『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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メリークリスマス

先ほどブロリーを見てきました!クリスマスイブにw

見た感想。
凄すぎて、あの凄さを私は表現できない!
BGMといい、戦闘シーンといい、凄いですね!
見終わったときに「また見たい」と思いました。多分、行くと思いますw


拳の十七 地の決戦・空の決戦

 

『いよいよ準決勝!!早速行くぜぃ!!』

 

 リングに戦慈と飯田が入場する。

 

『怒涛なんて言葉すら砕くパワー!!拳暴戦慈! バーサス 速攻なんて言葉も置いて行くスピード!!飯田天哉!』

 

 飯田は戦慈を目の前にして、改めてその圧を感じる。

 

(緑谷君の超パワーに匹敵し、轟君の氷結にも耐えられる強靭さ。そして、そこから生み出されるスピード。特に彼の場合は時間が経てば経つほど、その全てが上がる……!つまり僕の選択は……!)

 

 飯田は覚悟を決めてクラウチングスタートの姿勢を取る。

 それを見た戦慈は左脚を後ろに引いて半身になり、腰を据えて構える。

 

 戦慈の構えを見た観客達は僅かに騒めく。

 A組の観客席でも、

 

「あの拳暴が開始前から構えた……!?」

「それに飯田も大胆な構えだな」

「あれじゃあ速攻仕掛けるって宣言してるようなもんだぜ」

「……デク君はどう思う?」

 

 瀬呂が目を見開いて驚き、切島が顔を顰めながら飯田について話し、それに上鳴が同意する。

 麗日は緑谷に2人の構えの意図を尋ねる。

 

「……拳暴君はパワーはもちろんスピードもある。特に動けば動くほど、それは桁違いに上がる。だから飯田君は速攻を仕掛けるしかないんだ。拳暴君の体が大きくなればなるほど、飯田君のレシプロが効かなくなる」

「それに加えて、パワーが上がれば衝撃波の嵐だ。近づくどころじゃなくなっちまう」

「それを拳暴君が気づいてないわけはない。だから、あの構えなんだ。あれで塩崎さんに使った背後からの押し出しは出来なくなった」

 

 緑谷とまさかの轟の解説に、麗日達は飯田の分の悪さに気づく。

 緑谷は飯田を見つめて、心の中で応援する。

 

「飯田君……頑張れ……!!」

 

『START!!』

 

 開始と同時に飯田が駆け出す。

 戦慈は構えたまま、飯田から目を離さない。

 飯田は戦慈の背中側に回ろうとするが、戦慈はすぐさま右脚を軸に回転して飯田に背中を見せない。

 

「くっ!」

 

『拳暴、今までとは真逆で全く動かねぇ!!』

『飯田の加速は脅威的だ。下手な飛び出しは隙しか作らないと分かってやがるな』

『それは飯田も同様だな。拳暴のパワーは脅威だ。下手に近づけば捕まると分かっている』

『ってことは?』

『『痺れを切らした方が捕まる』』

 

 相澤とブラドの意見が一致する。

 その解説に観客達もどう動くのか固唾を呑んで、リングを見つめる。

 

「里琴。どう動くと思う?」

「……そろそろ動く」

「どうやって?」

「……飯田の移動先」

「移動先?」

「……角が狙い目」

 

 一佳は里琴の言葉に首を傾げながら、リングに目を向ける。

 

 そして飯田が戦慈と場外ラインの角の直線上に差し掛かろうとした時、戦慈が両腕を広げて体を屈めた状態で走り出す。

 飯田はスピードを上げようと考えたが、

 

「っ!?(駄目だ!曲がった先で捕まる!?)」

 

 角に近いところなのでカーブするように移動しなければいけない。つまり、それは戦慈に近づくように移動しなければいけないということだ。

 飯田は足を止める。

 しかし、すぐに失策であると気づく。

 

「っ!しまった!?」

 

 戻ろうとしても結局カーブしなければいけないので、進むのと変わらないことに気づく。

 下がろうにも後ろはすぐに場外である。しかし、このまま止まっていては尚更逃げ道が消えていく。

 

「おおお!!」

 

 飯田は叫びながら戦慈に向かって走り出すかと思いきや、力強く踏み込んで飛び上がった。

 それと同時に左脚のエンジンを強制的に回して加速し、強烈な左蹴りを放つ。

 飯田の左脚が戦慈の顔に猛スピードで迫る。

 

 戦慈は右脚を大きく踏み出して、左膝を曲げてながら上半身を起こして、更に後ろに仰け反る。

 飯田の脚は戦慈の顔真上スレスレを通り過ぎる。

 

『イナバウアー!?』

 

 戦慈は右拳を握り締めて、体を起こしながら腰を強く捻り、飯田に殴りかかろうとする。

 飯田は右脚のエンジンも回して加速して、拳を躱す。

 

 戦慈は拳を振った勢いで振り向いて、すぐさま飯田に追い迫る。

 飯田は着地と同時に振り返りながら飛び上がり、右脚を振り上げて戦慈に迫る。

 

「おおお!!」

「はああ!!」

 

 戦慈は右腕を振り、飯田の脚に拳を叩きつける。

 2人は互いに弾かれて、後ろに下がる。

 直後、戦慈の体が一回り大きくなる。

 

 飯田がすぐさま横に走り出し、戦慈もそれを追う様に走り出す。

 踏み込んだ瞬間に足から小さな衝撃波を出して、スピードを上げる。

 

(残り3秒もない!!ここで決めなければ!!)

 

 飯田は戦慈に体を向け、全力で走り迫る。

 戦慈も右腕を振り被って、拳を握り締める。

 

「おおお!!レシプロ・エクステンドォ!!」

 

 叫びながら左脚を大きく踏み出して、体全体で捻り、全力で右脚を振り抜く。

 

(っ!?間に合わねぇ!!)

 

 戦慈は飯田の蹴りの速さに目を見開いて、左腕を掲げる。

 直後、飯田の蹴りが左腕に叩き込まれ、戦慈は体が押し飛ばされそうになる。

 

「っ! オラアアア!!」

 

バアァン!!

 

 戦慈は右腕に溜めていた力を左腕に流して、叫びながら衝撃波を放って左腕を振り払う。

 飯田は後ろに右脚を振り飛ばされ、後ろに下がるが左脚で何とか踏ん張って倒れないように耐える。

 戦慈も体が戻り、1歩下がる。

 

「ぬうううう!!」

「ちぃ!」

 

『飯田のスピードをパワーで打ち消したぁ!!けど、飯田も押してるぜええ!!』

『……いや』

『へ?』

 

 飯田の両足の排気筒からバフン!と煙が噴き出す。

 

「っ……!エンスト……!」

 

 苦々しく両足を見下ろす飯田。

 そこに戦慈が走り迫ってきた。戦慈は両手で正面から飯田の肩を掴んで、全力で押し走る。

 

「くっ!!」

「わりぃが、終わりだあああ!!」

 

 飯田は両足で踏ん張るが、やはり素の力では戦慈には敵わない。

 それでも諦めずに戦慈の腕を掴んで振り払おうとするが、その瞬間、戦慈の体が膨れ上がる。

 

「っ!?」

「オラアアア!!」

 

 さらに戦慈の力が強まり、遂に飯田の体が持ち上げられる。

 そして、そのまま場外へと押し飛ばした。

 

「飯田君 場外!!拳暴君 決勝戦進出!!」

 

『飯田、健闘も拳暴のパワーには届かなかったぁ!!そして拳暴は決勝戦進出!!巻空の宣誓通りになるのかぁ!?』

 

 飯田は無念そうに空を見上げる。 

 

「くっ……!兄さん……!」

 

 その様子を緑谷達は心配そうに見つめていた。

 

「飯田君……」

「くぅ~!ちょっと惜しかった~」

「やっぱ身体能力ハンパねぇな……」

「それに衝撃波を使うタイミングの判断も的確ですわね」

「あの飯田の蹴りに完璧に反応してたね」

 

 麗日が両手を上下に振りながら悔しがり、瀬呂が戦慈の動きに慄き、八百万が戦慈の判断力に唸り、耳郎も頷く。

 

 その隣では鉄哲達が盛り上がっていた。

 

「よっしゃあああ!!拳暴おおお!!」

「流石だよなー」

「あんな躱し方出来ねぇよ」

「斬り殺せば終わんだろぉ」

「別の意味で終わりますぞ」

「あははは!!ざまぁないね!A組ぃ!」

「うるさい」

「かふ!?」

 

 鉄哲が叫び、骨抜が頷き、円場が呆れる。後ろで鎌切が不穏な言葉を呟き、宍田がツッコむ。

 物間がA組の席に向かって高笑いを始めたが、一佳に手刀を叩き込まれて沈められる。

 

 その時、里琴が観客席から飛び出し、下がろうとしていた戦慈の隣に降り立つ。

 

「……おつ」

「おう」

「……追いかける」

「好きにしな」

 

 里琴は戦慈の脚をポンポンと軽く叩いて、戦慈は肩を竦めて通路へと去っていく。

 里琴は戦慈の背中を見送って、リングに体を向ける。

 

 

 

 飯田はA組の観客席に戻る。

 

「飯田君」

「緑谷君。すまない。負けてしまった」

「ううん!謝ることじゃないよ!飯田君が全力で戦ってたのは見てたから!」

『うんうん』

 

 緑谷は慌てて首を横に振り、飯田の奮闘を称える。

 それに他の者達も頷く。

 飯田が椅子に座ろうとすると、

 

ブブブブブ!

ガクガクガク!

 

 突如飯田が震え始める。

 

『うわああ!?なんだ!?』

「デンワダ」

『電話か……』

 

 緑谷達はもちろん轟も目を見開いており、飯田の言葉にホッとする。

 飯田は通路へと戻り、電話に行く。

 緑谷達はそれを見送る。

 

「ふぅ。びっくりした……」

「次はバクゴーだな」

「相手は1位の巻空か」

「ケロ。激しい戦いになりそうね」

「互いに空中戦が出来るもんな」

 

 次の試合について考える緑谷達。

 

「竜巻を突破できれば、かっちゃんに勝ち目はあると思うけど……」

「騎馬戦の竜巻を考えると厳しいだろうな」

 

 緑谷の懸念を轟が口にする。それに緑谷も頷く。

 

 里琴の竜巻は轟の氷同様、自由自在の域に達している。

 爆豪は両手からの放出であるのと、長距離放出は容量限界レベルなので余り使えない。

 つまり、どうにかして竜巻を突破しなければいけない。しかし、騎馬戦での大規模での竜巻を出現させられると厳しいどころではないと推測する。

 

「常闇君との試合を見る限り、そう簡単に限界容量は来ない。どうするんだろう?」

 

 すると、飯田が駆け足で戻ってくる。

 その様子に首を傾げる緑谷達。

 飯田は顔が強張っており、明らかに動揺していた。

 麗日が声を掛ける。

 

「飯田君。どうしたの?」

「……すまないが、早退することになった」

「え?」

「……兄が……ヴィランにやられた」

『!?』

「インゲニウムが……!?」

 

 飯田の言葉に全員が目を見開く。

 飯田の兄はプロヒーロー『インゲニウム』。東京に事務所を構える人気ヒーローである。飯田は兄を志して雄英に入学したのだ。

 その兄がヴィランに倒された。

 飯田の思いや目標を知っている緑谷は慌てて、飯田に声を掛ける。

 

「僕達は大丈夫だから……!早くインゲニウムの所に……!」

 

 その言葉に頷く麗日達。

 飯田はそれに頷いて、軽く頭を下げて、走り去って行った。

 

「あのインゲニウムが負けたなんて……」

「大丈夫かな?」

「うん。だといいけど……」

 

 飯田やインゲニウムも気になるが、次の試合も始まろうとしていた。

 

『次行くぜぇい!!これも注目の試合だな!!荒れ狂う男 爆豪!! バーサス 静かに舞う女 巻空!!』

 

 リングには里琴を睨みつける爆豪と無表情で立っている里琴の姿があった。

 

「ようやくだ。……ぶっ殺す!」

「……」

 

 極端な様子の2人に一佳達は不安の表情を浮かべる。 

 

「やっぱ爆豪荒れてんなぁ」

「無理するなよ。里琴」

「ん」

「そういえば拳暴は?」

「これが終われば決勝なんだ。控室にいるんじゃねぇか?」

 

 切奈が呆れながら爆豪を見て、一佳が祈るように呟いて、唯も頷く。

 鱗は戦慈の姿を探して、骨抜が答える。

 一佳も戦慈が来ないかと通路に顔を出す。

 すると、観客席に通じる入り口の所に戦慈が腕を組んで立っていた。

 一佳は席から立ち上がって、戦慈の横に立つ。

 

「どう思う?」

「あん?……まぁ、油断は出来ねぇわな。爆豪は何だかんだで相手をよく見てやがるし、頭も回る。下手な大技は首を絞めるだろうよ」

「騎馬戦の竜巻は使えない?」

「あれは期待出来ねぇ。騎馬戦のあれは里琴の最大規模だ。あれよりデカいのにすると、竜巻をコントロール出来なくなる」

「そうなのか……!?」

 

 戦慈の言葉に目を見開く一佳。

 

「ただ飛ばすだけなら、問題ねぇけどな。リングであの規模を飛ばすと、里琴自身も竜巻に飲み込まれちまう。だから使いどころは難しいだろうな。このスタジアムでの戦闘だと竜巻を消すことも考えねぇといけねぇからな。コントロールが出来なくなるようなのは出せねぇだろうな」

 

 竜巻を飛ばしたままだと観客に影響が出る。

 なので基本的に放った竜巻は消すことも考慮に入れなければならない。

 

 里琴の意外な制限に唖然としながら、一佳はリングに目を向ける。

 その直後、

 

『START!!』

 

 開始の合図が鳴らされる。

 

 里琴が上空に飛び上がると、同時に爆豪も爆破を下に放って飛び上がる。

 そして左右交互に爆破して、ジグザグに移動しながら里琴に迫る。

 里琴は両腕を振り、爆豪を挟み込むように竜巻を縦に飛ばす。

 

「ちぃ!」

 

 爆豪は再び両手で爆破して、真上に飛び上がる。

 里琴は逆に足裏の竜巻を解除して、リングに降りていく。

 

「……ひゅー」

 

 右腕を振り上げて竜巻を放ち、爆豪に襲い掛かる。

 

「くっそがぁ!」

 

 爆豪は真上に爆破を放ち、急制動で降下して竜巻を躱す。

 しかし、真下にもう1本竜巻が待ち受けていた。

 

「うっぜぇんだよぉ!!」

 

 竜巻に向けて強めの爆破を放ち、竜巻を崩す。

 その瞬間、爆豪の左横から里琴が飛び迫ってきた。

 

「!? づあああ!!」

「……とう」

 

 爆豪は反射的に左腕を振り、手を叩きつけようとする。

 その直前で里琴は真下に竜巻を放って軌道変更し、爆豪の真上に移動して頭が真下に向く。

 里琴が移動した直後、爆豪の左手から爆破が起こる。

 

「っ!?」

 

 里琴は爆豪の真上で前転して、両足を揃えて踏みつけるように爆豪に叩きつける。それと同時に竜巻を放つ。

 爆豪は右腕で足を防ぐが、竜巻には抵抗できずに地面に背中から叩きつけられる。

 

「がっ!!」

「……そいやー」

 

 里琴は両足を畳んだ姿勢で真下に急降下し、爆豪に迫る。

 爆豪は歯を食いしばって左に爆破を放ち、滑るように横に移動する。直後、里琴は両足から竜巻を放ち、脚を伸ばす。地面に竜巻が叩きつけられたことで、里琴の体は空中に押しとどめられる。竜巻を解除して、ストンと着地する里琴。

 

『巻空の凄まじい攻撃ぃ!!爆豪が防戦イッポー!!』

 

 爆豪は飛び起きて、すぐさま後ろに爆破を放って、一気に里琴に飛び掛かる。

 里琴は右腕を振ろうとすると、爆豪は右手を前に向けて爆破を放ち、急ブレーキをかける。それと同時に里琴は竜巻を放つが、爆破で相殺される。

 爆豪はすぐさま左手で真後ろに、右手を斜め後ろに向けて爆破を放ち、里琴の左横に急速で移動する。

 

ボボボボボボオォン!!

 

 左手で小さな爆破を連続で起こしながら左腕を振り、里琴に叩きつけるように最後に強めの爆破を放つ。

 それを里琴は一瞬だけ足裏に強力な竜巻を放って前に飛び、背中から竜巻を放って爆豪の爆破を霧散させながら加速する。

 しかし衝撃までは防げず、前に姿勢を崩し、前転して起き上がりながら振り返る。

 

「こんの……!(竜巻の強弱が正確で速ぇ。それにこいつ……身のこなしも思ったより出来やがる!)」

 

『爆豪の反撃も僅かに届かねぇ!!マジで強ぇな!?』

『……互いに判断が早い。単純に『個性』の差が出てるな』

『そうだな』

 

 再び睨み合う2人。と言っても里琴は相変わらず無表情だが。

 それが余裕そうに見えて、爆豪は少し苛立つ。

 

「くっそ……!」

「……スパイラル・ツイスター」

「!?」

 

 里琴は両腕を振り、2本の細い竜巻を横向きに放つ。

 2本の竜巻はぶつかり合った瞬間、螺旋を描いて重なり加速する。

 爆豪は目を見開いて、横に飛ぶ。螺旋の竜巻は爆豪の脇腹を掠めて横切り、スタジアムの壁に突き刺さる。そしてギャリリリリリ!と削るような音を立てて、壁を抉って消える。

 爆豪は掠ったことで、後ろに引っ張られて体勢を崩して後ろに倒れていくが、真下に爆破を放って上に飛び、体勢を立て直す。 

 そこに里琴が竜巻を放って追撃するが、爆豪は再び爆破で移動して躱す。

 

『壁が抉れたぁ!?おっそろしい技だなオイ!!』

 

「爆豪が攻め切れねぇ……!?」

「しかも今の技……やっぱ入試1位は伊達じゃないな」

 

 切島と障子が里琴の実力に慄く。

 

「やっぱり『個性』の使いどころが凄く上手い……!」

「ああ」

 

 緑谷も顔を顰めながら呻くと、それに轟も頷く。

 

 爆豪は両手の状態を確かめながら、里琴を睨みつける。

 

(何であのデケェ竜巻は使わねぇ……?使えねぇのか?コントロールが出来ねぇと考えんなら、あいつにもリスクがある)

 

 しかし、今はそれ以前の問題。

 普通の竜巻だけでも脅威である。先ほどの螺旋状の竜巻を乱発出来るなら、爆豪の爆破では防げない。避けるにしてもかなりリスクがある。

 

(舐めプ野郎だって、容量限界がある。あいつにだって限界があるはず……!が!)

 

「チマチマやってられっかぁ!!」

 

 爆豪は両腕を振り上げて、振り下ろしながら真下の爆破を放って飛び上がる。

 それを見た里琴も再び上空に飛び上がる。

 

 爆豪は両手で爆破を放ち、空中で横向きに回転を始める。

 里琴もその場で回転を始め、竜巻を纏う。

 

『互いに空中で回転!!何する気だぁ!?』

 

 互いに回転を速めていく。

 里琴は空中を移動し、大きく旋回して爆豪に迫る。

 爆豪も爆煙による竜巻が生まれていく。

 

「……マグナム・トルネード」

 

榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)!!!」

 

 爆豪は右腕を振り抜いて、最大火力で爆破を放ち、里琴も右腕を振り抜いて、最大威力で竜巻を放つ。

 

 

ドオオオオオォォォン!!

 

 

 空中で大爆発と爆風が起こる。

 

『回転と勢い、そして最大火力による人間榴弾と人間砲弾が大!!撃!!とーつ!!』

 

 そしてリングでは……互いに場外で倒れている里琴と爆豪の姿があった。

 里琴はうつ伏せで手足を投げ出しており、爆豪は仰向けで呻きながら起き上がっている。

 

『ダブルリングアウトー!!これどうなんの?』

 

「両者場外!!これよりビデオ判定を行い、先に場外になった方が敗北となります!!」

 

 プレゼントマイクの疑問に答えるように、ミッドナイトが声を張り上げる。

 

 するとスクリーンにリプレイが表示される。

 その結果、勝ったのは、

 

「巻空さん 場外!!爆豪君 決勝戦進出!!」

 

「……マジ卍」

「っ!……っそがぁ……!」

 

 里琴は無表情で呟き、爆豪は納得出来ずに顔を顰めて吐き捨てる。

 

『YEAHHHHH!!これで決勝は拳暴 対 爆豪に決定だああ!!』

 

「里琴、負けちゃったな」

「まぁ、体が軽かったのが敗因だな」

 

 一佳は残念そうに眉尻を下げ、戦慈は腕を組んで肩を竦める。

 すると、そこに里琴が猛スピードで飛んできて、戦慈の胸に激突するように飛び込む。

 戦慈は受け止めるも、流石に後ろに3m程押し下がる。

 

「……てめぇなぁ」

「……ちくせう」

「張り合うって決めた以上、受け入れろ。こうなることくらい想像してただろうが」

「……ん」

 

 里琴は降り立ち、素直に頷く。

 戦慈はため息を吐くと、上着のジャージを脱いで里琴に渡す。

 

「拳暴?」

「あいつとやり合えば破れるのは目に見えてるかんな。流石に何枚も新しいの貰えねぇだろ」

 

 一佳が首を傾げると、戦慈は理由を答えながら、通路へと足を進める。

 

「勝てよ!拳暴!」

「……殺せ~」

「アホ言ってんじゃねぇよ」

 

 里琴の物騒な言葉にツッコミながら、控室を目指す戦慈。

 その後ろ姿を見送った一佳と里琴は観客席に戻る。

 

「あ、里琴お帰り」 

「惜しかったな!!」

「ん」

「頑張った」

「……ん」

 

 切奈、鉄哲、唯、柳が労う。

 それに里琴も頷き返し、椅子に座る。

 そして決勝が始まるのを待つ。

 

 

 

 

「くっそがぁ!」

 

ガァン!

 

 爆豪は控室で机を蹴り飛ばす。

 その顔は全く余裕がなく、荒く息を吐いている。

 

「どいつも……こいつも……!俺は……トップになる。仮面野郎よりも、デクよりも、オールマイトよりも……!圧倒的で完膚なきまで1位だ。なのに……デクにも、舐めプ野郎にも、丸顔にも、鉄野郎にも、竜巻女にも……!!」

 

 余裕だと思っていた入試では、まさかの3位。

 入学して最初の戦闘訓練では緑谷に敗け、轟の実力にビビってしまい、USJ襲撃でもオールマイトとの差を知った。

 

 だから体育祭では絶対的にトップになろうと気合を入れていた。

 しかし、障害物競争では里琴、戦慈、轟どころか緑谷にも負けた。

 騎馬戦では物間と鉄哲の相手で緑谷、轟、里琴達に挑むことすら出来ず。

 このトーナメントでは、麗日には翻弄されて最後は自滅という形で勝ち、鉄哲には勝ったと思った瞬間に反撃され、里琴には偶然に等しい勝利。

 

 一度も自分が納得出来る勝利を掴んでいない。

 

 今まで自分が積み上げてきたものがドンドン壊されていく。

 そんな感覚を味わっている。

 

 そして決勝の相手は戦慈。

 

 今までの戦いを見てきて、やはり不安は抑えきれなかった。

 

 爆豪はかつてないほどに追い込まれていた。

 

 しかも一番イラついているのは、ライバル視してる者達のヒーローを目指す理由。

 

「そんなもん関係ねぇ!……関係ねぇ筈なのに……!」 

 

 自分にはそこまでの理由があるかと聞かれれば、否定せざるを得ない。

 しかし、理由があればヒーローになれるわけではない。

 やはり強くなければヒーローではない。それは間違っていないはず。

 

「勝つ……!俺は……絶対に勝つ!完膚なきまでに!」

 

 戦慈はまさしくオールマイトと同じ。

 パワーも、耐久性も、ただシンプルに強い。

 

「仮面野郎に勝てばぁ……オールマイトにも勝てる……!俺がNo.1ヒーローになる!」

 

 爆豪は自分に言い聞かせるように、不安を塗りつぶすように声を出す。

 

 

 

 

『さぁ来たぜ来たぜぇ!!いよいよラスト!!これで雄英1年の頂点が決まる!!決勝戦!!拳暴 バーサス 爆豪!!!』

 

 タンクトップ姿の拳暴と、歪んだ笑みを浮かべている爆豪がリング上で睨み合っている。

 

「ようやくお前と戦えんなぁ……!ぶっ殺してやる!」

「そうかよ」

「さっさと体デカくしやがれ!」

「わりぃな。まだ体が温まってねぇし、気分も昂ってねぇ」

「っ!……てんめぇ……!」

 

 戦慈の言葉に爆豪は歯軋りをしながら顔を歪めて睨みつける。

 

 戦慈は仮面の下で僅かに眉間を顰めながらも、特に声を掛けることなく構える。

 

 爆豪も僅かに腰を据える。

 

『盛り上がってるな!!それじゃあ、行くぜぇ!!レデイイイィィ……』

 

 プレゼントマイクの合図に、全員の緊張感が高まり、前のめりになる。

 

 そして、火花が上がる。

 

 

『START!!』 

 

 

 決勝戦が始まった。

 

 

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