りを捧げている。

 

「私は勝ち進んだら、茨や拳暴とか……」

「里琴とは決勝戦だな」

「……ん」

「難敵ばっかりだな」

「関係ねぇよ。俺とお前はぶん殴らなきゃ勝てねぇんだ。相手が誰だろうと、考えるのはどう殴り飛ばすかだろが」

「……うん。そうだな!!」

 

 不安そうにつぶやく一佳に、戦慈が呆れた様子で声を掛ける。

 それに一佳は一瞬ポカンとして、励ましてくれていると理解して、吹っ切れたように笑みを浮かべて頷く。

 戦慈は肩を竦め、里琴は無表情でジュースを飲む。

 

 

 こうして選手達は思い思いに時を過ごし、いよいよ決勝トーナメントが始まる時間となった。

 

 

 




最後のジャンケンは微妙だと自分も思っています。
しかし、鉄哲と茨をトーナメントに出させるには、こうするしか思い浮かばなかったのです(-_-;)力不足申し訳ありません(__)

そして、まさかの心操と庄田。でも、なんかこういう会話になりそうだなって思ってしまいました。
発目さんファンの方はゴメンナサイ。
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