『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

33 / 76
拳の三十二 演習試験その1

 試験の2日前。

 演習試験の会議にて、ブラドは資料を見ながら説明をする。

 

「鱗は近距離と遠距離対応が可能で、状況判断も出来る。しかし、多対一になった場合では、攻撃が一歩遅れる傾向がある」

「四方八方に飛ばせるわけではないものね」

「その通り。それに加えて鱗の銃撃に頼る傾向にあり、近接戦闘がやや疎かになりつつある」

「飛び道具に頼りたくなるのは仕方ないですね」

 

 ブラドの言葉にミッドナイトと13号は納得するように頷く。

 

「そして、角取は現在自在に操れる角は2本。4本以上になると大きく精度が下がる。更に『個性』の発動中は集中して、無防備になりやすい」

「ツマリ、私ガ分身デ囲イ込ンデ、嫌デモ接近戦ニナルヨウニスレバイイノダナ?」

「ああ。それによって、ペアのフォローもしつつ、自身の弱いところをどうカバーしてもらうかが、試験攻略のポイントになると考える」

「承知シタ」

 

 

 

 そして試験本番。

 

「サァ、オ前達ノ力ヲ見セテモラオウ!!」

 

 鱗とポニーを囲むように、20人近くのエクトプラズムが現れる。

 

 鱗は即座に両腕を広げながら、籠手から鱗を連射する。

 それにエクトプラズムは分身同士を盾にするように躱し、分身を減らしながら鱗に蹴りかかる。

 

「くっ!」

 

 鱗は全身を鱗で覆い、エクトプラズムの蹴りを防ぎながら下がり、再び鱗銃を発射する。

 ポニーは角2本を自身の周囲に飛ばして、エクトプラズムの蹴りを何とか躱しながら、1人ずつ角を刺して倒していく。

 しかし、すぐに新しく分身が出現していく。

 

「このままジャ、ココでストップデス!」

「だな!!ポニー!!飛べるか!?」

「イエス!」

 

 ポニーは角に飛び乗って、飛行する。

 両手で鱗の襟を掴んで、一気に上昇して2階に上がる。

 

「ホウ?思ッタヨリ、パワーガアルナ」

 

 エクトプラズムは、ポニーの角の力に感心しながら分身を解除する。

 ポニーは角に乗ったままで、鱗を下ろして通路へと向かう。

 

「やっぱ、あの数は脅威だな」

「デスネ!」

「狭い場所で囲まれるのはヤバイ……!」

 

 急いで移動しようと鱗が駆け出した瞬間、目の前にエクトプラズムが2人出現する。

 鱗は目を見開くと、2人のエクトプラズムは挟み込むように蹴りを同時に振るう。鱗はそれをギリギリで鱗を纏いながら両腕でガードする。

 

「ぐっ!がっ!?」

 

 しかし、直後に後頭部に衝撃が走って、前のめる。

 鱗の後ろにはもう1人のエクトプラズムが出現しており、右脚を振り上げていた。

 

「悪イガ……分身ハ任意ノ位置デ出現出来ルゾ」

 

 ポニーは鱗の援護に行きたかったが、ポニーの周囲にもエクトプラズムが出現して、駆けつける事が困難だった。

 

「シィット……!」

「ドウシタ?ソノ程度ナノカ?」

 

 ポニーは顔を顰めて、エクトプラズムの蹴りを躱して反撃する。

 鱗もすぐさま起き上がって、鱗銃を発射したり鱗を纏った拳で殴りかかって反撃を開始する。

 

 

 その様子を一佳達は、モニタールームで手に汗握って応援していた。

 

「頑張れ!鱗!!ポニー!!」

「遠くからでも出せるなんて……!」

「それに分身はやっぱり重り付けてねぇな」

「……反則」

「ん」

「正直、ハンデがハンデになりきってないんじゃ……?」

「ハンデを利用するように動けってことだろうよ」

「ウラメシい」

 

 鉄哲が叫び、一佳はエクトプラズムの『個性』に顔を顰める。

 その横で戦慈が腕を組んで、分身のエクトプラズムの脚に重りがないことを見抜き、里琴と唯も頷く。

 それに切奈が首を傾げるが、それに戦慈が反論して、柳が顔を顰める。

 

「囲まれた状況をどうにか出来れば……!」

「それでも厳しくねぇか?」

「いや……囲いを抜ければポニーなら一気に行けるはず!」

 

 一佳と切奈の言葉に、鉄哲や泡瀬は首を傾げる。

 ちなみに戦慈も内心「なんかあったか?」と首を傾げていた。

 

 

 

 なんとか鱗と合流出来たポニー。

 

「いけマァスか!?」

「なんとかな……!」

「なら、ちょっとガマァンデス!」

「は?うぉ!?」

 

 鱗の背中に張り付くポニー。

 そして自身の両脇に角を挟むように差し込んで、前に鱗ごと押し飛ぶ。

 鱗は一瞬慌てるも、すぐに意図を理解して前方に鱗銃を乱射する。

 エクトプラズムの分身を倒しながら、前に飛び進む2人は一気に囲みを抜ける。

 

「助かったぜ!!」

「イエェイ!!」

 

 ポニーは鱗を下ろして、後ろを振り返る。

 そして両手を角の横に添えて、エクトプラズムに向けて、更に2本の角を飛ばす。

 

「何してるんだ?まだ4本以上は上手く操れないんだろ?」

「ハイ。バット……ストレートショットなら関係ありまセーン!!」

 

 直後、ポニーは連続で角を飛ばして、エクトプラズムに向けて、高速でまっすぐに飛ばす。

 10本近くの角が、エクトプラズム集団に襲い掛かる。

 

「ナニ!?」

「ヌゥ!?」

 

 エクトプラズム達は角が突き刺さり、消滅していく。

 それに鱗も目を見開いて驚く。

 

「あそこまで飛ばせるのか……!」

「今のうちィデス!」

「おう!」

 

 エクトプラズムを全滅させた鱗とポニーは、一気に進む。

 途中で再び囲まれそうになったが、2人は背中合わせになり、ポニーが前方に角を乱射し、鱗は後ろに鱗銃を連射する。

 

「まだ行けるか!?」

「イエス!鱗はァ!?」

「大丈夫だ!」

 

 そして通路を抜けると、再び吹き抜けになっているエリアに出た。

 その1階にエクトプラズムが立っており、後ろに校長の絵が描かれたゲートがある。

 

「あれが本体か!」

「一気に行きマァスか!?」

「ああ!!ポニーはそこから角を連射してくれ!俺が前に出る!」

「ハイ!」

 

 ポニーは2階から角を飛ばす。

 それをエクトプラズムは躱し、その隙に鱗が下に飛び降りる。

 

「マサカ、彼女ノ角ガアソコマデ連射出来ルトハ……」

「はあああ!!」

「クッ!」

 

 鱗が鱗銃を連射しながら突っ込んでくる。

 

(ココマデ近ヅカレテシマッテハ、『ジャイアントバイツ』ハ使エヌ!!)

 

 エクトプラズムは口から煙のようなものを吐き出して、鱗を囲むように分身を10体ほど生み出す。

 分身達は一斉に鱗へと走り迫る。

 

「くそっ……!!」

 

 鱗は腕を広げて鱗銃を撃ち続ける。

 エクトプラズム本体は2階に目を向けるが、そこにはポニーはいなかった。

 

「ヌ!?ドコニ……!!」

 

 ポニーを探そうと右を向いた瞬間、目の前に2本の角が飛んできていた。

 エクトプラズムは右脚を振り上げて、1本は蹴り飛ばすも、もう1本は止められずに左肩に角が当たって後ろに押し飛ばされる。

 

 エクトプラズムの視界には、2階から飛び降りるポニーの姿があった。

 ポニーはすかさずエクトプラズムに飛ばした角のコントロールを放棄して、新しく2本の角を飛ばして足の裏に移動させて乗る。

 そして一気にスピードを上げて、ゲートへと向かう。

 

「これで……フィニッシュ!!」

 

 ポニーは高速でゲートに飛び込む。

 それと同時にサイレンが鳴る。

 

 

『角取・鱗チーム 条件達成!』

 

 

 アナウンスが響いたのと同時に、エクトプラズムの分身が消える。

 鱗はポニーの元に駆けつける。

 

「やったな!」

「コングラチュレーション!!」

 

 2人はハイタッチする。

 そこにエクトプラズムも近寄ってくる。

 

「見事ナ連携ダッタ。最初ノ方ハ少シ反省点ハアルガ、最後ハ互イノ強ミヲ良ク考エテ動イテイタ」

「ありがとうございます!」

「ありがとござァいマァス!」

 

 エクトプラズムの言葉に、鱗とポニーは笑顔で頭を下げる。

 

 

 モニタールームでも喝采が上がっていた。

 

「よっしゃあ!!」

「やったねポニー!!」

「あそこまで連射出来たのか」

「ああ。普段の訓練では、あそこまで連射するほどの場面が無かったそうでさ」

「まぁ、確かに訓練では被害出さないようにしないといけないことが多いもんな」

 

 鉄哲と切奈が右手を握って喜ぶ。

 戦慈はポニーの連射に感心し、それに一佳が今まで見せなかった理由を話して、泡瀬も納得するように頷く。

 

「さて、ちょっと行ってくるかね」

 

 リカバリーガールが椅子から降りて、モニタールームを後にする。

 

「次は宍田と円場か……」

「相手はプレゼントマイク先生」

「ん」

「戦闘が出来るタイプじゃねぇからな!宍田なら行けるぜ!!」

「だね」

 

 泡瀬が次のチームの名前を上げて、柳が対戦教師を言う。

 鉄哲は右手を握り締めて、切奈もそれに同意する。

 

 しかし、戦慈は首を傾げる。

 

「それはどうだろうな」

「……楽観」

 

 里琴も戦慈の言葉に同意するように頷く。

 それに一佳達は顔を向ける。

 

「なんでだ?プレゼントマイク先生は、近接戦闘出来るタイプでも攻撃型の『個性』でもないぜ?」

「そうだぜ!!大声上げる『個性』じゃねぇか!!」

 

 泡瀬が首を傾げて、鉄哲が叫ぶ。

 

「別に攻撃する必要はねぇ。宍田達に攻撃させなければいいだけだかんな」

「「「「え?」」」」

「ん?」

 

 戦慈は腕を組んだまま答える。

 それに一佳達は更に首を傾げる。

 

「まぁ、見てりゃ分かるだろうさ」

 

 戦慈は肩を竦めるだけで、答えを言わなかった。

 

 そこにリカバリーガールが戻ってきて、直後にポニーもモニタールームにやって来た。

 一佳達はポニーを褒め称え、ポニーは照れ臭そうに笑って礼を言う。

 

 そしてモニターには宍田と円場が、ステージに足を踏み入れていた。

 ステージは『森』である。

 

「ステージは宍田に有利だな」

「だな!」

 

 泡瀬と鉄哲はやはり楽勝ムードで、モニターを見つめる。

 

 

『宍田・円場チーム 演習試験レディ・ゴー!』

 

 

 そして開始が告げられる。

 宍田はすぐさまビースト化して、その背中に円場が飛び乗る。

 宍田は森の中を猛スピードで走り出す。

 

「行きますぞォオオオ!!」

「先生は!?」

「ゲート付近だと思いますぞォオオオ!!」

 

 宍田はハイテンションで叫びながら、円場の質問に答える。

 それに円場は「なら、宍田が攻めてる間に、俺が飛び込めばいいか」と考える。

 その時、

 

 

YEAHHHHHHHHHHHHH!!!

 

 

 プレゼントマイクの大声が、2人に襲い掛かる。

 円場はとっさに耳を塞ぐが、それでも鼓膜が破れそうだと思わされた。

 

「こ、ここでもこの大きさかよ!?うおっ!?」

 

 円場がぼやくと、突如宍田の体が元に戻って、円場は地面に投げ出される。

 宍田は円場を気にする様子もなく、その場に崩れ落ちる。

 

「宍田!?」

「……ご……が……」

 

 円場が慌てて、宍田に駆け寄る。

 宍田は耳から血を流して、意識が朦朧としていた。

 

「っ!?獣化中は聴覚も上がってる!俺でもヤバかったのに、強化されてる耳で耐えられるわけがねぇ……!」

 

 円場は顔を顰めて、宍田を抱え上げる。

 とりあえず少しでも遮蔽物が多い場所を探す。

 

「俺の『個性』じゃ、音までは防げねぇ。くそっ!こういうことかよ!」

 

 円場の《空気凝固》は目の前に壁を作るだけ。

 それだけでも少しはマシになるかもしれないが、ビースト化した宍田にはどれだけ効果があるかは疑問だった。

 さらに、

 

「近づけば近づくほど、音量はさらに上がる……!どうにかしねぇと、宍田が攻められねぇ……!」

「もうし……わけ…ない……」

「気にすんなよ」

 

 宍田は気絶しないように、何とか気合を振り絞る。

 それに円場は笑って答えながら、移動を続ける。

 

 その様子を鉄哲達は顔を顰めながら、見つめていた。

 

「マジかよぉ……!?」

「確かに攻撃するどころじゃないな……」

「宍田の強化が仇になるなんて……」

 

 鉄哲、一佳、泡瀬は宍田の様子に呻くしか出来なかった。

 

「本当に嫌らしい選び方してやがる」

「……最低」

「ん」

 

 戦慈も顔を顰め、里琴と唯も頷く。

 

「これ、どうすればいいの?」

 

 柳が首を傾げる。

 

「俺は流石に思い浮かばねぇな。どうにかして、耳を塞ぐしかねぇが……」

「だね。けど、草や土で耳を塞ぐわけにもいかないし……」

「上から行けばどうだ!?」

「流石にそこも読まれてるだろ」

「だな。それに空は目立つし、遮蔽物がない。音を防ぐ術がないと、自滅するだけだ」

「ん」

「二手に別れても、プレゼントマイク先生の声が防げなければ共倒れですね」

 

 戦慈は肩を竦めて、切奈も顔を顰める。

 それに鉄哲が意見を出すが、泡瀬や一佳が否定的に答えて、唯も頷く。

 茨も祈るように両手を組みながらも、顔は少し険しかった。

 

 

 

 

 試験前。会議室にて。 

 

「宍田の身体能力は高く、脅威的ではある。しかし獣化するとハイテンションになり、力押しになる傾向がある」

「そこで俺が力押しをさせないように立ち回ればいいんだな?まぁ、叫ぶだけだけどな!」

「それで十分だ。宍田は普段は頭もいいし、判断力もある。それを獣化中でも意識させるようにしてほしい」

「任せな!!」

「そして円場。あいつの『個性』は攻撃性はないため、サポートメインの活動になるのは仕方がない。しかし、円場の『個性』はまだまだ伸ばし所があり、それを意識させたい。円場が冷静に判断できれば、宍田の攻撃の幅はかなり広がるはずだ」

「ただの壁や足場だけじゃ、俺の声は止められねぇしな」

「ああ、円場の『個性』は様々な災害やヴィランの捕縛も可能に出来ると思っている」

 

 ブラドの言葉に、プレゼントマイクは頷く。

 

 

 

 

 プレゼントマイクはゲート前で、仁王立ちしている。

 

「ったく。昨日に続いて今日も森モリかよ。まぁ、昨日みてぇな虫を操ることはないだろうが……」

 

 プレゼントマイクは昨日のA組との試験での内容を思い出して、顔を青くして身震いする。

 

「うぅ!!思い出しちまったじゃねぇか!!」

 

 

チクショオオオオオオオオ!!!

 

 

 プレゼントマイクは八つ当たり気味に叫ぶ。

 森にプレゼントマイクの声が響き渡る。

 

「さぁて、どうする?このまま時間切れまで隠れる気か?それとも上から来るか?」

 

 プレゼントマイクは空を見上げる。

 

「ん?」

 

 その時、空に黒い点のようなものが現れ、徐々に大きくなってきていた。

 

「なんだぁ?」

 

 プレゼントマイクは右手を目の上に当てて、目を凝らす。

 その間にもドンドン大きくなっており、その正体はすぐに判明した。

 

「岩ぁ!?」

 

 バスケットボール大の岩が、剛速球で飛んできていた。

 僅かに左に逸れているようだが、それでも十分脅威だった。

 プレゼントマイクは慌てて、右に駆け出す。

 

ズドォン!!

 

 直後、岩が地面に墜落する。

 岩は地面にめり込んでおり、それは先ほどまでプレゼントマイクが立っていた場所の少し左だった。

 

「おいおい!?殺す気かよ!?」

 

 顔を引きつかせながら、プレゼントマイクは空を見上げる。

 すると、また黒い点が空にあるのを発見した。

 もちろんそれはドンドン大きくなっている。

 

「ノォオオオオウ!?」

 

ズドォン!

 

 再びプレゼントマイクの左側に墜落する岩。

 プレゼントマイクは走り出して、森に逃げ込む。

 更に、

 

バキバキィ!

ズウゥン!

 

 森の中から樹が倒れる音が響く。

 

「何する気だ!?」

 

 するとプレゼントマイクを追う様に、岩が降ってくる。

 

「場所がバレてんな!ってことは、俺をゲートから引き離して、その間に円場の奴が飛び込む気だなぁ!?」

 

 プレゼントマイクは足を止めて、ゲートの方に体を向ける。

 

 

行かせるかあああああ!!!おおわぁ!?

 

 

 指向性スピーカーに乗せて、声を響かせるプレゼントマイク。

 そこに再び岩が左側に落ちてくる。

 プレゼントマイクは叫びながら、再び駆け出す。

 

「シィット!まずは宍田の方が先かぁ!?俺を捕捉して、岩を投げるなんて獣化してんだろ!?」

 

 プレゼントマイクは岩が飛んで来た方向を思い出して、体を向けようとすると、

 

「ブベア!?」

 

 突如、壁のようなものにぶつかる。

 プレゼントマイクは呻いて、壁のようなものに手を触れる。

 

「こ、こりゃあ……円場の?な、なんでこんなところに……?」

「ここにいるからっすよぉ!!」

「!?」

 

 茂みから円場が飛び出してきて、プレゼントマイクの背後に現れる。

 プレゼントマイクは目を見開く。

 

「フゥウ!!」

「ギャオゥ!?」

 

 円場はすぐさま強く息を吹き、プレゼントマイクを挟み込むように空気を凝固する。

 プレゼントマイクは空気の壁に強く挟まれて、身動き取れなくなる。

 

「よっし!!騙されてくれたぜ!!」

 

 円場はガッツポーズをして、笑みを浮かべる。

 プレゼントマイクは壁を砕こうにもまともに動けず、重りのせいで手足が動かしにくい。

 

「こ、この程度……声で割ればぁ……!」

「宍田ぁ!!」

「!!?」

 

 プレゼントマイクが息を吸い込もうとした瞬間、円場が叫ぶ。

 すると、プレゼントマイクの正面に勢いよく宍田が飛び出してきた。

 もちろん体は大きくなっている。

 

「フッ!フッ!フッ!」

 

 円場は連続で息を吹いて、プレゼントマイクの背中側の壁を重ねる。

 それと同時に、宍田は右腕を振り被りながらプレゼントマイクに飛び掛かる。

 

「ガアアアアアアア!!」

 

「ノォオオオオオオベブシィ!?」

 

 宍田は叫びながら拳を振り抜いて、空気の壁を砕きながらプレゼントマイクの左頬を殴り飛ばす。

 プレゼントマイクは背中の空気の壁も砕いて、後ろに吹き飛んでいく。

 サングラスも割れて、錐揉み状態で円場の真横を飛んで行き、木の幹に背中から激突する。

 そして、ズルズルとずり落ちる。

 

 プレゼントマイクは白目を剥いて、ピクピクと震えて気絶している。

 

 それに円場は駆け寄って、ハンドカフスを掛ける。

 

 

『宍田・円場チーム 条件達成!』

 

 

 アナウンスが流れ、宍田と円場はその場に座り込む。

 

「ふぅー……」

「なんとか……なりましたな……」

「耳は大丈夫か?」

「少し聞こえにくいくらいですな」

 

 宍田はビースト化して、プレゼントマイクの居場所を嗅覚で確認して、岩を投げていた。

 投げた直後、すぐに人モードに戻り、樹や岩陰に身を隠してプレゼントマイクの声から逃れようとしていた。

 それを繰り返して、プレゼントマイクをゲートから離して、円場の元へと誘導することが狙いだった。

 円場は誘導先に先回りして、プレゼントマイクの姿を確認しながら、空気の壁を数か所設置して身を隠していたのだ。

 

「はぁ、こういう『個性』相手には、俺らは弱いってことか……」

「ですな……」

「ま、今はとりあえず……」

「む?」

「やったな!!」

 

 円場がニカッと笑って、拳を突き出す。

 それに宍田も笑みを浮かべて拳を合わせる。

 

 

 一佳達はモニタールームでホッとしていた。

 

「ギリギリだったな……」

「円場の作戦が上手くハマったね」

「ん」

「一歩間違えれば、ヤバかったけどな」

 

 一佳と切奈の言葉に唯が頷き、戦慈はかなり強引な作戦に呆れている。

 宍田が少しでもコントロールをミスれば、プレゼントマイクは大怪我をしていた。

 そして、プレゼントマイクが反撃を、先に宍田にしていれば結果は変わっていたかもしれない。

 かなり綱渡りな作戦だった。

 

「プロヒーロー相手なんだから、それくらいはしないと厳しいよ」

「だな!!」

「拳暴達だってオールマイト相手なんだし、綱渡りになるんじゃないか?」

「なるだろうな」

 

 切奈は肩を竦めて、鉄哲は力強く頷く。

 それに一佳は揶揄う様に声を掛ければ、戦慈は肩を竦めて素直に同意する。

 

「No.1ヒーローにハンデありとは言え、少し作戦練ったくらいで勝てるなら、あんな化け物現れねぇよ」

「……殴られた」

「それもそうだよなぁ」

「だから、もう少し作戦を詰めてぇんだが……」

「まぁ、それは頑張れとしか言えないな」

「ん」

「がんば」

 

 戦慈はため息を吐く。

 それに一佳達は苦笑するしかなかった。

 

「さて、骨抜の次は私か。行ってくるよ」

「……殴り飛ばせ」

「頑張れよ!!」

「行ってら」

「ん!」

「気張りすぎんなよ」

 

 一佳は戦慈達に見送られて、モニタールームを後にする。

 

 期末試験はまだまだ続いていく。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。