己の未熟さを痛感している次第です。
ただ、いくつかの点をここで伝えさせていただきます(__)
・三点リーダーについて
小説において、常識として『……』が通例であることは、承知しております。ただし、私は間の表現によって『…』のみで終わらせている場合があります。これは知り合いの出版関係者にも尋ねており、出版するモノでないならば問題ない事を確認させて頂いております(__)
・柳について
「なんで柳だけ『レイ子』と書かないの?」という方がいらっしゃいますが、これは単純に『私が書きやすい』からです(__)ご了承いただきたいと思います。
拙作のためにご指摘して頂き、感謝の念は絶えません。
職場体験先について、多くの方が考えてくれました。
これからも努力を続けていきますので、よろしくお願いします。
体育祭翌日。
本日は休日である。
一佳は戦慈の部屋を訪れていた。
「出かけるぞ~」
「……ゴー」
「……だから何でいきなりなんだよ」
一佳と里琴はすでに外出準備を整えており、戦慈は顔を顰めながら渋々着替える。
「だって、前もって言うと逃げるだろ?それに決めたの今日の朝だしな」
「……ブイ」
「何がだよ」
「里琴を誘う以上、お前も来なきゃダメなんだよ」
「……はぁ~」
一佳の開き直った言葉に、戦慈はため息を吐きながら準備を終える。
家を出た戦慈達は駅に向かっていた。
「で?今日はどうするんだよ?」
「東京にでも行こうと思ってな」
「……観光」
一佳と里琴の言葉に、気だるげに付いて行く戦慈。
観光と言うにはいきなり過ぎないだろうか?と思っているが、2人が乗り気なので諦めることにした。
そして電車に乗り、渋谷に移動した戦慈達。
「いきなり買いもんか?」
「いや、待ち合わせだ」
「……あん?」
「……いた」
「お!お~い!唯!皆!」
一佳の待ち合わせ発言に一瞬固まる戦慈。
すると、里琴が前方を指差し、一佳がその方向にいる集団に声を掛ける。
そこにいたのは、B組女性陣だった。
「……マジかよ」
「……大マジ」
戦慈は手で仮面を覆って足を止めるが、里琴が戦慈のズボンを引っ張る。
戦慈は渋々と唯達に歩み寄る。
「お、やっぱ拳暴もいた」
「ん」
「昨日はお疲れさまでした」
「皆、元気だね」
「グッモーニン!!」
戦慈に気づいた切奈達が、戦慈に思い思いの挨拶をする。
戦慈は挨拶しながらも呆れるように声を掛ける。
「今日の朝に決まったんだろ?全員揃うってどんだけ暇なんだよ」
「体育祭の翌日だったからな~。連絡なかったらのんびりしてただけだよ」
「ん」
「癒し」
「けど、皆で集まるウレしいデス!!」
「ってことだな」
「人との豊かな交流は、心の疲れを癒します」
「……付き合え」
「……はぁ~」
戦慈はもう抵抗する気を完全になくした。
集まった以上、帰るのも面倒だし、帰ったら里琴が何をしでかすか分からないからだ。
このテンションに付いて行けるかも分からないが。
「じゃ、まずは浅草から!」
「ん!」
「初」
「……同じく」
「イエーイ!!」
切奈の言葉に唯、柳、里琴、ポニーが大きく頷いて歩き出す。
戦慈は後ろから付いて行きながら、首を傾げる。
「浅草ぁ?」
「唯は島根、レイ子は愛知、ポニーはアメリカだしな。東京はほとんど初めてなんだよ。里琴や拳暴だって、余り来たことないんだろ?」
「まぁな」
「ってことで、浅草や日本橋、それに秋葉原とか回ることになったんだ」
「……よくそんな行程を今朝決めたなオイ」
一佳達の行動力に呆れるしかない戦慈。
その時、
「あ!?ねぇ、あの人!昨日、雄英体育祭で優勝した子じゃない!?」
「うそ!?わぁ!ホントだ!」
「周りにいるのも雄英の子達じゃん」
「マジで仮面してるぅ」
戦慈に気づいて、視線がドンドンと集まり始める。
それにより一佳達のことも気づいて、有名人を見つけたように盛り上がり始める。
「……だりぃ」
「あははは……思ったより凄いことになったな」
「流石雄英」
「デスネー」
「集まりすぎる前に移動しましょう」
「そうだね」
「ん」
「……戦慈、ゴー」
「また俺かよ……」
想像以上の注目に戦慈は顔を顰め、一佳は苦笑する。
柳とポニーも改めて雄英のネームバリューに驚き、茨と切奈、唯が急いで移動することに同意し、里琴が戦慈に突撃を命じる。
それに戦慈はため息を吐くも、自分も移動したいのは事実なので、先頭に立って足を速める。
昨日の戦いを見た者達は、戦慈の接近に道を開ける。
そして電車に飛び乗り、浅草を目指す。
「ふぅ……やっぱ雄英体育祭って皆見てるんだなぁ」
「浅草大丈夫?」
「ん」
「まぁ、流石に道を塞ぐほどにはならないっしょ。困ったら拳暴を前に出そ」
「おい」
完全に番犬扱いされることになった戦慈。
抗議の声を上げるが、結局男1人ということで、引き受けるしかないのであった。
とりあえず浅草に移動して、雷門を訪れる一同。
「でっか」
「ん」
「……ん」
見上げる柳、唯と里琴。
「このブツゾーンは何ですカ?」
「風神と雷神だよ」
「猛々しくも威厳が感じられますね」
「茨って仏教とかでもいいの?」
「はい。宗教の違いで排他するのは悪と考えます」
ポニーは雷門の左右に立っている雷神風神を見上げて首を傾げ、それを一佳が説明する。
その横で茨が両手を組んで風神雷神を見上げており、切奈が首を傾げる。茨の普段の言動やコスチュームから、どちらかと言えばキリスト教方面の宗派であると思っていたからだ。それに茨は特に差別はしないと答える。
その様子を戦慈は後ろから腕を組んで見守っていた。
別に雷門に感動していないわけではないが、やはり周囲からの視線が妙に気になっているのである。
もちろんほとんどが好奇心的なものだが、数人ほど悪意や粘着質的な視線を感じる。これは何人ものゴロツキと戦ってきたからこそ分かる感覚と言えるので、一佳達が気づかないのも仕方がないと思っている。
(結局、番犬役になるんだな……)
戦慈は内心ため息をつきながらも、その視線の持ち主達に神経を研ぎらせていた。
その後、浅草寺へと向かうために雷門をくぐる。
嫌な視線のいくつかも一定の距離を保って、後を付けてくるのを感じた。
(厄介なのは、狙いが俺なのか、女子共なのか分からんってことだな……)
一佳達は仲見世通りできびだんご、おかき、メンチカツなどを買い歩きながら浅草寺に入る。
お参りをして、おみくじなどで盛り上がっていると、茨と唯がトイレへと向かった。
その時、戦慈は視線の1つが自分から逸れるのを感じた。
「……はぁ」
「ん?どうしたんだ?」
「いや、ちょっと俺もトイレ行ってくるわ」
「ああ、分かったよ」
「変な奴に付いて行くなよ」
「私らは幼稚園児か!!」
戦慈は一佳の叫びに肩を竦めながら、トイレへと向かう。
戦慈の後姿を見送った一佳は子ども扱いされたことにやや不満な顔をし、それを切奈にからかわれる。それに一佳は顔を赤らめながら反論するが、更に切奈にからかわれるだけだった。
唯と茨はトイレを終えて、外に出る。
すると目の前に立ちはだかる人影が現れた。
「……君達、雄英生だろ?」
立ちはだかったのは、無造作に金髪を伸ばして服がやや草臥れた中高生位の男子。
「いいよねぇ。雄英に入ったってだけでさ、チヤホヤされて、あんなお祭りで目立てばヒーローになれるんだろ?」
「……ん」
「……何か御用ですか?」
男子の言動に不穏なものを感じて、唯を背中に庇う様に前に出る茨。
その動きを見た男子は、さらに言葉を続ける。
「あれ?なに?声を掛けただけで、悪者扱い?もうヒーロー気取りなんだぁ、雄英生って。あんな襲撃、許したのにさ」
「御用は何かとお聞きしているのですが……」
「正しくないよねぇ。やっぱ君達みたいなのがチヤホヤされるなんてさぁ……!」
男子は茨の質問に答えることなく、ヌゥっと茨に腕を伸ばそうとする。
それに茨はツルの髪を蠢かす。
「いいの?『個性』で攻撃なんかしてさ?一般人だし、何もしてないのに」
「っ……!」
茨は男子の言葉に僅かに眉を顰める。
男子はそのまま茨に腕を伸ばす。そして、あと数cmというところまで近づいた時、突如真横から腕が伸びてきて、男子の腕を掴む。
「なぁ!?」
「そこまでにしとけ」
「拳暴さん……!」
「ん!」
現れたのは戦慈だった。
男子は振り解こうと抵抗するが、全く動かなかった。
「っ……!?……いいのかい?これって暴力じゃないの?」
「わりぃがくだらねぇ戯言聞く気はねぇよ。全部録画させてもらってるぜ」
「な!?」
戦慈は空いている手で、胸ポケットに入っている携帯を指差す。
それに目を見開く男子。
「な、なんで……!?」
「てめぇの気色わりぃ視線には気づいてた。ただ俺か、それとも他の連中か分かんなかったかんな。危害を加えねぇようなら、ほっとくつもりだったぜ?結局、こうなったけどな」
「っ!?……放せ!」
男子は戦慈の言葉に顔を顰め、歯軋りをする。そして声を荒らげながら、再び振り解こうと暴れ出す。
今度は手を放して、解放する戦慈。
男子はたたらを踏んで後ろに下がり、掴まれた腕を庇いながら、戦慈を睨みつける。
戦慈は腕を組んで、茨達を背中に庇うように移動する。
「くっそぉ……!」
「どっか行け。もう顔出さねぇなら、通報はしねぇ。それでもまだ喚くなら……覚悟決めろよ?」
「っ!?……ふん!」
戦慈の気迫に男子は気圧されて、振り返って走り出す。
周囲では流石に戦慈達の様子に気づいて、野次馬が出来始めていたが、その人垣を押し飛ばして走り去っていった。
それにより誰が問題を起こしたのかを判断した野次馬達は、感心するように戦慈を見る。
戦慈はそんな視線を無視して、茨達に振り向く。
「大丈夫か?」
「はい。ありがとうございました」
「ん」
茨は両手を組んで頭を下げ、唯も頷いて軽く頭を下げる。
戦慈は肩を竦めて、携帯の録画を止める。
「気にすんな。俺も怪しい奴がいるって言わなかったしな」
「んーん」
「そうです。私達も気を付けていなければいけなかったのです」
「せっかく楽しんでんのに、周囲を警戒なんて出来るかよ。とりあえず、戻るぞ」
「はい」
「ん」
戦慈達は一佳達の元に戻る。
僅かに一佳の頬が赤いし、妙に興奮しているように見えるが、特に誰もツッコまなかった。
「お。おかえり。混んでたの?」
「いや、ちょっと阿呆が出ただけだ」
『え!?』
切奈が苦笑しながら声を掛けると、まさかの返答があり、一佳達と目を見開いて驚く。
戦慈が簡単に説明し、茨達も頷くと、一佳達は僅かに顔を顰める。
「やっぱ、変な奴もいるのか……」
「本当に何もされてないか?」
「ん」
「はい。拳暴さんのおかげで」
「……おつ」
「グッジョブ」
「ま、ケンカするタイプじゃなさそうだったしな。わざわざ離れた塩崎達を狙った時点で小物だかんな」
里琴と柳が戦慈を労うと、戦慈は肩を竦めて答える。
それに一佳は腕を組んで、戦慈をジト目で見つめる。
「拳暴も言えよ」
「言ったところでどうすんだよ?嫌な視線を向ける奴がいるってだけで、いちいち警戒しながら観光なんて出来ねぇだろが。俺が塩崎達に間に合ったのだって、偶々気になっただけだぜ?」
「……そうだけどさ」
一佳は戦慈の言葉に反論は出来ないが、納得も出来なかった。
そこに切奈が苦笑して、話を切り上げる。
「ほらほら!!無事だったんだから、この話はここまで!!楽しもうよ」
「ん」
「……次行ってみよー」
「どこ行く?」
「アキハバラ行きたいデース!!ジャパニーズアニメーション!!」
「そろそろお昼ですね」
気分を切り替えるように唯達も観光に話を戻す。
それに一佳はフゥっと息を吐いて、笑顔で会話に参加する。
「そうだな。この近くでなんか食べてからアキバに行こうか」
「そうだね」
「ん!」
「何が美味しいの?」
「浅草と言えば、天丼やうな重ですね」
「……天丼!」
「が、無難だわな」
再び笑顔で歩き出す一佳達。
戦慈は適度に会話に参加しながら、周囲に目を配る。
それによって潜んでいた悪意的な視線を送っていた者達は、顔を背けて離れていく。
先ほどの騒動の事も見ており、更に今の戦慈の行動で「気づいてるぞ」と言われたことに気づいたからだ。
嫌な視線が減ったことに気づきながらも、引き続き警戒を続ける戦慈。
そこに里琴が声を掛けてきた。
「……楽しめ」
「……わぁってんよ。確認してるだけだ」
「……真面目か」
「番犬扱いしたのはてめぇだろうが……」
2人の会話を密かに聞いていた一佳達は、顔を見合わせて苦笑する。
「ホント、損してるよね」
「ギャップは惚れる?」
「ん」
「ああ、だから一佳も」
「違う!」
「しかし、先ほどの拳暴さんはとても頼もしかったです」
「ん!」
「ジェントルマンですネ!」
その後は特に絡まれることなく、秋葉原や日本橋などを回る一佳達。
秋葉原ではポニーはポスターやフィギュアを買い漁り、満足そうにニコニコしていた。
戦慈は体育祭の影響か、メイド喫茶のキャッチに物凄く声を掛けられて鬱陶し気にしていたが。切奈達はそれをニヤニヤと見ており助け舟を出さず、里琴に至っては「……行く」とむしろ楽しそうに行こうとしていた。値段を見て、すぐに諦めたが。
一佳はバイクのフィギュアで「1個くらいなら……」と悩んでいたが、今回は我慢したようだった。
ちなみに茨は「ああ……人の喧騒の嵐」と秋葉原のアニメ好きのパワーに、両手を組みながら右往左往していたため、戦慈の状況に気づく余裕がなかった。
日本橋では唯が人形やマトリョーシカを見て、目をキラキラさせていた。
切奈や一佳は扇子や小物で盛り上がり、戦慈、里琴、柳、ポニーは人形焼きやたい焼き等を食べていた。
茨は「ああ……涼やかな静寂」と日本橋の風情ある町並みと雰囲気に、両手を組んで何やら感動していた。もちろん一佳達と買い物で盛り上がってもいたが。
「ん」
「あん?」
「ん」
唯が戦慈に近づき、紙袋を突き出してきた。戦慈は訝しむが、唯は再び紙袋を突き出す。
戦慈は紙袋を受け取って開けると、中には赤いダルマが入っていた。
「……ダルマ?」
「んーん」
唯がダルマを取り出して、胴体を持って捻るとパカッと開いて、中から黒いダルマが現れた。
「マトリョーシカか」
「ん!」
唯は頷いて、ダルマを戻して袋に入れる。
「で?なんでだ?」
「……お礼」
「あん?」
「さっきレスキューしたことでは?」
「ん!」
里琴とポニーの言葉に力強く頷く唯。
それに戦慈は仮面の下で僅かに眉を顰めるが、頷いて紙袋を受け取る。
「まぁ、受け取っとく」
「ん!」
唯は頷いて、小さく微笑む。
その後、茨からもマグカップを渡されて、戦慈は顔を顰めるも渋々と受け取る。
その様子を一佳や切奈は微笑ましく見つめていた。
「お礼をされるの慣れてないんだねぇ」
「多分、今まではお礼をされる前にいなくなってたんだろうな」
「なるほどね」
そして夕食を食べてから解散となった。
「……明日はねぇよな?」
「流石にないな」
戦慈の確認に、一佳は苦笑しながら頷く。
「今日は結構お金使ったし、明後日からの授業の予習やらもやらないといけないしな」
「……満足」
「拳暴は?」
「まぁまぁだな」
「そっか」
それで十分という様に、一佳は微笑んで頷く。
ちなみに戦慈は里琴が買った荷物を抱えている。もちろん里琴が押し付けた物である。
「茨と唯のこと、ありがとな」
「礼を言われることじゃねぇよ。あいつらからは礼もされたしな」
「言いたいんだから気にするなよ」
「……照れ屋」
「うっせぇよ」
その後も里琴や一佳にからかわれながら、戦慈達は帰宅するのであった。
唯も帰宅して、部屋着に着替える。
そして買った物を整理していく。
「……ん」
唯は1つの紙袋を開けて、中身を取り出す。そして部屋を見渡す。
歩み寄ったのは勉強机。机に取り付けられた棚の一角を整理して、空いたスペースに取り出した物を置く。
「ん」
よし!とばかりに頷いて、小さく微笑む。
そして、それを優しく撫でる。
唯の優しい手で撫でられているのは、座布団に乗せられた赤いダルマのマトリョーシカだった。
2日間の休日を終えて、登校日。
今日は雨が降っていた。
「雨か~」
「……嫌い」
傘を差して歩く3人。
その途中でもすれ違うサラリーマンなどに声を掛けられる。
「お!仮面の君!優勝おめでとう!!凄かったな!」
「ちっちゃい子も凄かったぜ!」
「茶髪の君は惜しかったな~」
それに適当に対応しながら登校する。
教室に入ると、鉄哲達も何やら盛り上がっていた。
「お!拳暴!おっす!」
「おう」
「拳藤達もおっす!」
「……おっす」
「おはよ。皆、どうしたんだ?」
席に鞄を置きながら、周囲を見渡して首を傾げる。
「休みや登校するときに色んな人に声かけられてな!」
「思ったより見てくれてたよな」
「ちょっと嬉しかったな!」
鉄哲がグッ!と両手を握り締めて、円場と吹出が嬉しそうに話す。
体育祭の反響で盛り上がっていたようだ。
それに一佳も納得したように頷いて、唯達に声を掛ける。
「唯達は大丈夫だった?また変な奴出なかったか?」
「大丈夫」
「ん」
「今日は温かい方々ばかりでした」
「ならよかった」
一佳の言葉に問題なしと頷く唯達。
それに一佳はホッとする。
鉄哲達は一佳の言葉に首を傾げる。
「変な奴ってなんかあったのか?」
「まぁ、ちょっとね」
一佳は休日に現れた男の話をする。
話を聞いた鉄哲達は、目を見開く。
「そんな奴がいるのか……」
「雄英に受からなかったんじゃねぇの?」
「逆恨みにしては行動的じゃね?」
「僕達もある程度注意をするべきだね」
「斬り倒してもいいのかぁ?」
「駄目ですぞ」
「汚ぇ野郎だな!!」
鱗が腕を組んで唸り、泡瀬と円場が狙った理由を推測し、庄田が自分達にも危険が及ぶ可能性を口にする。
それに鎌切が物騒な言葉を吐き、宍田が注意する。
鉄哲が怒りに震えて叫ぶ。
「まぁ、ヒーローが嫌いだって言う奴もいるしね。その教育機関として有名な雄英が間接的に恨まれることもあるだろうね。実際、襲撃されたばかりだし」
物間が肩を竦めながら話す。
その言葉に鉄哲達も反論できずに唸る。
実際ヴィランになる者の多くは、今のヒーロー社会から弾かれた者だ。中にはヒーロー科に入って、資格を取れずに落ちぶれた者もいる。
そういう者の相手は鉄哲達では中々止めることが出来ない。相手からすれば、恵まれた者でしかないからだ。
その後もその話題で盛り上がるが、予鈴が鳴ったので席に着く。
その直後にブラドが教室にやってくる。
「おはよう諸君!体は十分に休めたか!?」
『はい!』
「ならば良し!さて、早速本題に入ろう!1限目の『ヒーロー情報学』だが、君達にはあることを行ってもらう!」
ブラドの言葉に騒めく生徒達。
ブラドは生徒を見渡し、教壇に手を乗せて前のめりになる。
「それは……」
生徒達は緊張でゴクリと唾を飲む。
「『コードネーム』!! つまり、ヒーロー名の考案だ!!」
『ヒーーローーめーーい!!』
話を聞いた直後、鉄哲達がハイテンションで叫ぶ。
ヒーロー名は、己のもう1つの名前。
それを決めるのに盛り上がらないわけはない。
ブラドは盛り上がっている生徒達を手で制する。
それに従って、鉄哲達も声を出すのを止める。
「何故 今かと言うと、体育祭で貰えたプロヒーローからの指名が関係している。この指名が大きく意味を持つのは仮免許を得た後……つまり2,3年生からだがな。なのでこれはあくまで『興味故の予約』という感じだな」
「予約?」
「そうだ。つまりお前達の今後の活躍次第で、この指名は変わることもあるということだ。来年の体育祭で、今年以上の結果を出したりな」
「なるほど……今回、多く貰った奴は減らさないように。貰えなかった奴は、増やせるように気合を入れろということか」
「その通りだ、円場」
ブラドの説明と、それを聞いた円場の言葉に、他の者達も理解したように頷く。
「そして、今回の指名集計は、こうなった」
ブラドは後ろのブラックボードを示す。
すると、ブラックボードに名前と横線グラフが表示される。
拳暴:6299
巻空:5222
塩崎:321
鉄哲:209
拳藤:62
取陰:21
物間:11
「例年はもう少しバラけるのだがな。やはり拳暴と巻空に集中したようだ」
「だよなぁ……」
「A組も爆豪や轟にもかなり指名が偏ったようでな。今年は仕方がないかもしれん」
表示結果とブラドの言葉に、仕方がないとばかりに頷く骨抜達。
「そして、これを踏まえて!お前達にはプロヒーローの元で、職場体験を行ってもらう!!」
「職場体験……!?」
「だからヒーロー名を……!」
職場体験という言葉に鉄哲達は目を見開き、同時に授業内容に納得する。
それにブラドも頷く。
「そうだ。職場体験とはいえ、お前達は現場に出る。そのためのヒーロー名だ。仮ではあるが、多くのヒーローはここで決めた名前が広まるのが多い」
「ところで、指名が無い人はどうすればよろしいのですかな?」
「安心しろ。指名が来なかった者は、学校からオファーした事務所に行けるようになっている。後程、全員にリストを配る。まずはヒーロー名の考案からだ!!」
宍田の質問にブラドが答え、突如ボードとペンを配り始める。
それに首を傾げながらも、後ろに回していく生徒達。
全員に行き渡ったのを確認したブラドは、頷いて説明を続ける。
「では、書けた者から発表してもらう!!」
『発表!?』
ブラドの言葉に鉄哲達は驚く。
「当たり前だ!ここで堂々と言えない名前を、社会で名乗れると思うのか!?」
「ああ、そりゃそうだ」
骨抜は言われてみればと頷く。
他の者達も同意するように頷いている。
「では、考えろ」
鉄哲達は唸りながら考える。
「難しく考えすぎるな。己のヒーローの在り方を名付ければいいだけだ。俺の『ブラドキング』『プレゼント・マイク』『オールマイト』『リカバリーガール』など先生達の名前も参考にすればいい」
その言葉に頷いて、改めて考え始める生徒達。
すると骨抜が手を上げる。
「出来ました」
「よし!発表してくれ!」
骨抜は前に出て、教壇に立つ。
そしてボードを見せる。
「『マッドマン』。最初だし、こんなもんだろ」
「マッドマン……。うむ!シンプルでいいじゃないか!」
「どうも」
「カッコいいぜ!マッドマン!!」
ブラドが骨抜のヒーロー名に頷き、鉄哲が骨抜をヒーロー名で呼ぶ。
そこからはドンドンとヒーロー名を発表する者達が続出する。
「次は私が!!『ジェボーダン』!!」
「ふむ。歴史に出る正体不明の獣の伝説か。いいじゃないか!」
「我が真名は『ヴァイン』」
「まぁ、ツルだからな」
「『コミックマン』!ズバッ!と行きます!!」
「ズバッ!とはよく分からんが、名前はいいぞ!」
「俺は『リアルスティール』だぁ!!」
「本物の鋼鉄…か」
「はい!!体は砕けず、心は折れず!!それが俺の目指すヒーローです!」
「うむ!素晴らしい!!」
「『ファントムシーフ』」
「ふむ。《コピー》から相手の『個性』を盗むことを意識したのか」
「それだとヴィランですし、コピーをそのまま使うのも不格好なので。ファントムを付けてみました」
「……まぁ、いいだろう!」
他の者が発表するのを見て、一佳は悩まし気に唸る。
「う~ん……何がいいんだ?拳暴は?」
「……考えたことがねぇ」
「だよなぁ」
戦慈も腕を組んでおり、里琴に至ってはボードを両手で持ったまま固まっている。
一佳はそれに苦笑して、とりあえず自分の事に戻る。
「……私の『個性』から考えるか」
一佳の『個性』は《大拳》。この『個性』を使って、闘っていく。
「闘う……。そうだな……!」
一佳は思いついた言葉をボードに書いて、手を上げる。
「よし!拳藤!」
一佳は前に出て、ボードを出す。
「『バトルフィスト』!」
「ほお!拳藤の『個性』を表した名前だな!いいぞ!」
「ありがとうございます」
一佳は頭を下げて、席に戻る。
そして、残ったのは戦慈と里琴の2人となった。
「思いつかんか?」
「……無理」
「考えたことがねぇ」
「じゃあ、俺達も考えてやろうぜ!」
円場が何やら面白がって声を上げる。
それに他の者達も盛り上がる。
「じゃあ……バーサーカー!」
「それはヒーローとしてはどうだろうか?」
「ん」
円場が言い出しっぺとして、名前を上げるが庄田と唯が首を傾げる。
「ブロリー!!」
「ポニー、なにそれ?」
「アニメキャラクターのネームです!」
「頼む。やめてくれ」
ポニーの提案に、戦慈が懇願してでも嫌だと告げる。
「ケンボー!!」
「「「ランボー!!」」」
「殴り飛ばすぞ」
切奈が明らかに悪乗りして、ボードに書いて掲げる。
それに数名が便乗して、戦慈がイラつく。
「『スサノオ』なんてどうだい?」
そこに物間が声を上げる。
「日本神話の?」
「そうさ。戦の神としても有名だし、『スサ』って嵐や暴風雨の神って意味もあるらしいよ?一説によるとだけどね」
泡瀬が首を傾げると、物間は理由を述べる。
それに他の者達もしっくりきたようで、頷いている。
「……そこまで仰々しいか?」
「けどなぁ。すげぇしっくり来て、他のが思い浮かばねぇ」
「思いついてもヘラクレスとかマルスとかだな」
戦慈が少しうんざりしたように声を上げるが、骨抜と泡瀬はもう神関連でしか思い浮かばない様だ。
「あくまで仮だ。とりあえず、それで行ってみたらどうだ?せっかく考えてもらったことだしな」
「……分かった」
「じゃあ、次は巻空だな!」
「拳暴の事を考えると、似た感じで行くべきだよね?」
「……よろ」
ブラドの言葉に戦慈は渋々頷く。
それに鉄哲が声を上げて、切奈が戦慈と繋がりがある名前がいいよねと確認して、里琴は頷く。
「日本神話で、竜巻に関連する名前かぁ」
「いたか?」
「『シナトベ』はどうだ?」
凡戸と鱗が首を傾げると、今度は骨抜が声を上げる。
「シナトベ?」
「シナツヒコの別名だよ。確かシナトベは女神としての名前だったはずだぜ?」
「詳しいな」
「暇だった時に、なんかで見た記憶がある。風の神だったと思うぜ?」
「……じゃあ、それ」
「あんまり知らねぇから、拳暴よりは普通に聞こえるな」
吹出が『?』を表示しながら首を傾げ、骨抜が説明する。
それに里琴が頷くと、回原がボソッと呟き、それに泡瀬達が頷く。
「これで全員だな!……うむ。いい名前ばかりだな!」
ブラドはヒーロー名をメモした一覧を眺めて、笑みを浮かべて頷く。
「付けた名前に恥じないように、気合を入れろ!!」
『はい!!』
こうして戦慈達のヒーロー名が決まり、職場体験に向けて準備を進めていくのであった。
茨達に迫ったのは誰でしょうね?(笑)
ヒーロー名は悩みました(-_-;)
ヘラクレスが最有力候補でしたが、ありきたりで「なんか呼びにくい」と思ったので、スサノオになりました(__)。
里琴はそこから探した名前です。
ただし、これはとりあえずですので、今後の話の展開で変わるかも(-_-;)
そしてまだヒーロー名が分からないメンバーをどうしようかと悩み中。
唯とかの職場体験シーンを書きたい。