『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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切奈のヒーローネームを修正しました。


拳の二十三 職場体験2日目

 職場体験2日目。

 

 朝7時。

 戦慈は給湯室を借りて、お湯を沸かしていた。

 給湯室には冷蔵庫もあり、飲み物などを入れることも出来た。

 

 もちろん今、お湯を沸かしている理由はコーヒーである。

 豆や道具一式は一応持ってきていた。

 昨晩ヒョウドルに確認して、使用許可は貰っていた。

 

 お湯が沸き、タンブラーにコーヒーを淹れようとすると、

 

「んお?スサノオ?」

「ん?」

「何してんだ?」

 

 私服のミルコが現れ、覗き込んでくる。

 

「コーヒーだよ」

「へぇ~。豆からかよ」

「ってか、早くねぇか。まだヒョウドル達来てねぇだろ?」

「ヒョウドルは来てるぞ。今日はアルコロは休みだ。私らは大抵この時間に来て、ここで朝飯食うんだよ」

「なに?って、スサノオ?あぁ、昨日コーヒーとか言ってたわね」

 

 ミルコと話していると、ヒョウドルも顔を覗かせる。ヒョウドルも私服で、右手には食材が入った袋を持っている。

 さらに寝ぼけ眼で寝ぐせ全開の里琴がタンブラーを両手で持って、フラフラとやって来た。

 ミルコとヒョウドルは物珍しそうに、里琴をジィ~っと見つめる。

 里琴はミルコとヒョウドルには気づいていないのか、挨拶もせずに横を通り過ぎて、戦慈の傍まで来てタンブラーを掲げる。

 

「……ん」

「はいよ」

 

 戦慈はいつもの事なので、特に何も言わずにタンブラーを受け取り、コーヒーを入れて更に牛乳を入れる。

 中を混ぜて、ふたを閉めて里琴に渡す。

 里琴は早速それを飲む。

 

「……んふ~」

 

 寝ぼけているせいか、妙に幸せそうに目を閉じて、口角を上げる里琴。

 それをミルコとヒョウドルはポカンと見つめる。

 

「……シナトベって笑うんだ」

「初めて見たな」

「寝起き位でしか見れねぇからな」

 

 戦慈は肩を竦める。

 里琴は再びフラフラと部屋へと戻っていく。

 それを見送ったミルコ達は、戦慈に向き直り、

 

「スサノオ」

「あん?」

「「私達の分も頼むわ」」

「……わぁったよ」

 

 戦慈は仮面の下で呆れながらも、準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 秋葉原。

 

 今日も多くの観光客やオタク達で溢れており、賑わっている。

 その一角で、

 

「違う!!これじゃない!!」

「いいえ!!絶対これです!!」

 

 2人の男が向かい合って怒鳴り合っている。

 

「ここは『シュババッキーン!!』しかないだろ!!」

「いいえ!!『シュバカッキーン!!』です!!」

「それだけじゃない!!ここ!!『ダッダダン!!』だと言っただろ!!」

「微妙です!!そこは『ダン!ダダン!!』の方がいいです!!」

「なんだと!?コミックマン!!」

「なんですか!?『イラストール』!!」

 

 吹出と怒鳴り合っていたのは、体験先のヒーロー、イラストヒーロー『イラストール』だった。

 プロジェクターのような機械を頭に被っており、ロボットスーツを思わせるアーマーを着ている。左腕には機械が装着されており、機械から出るコードは頭のプロジェクターと繋がっている。

 

 2人は2枚のカードを巡って、言い合っていた。

 そこに近づく人影。

 

「なにやってんの?」

 

 吹出達に呆れながら声をかけてきたのは、赤いツインテールに赤いセーラー服を着た150cmくらいの女性。

 頭にはゴーグルが着いており、膝と肘にはプロテクターを装着している。

 

「聞いてくれ『アイドリン』!ここの効果音!!『シュババッキーン!!』が良いと思わないか!?」

「違いますよね!?『シュバガッキーン!!』ですよね!?」

「心底どうでもいいし、気持ち悪い」

「「ガガーン!!?」」

 

 アイドリンの言葉に、吹出とイラストールは揃ってショックを受ける。

 アイドリンはそれも無視して、話を進める。

 

「ヒーローが言い争ってんじゃないわよ。ただでさえ見た目変なのに」

「「ズガガーン!!?」」

 

 更なる衝撃を受ける2人。

 アイドリンはそれも無視して、歩き去っていく。

 

「通報なんてされないでよ?じゃあね」

「あ!?アイドリンさんだ!!」

「はぁ~い♡!!皆のアイドリングヒーロー!!アイドリンでーす♡!!」

 

 アイドリンは声を掛けられた瞬間、ニパァ!と笑顔になり愛想を振りまく。

 その変わりように吹出は『!?!?』と表示して、驚きで固まる。

 アイドリンの声を聞いた通行人達は、足を止めてアイドリンに近づいて行く。

 

「みっんな~!!いつもありがとぉ~!!今日も早速行っくよ~♪!!」

『アイドリーン!!』

 

 いきなり通行人達が観客になって、ゲリラライブが始まる。

 

「イラストールさん……あれは?」

「あいつは猫かぶりだからな。気にするな」

 

 その時、

 

「ひったくりだ!!」

「車で逃げたぞ!!」

 

 その声の直後、軽トラのような車がドリフトしながら、吹出達の前を通っていく。

 そして物凄いスピードで走り去っていく。

 すると、アイドリンが歌を中断して、観客に声を掛ける。

 

「みっんな~!!ちょっと悪い人出たから行ってくるね~!!道開けて~!!」

 

 その言葉と同時に観客は道路へと道を開ける。

 すると、アイドリンの両脚が変化して、それぞれの脚にタイヤと排気筒が出現する。

 

ドルルルルル!!

 

 それぞれの排気筒から煙が噴き出し、アイドリングが始まる。

 そして頭に装着してたゴーグルを目元に装着すると、

 

「オンラァ!!行くぞゴラァ!!カッ飛ばすZ!!」

 

 アイドリンは目つきが鋭くなり、ハイテンションでイキり叫ぶ。

 ギャリリ!と急速にタイヤが回転し、猛スピードで走り出す。

 

 それを見送ったイラストール達も、

 

「行くぞ!コミックマン!!エア・ジェットを出す!!」

「はい!!」

 

 すぐにコミカル感を消して、動き出す2人。

 イラストールは腰のホルダーからカードを1枚取り出す。そのカードには漫画やアニメで登場するような飛行機が描かれていた。

 イラストールは左腕の機械に触れると、カバー部分がスライドし、カードをセットする窪みの様なものがある。

 

「カード・インストール!!」

 

 イラストールはポーズを決めながら、窪みにカードをセットし、スライドを戻す。

 

「リアライズ!!」

 

 そして頭のプロジェクターに両手を添えると、プロジェクターのレンズから光が放射される。

 すると、空中にカードで描かれた飛行機が実体化する。

 

「とう!!」

「よっと!!」

 

 イラストールと吹出は飛行機に飛び乗る。

 

「あれ?コクピット吹き曝しですか!?」

「当然だ!!もしもの時、すぐ飛び出せるようにな!!行くぞ!!ゴー!!」

 

 ドバン!とエンジンが点火して前進する飛行機。

 吹出は物凄いGを感じながらも、必死にしがみつく。

 

「待ちやがれ!!ブッ飛ばすZ!!」

 

 エア・ジェットの下ではアイドリンが叫びながら、ひったくり犯を追いかけていた。

 

「くそ!?よりにもよって、あの2人かよ!?」

「駄目だ!この車じゃ追いつかれるぞ!?」

 

「行くぞ!!ネットランチャー、シュート!!」

 

 イラストールがハンドルの横にあるボタンを押す。

 すると、エア・ジェットの先端から銃器のようなものがせり出し、そこから巨大な網が発射される。網は軽トラに覆い被さってタイヤに絡まり、停止させる。

 

「もう時間だ!!飛び降りるぞ!」

「え!?」

「脱出!!」

「うわぁ!?」

 

 突如、座っているシートが飛び出し、2人を強制的に降ろす。直後、エア・ジェットは空気に溶けるように消え去った。

 

 イラストールの『個性』《イラスト》。

 自身で書いたイラストカードを実体化することが出来る。ただし最大5分間しか実体化出来ず、実体化したものによって更に短くなる。

 

「くそ!?」

 

 車から無理矢理外に出るひったくり犯2人。

 

「カチコチ!」

  

 吹出が『カチコチ』と擬音を出し、1人の足に当たると氷が出現して、脚を凍らせる。

 

「なぁ!?」

「よし!!ピシッと出来た!」

「いいぞ!!」

「ちくしょう!」

 

 吹出が両手を握り締めて喜び、イラストールが捕獲に向かう。

 残ったもう1人のひったくり犯は仲間を見捨てて走り出す。

 

「オンドリャー!!ブッ飛ばすZ!!」

「ぎゃほう!?」

 

 そこにアイドリンが猛スピードでタックルして、吹き飛ばした。

 ひったくり犯はまさに交通事故に遭ったかのように、地面を転がっていく。

 そしてすぐさま吹出が抑え込みにかかる。

 

「ふぅ。疲れたわ」

「……キャラが分かりません」

「アイドルなんてそんなもんよ」

「夢を壊さないで!?」

 

 個性的なヒーローに囲まれて、吹出の職場体験は続いて行くのであった。

 

 

 

 

 三重県伊賀市。

 

 切奈は少し緊張していた。

 

「これ、私が参加してもいい案件なんですか?」

「拙者と共に行動するのが条件でごじゃる」

 

 切奈の周囲には忍者服の集団と警察がいた。

 そして隣には茶色迷彩の忍者服を着た忍者少女がいた。褐色肌に赤茶のポニーテール、目にはサングラスゴーグルが取り付けられ、首元には小型酸素ボンベが吊り下げられている。

 くノ一ヒーロー『オボロちゃん』である。

 

 これからオボロちゃん達は指定敵団体の一斉検挙を行う予定だった。

 

「いいでごじゃるか、『リザーディ』。これから拙者とお主で先に拠点に忍び込んで、囮と入り口の鍵開けを行うでごじゃる。お主は腕と片目と口を切り離して、入り口を開けるでごじゃる。以降は拙者と一度拠点を離れて、お主はここで待機となるでごじゃる。後は拙者のサイドキック達と他のヒーロー達が暴れるでごじゃる」

「……頑張ります」

「うむ。それで良いでごじゃる。安心せよ。拙者が守るでごじゃる」

「はい……!」

「では、皆の者!所定の位置に!!ヒーローの卵に拙者達の戦いを見せつけるでごじゃる!!」

「「「「御意!お嬢!」」」」

「お頭でごじゃるー!!」

 

 切奈はオボロちゃんの言葉に力強く頷く。それにオボロちゃんは笑顔で頷いて、直後顔を鋭くしてサイドキック達に号令を出す。

 オボロちゃんの号令と同時に、サイドキック達が頷いて一斉に飛び出す。

 サイドキック達の呼び方にオボロちゃんが怒るが、すでに誰もいなかった。

 

「あはは……」

「全く!……さて、行くでごじゃる。リザーディ」

 

 オボロちゃんは腰のポーチから身に着けている物と同じゴーグルと酸素ボンベを取り出して、切奈に渡す。

 切奈も顔を真剣にして、それらを受け取り身に着ける。

 そしてオボロちゃんもボンベを口に装着し、切奈に自分の腰に腕を回させる。

 

「では、行くでごじゃる」

「はい!」

「忍法《土蛇》!」

 

 突如、2人の立っている地面が水のように変化して、ドプン!と沈み込む。

 切奈は周囲が全く見えなくなったが、オボロちゃんは迷うことなく泳ぎ始める。切奈は邪魔にならないように努めながら、離れないように必死にしがみつく。

 すると、オボロちゃんが上昇を始め、トプンと顔の上半分だけを覗かせる。

 周囲の状況を確認して、切奈も顔を覗かせる。

 

 覗いた先は倉庫の中のようだった。

 

「行けるでごじゃるか?」

「はい。行きます」

 

 オボロちゃんの言葉に頷いた切奈は、ポンプとゴーグルを外して、両腕と右目、口元を切り離す。

 そして再び体を沈ませる。

 

 切り離された切奈の体は、入り口を目指す。

 右目で周囲を確認しながら、腕を分離しながら進んでいく。

 途中、手下のような者が歩いてきて、何とか物陰に隠れてやり過ごしたりもしたが、何とか入り口を発見した。

 そして両手と右目だけで入り口に近づき、周囲に誰もいないことを確認して、スイッチを押す。

 その瞬間、

 

「大変だー!?裏口からヒーローだー!?」

 

 と、斬り離した口で、白々しく叫んで分離させた腕の一部で物を倒したり、音を出して注意を引く。

 

「なんだと!?」

「くそぉ!!」

「慌てんじゃねぇ!!やり返しちまえ!!」

 

 切奈の声に騙されたヴィラン達は、裏口へと飛び出していく。

 そこにはオボロちゃんのサイドキック達が待機している予定である。

 切奈の体が本体に戻って行くと、通路の物陰にオボロちゃんが浮き出していた。

 

「お見事でごじゃる」

「はい……!」

 

 部位を戻して、ゴーグルとボンベを装着して、再び潜地する2人。

 その直後、開いた入り口からも待機していたヒーロー達と警察が駆け込んでくる。

 

「はぁ!?なんで入り口から!?」

「ぶち破られた音なんてしてねぇぞ!?」

「や、やべぇ!?」

 

 ヴィラン達は慌てるが、もはやどうしようもなかった。

 

 作戦本部では、オボロちゃんと切奈が地面から浮かび上がっていた。

 

「ぷっはぁ!!」

「すぐに終わるでごじゃろう。今回一番のお手柄でごじゃるぞ、リザーディ」

「いやいや、オボロちゃんがいなかったら無理ですよ」

「拙者だけでも時間がかかったでごじゃる。お主の力が拙者達を助けてくれたでごじゃるよ」

 

 オボロちゃんは切奈の頭を撫でながら褒める。

 切奈はそれに困ったように笑いながらも、内心では凄く嬉しかった。

 

「覚えておくでごじゃるよ、リザーディ。ヒーローは目立つだけでは駄目でごじゃる。拙者達のような『個性』では、探偵や工作員のようなこともしなければならない時も多いでごじゃる。けど、そこが出来る者がいなければ作戦は行き当たりばったりでごじゃる。それでは被害を抑えるのにも限界があるでごじゃる」

「はい」

「お主の騎馬戦での動きのように、卑怯であってもリスクを減らせるならば、それを選ぶことが出来るのは大切なことでごじゃる。例え日陰ばかりな仕事であっても、それで傷つく者が減らせるならば喜んで引き受けるのも、ヒーローとして大事なことでごじゃる」

「はい……!」

「うむうむ」

 

 切奈の力強い返事に、オボロちゃんは嬉しそうに微笑んで頷く。

 その横では、

 

「うぅ……!お嬢……!立派になって……!」

「これならば兄上様も喜んでくださるに違いありませぬ!」

「そうね……!」

 

 サイドキック達が感動の涙を流していた。

 

「だからお頭と呼ばぬかー!!」

 

 顔を真っ赤にしたオボロちゃんが怒鳴りながら、サイドキック達に飛び掛かる。

 

 その様子を切奈は苦笑しながら眺めていたが、どこか心が温かくなるのを感じていた。

 

 

 

 

 大阪アメリカ村。

 

 ポニーは本日もパトロールをしていた。

 その前には巨漢の男が歩いていた。

 

「ハッハー!!元気デェスかー!?トゥデイもヘルシィで行きまショー!!」

 

 その姿はまさしくミノタウロス。

 牛顔に牛角、茶色の体毛に覆われた上半身はデニムベストと肩にプロテクターを装着しており、下はジーンズの上にオーバーズボンを身に着けているカウボーイスタイル。

 バッファローヒーロー『ブルトン』である。

 

 ブルトンの声に通行人達も笑顔で答える。

 それにポニーも手を振るなどしていた。

 

「いいデェスか?『ポニー』。ミー達ヒーローは何故ヒーローとしていられマァスか?」

「?……ライセンスを持ってるからデハ……?」

「ノォーウ!!」

 

 ポニーの返答にブルトンはオーバーリアクションで、首を横に振る。

 

「ピープルが許してくれるからデェース!!ミー達ヒーローはピープルがそう呼んでくれるから、こうしてアクション出来るのデェス!!ライセンス化してぇも、ディスはノットチェンジデェース!!」

 

 ブルトンの言葉にポニーは大きく頷く。

 

「ヒーローにはノットナショナルボーダー!!スピークして、タッチングすれば、仲良くなれマァス!」

「イエス!」

「そして、これはヴィランにも言えマァス!」

「??」

 

 ブルトンの言葉にポニーは首を傾げる。

 

「ヴィラン達だって、暴れるリーズンありマァス!ただノックアウトするだけじゃ、ノットヒーロー!!ヴィランもレスキューするのもヒーローの仕事デェス!!」

「っ!……イエェス!!」

 

 ポニーは一瞬目を見開くが、すぐに両手を握り締めて頷く。

 

 その後、ブルトンと訪れたのは多くの外国人が集まる店だった。

 

「ここに集まるピープル達もホームタウンは違いマァスが、ジャパンに暮らしているピープル達デェス。彼らの声を拾い上げるのも、大事なことデェス。カントゥリーが違うからこそ、困っていることもありマァス。それを助けるのもヒーローの仕事デェス。ポリスやシティオフィスなどでは出来ないことをミー達が、シティオフィスが出来ることなら仲介をしてあげマァス。そうすることによってヴィランになることをガードしマァス。ホームタウンが違うミー達だからこそ、彼らとジャパンを結び付けることが出来マァス」

「オゥ……」

 

 想像以上に幅広い活動をしていることに、ポニーはただ感嘆するだけだった。

 ブルトンは気軽に挨拶して、困っていることや住んでいる家の近くで危険そうな場所や人を見たことはないかなどを質問していく。

 時には日本の習慣を教えたり、電話で役所職員を呼んで援助の手続きが出来るように手配したりなどもしていた。

 

 店を出て、またパトロールを継続する。

 すると、今度は公園で子供達に青空英会話教室を行い始めた。

 ポニーはその様子を横で見学していた。

 

 ブルトンの行動はとても幅広く、やっているのは捕縛や救助とも違う。

 しかし、教えてもらった理由は納得出来るものばかりで、とても重要なことだと感じた。

 恐らく、この英会話教室はヒーローを身近な存在にして、さらに外国人という存在も身近なものにしようとしているのだ。

 確かにこれは外国出身のヒーローだからこそ出来ることだ。

 そしてポニーも同じことが出来る。

 

「強くなるだけでは駄目デス。もっと色んなことをスタディしないと。困ってる人を助けられナイ……!」

 

 ヒーローの事だけではない。社会の事、日本で外国人がどのように過ごしているのか、自分だったらどのように出来るのか。

 もっと勉強していかなければいけないのだと、ポニーは実感した。

 

「ファイトデス!!」

 

 フンス!と両手を握り締めて気合を入れるポニー。

 新たな目標を見つけて、更なる精進を誓うのであった。

 

 

 

 

 

 そして広島。

 

 戦慈達はパトロールを終えて、再びトレーニングジムに向かっていた。

 本日はパトロール中に事件は起こらなかったが、また失血死死体が発見された。

 もちろん犯人に繋がる情報はほとんどなく、分かっているのは首筋の噛み傷だけだった。

 

 調査に参加したが、特に情報は見つからなかった。

 というのも、

 

「私に探偵業なんて出来っかよ!」

 

 と、ミルコが放棄したからである。

 ヒョウドルは呆れたが、確かにミルコには不得手だと思ったので、それに従った。

 

 その後は事務所で待機したり、パトロールしたりといつも通りに活動したのであった。

 

「さぁ!今日はシナトベとだな!」

「……横暴である」

「諦めろって昨日言われたから諦めとけ」

「……マジ卍」

 

 ジムに着いて、早速とばかりに準備運動を始めるミルコ。

 里琴は少しめんどくさげな雰囲気を纏いながら、ゆっくりとミルコの元へと向かう。

 戦慈とヒョウドルは観客席に移動して、席に座る。

 今日は他のヒーローは見当たらなかった。

 

「さて、どうなるかしら?」

「流石に里琴が不利だな」

「そう?あの竜巻はかなり厄介だと思うけど?」

「ミルコの動きを妨害するほどの竜巻となると、範囲が狭くなるな。そうなるとミルコの速さに対応できるか怪しくなる。それにデカくて強力な竜巻だと、長時間維持出来ねぇ」

「なるほどね」

 

 里琴の竜巻は、風の勢いが強いと細くなる傾向にある。

 大きくて強い竜巻も生み出せないわけではないが、すぐに容量限界を迎えてしまう。

 

「行くぞ!蹴っ飛ばす!!」

「……イジメっ子~」

 

 ミルコが戦慈の時同様に勢いよく飛び出す。

 里琴もいつも通り宙に飛び、竜巻を放つ。

 ミルコは竜巻を地面一蹴りで躱し、すぐさま方向転換して里琴に跳び迫る。

 

「しゃあ!」

「……ぶっ飛び~」

 

 里琴はミルコの蹴りを飛んで躱し、2本の竜巻を縦に放つ。

 ミルコは蹴りの勢いで回転し、更に強めに蹴りを放つ。竜巻の1本を蹴り飛ばして霧散させ、後ろの壁まで下がる。

 すぐさま横に跳び出し、横の壁に足をかけて蹴り抜いて、里琴に飛び蹴りを放つ。

 

「こなくそっ!」

 

 里琴は更にもう1本竜巻を生み出して、ミルコの蹴りを止める。

 

「ちぃ!やっぱ厄介だな!」

「……えっへん」

「まだまだ行くぜぇ!!」

「……やめちくり」

 

 ミルコは地面に降り立つと、すぐさま大きく前に飛び跳ねて壁、天井、地面を縦横無尽に飛び跳ねる。

 里琴は竜巻を数本放ち、ミルコの動きを制限する。

 そして、移動先を予測することが出来た瞬間、

 

「……スパイラル・ツイスター」

 

 体育祭でも見せた螺旋の竜巻を放つ。

 高速で飛ぶ竜巻をミルコは強く地面を蹴り上げ、飛び越えて躱す。そして両足で地面を強く蹴り、猛スピードで里琴に跳び迫る。

 

「……チョベリバ」

 

 里琴は後ろに下がりながら竜巻を生み出すが、ミルコは右脚を振り抜いて竜巻を蹴り破る。

 そして体を回転しながら里琴に迫っていく。

 

「……むぅ」

「蹴り破ってやるぜぇ!!すぐに追いついてやっかんな!」

 

 里琴は一度地面に降りる。

 今度は飛び上がらずに竜巻を数本放つ。

 

「どうしたのかしら?」

「限界容量にならないようにだろうな。空中で竜巻に乗りながら、他の竜巻を放つのは結構神経使うしな」

 

 ミルコは竜巻を躱し、蹴り破り、里琴に迫っていく。

 ミルコが飛び掛かろうと両足で跳んだ瞬間、里琴は回転して自身を中心に大きく竜巻を生み出す。

 

 浮いている瞬間を狙われたため、ミルコは体が上に飛ばされ始める。

 

「ぐっ!んらぁ!!!」

 

 ミルコは体を捻り、右脚を全力で振り降ろす。その脚力に竜巻が吹き飛ばされる。

 里琴はそれと同時に竜巻を纏いながらミルコにタックルする。

 そしてミルコに近づいたところで竜巻を両手から放ち、ミルコをくの字に吹き飛ばした。

 

「なめんなぁ!!」

 

 ミルコは両脚を閉じて体を無理矢理起こし、更に仰け反ることで両脚を無理矢理振り上げて竜巻を蹴り上げる。

 そして両手足を地面に突いて、再び地面を力強く蹴って里琴に飛び掛かる。

 

「……むぅ」

 

 里琴は空中に飛び上がり、大きめの竜巻2本を壁のように生み出す。

 しかし、それもミルコの蹴りに吹き飛ばされる。

 

「流石のミルコだけど……毎回蹴り破るのも限界があるわよねぇ。結構跳ね回ってるし、体力的に厳しいかしらね?」

「それは里琴も同様だな。流石にそろそろ容量限界のはず。スパイラル・ツイスターはもう無理だろうし、竜巻で壁を作るにも限界がある」

「あの試合で使ってた強力な竜巻を纏った突撃技は?」

「あれには溜めと助走距離がいる。俺が投げるなら、すぐに突撃出来るがな。それが出来ねぇ今じゃ、使ってもミルコの蹴りとぶつかり合うだけだな。そうなると流石にパワー負けする可能性がデケェ。それに里琴の体がもたねえだろうな」

「なるほどねぇ」

 

 戦慈の言葉にヒョウドルは頷く。

 

 ミルコは竜巻を蹴り破りながら、里琴を目指していた。

 

「くっそ!やっぱ自然現象『個性』は卑怯だぜ!!」

「……むぅ……うぷ」

 

 ミルコは顔を顰め、里琴も唸り僅かに頬が膨らむ。

 それをミルコは見逃さなかった。

 

「っ!!行っくぜー!!」

「……!?」

 

 ミルコは再び笑みを浮かべながら、勢いよく飛び出す。

 それに里琴は腕を振って竜巻を放つが、当初と異なり竜巻の形がブレている。

 

「おら!どりゃあ!!」

 

 ミルコは回転蹴りで、それを容易く霧散させて里琴に迫る。

 里琴は飛ぼうとするがバランスを崩して、飛行に失敗して地面に転がる。

 

 そしてその隙にミルコが里琴に飛び付き、抑え込む。

 

「っしゃあ!!」

「……むぅ……うっぷ」

「ふぅ~……なるほどな。使い過ぎると気持ち悪くなんのか」

「……吐く」

「はぁ!?や、やめろよ!?」

 

 里琴はうつ伏せでグッタリとなる。

 それにミルコが慌てるが、里琴はグッタリとしたままだった。

 そこに戦慈とヒョウドルが歩み寄ってくる。

 

「逃げの一手に固執したのが敗因だな。まぁ、気持ちは分かるけどよ」

「……吐く」

「しばらくそうしてろ」

 

 ヒョウドルはそれを眺めながら、ニヤニヤしながらミルコに声を掛ける。

 

「結構ギリギリだったんじゃない?ミルコ」

「ちょっと、な!……ただ2人で組まれたらヤバイかもな」

「アララ。まぁ、気持ちは分かるけどね」

 

 ヒョウドルはミルコの言葉に僅かに目を見開く。

 しかし、先ほどの戦いを見れば仕方がないとも思った。

 少なくともヒョウドルは勝てないと思っていた。

 

「……私も鍛え直さないとねぇ」

「だな。まぁ、それは明日からでいいとして!!飯行くぞ!!」

「焼肉は駄目よ。そうねぇ、中華の食べ放題でも行きましょうか」

「よし!行くぞ!!」

「……吐きそう」

「スサノオ!運んでやれ!」

「はぁ……しゃあねぇな」

「……ぐふぅ」

 

 ミルコの号令に、戦慈はため息を吐いて、里琴の襟元を掴んで背中に回して掴まらせる。

 そして今日も大食い勝負が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 ミルコ達が大食いしている時。

 

 巨漢の男が路地裏を歩いていた。

 

「おぉ、いたな」

「あぁ?」

 

 男の前に髑髏仮面を被った男が立ち塞がる。

 

「なんだ?お前?」

「お前に楽しいお話を持ってきたんだよ。『血狂いマスキュラー』」

「はぁ?誰だよ、お前?」

「俺はディスペ。敵連合ってもんだ。知ってるか?あの雄英襲撃したモンだ」

 

 ディスペの自己紹介に、マスキュラーは笑みを浮かべる。

 

「はっはぁ!!お前らがあの楽しそうな事してた連中かよ!?あれ、俺も参加したかったんだよ!!悔しかったぜ?マジで!!」

「お~、それは嬉しいね。どうだ?俺らと来ねぇか?明日、面白いことやるんだよ」

「いいねぇ!!聞かせろよ!!面白そうだったら、乗ってやるよ!!」

 

 マスキュラーの言葉に、ディスペは仮面の下で笑みを浮かべる。 

 

「明日な、うちの連中が暴れる。ターゲットは、今ここで職場体験してる雄英のガキだ。あの雄英体育祭で優勝した奴だ」

「あぁ?ガキかよ?」

「そのガキはミルコのところにいるんだよ。No.7ヒーローだ。もちろんミルコを殺してもいいし、他の連中も好きにしていい。ターゲットの2人だけ譲ってくれりゃあな」

 

 ディスペの言葉にマスキュラーは更に笑みを深める。

 

「そりゃあ楽しく遊べそうだぜ!!いいぜ!入ってやるよ!敵連合!!暴れる場所をくれんなら、大歓迎だぜ!!」

「交渉成立だな。なら、来てくれ。顔見せさせたいし、ターゲットも教える。飯や寝床もある」

 

 ディスペは頷いて、歩き出す。マスキュラーは楽しそうな雰囲気を隠さずに付いて行く。

 

「あぁ……疼いてきたぜぇ。ワクワクが止まんねぇよ!!」

「これで駒は揃ったな。さて、リベンジ……させてもらうぜ?拳暴戦慈くん」

 

 

 悪意は走り出した。

 

 

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人物紹介!!

 

・イラストール(26歳)

 

 誕生日:5月11日 身長:188cm AB型

 好きなもの:漫画、アニメ

 

 プロジェクターのような機械を頭に被っており、ロボットスーツを思わせるアーマーを着ている。左腕には機械が装着されており、機械から出るコードは頭のプロジェクターと繋がっている。

 *実は頭は生まれつき

 

 イラストヒーロー。

 秋葉原でメインに活動しており、ヒーローショーなどにも引っ張りだこ。

 自身でもイラストを描いている。

 

 『個性』:《イラスト》 

 自身で描いたイラストカードを頭のプロジェクターで、最大5分間現実化する。

 設定も書き込むことでそれも現実化できる。

 ただし、現実離れな設定ほど制限時間が短くなる。

 一度使ったイラストは24~48時間のインターバルを要する。これは制限時間が長いものほど早い。また、同種のイラストも連続では使えない。

 人物や生物を現実化する場合、『自分の言うことを聞く』と設定すると人形のようになる。設定しないと自己判断で動いてしまうため、危険な場合がある。

 

 例

 車:5分

 レーザー銃:4分

 ドラゴン:3分

 仮面ライダーなど:1分

 ウルトラマン、ガンダム:30秒

 破壊神ビルス:0.5秒

 

 

 

・アイドリン(25歳)

 

 誕生日:10月9日 身長:151cm B型

 好きなもの:歌

 

 赤いツインテールに赤いセーラー服を着た150cmくらいの女性。Aカップ。

 頭にはゴーグルが着いており、膝と肘にはプロテクターを装着している。

 

 アイドリングヒーロー(アイドル活動と『個性』発動時のアイドリングをかけている)。

 アイドル活動もしているが、腹黒。

 『個性』発動すると性格が変わる。

 

 『個性』:《バイク》

 脚をタイヤと排気筒に変え、2輪駆動出来る。

 エンジンはメロンソーダ。

 最高時速100km(それ以上で走ると体への負荷が半端ないから)。

 

 

 

・オボロちゃん(24歳)

 

 誕生日:2月22日 身長:141cm O型

 好きなもの:みたらし団子、あんみつ

 

 褐色肌に赤茶のポニーテール、茶色迷彩の忍者服を着た忍者少女。Bカップ。

 目にはサングラスゴーグルが取り付けられ、首元には小型酸素ボンベが吊り下げられている。

 

 くノ一ヒーロー。

 デビューしたばかりの新人。サイドキックは同じくヒーローである兄の事務所から連れてきた者達。

 「ごじゃる」が語尾。これと見た目のせいで、多くの者から微笑ましく見られてしまう。

 指揮能力や実力は本物。潜入捜査や奇襲作戦を得意とする。

 

 『個性』:《土潜り》

 地面の中を水中のように潜れる。

 触れている人も1人までなら、共に潜れる。ヴィランは首や腰ほどまで沈ませて手を放すことで、地中に拘束する。

 潜った状態でも本人だけは、ある程度地上の様子が見える。

 

 

 

・ブルトン(29歳)

 

 誕生日:3月9日 身長:212cm O型

 好きなもの:ハンバーガー

 

 牛顔に牛角、茶色の体毛に覆われた上半身はデニムベストと肩にプロテクターを装着しており、下はジーンズの上にオーバーズボンを身に着けているカウボーイスタイル。

 THE・ミノタウロス。

 

 バッファローヒーロー。アメリカ出身。

 陽気な話し方で、意外と子供に人気。

 外国人との仲介役を務めているので、意外と重要人物。

 英会話教室なども開いており、マルチな活躍を見せる。

 

 『個性』:《アメリカバイソン》

 アメリカバイソンっぽいことは大抵できる。

 つまり力押しの戦闘が得意。

 

 

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