『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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前話のイラストールの設定で書き忘れがありました(__)

1:一度使用したイラストは24~48時間のインターバルを要する。これは実体化時間が長いほど、短くなる。更に同種のイラストは連続で使えない。

2:人物や生物を実体化する場合、『自分の言うことを聞く』と設定すると人形のようになる。設定しないと自己判断で動くため、イラストールの望んだとおりに動かない危険がある。

です。
反響が凄いなと思ったら、上記の2つが抜けてました。
すいません(__)


拳の二十四 怒りに吠えろ!

 職場体験3日目。

 

 本日はアルコロも出勤している。

 

「今朝も失血死の死体が出たわ」

「またかよ……!どうせ何も分かんなかったんだろ?」

「そうみたいね。事件現場が野外だからねぇ。髪の毛とかあっても犯人の物かどうかなんて分からないのよねぇ。抵抗した様子もなさそうよ」

「本当に厄介ですね……」

 

 ミルコ達は事務スペースに座って、コーヒーを飲みながら顔を顰める。ちなみにアルコロはカフェオレである。

 もちろん淹れたのは、戦慈である。

 戦慈と里琴はその後ろで呆れながら、話を聞いていた。

 

「……真っ新な机がミルコのなのかよ」

「……サボり」

 

 4つある事務机の内、一番真っ新な机はミルコの物だった。

 つまり残った3つの内1つは、ミルコが嫌がった書類の置き場だったようだ。

 

「うるせぇよ。チマチマしたのが嫌なんだよ」

「もっと言ってやりなさい。嫌ならもう少し人を雇えばいいのに、それも嫌だって言うんだから。アルコロが来なかったら、これ全部私の仕事よ?」

 

 ヒョウドルは書類やパソコンを見ながら愚痴る。その反対側ではアルコロも眉間に皺を寄せながら書類を眺めていた。

 

「スサノオ。コーヒーおかわり」

 

 ヒョウドルが書類を見ながら空になったコップを、戦慈に突き出す。

 戦慈はため息を吐くが、仕事がないのも事実なので、大人しくお茶入れ役に従事する。

 

「へいよ」

「あ、私の分のもな!」

「……へいよ」

「スサノオのコーヒーに慣れちゃうとインスタントに戻りたくはないわぁ。やっぱり豆からちゃんと淹れるのって違うのねぇ」

 

 戦慈がミルコのコップも受け取り、給湯室に向かう。

 それを見送りながらヒョウドルは少しうんざりしたように話す。

 

 昨日の朝にコーヒーを飲んでから、戦慈は事務所で待機している間はコーヒーを淹れる役に任命された。里琴はアルコロと共にマスコットキャラになっている。

 特にミルコは時々里琴の頬をムニムニと触って、笑わせようとしていた。今のところ、抵抗されてばかりだが。

 ちなみに普段はアルコロがお茶入れをしていた。

 

 午前中は事務作業をしながら事務所で待機して、夕方からパトロールとなった。

 

 そしてパトロールに出て1時間半ほど経ち、一度事務所に戻ろうかという話になった。

 

「今日は夜中もパトロールしましょう。他のヒーロー達も失血死事件の犯人を見つけられてないし。そろそろ総出で行かないとね」

「ま、しゃあねぇか」

 

「その必要はありませんわ」

 

『!?』

 

 上空から突如聞こえた声に、ミルコ達は目を鋭くして構えながら、上を見上げる。

 

 そこには黒いスーツを着た金髪ロングで180cmほどの女性が蝙蝠のような翼を広げて浮かんでいた。

 女性は豊かな胸の下で腕を組みながら不敵に笑い、紅い瞳で戦慈と里琴を見下ろしていた。

 

「なんだ、てめぇ?」

「あら、そこの子供達から聞いてませんの?」

「……あんたがエルジェベート?」

「えぇ」

「いきなり何の用だ?」

「ようやく復讐出来る準備が出来ましたので……殺しに来ましたわ♪」

 

 ミルコとヒョウドルの言葉に、物騒なことを言いながら微笑むエルジェベート。

 しかし戦慈と里琴はエルジェベートを見上げながら、首を傾げる。

 

「てめぇ、整形でもしたのか?」

「……老けた?」

 

 里琴の言葉にエルジェベートは微笑んだまま、額に青筋が浮かび上がる。

 

「……やはり憎たらしいクソガキですわねぇ」

「老けようが、整形だろうが構わねぇけどよ。とりあえず……」

 

 ミルコはトン!と軽やかに跳び、エルジェベートの目の前に移動する。

 

「蹴っ飛ばされろや!!」

 

 ミルコは右脚で蹴りを放つ。

 

 エルジェベートはその蹴りを左腕で受け止めた。

 

「!?」

「話を聞いてなかったようですわねぇ。言ったでしょう?あのクソガキ共を殺す準備が出来たとねぇ!!」

「ぐぅ!?」

 

 エルジェベートは右手でミルコの右脚を掴んで、声を荒らげながら真横に振り投げる。

 ミルコは戦慈達がいる歩道の反対側のビルの壁に叩きつけられる。

 

「ミルコ!?」

「ミルコさんが……!?」

「あなた達は他の者が相手をしますわ。そちらとお遊びなさいな」

 

 パチン!と指を鳴らすと、ヒョウドル達の真横のビルの屋上から2つの人影が飛び出し、ヒョウドル達の真上に落ちてくる。

 ヒョウドル達は後ろに飛び下がる。

 

 飛び降りてきたのはタンクトップを着た巨漢の男。黒い肌で脳が露出して、脳に両目が埋め込まれており、口が縫い合わせられている同じく巨漢の男。

 

「はっはぁ!!待ちくたびれたぜぇ!!さぁ、俺と遊ぼうぜぇ!!」

 

 タンクトップの男は狂気的な笑みを浮かべ、叫びながらヒョウドルに殴りかかる。

 ヒョウドルは飛び下がりながら、男の拳を躱す。

 戦慈が殴りかかろうとすると、脳が露出した男が殴りかかってきた。

 

「ちぃ!」

 

 戦慈も飛び下がると、男の拳が地面を砕く。

 

「左目の義眼と傷痕……!『血狂いマスキュラー』ね!!」

「こいつ!?あの脳無って奴か!」

 

 ヒョウドルと戦慈は相手の素性に気づく。

 エルジェベートが高みの見物をしていると、再びミルコが蹴りかかってくるが、それを躱して逆に蹴り返し、ミルコはヒョウドル達の元に蹴り飛ばされる。

 

「くっそ!」

「ミルコ!」

「問題ねぇ!!おい、スサノオ!そっちの脳みそ野郎は、どんなもんだ!?」

「俺が本気で暴れまくって、ようやく倒せた。複数の『個性』を持ってやがった」

「複数の!?」

「ほーほっほっ!!こいつはその時よりも更に強くなってますわ!!前みたいにはいきませんわよ!!脳無もわたくしも!!」

 

 戦慈の言葉にヒョウドルとアルコロが目を見開く。

 それにエルジェベートが高笑いしながら、ヒョウドル達を見下ろす。

 

「前の奴が持ってた『個性』はなんだ?」

「《ショック吸収》《筋力増加》だ」

「ちぃ!私とも相性がわりぃ!」

「おっとぉ!!お前の相手は俺だよ!ミルコォ!!血を見せろぉ!!」

 

 ミルコが顔を顰めると、マスキュラーが皮膚の下から筋肉のようなものを出現させ、腕に纏っていく。そして更にズボンも膨れ上がり、猛スピードでミルコに殴りかかる。

 ミルコは後ろに跳び、マスキュラーの拳を躱す。地面に叩きつけられた拳は、地面を大きく砕く。

 

「おらぁ!!」

 

 ミルコが左脚を振るが、マスキュラーは右腕で受け止める。

 

「ちぃ!」

「なんだぁそりゃあ?効かねぇぞぉ!!」

 

 マスキュラーは笑いながら右腕を振り、ミルコを振り払う。

 

「マスキュラーの『個性』は筋繊維を纏う《筋肉増強》よ!!生半可な攻撃は駄目!!」

「こいつもかよ!」

「アルコロ!!あなたは周囲の避難誘導を!!スサノオとシナトベも下がって!!」

「は、はい!!」

「わりぃが!!俺は!!無理そうだ!!」

「……ミートゥ」

 

 ミルコは顔を顰めながら道路に飛び出す。マスキュラーもミルコを追いかけて、道路に飛び出してくる。

 ヒョウドルは指示を出すが、脳無は戦慈を標的にしており、連続で拳や蹴りを放っている。戦慈はそれを躱し、里琴はそれをフォローしている。

 

「くっ!」

「わたくしもそろそろ遊ばせてもらいますわよ!!」

「っ!?シナトベ!!」

「……っ!!」

「まずはお前からですわぁ!!」

 

 エルジェベートが里琴に高速で飛び迫る。

 里琴は竜巻で飛び上がり竜巻を放つが、エルジェベートは軽々と躱して迫る。里琴は足裏の竜巻を強くしてスピードを上げるが、それに付かず離れずの距離を保ってエルジェベートが追いかけてくる。

 

「……むぅ」

「その程度で逃げられるとでも!?」

 

 2人は高速で縦横無尽に空を飛び回る。

 

「くっ!(空に飛ばれると手を出せない!仕方ないわ。今はスサノオのカバーを!!)」

 

 ヒョウドルは上空を見ながら顔を顰めるも、すぐさま戦慈の元に向かうことを決める。

 

 戦慈は脳無の攻撃を躱しながら、隙を見て反撃するが、やはり拳が沈み手応えが怪しかった。

 

「ちっ!やっぱ《ショック吸収》はそのままかよ!」

 

 脳無が右腕を振り被る。

 それに戦慈が構えた瞬間、脳無の背後を高速で影が通り過ぎ、脳無の後ろ首からキキィン!!と甲高い金属音が響いた。

 戦慈は目だけ動かして確認すると、ヒョウドルが両手の爪を構えて、目を見開きながら振り返る姿があった。

 

「何よ今の!?《ショック吸収》じゃなかったの!?」

「新しい『個性』ってことかっよぉ!!!」

 

 戦慈は顔を顰めながら右腕を振り、脳無の拳と合わせる。

 結果は戦慈が吹き飛ばされて、ビルの壁に背中から叩きつけられる。

 

「スサノオ!!」

「……問題ねぇ」

 

 戦慈はすぐに立ち上がる。周囲の一般人達はすでに避難していた。

 

「……奴の『個性』が分からねぇのが厄介だな。わざわざここに来たんだ。俺の『個性』対策はされてんだろうが……」

 

 戦慈は体が膨れ上がって、髪が逆立つ。

 そして飛び出して脳無に迫る。

 脳無の足元に潜り込むように迫り、脳無の右脚に右フックを叩き込む。しかし脳無の右脚は微動だにせず、それを見た戦慈はすぐさま飛び上がり脳無の顎に左アッパーを突き刺すが、それも僅かに仰け反っただけだった。

 

 戦慈は一度離れようとした瞬間、脳無の左脚が霞んで見えるほどの速度で振り上げられ、戦慈の横顔に叩きつけられる。

 

「ごっ!?」

「な!?くっ!」

 

 戦慈は真横に吹き飛び、地面を転がる。

 ヒョウドルは目を見開くが、すぐに一気に駆け出して脳無の背後に回り、爪を研ぎらせて飛び掛かる。

 すると、脳無が一瞬で後ろに振り返る。

 

「っ!?」

 

 ヒョウドルは両手を地面について、無理矢理横に方向転換する。直後、ヒョウドルが進んでいたであろう地面に、脳無の拳が突き刺さる。

 

「硬いし、速い……!それにパワーもある!オールマイトでも作る気!?」

「ヅアアア!!」

「!!」

「オラァ!!」

 

 ヒョウドルは脳無の力に慄くと、戦慈が吠えながら猛スピードで脳無の背中にタックルする。

 そして脳無の腰を抱えて仰け反り、バックドロップを叩き込む。

 脳無は頭から地面に突き刺さる。

 戦慈はすぐに腕を放して、ヒョウドルの横に移動する。

 

「体は?」

「問題ねぇ。流石に少し焦ったけどな。ただ、わりぃがこっからは俺だけでやらせてもらうぜ」

「何言ってるのよ!?」

「ここからは衝撃波が出ちまう。あんたも巻き込む」

 

 戦慈の体はオールマイト並みの大きさになっている。

 

「私の戦い方はヒット&アウェイだから行けるわ。流石にあいつは1人で戦わせられる相手じゃないわ」

「……巻き込まれても知らねぇからな」

「ええ、分かってるわ」

 

 ヒョウドルの頷きを見た戦慈は再び駆け出す。ヒョウドルもすぐさま脳無の背後に回るように移動を始める。

 戦いは更に激しくなっていく。

 

 

 

 

 マスキュラーとミルコは互いに笑みを浮かべて向かい合う。

 

「はっ!てめぇ、私に1人で挑む気か?」

「最高じゃねぇか!邪魔されずに殺せるなんてよぉ!!」

 

 マスキュラーは筋繊維を両腕に纏う。

 

「行くぜ!!楽しくやろうぜぇ!!」

「蹴っ飛ばしてやるぜ!!」

 

 マスキュラーが飛び出し、右腕を振るう。

 ミルコはそれを跳んで躱し、右脚でマスキュラーの腕に乗り、左脚でマスキュラーの顔面に蹴りを放つ。

 マスキュラーはミルコの脚が直撃する瞬間、筋繊維を増やして顔を防御する。

 

「そんなことも出来んのかよ!?」

「どうしたNo.7ヒーロー!?パワーが足んねぇぞぉ!!」

「ちぃ!」

 

 右腕を振り、ミルコを振り払う。ミルコは跳んで離れ、ビルの壁に乗りかかって、一気に踏み抜いて両足を揃えて飛び蹴りを放つ。

 マスキュラーは両腕で防ぐが、後ろに滑り下がる。

 ミルコは再び両脚で地面を強く蹴って、猛スピードでマスキュラーに詰め寄り右蹴りを放つ。

 マスキュラーは左腕でガードするが、僅かに両脚が浮いて吹き飛ばされる。

 

 マスキュラーは両手足を地面に突いて、倒れるのを耐える。

 

「はぁ!!やっぱ強ぇなぁ!!」

「さっさと倒れろ!!」

「嫌だね!!もっと楽しもうぜぇ!!」

 

 マスキュラーが立ち上がると、全身に筋繊維を纏い始める。

 そこに他のヒーロー達が駆けつける。

 

「ミルコさん!!そいつですか!?」

「デ、デケェ……!?」

「手ぇ出すな!!てめぇらじゃ敵わねぇ!!周囲の一般人の避難を優先しろ!!それかあっちで飛んでる蝙蝠女かヒョウドルの応援に行け!!」

 

 ミルコは叫びながら、勢いよくマスキュラーに蹴りかかる。

 それをマスキュラーは片腕で防ぎ、空いた方の腕でミルコに殴りかかる。

 ミルコは両脚を開いて跳び箱のように躱し、マスキュラーの頭の上を飛び越える。

 マスキュラーはすぐさま振り返り、ミルコに負けないほどの速さで殴りかかる。

 ミルコはバク転して躱し、マスキュラーの拳は地面に突き刺さってクレーターを作る。

 

「パワーもスピードも上がりやがった……!?」

「血ぃ見せろやああぁ!!」

「てめぇが見せろぉ!!」

 

 マスキュラーの拳とミルコの脚がぶつかり合う。

 その激しさに駆けつけたヒーロー達は手が出せないと理解し、他の戦場に目を向けるが、どっちも激しく足手まといだと痛感する。

 

「くそ!俺達は周囲のビルに取り残された人がいないか探すぞ!!」

「了解!」

 

 ヒーロー達は悔し気に顔を歪めて、出来ることをしようと走り出した。

  

 

 

 ヒーロー達が駆けつけた頃。

 

 脳無達が飛び降りたビルの屋上からは、ディスペが戦場を見下ろしていた。

 

「ふむ。脳無は今の所問題なし。《ショック吸収》《筋力増強》《鉄皮》《瞬動》の4つと聞いたが、使いこなしているな。思考回路の向上は確かに出来ているようだな。後は『個性』をもっと増やしても、それを維持出来るのかってことか」

 

 脳無の考察をしていると、目の前を里琴とエルジェベートが高速で飛び交っていく。

 

「ほらほら!どうしましたの!?追いついてしまいますわよ!?」

「……むぅ」

「竜巻は使いませんの?あら、もしかして使う余裕がありませんの?」

「……」

 

 エルジェベートの言葉に里琴は何も答えない。

 その反応に図星であると判断したエルジェベートは、徐にため息を吐く。

 

「なぁんだ」

 

 すると、エルジェベートは一瞬で里琴の真横に現れて、里琴の後頭部を右手で掴む。

 

「……!?」

「期待外れですわ…ねぇ!!!」

 

 グン!!と里琴を真下に押し飛ばす。里琴は顔から地面に落ちていくが、竜巻で体の向きをうつ伏せに変える。そして全力で真下へと竜巻を放ち、足裏からも竜巻を放って、地面スレスレを飛行して地面への激突を回避する。

 そこにエルジェベートが正面まで降りてきた。

 

「死になさい!!」

「……っ!スパイラル・ツイスター」

 

 里琴は竜巻を解除して、両腕を振って高速で螺旋の竜巻を放つ。

 エルジェベートは一瞬目を見開くが、すぐに口角を吊り上げると、なんと両手を突き出してスパイラル・ツイスターを受け止める。

 エルジェベートは吹き飛ばされることもなく、螺旋の竜巻を受け切った。

 

「……っ!?」

 

 流石に里琴もその光景を目にして、驚きに硬直する。

 エルジェベートの両手は斬り裂かれて血に塗れ、袖も肘近くまで破れていた。

 

「中々の技ですわね。雄英の時にこれを使われてたら、死んでいたかもしれませんわね」

 

 エルジェベートはポケットからハンカチを出して、両手を拭きながら話す。

 拭き終わってハンカチを投げ捨てると、その両手には傷1つ残っていなかった。

 

「……再生?」

「そうですわ。あまり使いたくないですがね。無限に出来るわけでもないですし」

 

 エルジェベートは肩を竦める。そして翼を羽ばたかせて、ゆっくりと上昇する。

 

「さて、今のが貴女の必殺技と考えれば、まだ問題ではありませんわね。そう何発も撃てるものではないと思いますわ。先ほどのように飛び回るならば、もう次は撃てないでしょう?貴女に勝ち目はなさそうですわねぇ。フフフ♪」

 

 エルジェベートは嗜虐的な笑みを浮かべて笑う。

 里琴は表情を変えずに両手を握り締める。

 

「フフフ……アハハハハハハ!!前のように愛しのヒーロー様は来なくてよ!!今も脳無に手一杯ですからね!!ミルコとやらもマスキュラーを倒し切れないようですし!!貴女を助ける者はいませんわよ!!」

「……勝てばいい」

「ならば、やってみなさいな!!」

 

 エルジェベートは里琴に飛び掛かろうと構える。

 それに里琴も構える。

 

ビッグバン・アタァック!!!

『!?』

 

 どこからか声が響き、動きを止めるエルジェベートと里琴。

 するとエルジェベートの後方上空から、巨大な光の玉が高速で飛んできて、エルジェベートの背中に直撃する。

 

ドオォン!!

 

「ああああああ!!?」

 

 エルジェベートは悲鳴を上げ、煙を上げながら墜落する。

 それに里琴はもちろん、ミルコ、マスキュラー、ヒョウドル、ディスペは空を見上げる。

 戦慈は脳無が止まらなかったので、相手を続ける。

 

 空にいたのは、全身ロボットスーツに包まれていた人物だった。

 両腕両脚は青く、頭部、胴体と手足は白い。全身に白く輝くラインが走っており、足裏と背中から白い炎のようなものが噴き出していた。

 

「お前は……『ブラスタ』!!」

 

 ミルコが僅かに目を見開いて、名前を呼ぶ。

 ブラスタは腕を組んで、戦場を見下ろす。

 

「何をグズグズやっている!馬鹿どもが……!!」

 

 ブラスタは怒りを滲ませた声で吐き捨てる。

 

 エルジェベートは翼を羽ばたかせて飛び上がり、ブラスタを睨みつける。

 

「よ、よくもやってくれましたわねぇ!!」

「ふん!」

 

 ブラスタは右手を広げて、エルジェベートに向ける。

 すると、右手から光の玉が飛び出し、エルジェベートに迫る。

 

「!?」

 

 エルジェベートは慌てて飛び上がって躱す。光弾はそのまま飛んでいき、戦慈と戦っている脳無の後頭部に直撃して爆発する。

 戦慈はその隙を逃さずに、全力で右アッパーを脳無の腹部に叩き込んで、脳無を目の前のビルに吹き飛ばす。

 脳無はビルの壁を突き破って、ビル内に突っ込んでいった。

 

「小娘!!貴様は邪魔だ!!こいつは俺がやる」 

 

 ブラスタは再び腕を組んで、エルジェベートを見ながら里琴に声を掛ける。

 里琴はそれに頷いて、戦慈の元に移動する。

 エルジェベートはそれを忌々し気に見つめて、ブラスタを睨み返す。

 

「どいつもこいつも邪魔ばかりぃ……!殺してやりますわぁ!!!」

「……そいつは俺のセリフだ」

 

 ブラスタが腕を解くと、ブラスタのラインの光が白色から黄色に変わり、足裏や背中の噴射も黄色に変わる。

 その変化にエルジェベートは目を見開く。

 

「好き勝手に暴れやがって!今の俺は気が立ってるんだ……!」

 

 ブラスタの光が更に強くなる。

 

「近づきすぎて……火傷するんじゃないぞぉ!!」

 

 ドバン!と勢いよく飛び出すブラスタ。

 エルジェベートは貫手にして飛び掛かろうとすると、ブラスタが右手を伸ばしてエルジェベートに光弾を放つ。

 

「ちぃ!」

 

 エルジェベートは体を捻って躱す。

 今度は左手を伸ばして光弾を放つブラスタ。

 それをエルジェベートは右腕で払い退ける。

 

「小賢しいですわ!」

「ふん!いい気になるなよ!」

 

 ブラスタは両手を連続で離握手して、連続で光弾を放つ。

 エルジェベートは光弾の雨を弾いたり、躱していく。

 

「だから、この程度で!!」

「ハアアア!!」

「!?」

 

 ブラスタが半身になり、左手のひらに右手の甲を重ねる。そこに光が溜まっていく。

 そして両手を力強く突き出す。

 

「ギャリック・キャノン!!」

 

 突き出した両手から太めのエネルギー波が猛スピードで放たれる。

 エルジェベートは目を見開いて、両手を突き出してエネルギー波を受け止める。

 

「うううううぅ!!?こ、こんなものおおぉ!!」

 

 先ほどの里琴の竜巻同様を受け切ろうとするが、体が後ろに下がって行き、ビルの壁に激突する。

 

「っ!?くああああぁ!!」

 

 エルジェベートは両腕を振り上げて、エネルギー波を真上に打ち上げる。

 

「はぁ!……はぁ!……はぁ!……」

「どうした?俺を殺すんじゃなかったのか?」

「くっ!」

 

 エルジェベートは歯軋りをしてブラスタを睨みつける。

 

(こんな邪魔者が入るなんて……!マズイですわね……さっきの再生と今ので、かなりの血を使ってしまいましたわ……!このままではパワーが……!?)

 

「ところで貴様……体が少し萎んだんじゃないか?」

「っ!?」

 

 今のエルジェベートは170cm前後になっている。

 背中の再生で血を消費してしまったのだ。

 しかし、先ほど現れたブラスタに気づかれるとは考えてもいなかった。

 

「俺のこの『眼』は貴様を常に観測している。貴様の身長が4cm縮んだことも、両手の火傷が再生したのも見逃さんぞ?」

 

 ブラスタは得意げに、自身の眼を親指で指しながら語る。 

 エルジェベートは翼をはためかせて飛び出し、ブラスタに突撃する。

 ブラスタはそれを躱すが、エルジェベートはそのまままっすぐ飛んで行く。

 

「なに?」

 

(このままでは不利!血を吸わなければ!エサはどこですの!?)

 

 エルジェベートは一般人や弱いヒーローがいないかを探す。

 

「ブラスタ!!あいつは最近の失血死事件の犯人よ!!恐らく血を吸い取ることでパワーを上げるわ!!」

「そういうことか。ふん!下らん真似をしやがって!」

 

 ヒョウドルの声に、ブラスタは噴射を強めて猛スピードでエルジェベートを追いかける。

 1分もせずにエルジェベートに追いつき、エルジェベートの右脚を掴む。

 

「な!?」

「てやああああ!!」

 

 ブラスタは空中でジャイアントスイングしてエルジェベートを振り回す。

 エルジェベートは抵抗できずに振り回され、投げ飛ばされる。

 

「くぅううう!!ああ!!」

 

 エルジェベートは翼を広げて止まる。

 周囲を見ると、最初の場所まで投げ戻されていた。

 

「お……おのれぇ……!!」

 

 エルジェベートは目を血走らせ歯を剥き出しにして、怒りに顔を歪める。

 目の前にブラスタが戻ってくる。

 

「ん?どうした。顔が更にバケモノ染みて来てるぞ?」

「お黙りなさい!!この下等生物が!!」

「その下等生物にいいようにやられてる貴様は更に惨めだな」

 

 ブラスタはエルジェベートの言葉に余裕をもって言い返す。

 すると、ブラスタのラインが今度は赤く輝き始め、噴射の色も赤く変化する。

 

「っ!?」

「もういい。これで終わりだ」

 

 ブラスタは右手を突き出す。

 そして光弾が放たれた。

 

 

 

 

 

 戦慈はフルパワー状態でブラスタを見上げていた。

 

「かなりのパワーを持ってやがんな」

「と言っても、あのスーツありきだけどね。まぁ、今はありがたいわ。なんで岡山にいるブラスタが、ここにいるのかは分からないけど」

「……助かった」

「それはまだ分かんねぇぞ」

 

 そう言って戦慈は脳無が吹き飛んだ先に視線を移して構える。

 それと同時にドガァン!とビルの壁が吹き飛び、脳無が飛び出してくる。

 その体はやはり無傷だった。

 

「ちっ。やっぱ前よりも頑丈になってやがんな」

「前回はあれで倒れたの?」

「いや、この状態で一気に50発くらい頭に叩き込んだ」

「……良く生きてたわねぇ。まぁ、今のあいつを見れば納得も出来るけど」

「……厄介」

「だな。あと1人くらい俺と同じパワーを持ってる奴が欲しいぜ」

「流石にミルコはまだ手が放せないわね。私じゃ、マスキュラーに攻撃が効くとは思えないし」

「だから仕掛けてきたんだろうがな」

「よねぇ」

 

 すると脳無が構えたので、戦慈も構えて駆け出す。

 足裏から衝撃波を出し、一気に脳無に迫る。

 しかし、殴りかかろうとした瞬間、脳無の姿が消えた。

 

「な……!?」

「っ!?シナトベ!!右よ!!」

「!?」

 

 ヒョウドルの叫び声に、戦慈は慌てて振り返る。

 

 振り返って目にした光景は、脳無の拳が里琴の体に叩きつけられる瞬間だった。

 

 

ドガガアァン!!

 

 

 里琴は防御も出来ず、無抵抗で巨大な拳に顔や体を殴られて、後ろのビルを突き破りながら吹き飛んでいく。

 

「シナトベ!!!」

 

 ヒョウドルが全力で駆け出し、里琴の元へと向かおうとする。

 そこに脳無がまた一瞬で真横に現れて、右腕を振り被る。

 

「っ!?しまっ!?」

 

 ヒョウドルは目を見開くが、無情にも拳は高速でヒョウドルに迫る。

 

 

オオオオオオ!!!

 

 

 そこに戦慈が叫びながら、物凄い勢いで脳無にタックルして吹き飛ばす。

 戦慈の体から吹き荒れる衝撃波で、ヒョウドルも後ろに吹き飛ばされる。

 

「くあ!?」

 

 5mほど吹き飛んで、体勢を整えたヒョウドルが目撃したのは、歯を剥き出しにして体を震わせながら脳無を睨みつける戦慈の姿だった。

 

「ス、スサノオ……」

 

「ウウゥ……!ウウウウウウ!!!」

 

 戦慈は歯を食いしばりながら唸り、何かに耐えるように体を震わせている。

 

 戦慈が何に耐えているのか、ヒョウドルはすぐに理解する。

 

「……シナトベのところは私が行くわ!!だから……我慢せずに暴れなさい!!」

 

 ヒョウドルの声が届いたのかは分からない。

 しかし、それに応えるかのように、戦慈は耐えるのを止めた。

 

 

「ウウゥ!!ウゥルルルルァアアアアア!!!

 

 

 戦慈が顔を天に向けて吠える。

 

 同時に地面にクレーターが出来て、瓦礫を吹き飛ばす。

 更に戦慈のコスチュームの上半身が弾けるように破れ、戦慈の体が更に膨れ上がる。

 

 

「ウゥ!!ウゥ!!ウゥアアアアアアアアァ!!!

 

 

 更に地面が抉れ、風圧が吹き荒れる。

 すると戦慈の髪は血のように紅く、体は火傷したように赤く染まっていく。

 

「オオオオオォォ……!!」

 

 戦慈の変化にヒョウドルはもちろん、他の者達も目を見開いて動きを止める。

 

「や、やらかしたかしら……?」 

「な、なんですの……?」

「ほう?」

「……前のよりヤバそうだなオイ……」

「オイオイオイオイ!!なんだよ!?向こうも楽しそうじゃねぇか!!」

「あれがスサノオの本気か?」

 

 戦慈は歯を食いしばったまま、脳無に顔を向ける。

 

 そして僅かに腰を落とすと、

 

バァン!!

 

 戦慈の姿が消えて、クレーターが広がる。

 そして右腕を振り被った状態で、脳無の真横に現れたと思ったら、次の瞬間には腕を振り抜き、脳無は吹き飛んでいる光景に変わった。

 ヒョウドル達はまるでコマが抜けたように感じて、何が起こったのかよく分からなかった。

 

「はっ!?シナトベ!!」

 

 ヒョウドルは慌てて里琴の元に駆け出す。

 

 戦慈は衝撃波を吹き荒らしながら、脳無に猛スピードで迫る。

 脳無は地面に転がったと思ったら、体がブレて一瞬で立ち上がる。

 

 そして戦慈と脳無は同時に拳を合わせる。

 

 その結果、脳無は再び吹き飛ばされて、ビルに突っ込んでいった。

 

「馬鹿な!?奴の天敵とも言える4つの『個性』を合わせた脳無を!?」

 

 ディスペは目を見開く。

 

 戦慈は唸りながら、脳無が吹き飛んだ先を睨んでいた。

 

 

「ウゥ……ウルルルァアアアアァ!!!

 

 

 戦慈が衝撃波を吹き荒らしながら吠える。

 

 

 再び狂戦士が、暴れ出す。

 

 




ブラスタの紹介は次回で!
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