『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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新刊で切奈と鎌切の正式ヒーロー名が発表されました。

切奈:【リザーディ】
鎌切:【ジャックマンティス】

だそうです!
切奈はちょっと惜しかったw
次回からはこちらに変更します!



拳の三十五 演習試験その4

 試験前。会議室。

 

「泡瀬と小大は揃ってサポートタイプ。撹乱と捕縛が基本スタイルとなるが、アタッカーがいない中でどのように動くかが課題となる」

「で、戦闘と捕縛も出来るブラドが相手をすると」

「ああ。捕縛は時に自身も危険にする。それをどう回避するか、回避した上でどのように捕縛や撹乱に動くか。そこを見させてもらおう」

 

 ブラドはニィッと凶暴的な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 泡瀬と唯は住宅街ステージを歩く。

 

「ここってあんまりいいイメージないんだよなぁ」

「ん」

 

 ここは敵連合に襲撃された場所である。

 トラウマになったわけではないが、やはり意識はしてしまう。

 

「さて、ブラド先生も俺と同じく拘束を得意とするヒーローだ。しかも血液だから捕まるまでは液体だ。だから俺じゃあ分が悪い」

「ん」

「だから小大の《サイズ》をどう使うかってことだけど……。問題はサイズを変える材料がどれだけあるかってことだな」

「ん」

 

 泡瀬の言葉に、唯も力強く頷く。

 ステージは住宅街。物がないわけではないと思われるが、手当たり次第に使うわけにはいかない。何故なら大抵の物が、住民の物と言う設定になっているはずだからだ。

 ヒーローとして動く以上、弁償することになるような戦い方は避けるべきである。

 

「俺の鉄塊もそんなにあるわけじゃないし……。何か作戦あるか?」

 

 泡瀬は腕を組んで唸り、唯に顔を向ける。

 唯も少し首を傾げて考える素振りをして、すぐに頷く。

 

「ん」

「お!どんな?」

 

 泡瀬は唯から作戦を聞く。

 そして2人は準備を始める。

 

 

 

 モニタールームでも唯達がどう動くかを予想する。

 

「小大が隙を作って、泡瀬が捕縛だよな」

「問題は唯がどうやって隙を作るかだよね」

「唯の《サイズ》は小さくするか大きくするかのどっちかだけだからなぁ」

 

 骨抜の言葉に切奈と一佳が悩まし気に眉を顰める。

 唯の《サイズ》は触れたものを小さくも出来るし大きくも出来るが、小さくしたものを元のサイズより大きくするには一度解除して、もう一度触れる必要がある。

 なので、小さくするなら出来る限り大きいものを選択するのが有利である。

 

「住宅街じゃ難しいかもな」

「むやみに壊したり、家の敷地に入るわけにもいかないからね」

 

 鎌切と庄田も考え込むように腕を組む。

 

「そうでもねぇだろ」

「……ん」

 

 相変わらず里琴を肩に乗せたままの戦慈が、モニターを見上げながら声を上げる。

 

「どういうことだ?」

「捕縛するなら決め手は1つだけだ。小大なら分かってんだろ」

 

 戦慈の言葉に一佳達は腕を組んで考える。

 しかし、全く思い浮かばなかった。

 

「まぁ、俺が考えてる通りなら見てりゃ分かるし、違ったなら説明するさ」

 

 戦慈は肩を竦めて、もったいぶる。一佳達は里琴に目を向けるが、里琴も答えることなく戦慈の頭頂部に顎を乗せてリラックスするだけだった。

 

「てめぇはそろそろ降りろ」

 

 戦慈も流石にイラついて里琴を掴んで一佳に放り投げる。

 一佳は里琴をキャッチして、里琴も地面に降ろす。

 

「……ケチ」

「肩車を諦めてるだけ感謝しやがれ」

 

 2人のやり取りに一佳達はガクッと肩を落とす。

 

「思わせぶりなこと言っておいて……」

「じゃあ、大人しく見てようか」

 

 

 

 

『泡瀬・小大チーム 演習試験レディ・ゴー!』

 

 泡瀬と唯は開始と同時に、道路の端にある側溝の蓋のコンクリートをどんどん外していく。

 次に泡瀬が重ねたり、壁のように並べたりして《溶接》していく。それを唯が触れて小さくしていく。

 

 同じ工程を何度も繰り返しながら、移動する2人。

 

「ふぅ」

「ん」

 

 十分と思われる数を作り上げた2人は、息を整えてゲートへと向かうことにした。

 もちろん周囲の警戒をしながらなので、速度は遅い。

 

「懐に入られたら負けだ」

「ん」

「ならばどうする!?」

「「!!」」

 

 突如聞こえたブラドの声に、2人は即座に背中合わせになる。

 すると屋根の上からブラドが飛び出してきて、泡瀬の前に降り立つ。それと同時に右手から血液を噴き出して網のようになって、泡瀬に飛ばす。

 

「頼んだぜ!小大!」

「ん!!」

 

 泡瀬は腰のポーチから円柱状の鉄塊を数個取り出す。

 

「【早着鉄棒】!」

 

 鉄塊を繋ぎ合わせて棒状にして、血網を薙ぎ払う泡瀬。

 

「む!」

 

 ブラドは両手に血を纏いながら泡瀬に突撃する。

 そこに唯が何かを投げる。

 

「解除」

 

 呟きと共に出現したのは、先ほど泡瀬と作った側溝の蓋を重ねて正方形に固めたコンクリートだった。

 ブラドは跳び下がって躱し、唯に標的を変える。

 その隙に泡瀬は、唯が投げたコンクリートの塊と鉄棒を繋ぎ合わせて即席のハンマーを作る。

 

「おりゃあ!!」

「くっ!!」

 

 泡瀬はハンマーを横振りして、ブラドの注意を自分に向けさせる。

 

「甘い!!」

 

 振り抜いた直後を狙って、ブラドが血液を伸ばしてハンマーに絡ませる。

 ブラドは腕を引いて、ハンマーを引っ張る。

 

「おっとぉ!」

 

 泡瀬はすぐに手を放す。そしてすぐさまポーチから鉄塊を取り出して、再び鉄棒を作り出す。

 

「同じ手は何度も効かんぞ!」

 

 ブラドはハンマーを右手に持って、泡瀬に殴りかかる。

 そこに再び唯が何かを投げつける。

 

「またブロックか!?」

「解除」

 

 ブラドは左手を唯に向ける。

 直後に現れたのは2m四方の壁だった。

 

「っ!?」

 

 ブラドは目を見開いて、再び後ろに下がる。

 その時、周囲が暗くなった。

 

「な!?」

 

 上を見上げると、そこには巨大な箱が降り落ちて来ていた。

 ブラドはハンマーを捨てて、両手から血を噴き出して落ちてくる箱を破壊する。

 

「先ほどの壁を繋いで、即席の牢獄を作っていたのか!」

 

 唯と泡瀬は作った壁同士を繋ぎ合わせてコンクリートの箱を作っていた。

 1面だけ空けておくことで、真上で元のサイズに戻して奇襲で閉じ込める作戦だった。

 

「やっぱそう簡単には捕まらねぇか!」

 

 泡瀬は顔を顰めながらも壊された瓦礫を鉄棒に溶接して、ブラドに攻撃を仕掛ける。

 唯もすぐさま地面に転がった瓦礫を掴んで、左手でブラドに投げる。

 

「大」

 

 ボン!と巨大化したコンクリート塊がブラドに襲い掛かる。

 ブラドはそれを躱し、近づいてくる泡瀬に血の鞭を伸ばす。

 

「大」

 

 すぐさま唯が右手に掴んでいる瓦礫を投げて呟く。

 すると、泡瀬とブラドの間に再び巨大なコンクリート塊が出現して壁となる。

 

「くっ!(壁を砕いたのが裏目に出たか!)」

 

 ブラドは一度距離を取ろうと考えた時、目の前のコンクリート塊を乗り越えた泡瀬が鉄棒を振り上げて飛び出してきた。

 上を取られたブラドは後ろに下がろうとしたが、真後ろにまた巨大な塊が出現して塞がれる。

 

「っしゃあ!!」

「それは悪手だぞ!」

 

 ブラドは両手で鉄棒を掴んで受け止める。

 泡瀬は目を見開いて慌てて手を放そうとするが、その前にブラドの血が泡瀬の両手を包み込んで固まる。

 

「やべっ!」

 

 ブラドが泡瀬を捕まえようと左腕を伸ばすと、唯がブラドが捨てたハンマーを突き出すように構えて突撃してきた。

 

「大」

 

 ハンマーを巨大化して抱えるように持ち直しながら突っ込む唯。

 ブラドは口を吊り上げて、泡瀬から離れる。

 

「いいぞ!」

「すまねぇ!」

「ん」

 

 泡瀬が巨大化した塊に手を叩きつけて固まった血を砕く。

 唯は頷いて、ハンマーや塊を元の大きさに戻して、泡瀬とハンマーと鉄棒を交換する。

 

「なるほど。確かに側溝の蓋ならば武器にも壁にも出来る。それに弁償するにしても役所でいいからな」

 

 ブラドは感心するように頷く。

 その余裕ぶりに泡瀬は顔を顰める。

 

「やっぱ下手に攻められねぇな。けど、そうしないと先生の動きを止められねぇし」

「ん」

「壁も砕かれちまったし、どうにかして動き止めねぇと!」

「ん!」

 

 気合を入れ直して構える2人。

 ブラドも構え直し両手に血を纏わせながら、唯に向かって走り迫る。

 

「ん!」

 

 唯は握っている鉄棒を突き出す形で再び巨大化する。少し斜めに構えて巨大化することで、唯とブラドの間を塞ぐように設置する。

 泡瀬も入れ替わるように飛び出して、ハンマーを構える。

 唯が鉄棒から手を放して、瓦礫が転がっている所に走り出す。 

 

「だぁ!!」

「甘いと言っているぞ!」

 

 ブラドは振り下ろされたハンマーを軽やかに躱し、右手に纏う血を手甲のように固めて、ハンマーのコンクリート塊を殴り砕く。

 そして左手の血を網のように伸ばし、泡瀬を捕まえにかかる。

 泡瀬は殴られてひしゃげた鉄棒を振り回して、網を振り払おうとしたが、血の網が鈎爪のように変化して泡瀬に掴みかかってくる。

 

「げっ!?」

 

 泡瀬は慌てて逃げようとするが、もちろん間に合いそうになかった。

 その時、泡瀬の右横から巨大なコンクリート塊が飛んできて、血の爪を砕く。

 

「ぬ!」

「上!」

 

 ブラドと泡瀬が上を向くと、大きくなったコンクリート塊が数個降ってきていた。

 泡瀬は慌てて後ろに走り出して、振ってくる脅威から逃げる。

 

「ちぃ!!」

 

 ブラドは舌打ちをして左に向かって駆け出す。

 

 その時、巨大な輪っかが落ちてきて、ブラドの周囲を囲む。

 

「これは……!?」

 

「解除」

 

 ブラドはそれが何かに気づいて飛び上がろうとするが、その前に唯の呟きが聞こえる。

 

 ブラドを囲んだ輪っかは一気に小さくなり、飛び上がり始めていたブラドの右足にかかる。

 それはまさしくハンドカフスだった。

 

 

『泡瀬・小大チーム 条件達成!』

 

 

 アナウンスを聞いた泡瀬と唯はハイタッチをする。

 

「よっしゃ!」

「ん!」

 

 ブラドはため息を吐いて、2人を見る。

 

「やや強引で危険なやり方ではあったが……側溝の蓋を使ったことと今のハンドカフスの掛け方は見事だった」

「はい!」

「ん」

「反省は全ての試験が終わってから行う。今はゆっくり休め」

 

 ブラドの言葉に頷いて、2人はステージを後にするのだった。

 

 

 

 モニタールームでは一佳達が感心するように頷いていた。

 

「なるほどねぇ。ハンドカフスを大きくすれば捕まえやすくなるのか」

「唯だからこそのやり方だな」

「まぁ、そう言うことだな。檻が小さくて捕まらねぇなら、檻を大きくすればいいってことだ。ま、ハンドカフスをどこにかけてもいいってルールだからこその荒技だけどな」

「……ズル」

 

 戦慈が肩を竦めて、里琴も頷く。

 一佳達も確かにと頷き、それでも無事にクリアしたことを喜ぶ。

 

「さぁて!私も行きますか!」

 

 切奈が伸びをして扉へと向かう。

 

「頑張れよ!切奈!」

「ファイトデス!」

「ま、やるだけやってくるさ」

 

 切奈はヒラヒラと手を振って、モニタールームを後にする。

 

「次は鉄哲と凡戸だな」

「相手が校長ってのがなぁ」

「戦法が読めないからね」

「それでも校長先生はプロヒーロー。油断は出来ません」

 

 骨抜、鎌切、庄田が腕を組んで眉を顰める。茨も両手を組んで一筋縄ではいかないことを予感する。

 

 モニターには気合を入れて大股で歩く鉄哲と、それにゆったりとした歩みで付きそう凡戸が映っていた。

 

「どう考えても校長先生は正面から戦うタイプじゃないよな」

「だろうな。それに対して単細胞の鉄哲とマイペースな凡戸じゃ、搦手じゃ絶対勝てねぇ」

「つまりは自分の戦いが出来ない中で無鉄砲に動かないことと、互いの意見を出し合い尊重できるかが大事だね」

 

 一佳、骨抜、庄田の言葉に全員が頷く。

 しかし、全員の胸にそこはかとない不安が押し寄せていた。

 

 

 

 ステージは工場地帯。

 

 しかし、鉄哲と凡戸はやはり深く考えてはいなかった。

 

「校長先生は戦闘タイプじゃねぇ!近づいちまえば、こっちのもんだろ!」

「そうだねぇ。けど、どうやって見つけようか?校長先生は小さいよぉ?」

 

 意気揚々と所定の位置に着く2人。

 

「搦手しよぉったって、こっちを見つけなけりゃ話にならねぇんだ!いくら校長先生が頭が良くて元動物だろうと、近づかなけりゃ見つけられねぇぜ!」

「それもそうかぁ」

 

 鉄哲の言葉に頷く凡戸。

 

 

『鉄哲・凡戸チーム 演習試験レディ・ゴー!』

 

 

 開始のアナウンスが聞こえて、鉄哲は走り出す。

 

「ゲートに向かえば嫌でも出てくんだろぉ!そんでぶん殴る!」

「それもそうだねぇ」

 

 凡戸も鉄哲に続いて走り出す。

 

 その時、

 

ドギャァン!!

 

「「!!」」

 

 突如響いた音に2人は足を止める。

 

ドオォン!

ギイィィ!

ガッガーン!!

ズウゥン!

ドオォン!

 

「なんだぁ!?」

「なんか近づいてくる?」

 

 2人は音が聞こえる方を向いて構える。

 

 すると、少し先のタンクが倒れ始めて、更に倒れた先に建っていた鉄塔に当たって鉄哲達に向かって倒れてきた。

 

「なああ!?」

「ええ~!?」

 

 2人は驚きながら慌てて走り出す。

 倒れてきた鉄塔は周囲のパイプや鉄骨をなぎ倒しながら、2人が先ほどまでいた場所に盛大に音を立てて倒れる。

 

「な、なんだよ!?」

「もしかして校長先生?」

「あのちっこい先生がどうやって建物を倒してんだよぉ!?」

 

 鉄哲はパニックに陥っているが、再び遠くから何かが崩れる音が響いてくる。

 

 どんどん音が近づいてきて、再び巨大なパイプが上から崩れてくる。

 

「マジかああ!!」

「完璧に位置バレてるねー」

 

 2人は方向も考えずに走り出し、潰されるのを避ける。

 

「建物に逃げるか!?」

「う~ん。でもぉさっきみたいにタンクとか転がされたら、逆に逃げ場ないかもぉ」

「凡戸の接着剤で止めれねぇのか!?」

「あんな大きいの止めれないよぉ。止められても乾く前に転がされたら逆に厄介だよ」

「ちっくしょう!!」

「落ち着く暇もないねぇ」

 

 鉄哲は顔を顰めながら走り、凡戸も慌てているのか分からない雰囲気を醸し出しながら走る。

 

 

 その様子を戦慈達も顔を顰めて見つめていた。

 

「こういう手でくるか……」

「こりゃあ鉄哲には最悪な相手だな」

「だな」

 

 モニターでは重機に乗った校長が高笑いしながら操作していた。

 

「完璧に倒れ方計算出来てやがるなぁ」

「それに倒し方もゲートまでの道を塞ぐようにしてるな」

「けど、それを鉄哲達が気づく余裕はないよね」

「……魔王」

「流石の鉄哲もあの鉄の塊を受け止める事は出来ねぇだろうし、凡戸も落ちてくるのに接着剤かけても意味ねぇしな」

 

 骨抜、一佳、柳、里琴、戦慈が呻くように呟く。

 

「2人は機動力もない。校長先生の計算を超えた動きは難しいだろうな」

 

 庄田も顎に手を当てて、勝つ手段を考える。

 しかし、答えは思いつかず、ただ逃げ続ける鉄哲達を見続けるだけだった。

 

 

 

 鉄哲は走りながら、少しずつ怒りが湧き上がってきた。

 

(くそぉ……早速俺が苦手なところを突いてきやがる!どうすればいいんだ!?)

 

「凡戸ぉ!なんか手はねぇか!?」

「ちょっと無理かなぁ。でも、校長先生はゲートの方だよねぇ。崩れてくるのはそっちの方だし」

 

 凡戸は頬を掻きながら崩れてきた方向を見る。

 鉄哲は歯軋りをして、ゲートの方向を見る。

 

「くっそぉ!!こうなったら先に俺が周りを壊して進むか!」

「それは駄目じゃないかなぁ。ヒーローが被害増やしてどうするのぉ?」

「ぐぅ……!」

 

 鉄哲はすぐ傍の鉄骨に殴りかかろうとしたが、凡戸の言葉に動きを止める。

 その直後に鉄哲達の進行方向の道が崩れて塞がれる。

 

「あぁ~、崩されちゃった。危なかったねぇ」 

「くっそぉ……。このままじゃあ、全部の道が塞がれちまう……!」

「けどさぁ、もう進むも戻るも瓦礫だよ?」

「そうだな。……ん?」

 

 鉄哲は凡戸の言葉に何かが引っかかった。

 

(前も後ろも確か崩された。けど、俺達が被害を拡大させるわけにはいかねぇ。……なら、()()()()()()()()()()?)

 

「なぁ凡戸!!」

「どうしたの?」

「これって駄目なのか!?」

 

 鉄哲は崩れたステージを指差して、凡戸に声を掛ける。

 それ凡戸は首を傾げて、もう少し詳しく質問する。

 

 

 

 校長は重機の操縦席で紅茶を飲んでいる。

 

「さて、これでここから崩せるところは、ほぼ崩したのさ。後はもう1つの重機の方に移動して、高みの見物といくかな?」

 

 一応ゲートに行くことが出来る道は残してある。

 今の所、これ以上崩す気はないが、備えとして移動を始めようとする校長。

 

 その時、崩れた瓦礫が何かに弾かれるように吹き飛んだ。

 

「ん?」

 

 校長は動きを止めて確認する。

 そこには、

 

「崩れた所を俺が崩してもよぉ!!それはヴィランが悪いよなぁ!!」

 

 鉄哲が両腕を振り回し、瓦礫を砕いて殴り飛ばしながら進んでいた。

 その後ろで凡戸が接着剤を周囲に撒いて、道が崩れるのを防いでいた。

 

「瓦礫は出来る限り崩れた所に飛ばしてね」

「わぁってんよぉ!!」

「怪しいよねぇ」

「邪魔だああ!!」

 

 鉄哲は先ほどまでとは打って変わって、輝く笑顔で両腕を振り回している。

 今までの鬱憤を瓦礫に叩き込んでいるのだ。

 

 それを見た校長は、

 

「わぁおぅ。無鉄砲さがまさかの答えを導いたみたいだね。塞がれてない道を探すのではなく、塞がれた道を利用するか。中々出来る判断じゃないのさ」

 

 校長は重機の操作レバーを握って、計算を始める。

 

「う~ん。ここからだと一か所しか崩せないね。それに倒してしまうと、残していたルートも崩れてしまう。……仕方がない。それが彼らの選んだ道さ!」

 

 校長はレバーを倒して、重機を動かす。重機に取り付けられた鉄球が大きく振られて、近くの建物に当たって崩れていく。

 すると、ドミノ倒しのように建物やタンクが崩れていき、迂回するように鉄哲達の元に向かっていく。

 しかし、鉄哲達も崩れたことで開けた視界の先で、動いた重機を目撃した。

 

「あそこかアアァ!!」

「みたいだねぇ。まだちょっと遠いなぁ。それに鉄哲ぅ、また来そうだよぉ」

「どっちだぁ!?」

「左~」

 

 鉄哲は凡戸の言葉に、足を止めて左を向く。

 

「どうする?」

「このままだと、崩れてくるんだよな!?」

「うん」

「だったらよぉ!!今、俺が崩しても変わらねぇよな!?」

「うん?」

「よっしゃアアァ!!」

 

 凡戸は鉄哲の言葉に首を傾げただけだが、鉄哲はそれを肯定と捉えて叫びながら左側に駆け出す。

 

 そして、まだ無事なステージを殴り壊し始める。

 

「えぇ~……」

「どうせ壊されるなら、先に壊して邪魔してやるぜエエェ!!」

「いいのかなぁ?」

 

 凡戸は呆れながらも鉄哲の周囲に接着剤をかけてサポートする。

 出来る限り早く乾いて固定されるモノにしているため、強度は少し不安だが少しは崩れにくくなるだろう。

 

 

 その様子を一佳達は呆れて見るしか出来なかった。

 

「何を考えて、あんなことし始めたのかは想像できるけど……」

「単細胞すぎるだろ……」

「まぁ、鉄哲らしいけどな。無茶苦茶ではあるが、ありっちゃありだ。無理に防いでも壊されるなら、先に壊しちまえってのはな」

 

 骨抜と一佳が手で目を覆う。それに戦慈も苦笑しながらではあるが、作戦としては有効であると鉄哲をフォローする。

 

 

 校長は笑いながら移動を開始する。

 

「ははは!無茶をするね!ちょっと厄介だなって感じているのさ!」

 

 まさか自分から壊しに行くとは思わなかった。

 しかし、どうせ崩れるのだから確かに遅いか早いかである。ならば、活動を妨げないように障害を排除するのは大切なことではある。

 校長が相手だからこそ、まだ許される作戦ではあるが。

 

「さて、急いで移動しないとね!」

 

 ティーセットが入った鞄を抱えて走り出す校長。

 その時、足元に大きな衝撃が走る。

 

「!?」

 

 校長は身を屈めて確認すると、鉄哲が右腕を振り被った状態でこっちを向いていた。

 鉄哲はすぐさま足元の鉄骨を手に取って構える。そして全力で投げた。

 

「オォリャアアアァ!!」

 

 投げられた鉄骨は重機を支える鉄骨に当たり、大きく揺さぶる。

 

「逃がすかアアア!!」

 

 今度は大きめの鉄パイプを両手で掲げて、ぶん投げる。

 それも鉄骨に当たり、重機を振るわせる。

 

「無茶をするね!けど、私だってプロヒーローさ!この程度で簡単には止まらないのさ!」

 

 校長は駆け出して、下を目指して降りていく。

 その間も鉄哲が鉄材を投げ続ける。

 そして、下に降りて校長は近くの重機を目指そうとすると、目の前に液体が撒き散らされる。

 

「!!」

「間に合ったぁ」

 

 現れたのは凡戸だった。

 鉄哲が投げて注意を引いている間に、凡戸は少し遠回りになっても瓦礫が少ない道を見つけて重機の下に向かっていたのだ。

 

「いつ鉄哲のがこっちに飛んでくるかと思ったよねぇ」

 

 凡戸は一度大きくため息を吐くと、顔を大きく振って接着剤を校長に振りかける。

 校長は躱し切れずに足元に接着剤を浴びてしまい、少しすると動けなくなる。

 

「う~ん。これはやられちゃったね」

「では、失礼しますねぇ」

 

 凡戸がハンドカフスを校長の両手に掛ける。

 

 

『鉄哲・凡戸チーム 条件達成!』

 

 

 アナウンスが響き、凡戸はフゥ~と息を吐く。

 

「危なかったなぁ」

「凡戸ぉ!やったなぁ!!」

 

 鉄哲が瓦礫を吹き飛ばしながら、凡戸の元に駆け寄る。

 

「ちょっと見せてもらいたかったのとは違うけど、クリアはクリアだからね。おめでとう」

「あざっす!!」

「ありがとうございます」

「ただ、褒められたやり方ってわけでもないのさ。ちゃんと反省点を後で洗い出すからね」

 

 校長の言葉に2人は頷いて、凡戸が校長を抱きかかえてステージを後にするのだった。

 

 

 

 一佳達は凡戸がハンドカフスをかけた瞬間に、緊張を解くようにフゥ~と息を吐いた。

 

「無茶苦茶だけどクリアはしたな」

「まぁ、良かったよ。無茶苦茶だったけど」

「あの壊すの大丈夫なの?無茶苦茶だったし」

 

 骨抜と一佳が呆れながらもホッとすると、柳が首を傾げる。

 

「校長先生次第だろうね。一応、壊される可能性が高いところだけを壊していたし」

「まぁ、最初にやらかしたのは校長だしな。校長が壊さなけりゃ鉄哲も出来なかったんだ。敵の行動を利用したのを否定は出来ねぇだろ」

 

 庄田と戦慈は恐らく問題ないだろうと推測する。

 その理由に一佳達も頷き、再びホッと息を吐く。

 

「次は切奈だし、安心して見れるな」

「だな」

「じゃ、私も行ってくる」

「……がんば」

「頑張れよ!」

「勝利をお祈りしております」

 

 一佳の言葉に戦慈も頷く。

 すると柳がユラ~と動き出す。

 里琴と一佳、そして茨達も声を掛けて、柳を見送る。

 

 演習試験も残り3戦。

 

 いよいよ佳境に入る。

 

 




切奈のコスチュームは再生するそうです。凄いですよね。

唯の《サイズ》は解除すると全て解除されるのか、意識したものだけなのかが分からなかったので、今作は『意識したものを解除できる』とさせていただきます。

原作では解除後も小さくして持ち運んでいる様子があったので、出来るんだとは思うのですがね。

ちなみに
凡戸は【プラモ】、泡瀬は【ウェルダー】だそうです。
唯達も次巻で書かれることを願います。
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