『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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拳の三十四 演習試験その3

 里琴と物間の試験が始まる直前、一佳と鎌切が息を切らせてモニタールームに飛び込んできた。 

 

「はぁ!はぁ!もう始まってるか!?」

「あ、お帰り一佳。お疲れ」

「お見事でした」

 

 切奈と茨が一佳を労う。

 唯と泡瀬は里琴達の次であるため、モニタールームを後にしている。

 一佳は肩で息をしながら、切奈やポニー達とハイタッチをして、鎌切は鉄哲と拳を合わせる。

 すると、骨抜と庄田も現れた。

 

「なんで俺達の後だった拳藤達の方が早いんだよ?」

「走って来てたからね」

「必死だな」

「まぁ、あの2人の試合だからね」

 

 骨抜が首を傾げ、切奈が答える。それに骨抜は呆れて、庄田も苦笑して頷く。

 一佳は汗を拭いながら、モニターを見る。

 モニターにはステージに入ってくる里琴と物間に姿があった。

 

「……特に険悪にはなってないようだな」

「物間は知らねぇが、里琴に関しては無視はしてもケンカは売らねぇだろ」

「無視はすでにケンカを売ってると思う」

 

 一佳がホッとしていると、戦慈が肩を竦めながら全く安心できないことを言い、柳がツッコむ。

 それに切奈達も頷き、余計に不安になってモニターの2人を見る。

 

「相澤先生か……。見るだけで『個性』を封じるなんて反則だよね」

「肉弾戦か武器を使うしかないもんな」

 

 切奈と骨抜が顔を顰めて呻く。

 一佳は戦慈に顔を向けて、いつも通りどう戦いが展開すると思うか質問する。

 

「里琴達はどう動くと思う?」

「……まぁ、物間が前に出るのかどうかと、A組担任の『個性』の性質次第だな」

「というと?」

 

 戦慈の言葉に柳が首を傾げる。

 

「物間の《コピー》は触れることが条件だ。だから相手からすれば、物間に近づかれるのは避けてぇはずだ」

「そりゃあな」

「問題は相手の『個性』を消せる力がどこまで作用するかってことだ。触れても《コピー》出来なくさせんのか、コピーした『個性』の発動を封じるのか。

後者なら積極的に詰め寄って、相手の『個性』が切れた瞬間に、やり返しゃあいい。けど、前者なら……」

「相手にやられる可能性を高めるだけ、か」

「だから物間が前に出るなら、物間に集中している隙に里琴が速攻を仕掛けりゃいい。物間が出ねぇなら、相手の視界に映らないように竜巻を撃ちまくるしかねぇな」

 

 戦慈の予想に唸って考え込む一佳達。

 どちらを選んでも戦闘不能に追い込まれるか、時間切れのリスクがある。

 

「けどよ!逆に言えば、物間が相澤先生に触れられれば、ほぼ勝ち確定だろぉ!!」

 

 そこに鉄哲が右手を握り締めて叫ぶ。

 骨抜や庄田が苦笑するも、それに同意して物間を応援する。

 しかし、戦慈は腕を組んで鋭い目でモニターを見つめながら小さく呟く。

 

「……そう上手くいくかねぇ」

「ん?」

「いや……」

 

 僅かに声が聞こえたようで、一佳が首を傾げながら戦慈を見る。それに戦慈は首を横に振る。

 その様子に一佳は更に不安を募らせるのであった。

 

 

 

 

 里琴と物間はスタート地点で足を止める。

 

 ステージは地下のようで大量の太い柱が並んでいる。

 

「どうやら空を飛んでゲートに飛び込むのは無理そうだね」

「……ん。……どうせ待ち構え。……墜落する」

 

 天井があろうとなかろうと、空を飛べば目立つ。見られれば『個性』を消されるので、下手に飛ぶのは地面に落ちて大怪我するだけである。

 

「それもそうか。さて、イレイザーヘッド先生の『個性』がスカでないことを祈ろうかな」

 

 物間の《コピー》の弱点は、必ずしも全ての『個性』をコピー出来るわけではないことにある。

 特に『異形型』に属する『個性』は、ほぼ無理である。理由は物間の体を大きく作り変えることは出来ないからである。

 物間は試したことはないが、戦慈の『個性』も《コピー》出来ないだろうと思っている。

 

「……見た感じ出来る」

「だといいけどね。さて、とりあえずゲートを目指すとしようか。先に見つけないとね」

 

 物間の《コピー》は5分間のみ。

 時間切れ直前に相澤に見つかって、封じられれば目も当てられない。

 

『巻空・物間チーム 演習試験レディ・ゴー!』

 

 試験開始が告げられて、2人は揃って左側の柱の陰に隠れながらも素早く進む。

 相澤を見つけるまでは共に動くことにしたのだ。

 

「まぁ、君の力を考えればゲート付近で待ち構えだろうね」

「……ん。……あの包帯?が厄介」

「確かに……」

 

 相澤の首に巻かれている捕縛布。『個性』を消した間に捕縛するためなのだろうが、消されなくても捕まれば厄介である。

 少なくとも里琴と物間は、捕まった際に逃げる術は持ち合わせていない。

 

「それに他にも何か隠し持ってるかもね」

「……ん」

 

 里琴と物間は周囲に注意しながら進む。

 半分ほど進んだところで、里琴が唐突に物間の腕を人差し指でチョンとする。

 

「普通に声を掛けてくれないかなぁ!」

「……嫌」

「辛辣だね!!……で?なんだい?」

「……牽制する。……《コピー》して突っ込んで」

「……なるほど。では、失礼するよ」

 

 物間は里琴の作戦を理解して、頷くと里琴の肩に手を伸ばす。

 それを里琴はパァン!と腕で弾く。

 

「あははは!本当に嫌ってるねぇ!!」

「……疾く行け」

 

 里琴は不機嫌オーラ全開で竜巻を縦に放って、ゲート正面から向かわせる。

 それに物間は肩を竦めて、柱から飛び出して里琴の真似をして足裏に竜巻を生み出して飛んでいく。

 そして、里琴が放った竜巻のすぐ後ろに付く。

 直後、里琴は自分達がいる左側から迂回するように竜巻を縦に放つ。

 

「さて、吉と出るか凶と出るか」

 

 ありがたいことに竜巻は土埃を巻き上げているので、反対側からは物間の姿は見えない。

 その代わり、物間も相澤がどこにいるのか分からないが。なので、柱の陰に注意しながら進む。

 

「まぁ、駄目ならそのままゲートに行けばいいか!!A組担任を堂々と叩きのめす機会なんてないからねぇ!!」

 

 物間はニィッと笑みを浮かべて、両腕を振って竜巻をさらに放つ。

 しかし、その瞬間足裏の竜巻のコントロールが出来なくなり、バランスを崩してしまう。

 

「おっと!」

 

 物間は下に弱くて小さい竜巻を放って体勢を立て直そうとする。

 その時、物間が放っていた全ての竜巻が消滅し、新しい竜巻も出せなくなった。

 

「!?」

 

 物間は目を見開いて、地面に前転しながら受け身を取って片膝立ちになる。

 歯軋りをして周囲に目を向けると、上から相澤が飛び降りてきた。

 

「上!?」

「それくらい想定しとけ」

 

 髪が逆立った相澤は驚く物間に冷たく言い放ちながら、右脚を振り抜いて物間の足を払う。

 物間は倒れながら右手を相澤の足に伸ばす。相澤は素早く下がり、物間の手を躱す。

 その隙に物間は立ち上がり、すぐに相澤に攻めかかる。

 

「目で見なければいけないということはぁ!!まばたきでもすれば、解除されるんですよねぇ!!」

「そうだが、いくらなんでもそれは悪手だろ」

 

 相澤は呆れたように話しながら、首元の捕縛布を操って物間に飛ばす。

 物間は横に跳んで躱し、右手を前に出して更に迫る。相澤は飛ばした捕縛布を横に振って、物間を捕縛しようとする。

 その時、ニィッと物間が笑みを深めて、左手を掲げる。そこにはハンドカフスが握られていた。

 

「どこにでもかかればいいんですよねぇ!!」

「だったら見せるんじゃない」

 

 相澤は飛ばした捕縛布から手を放す。他の捕縛布を飛ばし、ハンドカフスを縛って物間の手から取り上げる。

 

「な!?」

 

 そして相澤はすぐさま物間の右腕を掴んで、背負い投げを放って物間を柱に投げ飛ばす。

 物間は逆さまになって背中からぶつかり、頭から地面に落ちる。

 しかし、すぐさま両足首を縛られて、振り上げられる。

 

「うわぁ!?」

 

 物間は全く抵抗出来ず、更に上半身を縛られて、うつ伏せに地面に押さえつけられる。

 そこに相澤が物間の両手を背中に回してハンドカフスを掛ける。

 

「お前は相手に対する想定が甘い。拘束・捕縛に強い相手に先手を取られんなら、回避を優先すべきだったな」

 

 相澤はゴーグルを外して、目薬をさす。髪はいつも通りに垂れ下がっていた。

 物間は歯軋りをして身を捩るが、全く拘束は緩まない。

 

「こっちはお前達の『個性』も人数も性格も把握してる。対策は当然バッチリしてる。ハンデがあるとは言え、甘く見過ぎだ」

 

 相澤は周囲を確認して、里琴の姿を探す。流石にこの状況をどこかで見ているはずだからだ。

 

「甘いですよ。僕を相手にしている隙に、彼女はとっくにゲートに向かってますからねぇ」

 

 物間は相澤を鼻で笑う。

 しかし、相澤はそれを即座に否定する。

 

「言っただろ。対策はバッチリしてるってな。あいつが飛びそうな所には罠を仕掛けさせてもらった」

「っ!?……意地汚いですねぇ。それがヒーローで教師のやることですか?」

「悪いが今はヴィランだからな。それくらいはやるさ」

 

 見事に物間の挑発を躱す相澤。

 ちなみに相澤が仕掛けた罠は、大量の捕縛布をゲート周囲の柱や壁の間に、天井近くまで網のように仕掛けただけである。

 普通に引っ張ればズレるが、ずらすと音が鳴る仕掛けを施している。それが鳴らないということは、まだ里琴はゲートを目指していないということである。

 そこから考えられることは、

 

(試験の概要を理解しているか。仲間が捕らえられた状態で救出も試さずに脱出しても、ヒーローとしては失格だ)

 

 その時、ゲート方面から竜巻が1本相澤に近づいてくる。

 

「さっき飛ばしてた奴か!」

 

 相澤は捕縛布を構えて竜巻に体を向ける。

 その時、右側の柱から里琴が右腕を構えた状態で飛んできて、相澤の背後に現れる。

 

「!!」

「……ヤー」

 

 里琴は相澤の背中に竜巻を放つ。

 髪を逆立てた相澤は竜巻で押されながらも、顔だけ素早く背後を見て里琴を視界に捉える。

 その瞬間、全ての竜巻が消滅する。

 

「……むぅ」

「物間と戦ってる間に、反対側に回っていやがったのか」

 

 相澤は振り返って、里琴と物間を視界に完全に捉える。

 里琴は地味に右足で倒れている物間の背中を踏みつけながら、顔は相澤に向けていた。

 

「……馬鹿」

 

 里琴は右足をグリグリしながら物間を罵倒する。

 

「き、君ねぇ……!」

 

 物間は頬を引きつかせながら里琴を見上げる。

 

「……捕縛はもっと隙を見つけてからって決めた」

「……そうだったかなぁ……」

 

 物間は里琴の言葉に、別の意味で顔を引きつかせて顔を逸らす。

 それに里琴から不機嫌オーラが噴き出す。

 相澤は呆れたように物間を見る。話し合っていなかったなら仕方がないが、話し合っていたなら完全に物間のミスである。

 相澤はため息を吐いた瞬間、髪が垂れ下がる。

 

 その瞬間、里琴が相澤に向かって、竜巻を横向きに放つ。

 

「っ!!」

 

 相澤は横に跳んで躱し、再び里琴を鋭く睨みつける。

 里琴は腕を振るが、竜巻は出なかった。

 

「……むぅ」

「もう見抜かれたか。B組にはほとんど見せた事ないはずなんだがな」

 

 相澤は『個性』発動中は髪が逆立つ。

 あまりB組の授業を担当しない相澤は、今までB組の前で『個性』を使ったことはほぼない。緑谷ほどのヒーローマニアならば知っている可能性があるが、里琴や物間にはそんな性格ではないと聞いている。

 つまり先ほどの物間との戦いで、見抜いたということだ。

 

「油断は出来んか」

 

 相澤は捕縛布を操りながら、里琴に走り迫る。

 捕縛布を鞭のようにうねらせて、里琴に襲い掛からせる。

 

 里琴は後ろに下がりながら、バク転したり身を屈めて躱す。一度も足を止めず、まるで新体操のように軽やかに躱していく。

 相澤は里琴の動きに僅かに目を見開きながらも、高速で迫り拳を振るう。

 里琴は相澤の拳を左腕で逸らして、右腕でアッパーを放つ。

 

「!!」

 

 まさかの反撃に相澤は顔を大きく逸らして躱す。

 その瞬間、里琴は前後に大きく足を開いて、身を屈める。それによって相澤の視界から里琴の姿が消える。

 

「……ジェット・ナックル」

 

 左肘から後方に向けて、竜巻を放つ里琴。竜巻に押されることで、左拳は猛スピードでアッパーとして振り抜かれる。

 アッパーは相澤の腹部に突き刺さり、腹部に当たると同時に竜巻を放って相澤を吹き飛ばす。

 

「ぐぅ!?」

 

 相澤はくの字に吹き飛ぶが、目を見開いて里琴を見据えて竜巻を解除する。地面を転がって飛び上がることで、柱に直撃することは回避する相澤。

 すぐさま里琴を見て、『個性』を発動しようとするが、すでに里琴の姿はなかった。

 

「くっ!ゲートに向かったか!」

 

 周囲を見ると物間の姿もなかった。

 相澤は駆け出してゲートへと向かう。そしてブラドの話を思い出していた。

 

 

 

 試験前。会議室にて。

 

「巻空は轟と同じで『個性』での力押しが目立つ。広島でも、そこを突かれて負傷した。それにやはり制空権を取りたがる傾向にある。間違ってはいないが、それが出来ないときの対処が課題だろうな」

「まぁ、強『個性』ではあるからな」

「ああ、そして物間も同様だな。強力な『個性』ではあるが、イレイザーの『個性』の前にどう動くか。巻空のコントロールが難しい『個性』をどう扱うか。そして、イレイザーの『個性』をどう《コピー》するか」

「あいつの『個性』は特殊だからな。仲間と敵の『個性』によっては、一般人と何も変わらん」

「ああ」

 

 相澤は資料を読みながら頷く。ブラドも相槌を打ちながら、説明を続ける。

 

「それと、巻空はやや言葉足らずで独断で行動する傾向にあり、物間は敵味方に挑発的な言動をして場を乱すことがある。それにこの2人は緑谷と爆豪ほどではないが、仲が悪い」

「理由はなんだ?別に同じ中学とかじゃなかっただろ?」

「入学してすぐに物間が拳暴に対して挑発したのが原因だろう」

「……なるほど」

 

 2人揃って呆れ顔になる。

 

「ということで、コミュニケーションも課題だな」

「課題多すぎるだろ」

「まぁ、今回はあくまできっかけにすぎん。そこを気づかせるように突いてくれればいい」

「わかった」

 

 

 

 相澤は内容を思い出して、眉間に皺を寄せる。

 

「物間はともかく……巻空は全然『個性』使わなくても動けるぞ。コミュニケーションに関しちゃ、物間の暴走のせいで突く暇もなかったな」

 

ピー!ピー!ピー!

 

 その時、ゲート方向から音が聞こえてくる。相澤が仕掛けたトラップの警告音である。

 相澤はスピードを上げようとすると、巨大な竜巻が2本出現し、相澤に迫って来ていた。

 

「っ!?」

 

 相澤はすぐに柱の陰に飛び込んで竜巻を躱す。

 更に竜巻が増えて、ステージ中を動き回る。それに相澤は顔を顰めて、隙を窺っていると、

 

 

『巻空・物間チーム 条件達成!』

 

 

 アナウンスが鳴り、竜巻が消える。

 相澤が頭を掻きながら、ゲートに向かうと、

 

「……何してんだ?」

「イジメられてるんですよ」

 

 物間が罠の一部に縛られて吊るされていた。

 どうやら先ほどの竜巻は、物間が出していたようだった。すでに里琴の姿はなかった。

 

「巻空はどうした?」

「僕をここに吊るして《竜巻》を使わせ始めると、さっさと出て行きましたよ……」

 

 物間はやさぐれた様子で遠くを見ながら答える。この扱いに文句を言いたいが、何も出来なかったので言われるがまま吊るされているのだ。

 それを相澤は哀れに思うも、やらかした原因は物間なので特にそれ以上何も言わずに拘束を解くのであった。

 そして拘束を解いた直後に、物間の反省点を30分以上かけて話し始めるのだった。

 

 

 

 

 モニタールームでも戦慈と一佳、切奈達が呆れた様子で見ており、鉄哲や骨抜達は意外そうに見ていた。

 

「まぁ、物間が圧倒的に駄目だったんだけどさ……」

「最後のはちょっとかわいそうだよね~」

 

 一佳と切奈が苦笑いしながら、少しだけ物間を憐れむ。

 

「けど、巻空って接近戦出来るんだな」

「爆豪との試合でもいい動きしてたけど、『個性』ありきだと思ってたぜ」

 

 骨抜と鉄哲の言葉に、庄田と鎌切も頷く。

 骨抜は切奈達を見て、首を傾げる。

 

「取陰達は余り驚いてないのは何でだ?拳暴や拳藤が驚かないのは納得出来るけどよ」

「里琴の体つき見てるからね。あれくらい出来てもおかしくないかなってさ」

「体つき?」

 

 切奈の言葉に柳、ポニー、茨も頷く。

 それに骨抜達は首を傾げる。

 

「里琴ね、かなり体鍛えられてるんだよ。一佳にも敗けてないんじゃない?」

 

 切奈の言葉に骨抜達は目を見開く。

 そこに一佳と戦慈が話に加わる。

 

「竜巻で飛ぶイメージが強いし、体育祭や訓練では拳暴を頼るイメージもあるけどな。まず、あの竜巻に乗ったりするには、かなり体幹やバランスがいるんだ。そりゃああの程度の動き出来るに決まってるよ」

「接近戦に関しちゃ、昔から俺と組み手やってるしな。最近じゃ拳藤も加わってるから、そう簡単には敗けねぇだろ」

「拳暴と組み手って死ぬだろ」

「手加減してるに決まってんだろ。ただ『個性』ありで、体が二段階膨れた俺とある程度張り合えるんだ。あの程度なら問題ねぇよ」

 

 一佳と戦慈の言葉に、ようやく納得する鉄哲達。

 

「『個性』が使えなくなった時の対処が課題だったんだろうけどな。あいつは俺と戦って、『個性』が通じねぇ相手がいるなんて嫌でも理解してる。まぁ、サボり癖もついたがな」

 

 戦慈が肩を竦めながら語る。

 その時、扉が開いて里琴が飛んで入ってきた。

 そして案の定、戦慈の肩の上に止まる。

 

「……ブイ」

「まだ分かんねぇだろが。物間の失態をどう扱われるか分からねぇんだぞ」

「……奴のミスは奴だけのミス」

「気持ちは分かるが、チームだろうが」

「……ちゃんとカバーした」

「せめてゲートはくぐらせてやれよ」

「……嫌」

「なんでだよ」

 

 意地でも物間のミスを庇う気はない里琴。

 それに戦慈はため息をつき、一佳達は苦笑するだけだった。

 

「っとぉ!!俺も行かねぇとな!!」

「頑張れよ鉄哲!!」

「おうよぉ!!」

 

 鉄哲は右腕を掲げながらモニタールームを後にする。

 それを見送った戦慈達は、モニターに目を向けてステージに入る唯と泡瀬を見つめる。

 

 残りは5チーム。

 

 No.1ヒーローとクラスNo.1との戦いまで、あと少し。

 

 

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