『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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物間メイン。
ちょっとオリキャラ多数出ますが、お許しを。

*庄田、鎌切のヒーローネームを修正しました。
円場ドンマイ


拳の二十七 主人公は誰?

 職場体験5日目。

 

 兵庫、参宮。

 

 物間はパトロールを行っていた。

 

「保須に広島。随分と物騒だけど、それに比べてここは平和でいいですねぇ」

「そういうことを言うと、厄介なことが起こるから気を付けるのだよ。ファントムシーフ」

「それはないでしょう。『ビショップ』」

 

 物間の前を歩くのは青いキャソックを着て、長柄のメイスを杖のように持つ茶髪ツーブロックの男。

 神父ヒーロー『ビショップ』。

 物間を指名したヒーローで、常に柔らかい笑みを浮かべている。

 

「それは何故だい?」

「僕程度にそんな主人公やトラブルメーカー的なことが起こるわけないですよ」

 

 物間は自虐を述べて肩を竦める。

 それにビショップは僅かに笑みを深めるだけだった。

 

「物語に出るヒーローならば、トラブルは新たな功績なのでしょうが……。今のヒーロー達にとっては唯の迷惑なトラブルメーカーでしかない」

「まぁ、そういう面もあるのは確かだね。されど、時に平和は人を未熟にするのも事実。物騒なことが起こった理由は、我々ヒーローが平和に慣れてしまい、悪を防げなくなったからかもしれない。そうなると、特定の人物を責めるような物言いは自分の首を絞めることになりかねないよ」

「……胸に刻んでおきますよ」

「それはありがたい」

 

 表向きは和やかな冗談を言い合っているように見えるが、物間は内心で舌打ちをしていた。

 

(相変わらず腹黒い。笑いながら密かに棘を刺してくるのだから質が悪いよね)

 

 ビショップは微笑みながら、物間の言い分や態度を痛烈に口撃してくる。それも周囲から聞けば、諭しているようにしか聞こえないのだから質が悪い。

 しかし、同類とも言える物間からすれば、微笑んでいるビショップの瞳の奥に嘲りの色が見えるのだ。

 さらに、

 

(未だに彼の『個性』の性質が分からない。本当に嫌らしいな)

 

 ビショップは一度として物間に己の『個性』の説明をしない。職場体験が始まってから、ヴィラン退治があまり起こらないのも原因ではあるが。

 正直、物間は何故ビショップが指名してきたのかが分からなかった。

 

 その時、ビショップの携帯が鳴る。

 

「おや……はい。えぇ、問題ありませんよ。……はい……はい。なるほど。では、これから向かいます」

 

 ビショップは通話を終え、携帯を仕舞って物間に目を向ける。

 

「京都に行くよ」

「はい?」

「警察からの要請でね。どうやらヴィランとの戦闘でもありそうだ。少しは有意義な職場体験にしてあげられそうだよ」

「……そうですか。僕のような未熟者が行ってもいいのですか?」

「構わないよ。未熟者を抱えて戦うなんてヒーローとして当たり前だし、君もヒーローを目指すなら良い経験になるさ。現場では未熟者なんて言い訳は出来ないからね」

「……そうですか」

 

 物間は眉間をピクピクとさせながら怒りを耐える。

 その様子をビショップは微笑みながら頷き、駅に向かって歩き出す。

 その後ろを付いて行きながら、物間は歯軋りをするのであった。

 

 

 

 

 京都。

 

 京都府警の会議室へとビショップと物間は訪れる。

 部屋に案内された先で、物間は見知った顔を見つけた。

 

「おや、円場…じゃなかったね。『エアロック』じゃないか」

「おう、お疲れ」

 

 円場は右手を上げて挨拶する。

 

 その隣には、右側だけノースリーブの赤茶の和服に黒の武者袴を身に着けた長身で黒いサムライヘアをした男がいた。背中には鍛冶槌を背負い、左手には和傘を持っている。口元には灰色の手拭いが巻かれている。

 製紙ヒーロー『タタラガミ』。

 円場の職場体験先である。

 

「どうも、タタラガミ」

「うむ。兵庫のお主も呼ばれたのか」

「京都勢で集め過ぎたら、手薄になりかねませんからねぇ」

「うむ」

 

 タタラガミは京都管轄のヒーローである。

 

 そこに新たに入室するものが現れる。

 その中にも物間達が見知った顔がいた。

 

「おいおい、まさか君もか?『マイン』」

「ああ、まさか2人も一緒とはね」

 

 庄田が頷きながら近づいてくる。

 ビショップ達にも近づく者がいた。

 

「なによ。ビショップまで呼ばれたの?」

 

 紫のショートパーマに、女子レスラーを思わせる赤紫のセパレートコスチュームと目元のマスクを身に着けた160cmほどの女性。

 露出した腹筋や二の腕は筋肉質でかなり鍛えられている。

 リングヒーロー『コンボレディ』。

 大阪管轄のヒーローで、庄田の職場体験先である。

 

「ええ、お呼ばれされました」

「随分と戦闘を意識してるわね。わざわざ県外から集めるなんて」

「そうだな」

 

 すると、扉がドバァン!!と吹き飛びかねない勢いで開く。

 全員が目を向けると、浅葱色の羽織を着た和服の集団が威圧するように入ってきた。

 そして、その中に鎌切がいた。

 

 その集団の先頭にいたのは、浅葱羽織に黒の短丈ベストに灰色袴を履いた180cmほど女性。目つきは鋭く、口には串を咥えている。茶髪ロングヘアを無造作に髪紐で束ねており、長めの木刀を左肩に担いでいた。

 武士ヒーロー『イサミ』。

 京都で活動するヒーローで、鎌切の職場体験先だ。

 

「あぁ?なんで他の地区の連中までいやがるんだ?それに雄英のガキ共ばっかりじゃねぇか」

「それは偶然ですよ」

「結構なドンパチがあるようねぇ」

 

 イサミが顔を顰めて、ビショップ達を見て、物間達にも目を向ける。

 それにビショップとコンボレディが肩を竦める。

 

 鎌切は物間達に声を掛ける。

 

「おう。元気そうだなぁ」

「君もね、『ジャックマンティス』。その羽織似合ってるよ」

「うるせぇ」

「そういや広島の話聞いたか?」

「拳暴達が巻き込まれたそうだね」

 

 物間が鎌切の浅葱羽織を揶揄い、円場が戦慈達の事を話題に挙げて、庄田が頷く。

 

「あいつらは無事なのかぁ?あのバケモンがまた出たんだろ?」

「昨日、骨抜が拳藤に会ったらしくてね。聞いたら、リカバリーガールが来て治療をしてもらったそうだよ」

「じゃあ、大丈夫か」

「しかし、リカバリーガールが来るだけの怪我はしたということだろう?脳無とやらも逃げたらしいし」

「それもそうか。保須もA組の連中が巻き込まれたんだろ?」

「そうらしいなぁ」

「全く……彼らは話題が尽きないよねぇ」

 

 物間は肩を竦める。

 庄田達はそれに特に反応はしないが、内心では同意してしまう。

 入学して僅か2か月足らずで2回も襲われれば、そう思われても仕方ないかもしれないが。

 

「それにしてもB組だけ集まるっているのもスゲェな」

「全国に散らばったのになぁ」

「勉強になったじゃないか。つまりはプロでも全国に飛び回るということさ」

「そうだな。そこで己の力を示せるかも、重要なアピールポイントということか」

 

 円場が少し安心したように笑いながら話し、それに鎌切が頷き、物間が腕を組みながら語り、庄田が頷く。

 そこにスーツ姿の警察が入ってきて、全員が椅子に座る。

 すると警察の後から、物間のような黒のタキシードを着て、黒のハットと右目にモノクルを付けたチョビ髭の男性が入って来た。

 

 その姿を見たビショップ達プロヒーローは僅かに顔を顰める。

 

「『モリアーティ』かよ」

「なるほど。これは厄介そうだね」

 

 黒幕ヒーロー『モリアーティ』。

 名前から想像出来る通り、後方支援型のヒーローである。

 

「だから戦闘系ヒーローばっかり集められてたのね……」

「ちっ。めんどくせぇな」

 

 コンボレディとイサミは顔を顰める。

 他のプロヒーロー達の反応に、物間達は首を傾げる。

 

「急な要請に応えて頂き感謝する!早速だが、今回の概要を説明させてもらう!」

 

 会議室正面のスクリーンに、屋敷のような建物が表示される。

 

「今回集まってもらったのは、海外のヴィラン団体と京都の指定ヴィラン団体の接触が確認されたからだ。海外のヴィラン団体は、残念ながらすでに出国してしまったがな」

「……だったら、なんで集められたんだよ?」

「武器の仕入れを確認したからだ。恐らく保須や広島の事件を利用して、暴れるつもりらしい。潜入捜査官から情報が上がった」

「なるほど」

「ここの蔵に武器が運ばれたのも確認済みだ!それを押さえて、構成員を捕縛する!ヒーローの皆さんには、構成員の中の危険人物の対処をお願いしたい!」

「……それでモリアーティか……」

「そういうことですなぁ」

 

 警察の話を聞いて、タタラガミがようやく納得し、モリアーティが髭を撫でながら頷く。

 

 モリアーティの『個性』は《GPS》。

 対象の顔と本名を知ることで、居場所を知ることが出来る。ただし、位置を知るには地図が必要で、更にモリアーティがその場所から半径5km以内にいなければならない。

 今回は潜入捜査官からの地図の提供があったため、モリアーティの力が発揮出来るのだ。

 

「では、早速現場へと向かう!!雄英生に関しては、そちらに任せるが……どうされる?」

 

 警察官の言葉にプロヒーロー達は顔を見合わせる。

 そこにイサミが声を上げる。

 

「はっ!職場体験に来てんだぞ?ここでのうのうと待機させるとかありえねぇだろ」

「けど、大丈夫なの?怪我でもしたら、問題になるかもよ?」

「雄英がその程度で問題視するかよ。あたしらの指示で動けばいいだろ。ジャックマンティス!お前は待機したいのか!?」

「冗談だろ局長ぅ……!ここで斬りに行かねぇとか、何しに来たのか分かんねぇよぉ」

「よく言った!じゃあ、うちは連れてくぜ!」

 

 コンボレディの言葉を、イサミは鼻で笑う。そして鎌切に声を掛けて、鎌切も気合を入れて答える。

 それにイサミは笑みを浮かべて、立ち上がる。

 

 イサミの言葉にビショップ達は苦笑し、物間達に顔を向ける。

 

「どうするんだい?ファントムシーフ。君はこのまま『お客』でいたいかい?」

「それを言われると、行くしかないですよねぇ。本当に腹黒い」

 

「エアロックは?」

「行きます!!自分くらいは守ってみせるっす!」

「なら、いいか」

 

「マインはどうする?」

「己も現場を見させて頂きたい」

「オッケー」

 

 物間達も参加することを決める。

 そして現場に向かう物間達。

 途中でイヤホン型通信機を渡されて、耳に装着する。

 

「これで諸君らを操らせてもらおう」

『操るとか言うんじゃないわよ』

 

 モリアーティが指令本部となっているトラックの中で、地図を広げてコーヒーを飲み始める。

 地図の上には黒と白のチェス駒が並べられており、黒の駒を地図内に配置していく。

 

 そして突入準備が整う。

 

「それではイッツショータイムだ。ターゲットは全員ステージ内にいる。キングも問題なし」

『了解。それでは令状を読んで突入する』

「そうか。ちなみに……扉の向こうに『ルーク』が待っているぞ?」

『な!?』

「では、始めようか。タタラガミが担当だ」

『承知した』

 

 モリアーティの言葉に現場の緊張感が高まる。

 タタラガミは腰のポーチから紙を丸めた玉を2,3個取り出す。

 円場はその後ろでゴクリと唾を飲んで、緊張に耐える。

 そこに物間が円場の肩に手を置く。

 

「落ち着きなよ、エアロック」

「ああ、サンキュって、今のは《コピー》のためだな!?」

「おやおや、バレたか」

「まぁ、いいけどよ」

「君の『個性』は優秀だからね。助かるよ」

「なら、いいけどな」

「行くぞ!!」

 

 警察官の号令に、物間もビショップの元に戻る。

 

「私達は入って左だよ。遅れないように」

「了解です」

 

 そして、警察官がインターホンを押して、すぐに玄関扉の向こうで発砲音が響いた。

 

「!!」

 

 タタラガミは左手に持っている和傘を開く。

 扉を貫通した弾丸が和傘に当たるが、キン!キィン!と金属音を響かせて弾かれる。

 

 タタラガミの『個性』は《鉄紙》。

 一度触れた紙を息を止めている間だけ、鉄の硬度に変えることが出来る。

 その後ろから円場が息を強く吹いて、空気の壁を作る。

 

「上から投げろ!!」

 

 武装した警官達が、塀を越えるように缶のようなものを投げ入れる。

 少しすると、中からプシューと煙が上がり始める。

 

「な!?ゴッホ!!ゴホッ!」

「目、目がぁ!?」

「さ、催涙弾!?」

 

 屋敷の中で咳込む声が響く。

 それにタタラガミが扉を蹴り壊して、屋敷に飛び込んで手に持つ紙玉を投げる。

 その横をイサミやビショップ達が駆け抜けていく。

 

「ごえ!?」

「ぎゃ!?」

「エアロックは自分の防御に集中してろ」

「は、はい!!」

 

 和傘を広げたまま、連続で紙玉を取り出して銃を持っている者達に投げつける。もちろん投げた瞬間に息を止めて、鉄に変える。

 するとタタラガミの前に、刀を構えたリーゼントの男が立ちはだかる。

 

「なんじゃあテメェごらぁ!!!」

「ヒーローに決まってるだろう。で、貴様が《ハンマー》の槌沼だな」

「それがなんじゃあ!!」

 

 槌沼が腕をハンマーに変えて振り被る。

 その時、

 

「フッ!」

 

ガァン!!

 

「なっ!?」

 

 円場が強く鋭く息を吹く。槌沼の腕が振り下ろされる直前に、空気の壁で攻撃を阻害する。

 それを見たタタラガミは和傘を捨てて、背中の槌を抜く。それは紙を束ねて作ったものだった。

 息を止めて、紙槌を両手で握って全力で振るう。そして槌沼の横顔に叩きつける。

 

「ぶへぇ!?」

 

 槌沼は横に倒れる。

 タタラガミはすぐさま和傘を拾い、広げた状態で上から抑え込む。

 そこに警官達が駆けつけて、槌沼を押さえ込む。

 その隙に盾を構えた警官やイサミのサイドキック達が銃を持っている男達を押さえ込む。

 

「ルークは押さえた」

『流石だね。武器庫の方に向かってくれるかい?イサミ達もそっちに向かってる。そっちには『ビショップ』がいるから、手助けしてやってくれ』

「了解だ。行くぞ、エアロック」

「はい!」

「あぁ、それと……さっきのサポートは見事だった」

「あ、ありがとうございます!!」

 

 タタラガミの褒め言葉にテンションを上げる円場。

 その後も、空気の壁でタタラガミをサポートしていくのだった。

 

 

 

 コンボレディとビショップは屋敷内部を進んでいく。

 屋内では拳銃は使わないようで、特に問題もなく倒していく。

 

 ビショップはメイスで、コンボレディは殴蹴で、庄田と物間は《ツインインパクト》で倒していく。

 

「へぇ、そっちの子は人の『個性』を《コピー》出来るのね」

「まぁ、触る必要があるので、そう簡単ではないようだけどね」

「それに5分間だけですからね。そろそろエアロックとジャックマンティスの『個性』は時間切れになりそうです」

「じゃあ、私の『個性』貸してあげるわ。ツインインパクトとは相性いいでしょ?」

「助かりますねぇ」

『すぐ先の部屋に『ナイト』と『クイーン』がいるようだ。気を付けたまえ』

 

 モリアーティの声に私語を止める物間達。

 そして目の前の扉を蹴り破って、中に突入する。

 そこは大広間のようでかなりの広さがあった。

 

 そこに2人の男女が立っていた。

 

「ここから先は行き止まりだ」

「そやねぇ。お帰り願いますよって」

 

 丸坊主でスーツの男と、花魁の格好をした煙管を咥えている女性。

 

「……《竜爪》の爪野。それに《固煙》の煙河だね」

「こっちのことはバレてるか」

「せやろねぇ。これは厄介やなぁ」

 

 ビショップに名前を呼ばれたことで、爪野は両指を竜の爪のように巨大に変化させて構える。

 それと同時に煙河が口から煙を噴き出して、吹き矢のように飛ばしてきた。

 物間は強く息を吐いて、コンボレディ達の前に空気の壁を作る。

 煙はガン!と空気の壁に当たって床に落ち、また気体に戻る。

 

「どうもね!」

「これで打ち止めですけどね」

「おやまぁ。簡単に防がれてしもた」

 

 コンボレディの礼に、物間は肩を竦める。

 煙河は軽く目を見開く。

 それに爪野は舌打ちをして、駆け出そうとする。

 その時、

 

「あぁ、ところで」

 

 ビショップが声を掛ける。

 

「本当にその先は行き止まりなのかい?」

「そうだって言ってるだろぉ!?」

 

 ビショップの問いかけに、イキりながら答える爪野は急に体が重くなり、片膝を突く。

 それに煙河や物間達も目を見開く。

 

「おや?来ないのかい?それとも立ち上がれない?」

「あぁん!?舐めんなってぇ!?」

 

 ビショップの挑発に爪野は再び叫びながら立ち上がろうとしたが、更に体が重くなり四つん這いになる。

 

「立ち上がれないみたいだねぇ。もしかして訳が分からなくて、怖がってるかい?」

「んだとぉ!?ぐぅ!?」

 

 爪野がビショップを睨もうとすると、更に体が重くなり、遂にうつ伏せになる。

 

「な、なんやのん?」

「そっち気にしてる場合?」

「!?ぐぅ!?」

 

 煙河が爪野の様子に混乱していると、コンボレディが煙河の隙をついて殴りかかる。

 

「ほらほら!!行くよ!!」

「くっ!?あぅ!?」

 

 煙河が煙管を吸いこもうとするが、その前にコンボレディが張り手を連続で放ち、邪魔をする。

 

「あんたの煙は吹かないとダメなのよね!?そんな隙は与えないわよ!」

「だっ!?づぅ!?な、なんや!?強ぅなってだお!?」

「あら?知らないの?私、コンボレディの『個性』は《ヘビィコンボ》!連続で攻撃を当てれば当てる程、攻撃が重くなるのよ!!」

「なぁ!?」

 

 コンボレディの《ヘビィコンボ》は、自分以外の誰かに触れ続けることで、パワーを上げることが出来る。

 ただし一度攻撃を始めると、30秒以内に誰かに次の攻撃を当てないとパワーがリセットされる。

 最低でも掠ればいいので、スピード重視で攻撃することを意識している。パワーが上がれば掠るだけでも十分だからだ。

 

「終わりぃ!!マイン!!」

「了解。《ツインインパクト》、解放(ファイア)」 

「ぎゃふぉん!?」

 

 最後は顔面に張り手を突き刺す。それと同時に庄田が呟くと、コンボレディの張り手から衝撃が放たれて煙河の顔面を更に攻撃する。

 煙河は仰け反って鼻血を噴きながら倒れる。

 倒れた隙にコンボレディは煙管を踏み砕いて、煙河を抑え込む。

 

「ビショップ!!そっちは!?」

「もう終わるかな。頑張ってね、ファントムシーフ」

 

 コンボレディがビショップに目を向けると、爪野の頭を物間がトントンと軽く拳骨を落としており、ビショップはその後ろで悠々と微笑んで見守っていた。

 

「……何やってるの?」

「いや、せっかくだから手柄でもあげようかなってね。それに彼の方が今は倒すのに適してるから」

「適してる?って、私の『個性』コピーしてるんだっけ」

「それだけじゃないよ」

「え?」

「もういいんじゃないかい?」

「そうですねぇ」

 

 ビショップの言葉にコンボレディは首を傾げる。

 それにビショップは笑みを深めて、物間に声を掛ける。物間は呆れながら立ち上がり、爪野を見下ろす。

 そして、

 

「《ツインインパクト》解放(ファイア)

 

ドッパァン!!

バキャ!!

 

「ぐぼぉあ!?」

「うわぁ!?」

 

 物間が呟いた瞬間、爪野の後頭部に物凄い衝撃が走り、床を突き破って上半身が床に突き刺さる。

 それにコンボレディは驚いて声を上げる。

 

「ほう。やはり相性はいいようだね」

「そうですね」

「うわぁ……ここまで凄くなるの?」

「みたいですねぇ」

 

 《ヘビィコンボ》で通常打撃の威力を高め、最後の攻撃を《ツインインパクト》に設定する。それを解放すれば、設定した打撃の数倍の威力で衝撃が放たれる。

 

「エ、エグゥ……!」

「私の《懺悔》やメイスではトドメはさせませんからねぇ」

「トドメって……」

「まぁ、構いませんよ。それにしても《懺悔》ですか。怖い『個性』ですねぇ。腹黒いのも頷けますよ」

「褒め言葉として受け取っておこうかな」

 

 ビショップの『個性』《懺悔》。

 ビショップの問いかけに虚偽で答えると、体が重くなっていく。ただし、ビショップが触れるとリセットされてしまう。

 なので今も物間にトドメを刺させたのだ。

 

「こちらビショップ。『ナイト』と『クイーン』は貰いましたよ」

『了解だ。その先に『キング』がいる。気を付けたまえよ』

「まぁ、大丈夫でしょう」

『そうかね。まぁ、頑張ってくれたまえ』

 

 通信を終えたビショップは先へ進み始める。

 物間は肩を竦めて、それに続く。

 

「コンボレディはここで待機で」

「分かったわ」

「気を付けて。ファントムシーフ」

「君もね、マイン」

 

 ビショップ達を見送ったコンボレディと庄田は、警察が来るまで待つ。

 

「嫌らしい2人ねぇ」

「まぁ……」

「ファントムシーフだっけ?あの子、随分と歪んでるわねぇ。まぁ、あの『個性』じゃあ色々言われたんでしょうねぇ。1人じゃ無力だし、ヴィランに触れられても、使える『個性』か分からないし」

「……そうですね」

 

 庄田はコンボレディの言葉に、体育祭で出会った普通科の心操の事を思い出した。

 

(彼も『個性』の特性故に実技入試を突破出来なかった。それでも諦めずにヒーローを目指している。彼も少し屈折していたようだが……そうか、物間も同じなのか)

 

 心操と言う存在を通して、庄田はようやく物間と言う人間を少し理解出来た気がした。

 

(周囲への羨望と嫉妬。けれどもヒーローを目指すと決めた以上、それを見せるのは情けない。そんなヒーローはカッコ悪い。そんなところだろうか)

 

 それは自分も感じたことがある。いや、誰もが一度は感じることだろう。

 しかし、心操や物間はヒーローを目指し続ける限り、それと向き合い続けなければいけない。

 その辛さは想像を絶すると、庄田は思った。

 

(無力感を常に感じている。拳暴がいるから尚更感じるだろうな。彼のあの言動はその不安を隠すためか)

 

 物間と言う人間の強さと弱さを知った庄田。

 

 そこに芽生えた思いは尊敬と、

 

(だからって、あそこまで嫌味に特化しなくてもいいとは思うが)

 

 という呆れだった。

 

 

 

 

 

 その頃、鎌切は蔵を目指して、走っていた。

 

「あれだな!!」

 

 イサミが蔵を発見して、一目散に走り始める。

 すると、やはり構成員達が立ち塞がり始めた。

 

「行かせねぇ!」

「止まれヤァ!!」

 

「うっせぇ!!」

 

 イサミが木刀を振る。

 すると風が巻き起こり、構成員達を吹き飛ばす。

 

「「「ぎゃあああ!?」」」

 

 イサミの『個性』は《剣風》。

 棒状の物を振ることで、風を巻き起こすことが出来る。

 連続で振るって蔵までの道を開く。

 

 一気に駆け抜けると、蔵の前に十字槍を持った男が立っていた。

 

「あいつが《旋棒》の回槍(かいそう)だ!気を付けろよ!」

「了解ぃ!」

 

 回槍はイサミが近づくと構えて、握っている槍をギュルルル!と回転させる。

 

「ここは行かせへんでぇ!!」

「通らせてもらうに決まってんだろぉ!!」

 

 イサミが木刀を振って風を飛ばす。

 それを回槍は躱し、イサミに飛び掛かる。イサミも回槍の正面を避けるように動く。

 しかし、

 

「横に避ければ逃げれるとでも思たんかぁ!?ドアホがぁ!!」

 

 槍の回転を止めて、今度は頭の上に掲げてバトンのように回し始める。

 イサミは下がって躱すが、回槍はもちろん追いかける。

 

「往生せいやぁ!!」

「お前がな」

「あぁん!?」

「ヒャッハアア!!」

「!?」

 

 回槍が一気に勝負を決めようとした時、後ろから鎌切が迫り、左前腕から刃を生やして腕を振る。

 回槍は慌てて離れるが、鎌切も追い打ちをせずに下がる。

 

「はぁ?なんや、なんも切れてへんやんけ?」

「斬ったぜぇ?槍の方だけどなぁ」

「はぁ!?」

 

 鎌切の言葉に慌てて、槍に目を向けると切っ先が切り落とされていた。

 

「し、しもたぁ!?」

「じゃあな!天誅!!」

「ぎゃあああ!?」

 

 目を見開いて驚く回槍に、イサミが木刀を振って突風を叩きつけて、壁に吹き飛ばす。

 壁に頭から叩きつけられた回槍は、壁に突き刺さって気絶する。

 

「終わりだな。いい動きだったぜ、ジャックマンティス」

「そりゃあ、あんだけ扱かれたらなぁ」

 

 鎌切は今日までパトロールにも連れていかれずに、ひたすら鍛錬させられていたのだ。

 初めてのパトロールに出れたと思ったら、まさかの今回の要請が来て、連れてこられたのだった。

 正直、よく動けたなと思っている。

 

 その後、タタラガミと円場、イサミのサイドキックも駆けつけて、蔵の捜査を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 ビショップと物間は一番奥の部屋に足を踏み入れていた。

 

 そこには60歳くらいの着物を着た男性が、刀を持って睨んでいた。

 

「あなたが組長ですか」

「そうや。ようやってくれよったなぁ。おちゃらけた偽善者連中が……!」

 

 組長は目を血走らせてビショップ達を睨みつけていた。

 

「おちゃらけた偽善者ですか」

「そうやろが。資格持っただけで、好き勝手暴れられるんやろ?実力があれば、性格が悪かろうが目を瞑ってもらえるんやろ?それでヒーローを名乗るとか偽善以外に何があんねん」

「そうですねぇ。好き勝手ではないですが、実力があれば目を瞑ってもらえることはありますねぇ」

「ほれ見ぃ!」

「それはあなた達も一緒ですがね。指定ヴィラン団体とはいえ、余計なことをしなければ目を瞑ってもらえていたのに。下手な夢を見るから、こうなるのですよ。自分が特別だとでも思ってましたか?」

「なんやとぉお!?」

 

 組長は激高して、斬りかかろうとした瞬間、体が重くなって膝を突く。

 

「な、なんや!?『個性』か!?」

 

 すると、持っていた刀が突如へし折られる。

 目を見開いた組長が、目だけで上を向くと、そこには右手の爪を巨大な爪に変えた物間が薄ら笑って立っていた。

 

「そ、そりゃあ爪野の……!?」

「よさそうだったので貰ったよ」

「な……!?」

 

 目を見開いた組長に、物間は右手を戻して問いかける。

 

「驚いたかい?」

「ふ、ふん!その程度ぉ!?」

 

 組長は物間の問いかけに強がると、更に体が重くなった。

 

「簡単に使いこなさないでくれないかい?」

「いいモノを見ると、つい……ね」

 

 物間はビショップの苦情を肩を竦めて躱す。

 

「僕は偽善者だけどさ。悪か偽善かなら、偽善でいいさ。だって、まだカッコいいだろ?子供の僕がこうして、貴方のような人を見下ろすことが出来るのだからねぇ」

 

 物間は組長を見下ろしながら語る。

 組長はそれを盛大に顔を顰めるだけで、口を開かなかった。

 ビショップはそれに苦笑し、通信を始める。

 

「こちらビショップ。組長は押さえましたよ」

『そろそろ他の者も着くよ。それにしても彼は『個性』は使わなかったのかい?』

「使いませんねぇ」

『ふむ。やはりか……』

「というと?」

『彼は《増殖》という『個性』持ちだったはずなのだが、数年前から使わなくなったらしいのだよ』

「ほう……」

 

 ビショップも気にはなったが、そこに警察官達が駆けつけたので、聞くことは出来なかった。

 聴取でも聞かれるだろうと思ったので、特に無理して聞かなかった。

 

 ビショップは屋敷を出ながら、物間に声を掛ける。

 

「どうだったかい?得られるものはあったかい?」

「そうですねぇ。まぁ、そこそこですかね」

「それはよかったよ。ところで……」

「はい?」

「君はヒーローになれると思ってるかい?」

「……もちろんぉ!?」

 

 ビショップの言葉に答えると、物間は体が重くなった。

 それはつまり、

 

「思ってないんだね。まぁ、君の『個性』は特殊だ。いろいろ言われてきたんだろうさ」

「……」

「僕も言われてきたからねぇ。どんなに体を重くしても、捕まえようとすればリセットされてしまう。結局は1人では何もできないってね」

「っ!」

 

 ビショップの言葉に下唇を噛む物間。ビショップは物間の肩に触れて、解除する。

 

「けど、僕はヒーローになった。なることが出来た」

「……だから僕もなれるとでも?」

「それは知らないよ。僕は君じゃないんだから。君がヒーローになれるのか、ヒーローにふさわしいかなんて知らないさ。分かったつもりにはなれても、分かることはない」

「……」

「君は言っていたね。主人公でもトラブルメーカーでもないと」

「それが何か?」

「じゃあ、君の人生は誰が主人公なんだろうね?」

「っ!?」

 

 ビショップの言葉に、物間は核心を突かれたように目を見開く。

 ビショップは相も変わらず胡散臭い微笑みを浮かべたままだ。

 

「君の主人公は『物間寧人』だ。ヒーローも、雄英生も、所詮はその時々の役柄でしかない。つまり君というヒーローは君しかなれない。他人が決めれることじゃない。所詮、僕や拳暴君、オールマイトは君の物語にちょっとだけ現れる脇役さ。決して君の物語の主役にはなれない」

「……」

「他者を妬み、羨んだなら、次は自身を磨かないとね。いいかい?輝かせるんじゃない。磨くんだ。そうすれば、光が当たれば勝手に輝いてくれる。強がる必要も怖がる必要もない」

「……簡単に言ってくれますね」

「脇役だからね。君に『ヒーローになれない』と言った奴と何も変わらない。たった1週間しか君の物語に参加しない僕に、何を求めているんだい?」

「……」

「けど、回想キャラとして僕を使うかは君のキャスティング次第だ。他人と言う脇役を、どうキャスティングするかを決めるのは君なんだ。それで君の物語がどう変わろうとも、その責任を取るのも君自身だ。劇の評価は、主役の評価。ただそれだけのこと。けど……人生一度の劇なら、好き勝手やった方がいいと思わないかい?」

 

 ビショップの言葉に、物間は顔を俯かせて考え込む。

 その様子にビショップは微笑んだまま、前を向いて歩き出す。

 

「この職場体験とて、有意義かどうか決めるのも君自身。今日という物語は、もう終わる。君はどう評価する?明日のキャスティングは決めてるかい?君は君が出来ないところを知っている。なら、君に出来ることと君に出来ないことが出来る脇役を見つけないとね」

「……結局は他人ですか」

「当然だよ。()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()。最低でも1人、助けるべき人が要る。助ける人がいないのに、ヒーローがいても仕方ないと思わないかい?」

 

 ビショップの言葉に、物間は目を見開いて固まる。

 

「だからこそ、言おう。君はヒーローになれる。君は周りに人がいればいる程、輝ける人間なのだからね」

「っ!……ありがとうございます

「ん?何か言ったかい?」

「……いいえ。クサイですねって、思っただけです」

「それは酷いな。早く帰って風呂にでも入って……そうだね。今日はステーキでも食べに行こうかな?」

「流石はヒーロー。太っ腹ですねぇ」

「何言ってるんだい?自分の分は自分で払っておくれよ。主役が奢られるって恥ずかしくないかい?」

「主役ですからね。脇役に奢らせるなんて最高じゃないですか」

「……捻くれてるねぇ」

「鏡でも出しますか?」

「遠慮しとこうかな」

 

 こうして、怪盗は神父に道を示されていく。

 

 怪盗が改心出来るかは、今後の物語次第である。

 

_______________________

人物紹介!(簡単バージョン)

 

・バネトビ(32歳)

 

 身長:175cm

 

 追跡や高所救助で活躍する。

 

 『個性』:《バネ脚》

 両脚をバネのように変化させることが出来る。

 

 

 

・ビショップ(27歳)

 

 身長:171cm

 

 制圧や捕縛で活躍する。

 常に微笑みを浮かべている腹黒。

 

 『個性』:《懺悔》

 ビショップの問いかけに、嘘で答えると体が重くなる。

 しかしビショップが触れると解除されてしまうため、物間のように『1人じゃ役に立たない』と言われてきた。

 

 

 

・コンボレディ(26歳)

 

 身長:164cm

 

 制圧で活躍する。複数相手が特に強い。

 

 『個性』:《ヘヴィコンボ》

 連続で他人に触れ続けることでパワーが上がる。無機物には効かない。

 30秒以内に次の攻撃を当てないとリセットされる。

 

 

 

・タタラガミ(36歳)

 

 身長:188cm

 

 制圧、救助、警護などマルチな活動をしている。

 副業で和紙職人をしている。

 

 『個性』:《鉄紙》

 一度触れた紙を、息を止めている間だけ鉄の硬さを持たせる。

 ポーチには折り紙の手裏剣や紙飛行機が入っている。

 

 

 

・イサミ(29歳)

 

 身長:186cm

 

 ヴィラン退治、警護をメインに活動している。

 新選組のファン。

 

 『個性』:《剣風》

 棒を振ると、風を巻き起こすことが出来る。

 棒の長さは最低でも30cmは必要である。

 

 

 

・モリアーティ(44歳)

 

 身長:173cm

 

 索敵、追跡、作戦指揮がメイン。

 というか、戦闘が出来ない。

 

 『個性』:《GPS》

 素顔と本名を知ることで居場所を知ることが出来る。ただし、対象の居場所から半径5km以内であること。そして、居場所の地図または見取り図が必要となる。

 

 




円場:エアロック:これが限界

次回は鉄哲。切島君も頑張ります!
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