たくさんの方に見て頂けて、感謝しております!
新年もよろしくお願いいたします!
あと、ミルコは広島に拠点があるということにさせて頂きます。
理由は神野区に現れなかったことと、福岡には跳んで来たからです。
*「ドラゴンボール超ブロリー」を見られた方は、今話の後半から戦闘シーンBGMを頭に流しながらお読みいただければと思いますw
いよいよ職場体験当日。
コスチュームが入ったトランクと宿泊する荷物を持って、戦慈達は駅に集合していた。
「よし!!全員コスチュームは持っているな!」
『はい!』
「うむ。お前達の初陣だ。しっかりとアピールして来い!ただし、失礼はないようにな!!」
『はい!』
「では、行ってこい!!
ブラドの言葉に頷いて、移動を開始する戦慈達。
「拳暴達は中国地方か」
「あぁ」
「……遠出」
「私は東京だから、あんまり変わらないな。まぁ、頑張ろうな!気を付けて行けよ!」
「お前も変な奴に付いて行くんじゃねぇぞ」
「だから私は幼稚園児じゃない!」
一佳の抗議に肩を竦めて、戦慈は新幹線ホームに向けて歩き出す。里琴もそれに続く。
一佳は目を吊り上げてフン!と鼻で息を吐くも、すぐに苦笑して移動を開始する。
「……考えたら1週間も拳暴達と会わないのは、仲良くなってからは初めてだな……」
一佳はふと思い出したように呟く。
逆にいえば仲良くなってからは、ずっと共に行動をしていたということだ。
今になって思えば、里琴のことをあまり強く言えないかもしれないということに気づく一佳だった。
「あいつのコーヒーも飲めないのかぁ」
リュックに入っているタンブラーの事を思い出す。もちろん今日の朝も戦慈からコーヒーを貰っている。
しかし、明日からはない。
「……なんか嫌だな」
コーヒーを貰えないと気づいた途端に妙な寂しさに襲われて、思わず呟く一佳。
気合を入れていくべきはずなのに、寂しさでテンションを下げながら体験先に向かう一佳だった。
戦慈と里琴は新幹線で数時間かけて移動し、広島県に到着した。
「……遠い」
「仕方ねぇだろ。お前が選んだんだぞ?」
「……むぅ」
里琴は気だるげに文句を言うが、戦慈に反論されて無表情のまま唸る。
それに呆れながら戦慈は地図を取り出して、ミルコの事務所を目指す。
歩いていると、
「わ!あの子達、雄英の子じゃない!?」
「しかもあの仮面!体育祭で優勝した子だ!」
「……ここでも騒がれんのかよ」
「……有名人」
「お前もその1人だかんな」
戦慈は顔を顰めながら歩く。里琴はその隣で両腕でトランクを抱えながら、上機嫌そうに歩いていた。
20分ほど注目されながら歩いて行くと、5階建てのビルに辿り着く。
ビルの上には『ミルコ・ヒーロー事務所』と看板が掲げられていた。
「やっぱデケェな」
「……金持ち」
ビルを見上げながら、何故か2人はトップヒーローの羽振りの良さを感じ取る。
すると、入り口から茶髪の少年が顔を出す。
「あ、あの~……もしかして雄英の生徒さんですか?」
「あん?ああ、そうだけど」
戦慈は里琴よりも小さかったので、年下と判断してしまった。
少年は戦慈の答えにパァ!と輝く笑顔を浮かべる。
「やっぱりだ!お待ちしてました!あ!?僕はアルコロと言います!ミルコさんのサイドキックをやらせて頂いています!」
「サイドキック?」
「……ヒーロー?」
「はい!!こんな小さくてゴメンナサイ!」
「いや、謝る必要はねぇけどよ」
にこやかに自虐するアルコロに戸惑いながら会話する戦慈。
その後、ビル内に招き入れて、なにやらハイテンションで事務所の説明をするアルコロ。
「1階はエントランスに倉庫。2階は応接間と会議室。3階が執務室。4階は簡単なトレーニング室。5階は宿直室に客室、更衣室になります!そして少し離れた所に戦闘も出来る広さがあるトレーニングジムがあるよ!もちろん体験中は使ってもらってもいいからね!」
そして3階に上がり、執務室の扉をノックする。
「連れてきました!」
『お!来たか!入って来い!』
「失礼します!」
アルコロが扉を開けて中に入り、戦慈達も続いて中に入る。
執務室は20畳ほどの広さで、入って左側には事務机や書類などが収められた棚が並んでおり、右側には3つの大きなソファがコの字に置かれており、真ん中にテーブル、壁際にテレビが置かれていた。
執務室と言われていたが、明らかに右側のスペースの方が多めに取られており、事務のスペースは仕方なく感が半端ない。
しかも事務スペースに至っては4つ机が並んでいるが、1つは真っ新で、残りの3つは書類やパソコンなどが所狭しと積み重ねられていた。
戦慈達は右側のスペースに目を向けると、テレビ正面のソファに褐色肌に兎耳の女性が背もたれに両腕を回して座っており、首だけ戦慈達に向けていた。その左側のソファにはヒョウ柄のコスチュームを着た女性が座っていた。
「おお!本当に仮面してやがんな!」
「ちょっとミルコ。挨拶しなさい」
「あぁ?別にいいだろ。私のこと知ってるから、希望出したんだし。お前らだけで充分だろ。なぁ、拳暴?」
「俺が知るわけねぇだろ」
「はははっ!そりゃそうだ!」
「はぁ~……全く……」
ミルコは戦慈の言葉に上機嫌に笑い、それにヒョウ柄コスチュームの女性がため息を吐いて右手で顔を覆う。
そして女性は立ち上がり、戦慈達に歩み寄る。
「あんなのが代表でごめんなさいね。私はヒョウドル。ミルコのサイドキックではあるけど、彼女とは同期なの。で、あれがミルコ」
「よっと!よろしくな!」
ヒョウドルがミルコを指差すと、ミルコはバク転してソファの後ろに飛び、戦慈達に向き直ってニカッ!と笑いながら右手を上げる。
それに戦慈と里琴は少し呆れながらも、自己紹介を返す。
「雄英1-B 拳暴戦慈。ヒーロー名はスサノオだ。世話になる」
「……巻空里琴。……シナトベ」
「スサノオにシナトベだな!スサノオたぁ気合入れてんじゃねぇか!」
「俺が付けたわけじゃねぇ。他の奴が考えた」
「似合ってそうだからいいじゃない。さて、今日から1週間、ここで職場体験をしてもらうわ。ミルコはこんな感じだから、普段は私があなた達の教育担当となるわ。よろしくね」
「言っとくけど、戦闘は私の言うことに従えよな!」
終始上機嫌なミルコ。
ヒョウドルは苦笑しながら、説明を続ける。
「今日は簡単な説明とパトロールをして終了よ。まずはあなた達の部屋に案内して、コスチュームに着替えてもらうわ。ミルコ、ちょっと待ってなさい」
「へいへい」
「アルコロも今のうちにさっきの書類終わらせなさい」
「あ!?ごめんなさい!」
アルコロはハッ!として慌てて机に向かう。
ヒョウドルは小さくため息をついて、戦慈達を連れて5階へ向かう。
「この事務所は3人で経営してるわ。アルコロが一番下。だから、あの子も後輩が出来て嬉しいんでしょうね。ミルコがあんな感じだから、あんまり職場体験やインターンは引き受けないのよ。今回はあなた達の試合を見て、興奮しながら『戦ってみてぇ!!指名出せ!!』って叫んでたわ」
その説明に戦慈と里琴は内心「戦いたいってなんだ。そしてよく機能してるな、この事務所」と思っていた。
恐らくヒョウドルが仕切っているのだろうと推測しているが。
そして5階に上がり、ヒョウドルは戦慈達に鍵を渡す。
「ここがスサノオの部屋。隣がシナトベの部屋よ。部屋の造りはホテルのシングルルームと同じだから。ただし在室中は自分で掃除をしてね」
ヒョウドルの言葉に頷く2人。
「コスチュームは部屋で着替えて頂戴。着替え終わったら、さっきの部屋に来てね」
そう言って、ヒョウドルは下に降りていく。
それぞれの部屋に入った戦慈達は、荷物を整理して、すぐにコスチュームに着替えて下に降りる。
「お!カッコいいじゃねぇか!って、シナトベは色違いの仮面かよ」
「……ブイ」
「体つきもアルコロと真逆ね」
「あ、あはは……スサノオ君と比べられるのは……」
そして5人はソファに座る。
ミルコは真ん中のソファを1人で、その左側のソファにヒョウドルとアルコロ、ミルコの右側のソファに戦慈と里琴が座る。
「で、まずは簡単にヒーローとしての活動について説明するわね」
ヒョウドルが話し始めた瞬間、ミルコがテレビを点ける。
「……ちょっとミルコ」
「あん?いいだろ別に。聞いてるだけなんて暇なんだよ」
「……はぁ~……もういいわ」
「あはは……」
ミルコの行動にため息を吐くが、諦めて戦慈と里琴を見るヒョウドル。それにアルコロも苦笑するしかなかった。
「ヒーローの活動は基本的に『犯罪の取り締まり』と『人命救助』の2つに大きく分類されるわ。基本的に事件発生時には該当地区のヒーロー事務所全てに一斉に連絡が来るわ。基本は警察からの応援要請だけど、一般人からの通報でも動くことがある。そして活動内容を報告書にまとめて、国の調査機関に報告。それで給料が支給されるわ。国家資格でもあるから、位置づけとしては公務員だけど、活動内容によって給料は変わるから歩合制ね」
ヒョウドルの説明に頷く戦慈と里琴。
「ヒーロービルボードチャートは、それを形にしたものね。人気のヒーローはそれだけ活躍の場が増える。他の地域からの応援要請やチームアップも増えるから、その分貢献度も上がるわ。ただし、聞いたことはあると思うけど、最近はヒーロー飽和社会と言われるほどヒーローは多い。だから競争になるのだけど、そうなると事務所によっては貢献度が示せなくて、給料が不十分なこともあるの。だからヒーローは『副業』が認められているわ。まぁ、うちはありがたいことにヒーローだけで十分な収入があるけどね。代表が副業に向かないのもあるけど」
「私は蹴っ飛ばしたいから、ここにいるんだよ」
「って感じよ。もちろん救助活動もするわよ」
ヒョウドルは肩を竦めて、説明を続ける。
「基本的にうちはヴィラン退治がメインよ。だから、基本活動は要請・通報待ちとパトロール。アルコロは待ちの時は、事務所周辺の清掃活動もしてるわ。これもヒーローとして立派な貢献よ」
「えへへ……」
ヒョウドルの言葉にアルコロが照れ臭そうに笑う。
それに戦慈はますます「本当に年上か?」と思い始める。
「じゃあ、早速パトロールに行きましょうか」
「よっしゃ!」
ヒョウドルの言葉にミルコは再びバク転してソファの後ろに飛ぶ。
「行くぞ!スサノオ!悪い奴は蹴っ飛ばす!で、パトロール終わったら、私と蹴り合いするぞ!!」
「は?」
「私はお前らと1回戦いたかったんだよ!だから指名したんだ!だから決定事項だかんな!!」
「……はぁ」
ミルコの言葉に一瞬唖然として、ため息を吐いて項垂れる戦慈。
それに里琴がポンポンと戦慈の脚を叩いて、他人事のように慰める。
「……どんまい」
「お前も戦うんだよ。聞いてなかったのかよ。お前『ら』って言ってただろうが」
「……マジ卍」
「お前が選んだんだ。責任取りやがれ」
「……どんだけ~」
戦慈の言葉に里琴は心外とばかりに呟く。
その様子にヒョウドルとアルコロは、
「やっぱり仲いいわね」
「ですね」
そして5人で街を歩く。
もちろん物凄い注目を集めている。
ただでさえ普段からミルコは人気があって目立っているのに、そこにデカい戦慈が加われば更に目立つ。
「……このメンバーを前に暴れる人なんているのでしょうか……?」
「馬鹿とヤバイ奴は出るでしょうねぇ。頭が切れる奴はミルコとスサノオを見れば隠れるでしょうけど」
ミルコと戦慈が歩く姿を後ろから見ていたアルコロは、この集団の存在感に思わず呟く。
ヒョウドルは苦笑しながら同意する。
それにアルコロは、
(いやいや、ヒョウドルさんも十分凄いです)
正直、ヒョウドルも自分の事務所を持てるだけの実力と人気もある。
そして体育祭を見ただけだが、戦慈と里琴もすでに事務所を設立することは出来るだろう。
自分だけが分不相応だと感じるアルコロだった。
「まぁ、パトロールなんて暇で終わることが多いけどな」
「やることに意味があるんだから、そんなこと言わないの」
「けど、お前らいい時に来たぜ?最近、この辺りは盛り上がってるからな」
ミルコはニィ!と笑みを浮かべて戦慈達を見る。
「盛り上がってる?」
「……祭り?」
戦慈と里琴は首を傾げる。
それにヒョウドルは顔を鋭くして、首を横に振る。
「違うわ。今、この周辺では2つの連続殺人事件が起こってるのよ。1つは連続失血死事件。すでに10人の被害者が出てるわ。次に連続暴行殺人。今のところヴィラングループの抗争みたいだけど、それでもかなりの被害者を出してる。情けないことにどっちも犯人に繋がる情報がほとんどないのよ」
「……失血死…ねぇ」
「……あいつ?」
「え!?心当たりあるんですか!?」
戦慈と里琴の言葉にアルコロが目を見開く。
その言葉にミルコも足を止めて、戦慈達を振り返る。
「話せ」
「雄英に襲撃してきやがった連中の1人が、エルジェベートとか言う吸血鬼みてぇな『個性』の持ち主だった。知り合いの刑事から、失血死事件の容疑者らしいってのを聞いたことがある」
「……空を飛ぶ」
戦慈達の言葉にミルコ達は顔を顰める。
「そいつっぽいな」
「そうね。被害者達には噛まれた痕があったらしいし。空を飛ぶなら痕跡が少ないのは頷けるわ」
「けど、何故ここにいるのでしょうか?」
「そうよねぇ」
「……戦慈が吹き飛ばした」
「ここまで飛ぶか?ってか、今は名前で呼ぶんじゃねぇよ」
「吹き飛ばしたって……」
里琴と戦慈の会話にアルコロはもはや呆れるしか出来なかった。
関東から広島までかなりの距離がある。どれだけのパワーで殴り飛ばしたのか、というか良く生きてたなと思わざるを得なかった。
「で、パトロール中に事件が起こった場合は、その場で判断するわ。あんまり携帯なんか触ってる暇はないからね。基本的にはすぐに駆け出して、現場に行くわね」
「私は跳んで行くけどな!」
「はいはい」
その時、
「ヴィランだー!!」
「ヴィラン同士のケンカだー!!」
「お!行くぜ!!お前ら!」
「了解!アルコロ!2人とも!」
「はい!」
「行くぞ」
「……ヤー」
声が聞こえた瞬間、ミルコが高く跳び上がる。
ヒョウドルはアルコロを抱えて走り出し、戦慈も里琴を背中に張り付けて走り出す。
ミルコはすでにかなり先に進んでおり、ヒョウドルもどんどんと戦慈を突き放していく。
「流石のスピードだな……!!」
「……どっする?」
「上がって飛ぶ!」
「……ヤー」
里琴が戦慈の肩越しに右腕を突き出して、小さいが回転が強めの竜巻を放つ。その竜巻の上に戦慈が跳び乗って、上に跳び上がる。もう一度同様に竜巻を踏んで跳び上がる。
6mほど上がると、今度は前に向かって跳び、直後に里琴が後ろに竜巻を放って、戦慈を押しながら前に飛ぶ。
一気にスピードが上がり、ヒョウドル達を抜き去る。
「そんな行き方!?」
「ヒュー♪ やるわねぇ」
アルコロは目を見開き、ヒョウドルは口笛を吹いて感心する。
戦慈の視界に、3m程のズボンを履いた恐竜と2mほどのロボットが向かい合っており、そのそれぞれの足元に複数の人影が見える。
ミルコはロボットの方に向かっていた。
「シナトベ、投げるぞ」
「……ばっちこーい」
戦慈は右腕を後ろに引き、その手の上に里琴が飛び乗る。
「オオォラアアァ!!!」
空中で思いっきり振り被り、里琴を投げる。
里琴はタイミングを合わせて体を捻りながら両足を踏み抜き、竜巻を纏いながら恐竜に向かって飛ぶ。
「……どっこーん」
「ギャオン!?」
「「ギャアアア!?」」
里琴は顔の前に両腕を構えて、恐竜の横顔にタックルする。
恐竜ヴィランは僅かに体が地面から浮き、仲間を巻き込みながら倒れる。
「はっはー!!やるじゃねぇか!!」
「ビゴン!?」
「「ギャアアア!?」」
ミルコは戦慈達の行動に高笑いしながら、ロボットヴィランを同じく仲間を巻き込みながら蹴り倒す。
戦慈は地面に降りて、駆け出す。
すると、ヒョウドルがその横に並ぶ。
「アルコロ!!転がりなさい!」
「はい!!」
ヒョウドルが抱えていたアルコロを前に放り投げると、アルコロは手足を畳んで丸まって地面を転がり出す。
「ミルコ!!行くわよぉ!!」
ドゴン!
「むぎゃ!?」
「は?」
ヒョウドルは転がり出したアルコロに一瞬で詰め寄り、思いっきり蹴り飛ばした。
それを戦慈は唖然と見送る。
蹴られたアルコロはまっすぐミルコがいる場所に飛んでいく。
「うわぁ!?」
「あぶね!?」
ミルコの近くにいたヴィラン達は慌てて避ける。
それにミルコはステップで横に跳びながら振り返り、アルコロを確認する。
そして、
「オゥラァ!!」
「ひぅ!?」
アルコロが横に来た瞬間、左脚を振り抜いて更にアルコロを蹴り飛ばす。
その先には未だ倒れているロボットヴィランがいた。
「ビギャアアン!?」
「うにゅう!?」
「「あぎゃああ!?」」
アルコロはロボットヴィランの顔に勢いよくめり込み、ロボットヴィランを更に吹き飛ばす。それに巻き込まれて倒れていた仲間のヴィランも、再び巻き込まれて悲鳴を上げる。
「……あれはいいのか?」
「あの子はそこそこ頑丈だから大丈夫よ」
「……ならいいけどよ」
「シナトベの援護に行くわよ!!」
戦慈は大丈夫そうには見えなかったが、とりあえずヒョウドルの言う通りに里琴の元へと走る。
すでにヒョウドルは里琴の元に辿り着いて、ヴィランの1人を蹴り飛ばしていた。
「瞬発力では追いつけねぇな……!」
その時、里琴が戦慈に向かって飛んできて、背中に回る。
「……ぶっ飛び~」
戦慈の背中に竜巻を放ち、戦慈を押し飛ばす。それに追随するように里琴も飛んで行く。
「男は飛ばされる事務所かよ……!」
「……働け」
「やかましい!!」
戦慈は里琴に叫び返しながら、両腕を広げる。
そして両足が地面に着いた瞬間、前のめりになって全力で駆け出して敵集団に突っ込み、ラリアットを叩き込む。
「「「ぎゃあ!?」」」
ヴィラン達を薙ぎ倒しながら、戦慈は走り続けて恐竜ヴィランに詰め寄る。
「づぅああ!!!」
「ガゥグォ!?」
戦慈は右腕を振り上げて、恐竜ヴィランの顎にアッパーを叩き込む。
恐竜ヴィランはつま先立ちになって仰け反る。
直後、戦慈の体が一回り膨れ上がり、髪が逆立つ。
「オォア!!」
戦慈は両足を踏み込んで、足から衝撃波を出しながら勢いよく飛び上がり、恐竜ヴィランの喉元に掴みかかる。
そして空中で振り返りながら、恐竜ヴィランに背負い投げを放ち、恐竜ヴィランは宙に浮く。
『えええええ!?』
その光景に他のヴィラン達やアルコロ、そして野次馬や駆けつけた他のヒーロー達が驚愕に叫ぶ。
恐竜ヴィランは背中から地面に叩きつけられ、他のヴィラン達を下敷きにする。
戦慈は叩きつけた勢いで、前転しながら恐竜ヴィランの真上に移動し、右腕を振り抜いて衝撃波を叩きつける。
ドッパアアアァァン!!
「ギャガアオオ!?」
恐竜ヴィランは嘔吐して、気絶する。
「ふぅー……」
「……おつ」
戦慈は地面に降りて息を整えながら、周囲を見渡す。
すでにヴィラン達は抑え込まれており、捕縛が始まっていた。
「はははは!!やっぱいいな!お前ら!」
「ホントね。もう現場出れるじゃない」
「……凄すぎます」
ミルコは楽しそうに笑い、ヒョウドルも笑みを浮かべ、アルコロは乾いた笑みを浮かべる。
「まぁ、後は他のヒーローや警察に任せりゃいいだろ」
「警察に簡単な報告をして、状況検分は任せればいいわ。厄介そうな奴がいれば、移送されるまで監視するけどね。こいつらならそこまではいらないでしょ」
「……今回は無事でした」
「頑張ったわね、アルコロ。おかげで早く片付いたわ」
「そ、そうですか?えへへ……」
割れたヘルメットを抱えているアルコロの頭をヒョウドルが撫でる。
それにアルコロは嬉しそうに頬を赤く染めながら笑う。
「……それで許すのか」
「……不憫」
戦慈と里琴はアルコロの扱いを憐れむ。
しかし、幸せそうに笑っているアルコロを見て、もう何も言うまいと決めたのだった。
その後は特に問題もなくパトロールを終えたミルコ達は、大きな体育館のような建物に足を踏み入れる。
「ここがもう1つのトレーニングジムよ。まぁ、ここまで大きいから私達だけじゃなくて、他のヒーローも使わせてるけどね」
中はかなり広く、体育祭のリングよりも広い。今も数名のヒーローが訓練していた。
すると、ミルコが前に出て、戦慈に振り返る。その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
「よし!!じゃあ、やるぞ!!」
「あん?」
「戦えって言ってんだよ!!私とな!!」
「……マジかよ」
ビシィ!と親指で自身を指しながら、笑みを深めるミルコ。
戦慈は右手で仮面を覆うことしか出来なかった。
それにヒョウドルとアルコロは苦笑する。
「今日はスサノオとだ!!準備しろよ!」
ミルコはピョン!ピョン!と強めに跳ねて、体を温めるように部屋の真ん中に移動する。
戦慈はそれを腕を組んで見送る。
「スサノオ。嫌がっても後6日間迫られるわよ。諦めて一度は戦っときなさい」
「……はぁ~。分かったよ」
戦慈はため息を吐いて、ミルコの元に向かう。
里琴やヒョウドル、アルコロは2階の観戦席に向かう。そこは強化ガラスが張られており、戦いの衝撃や巻き込まれを防ぐ造りになっている。
他のヒーロー達も訓練を中止して、観戦席にやってきた。
「ごめんなさいね」
「いえいえ!ところで、あの仮面の子って雄英の……?」
「そうよ。今日からそこの子と一緒に職場体験なの」
「……初日からミルコさんと試合ですか……」
ツインテールの女性ヒーローが汗を拭きながら、戦慈を憐れみの目で見つめる。
その視線の先では、ミルコがステップを踏みながら戦慈を見つめており、戦慈は肩を回していた。
「思いっきり来いよな!!」
「……うっす」
戦慈は未だに乗り気ではない。
(けど、向こうの方がスピードは上だ。あの蹴りはまともに受けたらヤベェな)
戦慈は覚悟を決めて、構える。
それを見て、ミルコは笑みを深める。
そしてミルコが腰を軽めに落とす。
「行くぜぇ!!蹴っ飛ばす!!」
ドォン!!
ミルコは軽やかに跳ねたように見えたのに、一瞬で右脚を振り被った状態で戦慈の左横に現れる。
「はぁ!」
ミルコは右脚を振り抜く。
その蹴りを戦慈は左腕で防ぐが、流石のパワーに左腕を後ろに弾かれて、体も後ろに滑っていく。戦慈は両足で踏ん張り、倒れないように耐える。
ミルコはすぐに再び跳ねて、今度は左脚を鋭く突き出す。
戦慈は左腕を後ろに弾かれた勢いで、腰を捻って右ストレートをミルコの左脚に合わせる。
ガアァン!!
鋭い金属音が響き、ミルコと戦慈は互いに後ろに弾かれる。ミルコは空中に、戦慈は引き続き地面を滑る。
「ツアアア!!」
戦慈は滑りながらも両脚で踏み込み、叫びながら前に飛び出す。
戦慈は左腕を振り被り、ミルコに迫る。
ミルコは笑みを深めながら、空中で宙返りをして右脚を振り被った体勢になる。
「ツァア!!」
「おらぁ!!」
再び拳と足をぶつけ合う2人。
戦慈は再び左腕を後ろに弾かれそうになるが、肩や腹筋に力を込めて耐え、右ストレートを放って無理矢理に前へ出る。
そして拳の乱打を放ち、ミルコに追撃する。
「ダァララララララララララララ!!」
「ちぃ!」
ミルコは顔を顰めながらも、戦慈の拳に足を鋭く当てることで弾かれる勢いを利用して距離を取る。
戦慈は拳を振りながら舌打ちするも、次の瞬間体が一回り膨れて、髪が逆立つ。
「オォラァ!!」
戦慈は右腕を振り抜くが、ミルコはその腕を跳び箱のように足を開いて躱す。
そして、戦慈の腕に両手を乗せて、開脚旋回の要領で回り、戦慈の顔に左脚を振る。
「らぁ!」
「シィ!」
戦慈は顔を仰け反りながら、右腕を振り上げる。
ミルコは両手で逆立ちして跳び上がり、戦慈はそのまま後転倒立の要領で両手で地面を押し出し、両足を揃えて飛び蹴りを放つ。
ミルコは再び戦慈の足に、自分の足を合わせて踏み抜いて飛び上がる。戦慈はその勢いで宙返りをして、地面に降り立つ。
「はっはぁ!!やるじゃねぇかぁ!!燃えてきたぁ!!」
「やっぱ足技がハンパねぇな……!」
再び向き合って、呼吸を整える2人。
観客席ではヒョウドルと里琴以外は、唖然と2人の戦いを見つめていた。
「ミ、ミルコさんと互角……?」
「マ、マジかよ……。い、いくら雄英体育祭優勝者だとしても、まだ1年生だろ……!?」
「やるわねぇ!私は流石にどっかで当たってるわ!」
「……これからが本番」
「「「え?」」」
里琴の言葉の直後、戦慈の体が更に膨れ上がる。
「まだ上がんだろぉ!?もっと来いよ!」
ミルコの挑発に応えるように、戦慈は飛び出す。
先ほどより戦慈のスピードが上がっていることにミルコは少し目を見開くが、すぐさま飛び出して右脚を振り被る。
戦慈は左指を弾いて、小さく衝撃波を放つ。
「ぐぅ!?」
「ヅゥアアア!!」
ミルコは後ろに飛ばされ、戦慈は足から衝撃波を飛ばして加速する。
一気にミルコに迫った戦慈は拳の乱打を放つ。
ミルコは宙返りをして、両足を地面に叩きつけて跳び上がって躱す。
戦慈もすかさず跳び上がり、両手を組んで振り上げる。
「なめんなぁ!!」
ミルコは空中で体を捻り、左脚を振り抜いて戦慈の脇腹に叩き込む。
戦慈は体が横にくの字に曲がるのを感じながらも、両腕を振り下ろす。
「ラアアアア!!」
「ぐぅ!?」
ミルコは両腕を交えて防ぐが、背中から地面に叩きつけられ、戦慈は横に蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられて地面に落ちる。
「がっ!?ちぃ!」
「ぐぅ!?っそぉ!」
2人はすぐさま起き上がり、駆け出す。
戦慈が右フックを放つと、ミルコは右脚を大きく踏み出しながら、上半身を前に倒して体を低くすることで躱す。
「だらぁ!!」
ミルコは右脚に力を込めて、上半身を起こしながら左脚を戦慈の腹部に鋭く突きさす。
戦慈は体をくの字に曲げて、後ろに吹き飛びそうになるが、すぐさま後ろに右脚を出し踏ん張って耐える。
「ウオアアアア!!」
「!!」
戦慈は体を更に膨れ上がらせながら体を起こし、左腕を振ってラリアットをミルコに叩き込もうとする。
ミルコは目を見開きながらも、体を地面に横たわらせて腕を躱す。
ドバアァン!
空振りした戦慈の腕から衝撃波が飛ぶ。
戦慈はすぐさま右腕を振り被るが、ミルコは両足を揃えて振り上げて、先ほど戦慈同様両手で跳び上がって、戦慈の顎を蹴り上げる。
「ゴォ!?っ!オオオオオ!!」
戦慈は顔を一瞬仰け反らせるも、途中で耐えてミルコの脚を押し戻しながら叫び、右腕を無理矢理振ってミルコの脇腹に拳を叩き込む。
「でぇ!?」
ミルコは横に吹き飛び、地面を転がる。5mほど転がると跳び上がって、宙返りして地面に降り立つ。
「ってぇ~……!今のは効いたぜ……!」
「こっちのセリフだぜ……」
ミルコは脇腹を押さえながら、僅かに顔を顰める。
戦慈も顎を擦りながら、ペッ!と血混じりの唾を吐き出す。
「まだやんのか?これ以上は力を発散させるのも難しくなんだけどよ」
「う~ん。私としてはまだやりてぇな!」
『ミルコ。流石にこれ以上は駄目よ。お互いタダじゃすまないわ。ただでさえ初日からヴィラン退治手伝わせたのに』
「そうだよなぁ……はぁ、しゃあねぇか」
ミルコは悩まし気に腕を組んで、ため息を吐いて構えを解く。
戦慈は大きく息を吐くも、直後に後ろを振り返って右腕を振り抜く。
ドッッッパアアアアァァン!!!
巨大な衝撃波が飛び、壁を震わせる。
「へぇ。流石に金掛けてるだけあんなぁ」
「てめぇ!そんなのブッ放せるのかよ!?なんで使わなかったんだ!?」
「見りゃ分かるだろ?体と力が元に戻るんだよ」
ミルコは戦慈に詰め寄るが、戦慈は体を指差して肩を竦める。
ミルコはそれにすぐに納得して引き下がる。
ヒョウドル達も降りてくる。
「ミルコとあそこまでやり合えれば、もう十分プロでやれるわよ。本当に期待の新人ねぇ」
「……おつ」
「明日はシナトベと蹴り合うかんな!」
「……どんだけ~」
里琴はミルコの言葉に声を上げる。
それにヒョウドルは苦笑する。
「まぁ、今日はここまでにしましょ」
「よし!!じゃあ、飯だな!動いたから焼き肉行くぞ!!」
ミルコは右腕を上げて、歩き出す。
それに戦慈達も続き、こうして職場体験初日は終了したのであった。
「……どれだけ食べるのよ」
「……凄いですね。シナトベさんまで……」
「リスみたいになってるわね」
「くぞぅ!負げるが!」
「あんたまで張り合わなくていいの。太るわよ?」
「ぐむ……!?」
その後、焼き肉屋にて戦慈と里琴の食いっぷりに、呆れたり張り合ったりするミルコ達の姿が見られたとかなんとか。
アルコロ頑張れ!!
雰囲気的にミルコは孫悟空みたいになってきてますねw
もうちょっと戦わせたかったですが、流石に職場体験の域を超えると思ってしまいました(__)
それでは皆様、良いお年を!!