『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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拳の二十 職場体験へ向けて

 ヒーロー名を決めた戦慈達は、昼休みにブラドから配られた指名リストを眺めていた。

 

「……多すぎて見る気しねぇ」

「6000件だもんな。何枚あるんだ?」

「100枚だとよ」

「……それはなぁ」

 

 流石の一佳も、それは面倒だと思った。

 注目されるのは嬉しいが、多すぎても困るだけのようだ。

 一佳も自分のリストを見て、頭を悩ませる。

 

「う~ん。私もどうするべきか……」

 

 職場体験は1週間。

 事務所によって活動内容も違うし、活動地域でもまた違ってくるだろう。

 救助もしてみたいし、ヴィラン退治も体験したいとも思う。

 

「里琴は?」

「……多い」

「だろうな」

 

 里琴もリストの束を見て、面倒オーラを体から放出していた。

 それに一佳は苦笑しながら頷く。正直、里琴が戦慈と他の事務所に行くとは思えなかった。

 すると、

 

「……戦慈」

「あん?」

「……貸して」

「はぁ?」

 

 里琴がいきなり戦慈のリストを奪って、自身のリストと見比べ始めた。

 さらに何かチェックを始める。

 

「おい。何してやがる?」

「……探してる」

「だから何をだ」

「……一緒の指名」

「おい」

「あはは……やっぱり同じとこ行く気か」

「……もち」

 

 戦慈がツッコむが里琴は無視。それに一佳は予想が当たり、苦笑するしかなかった。

 その後も100枚近くのリストを見比べ続ける里琴。

 無表情ながらも物凄い気迫を感じる集中力で、それに一佳や切奈達は呆れるしかなかった。

 

「ホントに拳暴のことになると行動力半端ないな」

「まぁ、里琴らしいけどね」

「ん」

「で?切奈達は決めたのか?」

 

 一佳は切奈達に職場体験先について尋ねる。

 頷いたのは茨、切奈、ポニーの3人。

 

「私はシンリンカムイからの御指名を受けさせていただきます」

「私はくノ一ヒーロー『オボロちゃん』のところ」

「ワタシはバッファローヒーロー『ブルトン』デス!」

 

 茨は体育祭で警備をしていたシンリンカムイからの指名が来ており、似た『個性』でもあるため選んだ。

 

 切奈が選んだヒーロー『オボロちゃん』は、忍者服を着た身長130cmほどで少女のようなヒーローである。『個性』《土潜り》の使い手で、地中を水中のように泳ぐことが出来る索敵・諜報が得意分野である。

 

 ポニーが選んだ『ブルトン』は、『個性』《アメリカバイソン》のバイソンの顔をした巨漢のアメリカ出身のヒーローだ。ヴィラン退治や救助活動、時には英会話教室など幅広い活動をしている。

 

「唯とレイ子は?」

「んーん」

「もう少し調べてから」

 

 唯と柳は一度持ち帰って決めるようだ。

 それを聞いた一佳も、もう少し腰を据えて決めることにした。

 

「拳暴達はどうするんだ?救助とかなんか希望あるのか?」

「拳暴はやっぱ対・凶悪犯罪っしょ」

「まぁ、だろうな。見た感じバトルヒーロー系が多かったしな」

 

 戦慈は肩を竦めて、切奈の言葉に同意する。

 戦慈はやはり自分が救助活動するイメージが湧かなかった。諜報系も合わないのは分かり切っている。

 すると里琴がチェックを終えたのか、戦慈にリストを返す。

 

「あ、終わったのか?」

「……ん」

「いいところあったの?」

「……ん」

 

 一佳と切奈の言葉に、里琴はルーズリーフを戦慈の机の上に置く。

 それを覗き込んだ戦慈や一佳達。

 そこには事務所名が羅列されていた。

 

「これは……2人に指名が来た事務所か?」

「……これ」

 

 里琴は一佳の言葉に頷きながら、ある事務所を指差す。

 そこに書かれていたのは、

 

「『ミルコ・ヒーロー事務所』?」

「ミルコってNo.7ヒーローの?」

「……ん」

 

 ヒーロービルボードチャートJP、No.7。

 ラビットヒーロー『ミルコ』。褐色肌に白い髪と兎耳を持つ武闘派女性ヒーローである。

 

「……この中で一番高い」

「へぇ~、いいんじゃないの?」

 

 切奈は里琴の言葉に頷きながらも、里琴のリストの一番上を見る。

 

「え!?いやいや、里琴!?エッジショットから指名来てるじゃん!!No.5じゃん!」

「……別にどうでもいい」

 

 切奈の言葉に、一佳も思わず戦慈のリストに目をやる。

 そして一佳も見逃せない名前を見つける。

 

「おい拳暴!?お前もエンデヴァーから来てるじゃないか!?」

「ん!?」

「No.2の?」

「ワァオ!?」

 

 一佳の言葉に唯、柳、ポニーも驚く。

 その言葉に鉄哲や骨抜達も聞こえて、戦慈達の元に集まる。

 

「拳暴、エンデヴァーから来てんのか!?すげぇじゃねぇか!!」

「巻空はエッジショット?」

「ちょ~っとごめんよ。拳暴、里琴」

 

 切奈が里琴と戦慈のリストを回収して、パラパラと捲っていく。

 

「……うわぁ」

「どうだったんだ?」

「エンデヴァー、ホークス、ベストジーニスト、エッジショット、クラスト、ミルコ、リューキュウ、ギャングオルカ。ほとんどのトップヒーローから指名来てんじゃん」 

『マジで!?』 

 

 切奈はリストを見終えて、もはや呆れるしかなかった。

 その反応に骨抜が質問し、切奈は苦笑しながら答える。

 切奈が挙げた名前に目を見開く鉄哲達。

 

「トップ10中、8人から指名……!?」

「マジかよぉ……!やっぱスゲェな!」

「あははは!才能ってやっぱり不公平だよね」

「物間はちょっと黙ってようぜ」

「おいおい」

「拳暴にはエンデヴァー、ベストジーニスト、クラスト、ミルコ、ギャングオルカから。里琴にはホークス、エッジショット、ミルコ、リューキュウからだね。確かに2人一緒に指名してるのはミルコだけだけど……」

「勿体な」

「ん」

 

 泡瀬が顔を引きつかせて、鉄哲はまるで自分のことのようにテンションを上げている。

 物間はあまりの差に笑いながら嘆くが、回原に黙らせられる。

 物間の声を無視して、切奈は細かい振り分けを説明する。

 それに柳が本音を口にし、唯も頷く。

 

 戦慈は周囲の反応に肩を竦める。

 

「ありがてぇけどなぁ……」

「エンデヴァーだぜ?」

「轟の事考えるとな。あんまり良いイメージがねぇ」

『あぁ~……』

 

 体育祭での轟との試合を思い出して、納得してしまう一佳達。

 確かに何やら叫んでいたし、轟の雰囲気も怪し気だった。うっすら聞こえていた内容では、エンデヴァーの轟への接し方は確かによろしくなさそうだった。

 

「ちょっと色々と暑苦しそうだよなぁ」 

「巻空は……興味ないか」

「……ない」

 

 回原も顔を顰めて、それに鱗が里琴に話題を移すも、戦慈一筋であることを思い出した。

 それに里琴も力強く断言して頷く。

 

「断言するのはどうだろうか……?」

「……私のヒーローは戦慈」

 

 庄田が呆れるが、里琴の言葉に周囲は「ごちそうさま」という感じで苦笑する。

 

「で?拳暴はどうするんだ?里琴に付き合うのか?」

「……まぁ、職場体験だしな。トップヒーローならエンデヴァー以外どこでもいい」

「というか、指名って2人も出せるんだな?」

「……そう言えば」

 

 一佳の質問に戦慈は肩を竦めて答える。

 それに骨抜が今更ながらの疑問に辿り着いて、切奈達も首を傾げる。

 しかし、答えが出るわけでもないので、話題はすぐさまリストに誰がいるかに戻り、指名を貰えなかった者達は「次回は貰う!!」と内心気合を入れるのであった。

 

 

 

 放課後。

 

 戦慈達は帰宅の準備をしていると、里琴がどこかから戻ってきた。

 

「どこ行ってたんだ?」

「……職員室」

「何しに?」

「……希望先出してきた」

「あ?……てめぇ、俺の紙も持っていきやがったな?」

「……ブイ」

 

 里琴の言葉に戦慈は鞄を確認すると、希望先を記入する紙が無くなっていた。

 それに里琴は得意げにピースをする。

 

「持って行ったって……拳暴は記入してなかったよな?」

「ああ。どうやったんだ?」

「……?……戦慈の筆跡コピーは完璧」

「「何を目的に習得した!?」」

 

 里琴は無表情ながら首を傾げて「何言ってんの?」という感じで、衝撃発言をする。

 それに戦慈と一佳はシンクロしてツッコむ。

 流石に看過できなかったが、里琴は指でバツ印を作って黙秘した。

 戦慈は右手で仮面を覆って項垂れ、一佳は同情の目を戦慈に向ける。

 その周囲では鎌切や庄田、切奈達も戦慈を憐れんでいた。

 

「……どうせ一緒」

「だとしても、せめて言えよ。別に嫌がってねぇだろうが」

「……ん」

 

 里琴の開き直りに戦慈は呆れるが、それ以上は怒らなかった。

 諦めているだけかもしれないが。

 

「ある意味、里琴だけで他の事務所に行かせられないな……」

「それってそのままでいいのかぁ?」

「問題しかないように思える」

「ん」

「いつまでも2人で行動出来るわけではないしね」

 

 一佳も呆れて里琴の今後を心配し、鎌切がそれにツッコんで、庄田と唯も鎌切に同意する。

 切奈もいずれは別々に動く時が来ると里琴に伝える。

 

「……我慢する」

「ならいいけど……」

「……でも行けるなら一緒」

 

 里琴は堂々と言い放つ。

 それに切奈達は、もはや何も言うことが出来なかった。

 

 

 その後、一佳達は帰宅する。

 

 一佳は部屋着に着替えて、戦慈から分けてもらったコーヒーを飲みながら、改めてリストを見る。

 

「う~ん……武闘派から救助系、諜報系まで幅広いなぁ。諜報系が指名してくれた理由は分かんないけど……」

 

 選択肢が幅広く、どれも学びたい欲が出る。

 

「けど、1週間だけだしな。……よし、今回は救助や索敵を重視しよ!戦闘は学校でも学べる」

 

 一佳は方針を決めて、リストの中から武闘派ヒーローを消していく。

 そして、残った中から改めて選択する。

 

「少しは欲張りたいな。だから救助や索敵の両方が出来るヒーローはっと……」

 

 色々考えて調べた結果、選んだのは、

 

「スネークヒーロー『ウワバミ』。テレビでも見るヒーローだし、色んな体験が出来そうだ」

 

 書類に記入して、コーヒーを飲みながら一息つく。

 

「それにしてもトップヒーローからあんなに指名が来るなんてなぁ。体育祭で分かってはいたけど遠いなぁ」

 

 戦慈と里琴の事を思い出して、少しだけ項垂れる。

 実力差があることは中学の時から理解はしていた。だから、体育祭の結果はそんなに驚いてはいない。

 しかし、あそこまで多くのヒーローに注目されているのを目の当たりにすると、2人が遠い存在であると改めて思い知らされる。

 

 分かってはいた。

 しかし、だからと言って悔しくないわけではない。

 やはり置いて行かれるのは嬉しくない。

 

「けど、そう簡単に強くなれるわけはない。なら……戦い以外であいつらに追いつかないと……!」

 

 そのためにやれることはやる。

 そう決めた一佳だった。

 

 

 

 

 翌日。

 

 ブラドは職員室で預かった希望先の確認を行っていた。

 

「ブラド」

「ん?イレイザー、どうした?」

 

 A組担任の相澤が声を掛けてきた。

 その手にはブラドと同じく体験希望先の書類が握られていた。

 

「悪いが、分かってる分だけでも確認させてくれ。希望先が3人以上被っている生徒がいるかもしれんからな」

「ああ、構わんぞ」

 

 相澤の言葉に頷いて、互いの希望先を確認していく。職場体験は1つの事務所に2人まで指名及び受け入れ可となっている。

 そこにスナイプやプレゼントマイク、ミッドナイトが顔を覗かせる。

 

「お、職場体験か?」

「ああ、今年は結構盛り上がっていたからな」

「しっかり考えさせろよ?後悔するかもしれねぇかんな」

「分かっている」

「といっても、職場体験だものね。あまり押し付けても駄目よ?」

 

 そう言いながらも、それぞれの希望先を眺めていく。

 特に気になるのはやはり、

 

「あら?拳暴君と巻空さんは同じ所なの?ミルコのところか……。でも他にもトップヒーローから指名来てなかったかしら?」

「確か……エンデヴァーやホークス、ベストジーニストとかから来てたぜ?」

「……恐らく巻空だろう。トップヒーローの中で、拳暴と指名が被っているのがミルコの所だけで、これを拳暴のと一緒に持ってきたからな」

 

 ミッドナイトが首を傾げ、プレゼントマイクも腕を組んで思い出す。

 それにブラドが少し眉を顰めながら推測する。

 その言葉にミッドナイト達は「なるほど」と納得する。

 

「拳暴大好きだな!!リア充エクスプロージョン!!」

「拳暴君は文句を言わなかったの?」

「ああ……別にトップヒーローなら誰でも構わないそうだ」

「納得してるなら良いが……あまり共に行動させるのも考え物だぞ?」

「今日、本人達にも注意はしたがな。『今回は誰でもいいから』だそうだ」

「ここまで指名貰っといて、スゲェ言い分だなオイ!?」

 

 プレゼントマイクは上を向いて叫ぶが、ミッドナイトに無視される。

 ブラドもプレゼントマイクを無視して、ミッドナイトの質問に答える。それにスナイプは唸るように懸念を伝えるが、ブラドは少し疲れた顔で答え、プレゼントマイクが叫ぶ。

 騒がしさに相澤は少しイラつきながらも、話に参加する。

 

「まぁ、エンデヴァーには轟、ホークスは常闇、ベストジーニストには爆豪が希望を出している。特に轟と爆豪は、今の段階で拳暴と一緒にさせるのは、少し不安がある」

「確かにな」

「轟君は大丈夫じゃない?」

「エンデヴァーの所に行くとなると分かりません。親子の確執があるようですからね」

「あぁ~……」

 

 ミッドナイトは間近で戦慈と轟の話を聞いていたので、なんとなく納得出来てしまった。

 そして爆豪も決勝戦での様子に、まだ判断できるほどの材料がない。

 

「だったら、拳暴達はそれでいいだろ。他の連中はどうなんだ?」

 

 スナイプが話題を変える。

 それにブラドと相澤は書類を見下ろす。

 

「指名が無かった奴らも2人以内に収まってるな。問題はなさそうだ」

「ああ……ん?」

「どうした?イレイザー」

 

 相澤は書類の1枚を手に取る。それにプレゼントマイクが首を傾げる。

 

「飯田……確かもっと上からの指名があったはずだが……」

「飯田君?どこ?」

「ノーマルヒーロー『マニュアル』。……保須市に事務所があるな」

 

 飯田の希望先を聞いたミッドナイト達は眉を顰める。

 

「保須市……確かそこは……」

「ヒーロー殺しが出没したばかりの所だな……」

「おいおい……確か飯田のアニキって……」

「インゲニウム……ヒーロー殺しにやられて引退させられたばかりだ」

 

 これが偶然とは思えない。そう判断する相澤達。

 

「……どうするんだ?」

「……他の指名を書いてないし、マニュアルがヒーロー殺しと戦うのを認めるわけはないだろ。気にはなるが……」

「確証もないのに、行かせない理由はないわよねぇ。それにここで我慢出来れば、それはそれで成長だしね」

「まぁな。ちゃんとマニュアルに懸念として伝えとけよ」

「ああ」

 

 両クラスの確認を終えて、手続きに入る相澤とブラド。

 

 ブラドは改めて各生徒の希望先を見ていく。

 

「ふむ。……拳藤はウワバミを選んだのか。恐らくは救助系を意識したのだろうが……ウワバミはどうだろうか。まぁ、そこも経験か。……小大と柳は同じ事務所にしたのか。念動ヒーロー『キネシスレディ』か。確かに2人の『個性』との相性はいいか」

 

 ブラドはそれぞれの事務所に連絡を取り、受け入れの確認を行っていく。

 

「それにしてもミルコか。彼女は荒っぽいことで有名だからな。何もなければいいが。…………無理か」

 

 ブラドは戦慈と里琴、そして受け入れ先のミルコの事を思い浮かべる。そしてため息を吐き、色々と諦めながらミルコの事務所に連絡をする。

 

 こうして職場体験の準備は整えられて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるビルのバー。

 

「ヒーロー殺しぃ?」

 

 敵連合のリーダー、死柄木はカウンターの端に設置されたテレビに顔を向けて、声を上げる。

 

『そうだよ、弔。今、黒霧に迎えに行かせてる。彼を仲間に引き入れるんだ。しっかりと勧誘するんだよ』

「……面倒だな。役に立つのか?」

 

 テレビから音声が聞こえて、死柄木と会話する。

 会話の内容に死柄木は顔を顰めて、手元に置いてある写真を睨みつける。

 その写真は緑谷が写されていた。

 

『実力はかなりのものだ。彼を仲間に引き入れれば、かなりオールマイトの首に近づくはずさ』

「……はぁ、分かった。話すだけ話す。それでいいんだろ?先生」

『ああ。頼んだよ、弔』

「ちっ……」

 

 死柄木は舌打ちをして、バーを出ていく。

 ディスペはそれを壁にもたれ掛かって聞いており、そして死柄木を見送る。

 

「……苛立ってるな。本当にヒーロー殺しなんて呼びつけて大丈夫なのか?ボス」

『弔の成長のためだよ。それにヒーロー殺しが仲間になるとは、僕も期待してない』 

「はぁ?」

『言ったろ?成長を促すためさ。彼との会話は必ず弔と敵連合の糧になる』

「……ボスがそれでいいなら、俺は従うさ」

 

 テレビからの声に、ディスペは肩を竦める。

 

「で?俺に仕事ってなんだ?」

『エルジェベートの回収と新しい仲間のスカウトさ。それと……新しい脳無のテストも頼みたい』

「……ほぉ。これまた派手そうな。エルジェベートとスカウト先は近いのか?」

『そこそこね。すでに脳無は送り込んでる。まずはそこに向かってくれ。そこに残りの情報も置いてある』

「……黒霧は期待できないか。はぁ、人使い荒いねぇ」

『人手不足なんだよ。知ってるだろ?』

「嫌な上司だな。部下の傷を抉るなんて」

 

 ディスペはもう一度肩を竦めながら出口へと向かい、バーを後にする。

 

 そしてテレビも電源が切れ、バーには静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 夜。

 

 ある倉庫内。

 

「ギャアアア!?」

「ヒィイ!?」

「オイオイオイオイ?なんだよ?もっと楽しもうぜ?なぁ、遊ぼうぜぇ!!」

 

 ゴロツキと思われる男が悲鳴を上げながら、地面を転がっていく。

 それを仲間と思われる男達は目を見開いて、転がる仲間を見つめて恐怖に震える。

 そして、悲鳴を上げさせた原因に目を向ける。

 

 そこにはタンクトップ姿の巨漢の男が、笑みを浮かべて立っていた。

 男の左顔は大きな傷痕があり、左目は義眼をしている。

 

「バ、バケモノ……!?」

「オイオイ。ひでぇこと言うなよ。立派な人間様だぜ?俺はよ」

 

 義眼の男は笑いながら、歩みを進める。

 ゴロツキ達は逃げだそうにも、足が震えて動かなかった。

 

「なんだぁ、逃げねぇのか?俺に殴り殺されてぇのか!?面白ぇ奴らだな!よぉし!!いいぜ!!じゃあ……!!」

 

 義眼の男は更に笑みを深めて、右腕を振り被る。

 直後、男の皮膚の下から筋肉のようなものが出現し、右腕を覆っていく。

 そして踏み込んで、一番近いゴロツキに飛び掛かる。

 

「血を見せろぉ!!!」

 

「ひぃやっ!?」

 

ボグジャア!!!

 

 義眼男が右腕を振り下ろすと、立っていたはずのゴロツキの姿が消え、不気味な音が倉庫に響く。

 地面に叩きつけられた義眼男の右腕の下には、真っ赤な水と人の腕のようなものが散々していた。

 

「ああ……あああああぁ!?」

「義眼に……増強型の『個性』……!ああ……!?ち、『血狂いマスキュラー』だぁ!?」

「た、助けてくれぇ!?」

「ひぃいいい!?」

 

 ようやく足が動いて、逃げ出すゴロツキ達。

 

「逃げんじゃねぇよ!!」

 

 マスキュラーの脚が膨らんだ瞬間、猛スピードで背中を見せるゴロツキ達を飛び越えて、先回りする。

 そして両腕に再び筋肉ようなものを纏い、全力で振るう。

 それだけで4人のゴロツキが殴り飛ばされて、壁に叩きつけられる。

 

「ひぃ!?」

「ほら!かかって来いよ!!もっと俺とぉ……!!」

 

 マスキュラーは両腕を振り上げて、飛び掛かる。

 

「遊ぼうぜええぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ある倉庫の前。

 パトカーが数台、ランプを回転させながら停まっており、その周囲を警察が慌ただしく動き回っている。

 

「かなり凶暴みたいね」

「こ、これも失血死事件と関係あるのでしょうか……?」

 

 倉庫の周囲にはヒーロー達が集まっており、周囲の警戒を行っていた。

 

 倉庫の目の前には2人の人影があった。

 

 黄色の瞳に鋭い目つき。白金のミディアムボブに猫耳を持つ女性。尾骨部には白金の上に黒の斑模様が散りばめられた尻尾が生えている。体は引き締まっておりながらも女性的なスタイルは維持されている。

 ヒョウ柄のレオタードにグローブ。黄色のニーハイソックスに、足爪先に猫足を模した装備を身に着けている。

 

 その隣にはやや垂れ目な少年。背中に大きめの甲羅のようなものを背負っており、頭には茶色のヘルメットを被っている。手足にも白のプロテクターを身に着けており、服は赤の蝶ネクタイ、白のシャツに、青の短パンにサスペンダー。

 

 女性は倉庫を鋭く見つめており、少年はその隣で不安そうにキョロキョロしている。

 

「おーい!!」

 

 そこに声が響き、直後ズダン!と2人の真横に人が飛び降りてきた。

 

「おかえりなさい、ミルコさん!」

「おかえり。駄目だったみたいね」

「ああ。それっぽい奴はいなかったぜ!ちくしょうが……」

 

 降りてきたのはNo.7ヒーローのミルコだった。

 2人はミルコのサイドキックである。

 ミルコは顔を顰めながら、周囲を見渡す。

 

「こっちも駄目そうだな」

「残念ながらね」

 

 ミルコの言葉に肩を竦める女性。

 それにミルコは更に機嫌を損ねて、舌打ちする。

 

「ちっ!『ヒョウドル』!『アルコロ』!帰っぞ!」

「いいの?」

「相手がいねぇなら意味ねぇだろ!」

「まぁ、そうね」

 

 ミルコはノシノシと苛立ちながら歩き出し、それに2人も付いて行く。

 

「あ、そうそう。例の雄英の職場体験だけど」

「あぁ?断られたか?」

「残念。指名した2人とも来てくれるそうよ」

「マジでか!?」

 

 ミルコはその言葉にグルン!と振り返り、満面の笑みでヒョウドルに詰め寄る。

 ヒョウドルは苦笑して手で押さえながら、話を続ける。

 

「雄英からメールが来てたわ。OK出したわよ」

「よっしゃ!!蹴っ飛ばせる!!」

「駄目に決まってるでしょうが」

「あはは……」

 

 ハイテンションで物騒なことを叫ぶミルコに、ヒョウドルが呆れ顔でツッコみ、アルコロは苦笑いする。

 

「そ、それにしても2人ともなんですか?」

「そうなのよねぇ。何でかしら?エンデヴァーやホークスが見逃すとは思えないのだけど……」

「いいじゃねぇか!ダメ元で2人とも指名させて良かったぜ!!」

 

 アルコロは驚いており、ヒョウドルは顎に指を当てて不思議そうに首を傾げる。

 ミルコは上機嫌にスキップしながら話す。スキップにしてはかなり高いが。

 ヒョウドルは呆れながらミルコを見る。

 

「言っとくけど、職場体験よ?ちゃんと教えなさいよね」

「そんなのお前がやればいいだろ?私は奴らを扱ければいいぜ!」

「……あんたの事務所でしょうに」

「お前の事務所でもあるだろ?私が教育なんて向いてると思うのかよ?」

「出来なさいよ」

「ヤダよ。私は蹴っ飛ばしたい!!」

「あんたねぇ……!」

「ま、まぁ、ミルコさんらしいじゃないですか……!」

 

 ヒョウドルは右手を握り締めて、後ろからミルコを睨む。それにアルコロは慌てながらヒョウドルを宥める。

 ミルコはそんなことも気づかずにスキップし続ける。

 

 そのミルコ達を、満月の光がスポットライトのように優しく照らしていた。

 

 

 

_______________________

人物紹介!!

 

・ヒョウドル(26歳)/豹川(ひょうかわ) ミク

 

 誕生日:7月1日 身長:162cm O型

 好きなもの:ローストビーフ

 

 黄色の瞳に鋭い目つきをしており、白金のミディアムボブに頭に猫耳、ヒョウ柄の尻尾が生えている。Cカップ。

 体は引き締まっているが、女性的なしなりも両立させているクール美人。

 

 コスチュームはミルコと同じデザインで、ヒョウ柄で足先の装備が猫爪になっている。

 

 ミルコのサイドキック。

 ミルコとは高校時代の同級生でクラスメイトだった。

 ミルコが飛び出して、ヒョウドルがサポートする形で活動している。ただし流石にミルコの全力には付いて行けてないので、ミルコの活動が目立っているので、人気が持っていかれているが、そこそこ人気はある。

 事務も出来る万能型だが、恋愛には肉食全開で失敗することが多い。

 

 『個性』:《アムールヒョウ》

 豹っぽいことは大体できる。ミルコほど跳躍力はないが、かなり身軽で走行速度はトップクラス。

 

 

 

・アルコロ(22)/甲原(こうはら) マル

 

 誕生日:5月11日 身長:123cm O型

 好きなもの:レタス

 

 茶色の瞳にやや垂れ目、茶色の短髪をした少年。

 

 コスチュームは背中に大きめの甲羅のようなものを背負っており、頭には茶色のヘルメットを被っている。手足にも白のプロテクターを身に着けており、服は赤の蝶ネクタイ、白のシャツに、青の短パンにサスペンダー。

 

 ミルコのサイドキック。

 半ば強引にヒョウドルに事務所に入れられた苦労人。

 ミルコはもちろん、我慢の限界を迎えたヒョウドルの八つ当たりと後始末を引き受ける苦労人。

 弱気な性格だが、ミルコとヒョウドルに引っ張られて活躍出来ていると思っているため、事務所を辞められない苦労人。

 完全草食系男子でショタ感全開のため、ミルコとヒョウドルに男として見られていない苦労人。

 本人も恋愛感情はないけど、周囲からは妬まれている苦労人。

 

 だから戦慈が来ることに内心ミルコ同様喜んでいる。

 戦慈と里琴の関係も知らずに。

 

 『個性』:《アルマジロ》

 アルマジロのように丸くなり、転がることが出来る。

 

 そのせいか大抵丸くなるとミルコ達に全力で蹴り飛ばされる

 怪我の理由の8割は『ミルコとヒョウドルに蹴られ投げられ、敵などにぶつけられたから』である。

 超可哀想な苦労人。

 けど、その後2人に撫でられながら褒められると、嬉しくなってしまい許してしまう。

 




ということで、やはりミルコになりました(__)
色々と提案してくださってありがとうございました!

ミルコのイメージを壊さないように、オリキャラも交えながら頑張って行きたいと思います!
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