翌日。
本日は終業式である。
しかし、朝のHRでは少しばかりの緊張感が張り詰めていた。
昨日のA組緑谷の敵連合リーダー格との遭遇である。
教壇に立っているブラドは眉間に皺を寄せている。
「昨日のニュースについては既に知っていることと思う。それで敵連合は未だにオールマイトを標的にしている言動が確認されたそうだ」
「まぁ……だよね」
「そうじゃなかったら広島とか保須は何だったんだって話だもんな」
切奈と回原が眉を顰めて、苦々しく言う。
それに他の者達も同意するように頷く。
「そのことを考慮して、危険性を少しでも減らすために、林間合宿は場所を変更することが決まった。場所は情報漏洩を防ぐために当日まで秘匿することにもなった」
「大掛かりになってきたなぁ」
「しかし、ここで中止にするわけにもいきませんからな」
「その気になれば、どこでも特訓出来るだろ!」
「無茶言うなって」
泡瀬が頬を掻きながら呟き、宍田が学校側の考えを口にし、それに鉄哲が叫ぶが、骨抜にツッコまれる。
「日程が変わることもないし、すでに配ったしおりに記されている用意するべき物品も変わる予定はない。なので、お前達は従来通りの準備をしてくれれば問題ない」
「それは助かるね」
「昨日、色々買ったからねぇ」
庄田と切奈がホッと息を吐き、それに他の者達も頷く。
その後も夏休みについて簡単な話をして、終業式に向かう一佳達。
そして、放課後となり、夏休みが開始となる。
「拳暴、拳藤。少し職員室までいいか?」
「あ?」
「はい?」
ブラドに声を掛けられて、戦慈と一佳は首を傾げる。
唯達も首を傾げるが、とりあえず戦慈と一佳はブラドに続いて職員室に向かう。その更に後ろを当たり前のように里琴も付いて行く。
職員室に入ったブラドは、里琴の姿を見て一瞬固まったが、ため息を吐いて話を進めることにした。
ブラドは机の引き出しを開けて、エアメールと思われる封筒を取り出した。
それを戦慈に渡す。
「……あん?」
「『I・アイランド』は知ってるか?」
「……確か世界中の科学者が集まる移動人工島だったか?」
「そうだ。そこで来週エキスポが開催される。その招待状だ」
「はぁ?」
ブラドの言葉に戦慈はもちろん、一佳と里琴も首を傾げる。
「なんで俺なんだよ?」
「体育祭の優勝者だからだ。もちろん2、3年生の優勝者も行くぞ」
「……意味が分からん」
「恐らくは有望な者との顔合わせだな。『個性』やサポートアイテムの研究も有名だからな。プロになった際に契約を結びたいのだろう」
「……だりぃな」
「そう言うな。衝撃波の指向性やコスチュームの強度強化についても相談すればいいと思うぞ」
戦慈はブラドの言葉に一理あると思って、とりあえずは受け取ることにした。
しかし、そこである疑問が頭に浮かぶ。
「これって俺だけか?」
「いや、招待状一枚に付き、同伴者1人が許されるらしい」
その瞬間、里琴が背後から飛び掛かり、戦慈の首に腕を回してぶら下がる。
地味に力を籠めており、戦慈は顔を顰める。
「……おめぇなぁ」
「……連れてけ」
「まぁ……拳暴は家族はいないから、巻空を連れていっても問題はないだろう」
ブラドは右手で顔を覆って呆れながら説明する。
一佳はただ苦笑するだけだった。
「で、拳藤」
「はい」
「お前にもこれを渡しておく」
ブラドは一佳にも封筒を渡す。
一佳は首を傾げながら、中を見ると同じくI・アイランドの招待状だった。
それを理解した一佳は目を見開いて固まる。
「え?」
「それは校長に届いた分だ」
「え!?」
「校長も最初は行く予定だったが、今回の騒動の対応があるのとオールマイトが別口だが招待をされたことで、今回は取りやめになった。で、先方に問い合わせをして、生徒でも構わないことになった」
「な、何で私なんですか?」
「拳暴と巻空の引率だ」
「……」
「……よろ」
ブラドの説明に一佳は色んな意味で唖然とする。
ブラドは申し訳なさそうな顔をする。
「本来なら俺が行くべきなのだが……悪いが、俺は林間合宿の調整を行わなければいかん。そこで2人の扱いを一番理解しており、委員長である拳藤に任せようと校長と決めたんだ」
「……なる……ほど?」
一佳は納得出来るような納得出来ないような複雑な表情を浮かべる。
「これに関しても同伴者を連れて行ける。もちろん他のB組の者でも問題はない」
「はぁ……」
「それだけではなく、A組の八百万や飯田も実家の関係で招待されてるそうだ。八百万たちと行動を共にすれば問題ないだろう。それにI・アイランドならば敵連合も迂闊に手を出せないだろうから、生徒だけでも大丈夫だろう」
「それなら……」
挙げられた名前に一佳はホッと息を吐く。
しかし、次の言葉に戦慈も含めて固まる。
「夜にはパーティーがあるそうだ。なので、正装の準備をするようにな。それとプレ・オープンではコスチュームを着るように。これが申請書だ」
「「は?」」
「……美味い飯食い放題?」
「そこまでは知らん」
ブラドから書類を渡されながらポカンとする戦慈と一佳。
里琴は何故か平常運転である。
一佳はすぐさま再起動してブラドに訊ねる。
「せ、制服じゃ駄目なんですか?」
「恐らくそぐわないだろうな。流石にパーティーではコスチュームを着ていくわけにもいかん」
「……俺と里琴が持ってると思うのか?」
「そこは……後見人の鞘伏殿か、八百万に聞いてみればどうだ?」
「……マジかよ」
戦慈は天井を仰ぎ見る。
正直、欠席したい。
「いい機会だ。行ってこい。どうせトレーニングして過ごす気だったのだろう?」
「そうだけどよ……」
「ヒーローになれば、そう言う場にも出る機会はある。練習して来い」
「……はぁ」
戦慈は大きくため息を吐く。
一佳もため息を吐いて、小さく頷く。
「分かりました……」
「すまんな」
「ついでにいいですか?」
「なんだ?」
「プールの使用許可を頂きたくて」
「空いていれば問題ないぞ」
空いている日を聞いて、一佳は使用申請を出す。
ブラドの用事はそれだけだったようで、戦慈達は職員室を後にする。
「鞘伏に連絡してみるか……」
「私と里琴は八百万に相談してみる。あいつなら必要な物分かりそうだし」
「そうしろ」
「拳暴のも聞いとこうか?普通のスーツってのも浮きそうじゃないか?」
「普通のスーツで浮くパーティーなんか行きたくねぇよ」
「そりゃそうか……」
「……美味い飯」
「なんでお前は楽しみにしてんだよ。それといい加減降りろ」
「……私はただの付き添い」
「ざけんな」
うんざりとしながら正装をどうするか話し合う戦慈と一佳。
里琴は相変わらず戦慈の背中に張り付いて、何故か楽しみにしていた。
戦慈にツッコまれるも、里琴は関係者ではないとでもばかりに嘯き、戦慈に振り落とされる。
ややうんざりしながら教室に戻ると、切奈達が待ってくれていた。
「お。お帰り~」
「なんだったの?」
「ん?」
一佳はI・アイランドの招待状の事とプールの使用許可を取って来たことを説明する。
切奈達は目を見開いて、一佳は引率係ということに苦笑する。
「まぁ、拳暴と里琴だからねぇ。一佳が一番適任だよね~」
「ん」
「だよね」
「でさぁ、あと1人来れるんだけどさ。誰か行きたい人、いる?」
それに切奈達は顔を見合わせて眉を顰める。
「そりゃあ、皆行きたいよ。まぁ、次の日がオープンだから、我慢すればいいかもだけど」
「ん」
「だよなぁ」
「じゃ、ジャンケンで決める?」
「それがベストでぇす!」
「異論ありません」
「ん」
切奈の言葉に唯と一佳も頷き、そこに柳が決め方を提案する。
茨達も異論なしと頷き、ジャンケンをする。
数回あいこが続き、その結果勝ち取ったのは、
「よろしくな」
「ん」
唯だった。
ここまで戦慈すらも他の男子を誘うという選択肢が思い浮かぶことはなかった。
一佳の同伴者と言うこともあっては仕方がないかもしれないが。
しかし、一佳の同伴者を里琴にすれば、戦慈が男子を誘うことが出来たかもしれないことは最後まで誰も思いつくことはなかった。
戦慈達はプールについて集合時間を決めて、帰宅する。
戦慈は家の扉の前に立つと、ポストに封筒が挟まれているのを見つけた。
「手紙か?」
「……誰?」
当たり前のようにいる里琴と一佳も首を傾げる。
戦慈は封筒を取り出し、送り主を見る。
そこに書かれていたのはヒョウドルの名前だった。
「ヒョウドル?」
戦慈は眉を顰めながらも、とりあえず家の中に入る。
里琴と一佳も当然のように部屋に上がり、当然のようにクッションに座る。
「敵連合の調査が進んだのか?」
「俺に連絡する必要はねぇだろ。教師も何も言わなかったしな」
「それもそうか」
一佳が推測を語るが、すぐに戦慈に反論される。
戦慈は封筒を開けて、中を出すと出てきたのは、何かのチケットのようだった。
そして戦慈達はそれに見覚えがある。
「……I・アイランドの招待状か?」
「招待状だな」
「……何故?」
何故か招待状が2枚入っていた。
手紙も同封されており、戦慈は中を読む。
『久しぶり。元気にしてるかしら?こっちは変わらず、元気過ぎて困ってるわ。
入ってる招待状は見たかしら?
それはミルコと私達に届いたのだけど、ミルコは『んなもん、興味ねぇよ』って言って欠席する気だし、私やアルコロも同じで興味ないし、あってもミルコが行かないのに行ってもしょうがないからね。欠席することにしたの。
で、もったいないから、2人に送ることにしたわ。特にスサノオはあの暴走状態のコントロールする方法とかヒントが手に入るんじゃない?
ということで、I・アイランドにはオッケー貰ってるから、シナトベや友達と行ってきなさいな。
また広島に来ることがあったら、連絡頂戴ね♪
ヒョウドル』
戦慈は読み終えると、ため息を吐いて一佳達の前に手紙を投げる。
一佳と里琴は手紙を一緒に読む。
「へぇ。ミルコの所に来てたのか。まぁ、トップヒーローだし、当然か」
「……ん」
「だからって俺に送るなよ……」
「もうあるしなぁ。……ん?これって……」
「どうしたんだ?」
「これなら切奈達も全員呼べるなってさ」
「……あぁ」
「……カモ~ン」
この招待状も同伴者を認められている。つまり4人呼べるのだ。
これならばジャンケンで負けた切奈、茨、柳、ポニーもプレ・オープンに参加できる。
「拳暴。これ、もらっていいか?」
「……もう好きにしろ」
戦慈はいまさら他の者を探す気にもなれなかった。
一佳は苦笑して、早速とばかりにスマホを取り出してメールを送る。
すぐさま4人から返信があり、こうしていつものメンバーで行くことになったのであった。
そして、夏休みに入った。
戦慈、里琴、一佳は変わらず一緒にトレーニングしたり、部屋でのんびりして過ごしていた。
夏休みに入って3日目。
プールの日を迎えた。
「だりぃ……」
「もう諦めろって」
「……来いや」
戦慈は気だるげに歩く。その左右を一佳と里琴が歩いている。
学校に着く少し前に切奈達とも合流し、職員室に顔を出してプールへと向かう。
ちなみにこの時に招待状が他にも届いたことをブラドに説明し、切奈達もコスチューム使用申請を出した。
そして、それぞれの更衣室に別れて着替えてプールへと向かう。
今回使うプールは、一般的な屋外50mプールである。
戦慈は上半身にパーカーを羽織って、足を踏み入れた。
まだ女性陣は来ておらず、戦慈は日陰に座って待つことにした。
10分ほどすると入り口が開き、戦慈は一佳達が来たと思って目を向ける。
しかし、そこにいたのは、
「あ?」
「あれ?拳暴君?」
麗日や八百万を始めとするA組女性陣だった。
麗日達も戦慈を見て、目を見開いている。
「拳暴さんもプールに?」
「俺って言うか里琴達が、だな。俺は付き添いのつもりだ」
「巻空さん?ということは……」
「拳藤達ももうすぐ来るだろ」
麗日達は戦慈の言葉に頷くと、耳郎が呆れたように見てくる。
「相変わらず巻空とセットなんだ……」
「他に男子いないの?」
「いるように見えるか?」
芦戸が首を傾げながら尋ねてきて、戦慈の呆れたように目を向ける。
それに麗日達も苦笑していると、一佳達がやって来た。
「あれ?八百万達じゃないか」
「やっほー!」
「B組女子もプールに来たんだね!」
「まぁね」
一佳が目を見開くと、芦戸と葉隠が手を上げて挨拶する。葉隠は水着だけが浮いているようにしか見えないが。
切奈が偶然の鉢合わせに苦笑しながら頷く。
もちろん全員スパッツのスクール水着である。
それでもヒーロー科1年女子全員が水着姿で集まっている光景は、まさにパラダイスである。
その光景を独り占めをしている戦慈は、女子が増えたことにうんざりしていたが。
ちなみに一佳、茨、切奈、ポニーは後ろで髪を纏めており、普段とは違う色気を感じさせる。
「そっちは今日だったか?先生からは誰も申請してないって聞いたんだけど……」
「予定が変わったのよ。来週だったんだけど、ヤオモモちゃん達が無理になっちゃったの」
「ああ……I・アイランドか」
「ええ、確か拳藤さんや拳暴さん達も行かれるのですよね?」
「え!?2人も?」
プールサイドに移動しながら、一佳が首を傾げてA組陣に質問すると、蛙吹が理由を答える。
それに一佳が思い出したように呟き、それに八百万も尋ね返して、葉隠が驚く。
戦慈も一応後ろを気だるげに付いてきていた。
「あ~……2人って言うか、ここにいる全員だな」
「え!?なんで!?」
一佳が頬を掻きながら答えると、芦戸がなにやら前のめりになって声を荒らげる。
その反応に首を傾げながらも一佳は、戦慈にミルコ達からも招待状が届いたことを説明する。
理由を聞いた芦戸や葉隠は羨まし気に声を上げる。
「いいなぁ~」
「私達はヤオモモと響香ちゃんにお茶子ちゃんだけだもんね~」
「八百万は聞いてたけど、耳郎と麗日も?」
「ヤオモモちゃんの家に届いた招待状の余りよ。じゃんけんで決めたの」
「え?でも、招待状3枚あるなら、同伴者で行けばいいんじゃないの?うちらみたいにさ」
一佳の言葉に蛙吹が答えると、切奈が首を傾げる。
すると芦戸と葉隠がバッ!と八百万を見る。
八百万は申し訳なさそうに顔を歪める。
「申し訳ありませんが……。私の招待状は流石に血縁でなければ難しいですわ。耳郎さんと麗日さんにお渡ししたのも個人用ですので……」
ガックリと肩を落とす芦戸と葉隠。
それに蛙吹が慰めるように声を掛けて、耳郎達は苦笑する。
「……そろそろ泳ぐ」
「ん」
「暑い」
里琴、唯、柳が声を上げて、意識はプールに戻る。
女性陣は準備体操を始め、戦慈は壁にもたれて眺めていた。
「拳暴は泳がないのか?」
「気が向いたらな」
「まぁ、ここまで女子だけ集まると泳ぎにくいよね」
「そうね。緑谷ちゃんとかにでも声かければよかったかしら?」
「うん……」
流石に同情の目を向ける一佳達。
その時、再び扉が開いて、複数の人影が現れる。
その者達を見た一佳達は目を見開く。
「飯田君!?それに皆も!?」
現れたのはA組男子陣だった。
ぴっちり水泳帽と水中眼鏡を装着した飯田は、八百万達や戦慈達に顔を向ける。
「麗日くん達じゃないか!それに拳暴くんに拳藤くん達も!」
「お、ホントだ」
「おお!ヒーロー科女子勢ぞろいじゃん!」
飯田の声に砂藤や瀬呂が声を上げ、常闇や尾白、轟達も顔を向ける。
「飯田さん達もとは……」
「ああ!緑谷くんからメールが来てね!体力強化だそうだ!もうすぐ緑谷くんや上鳴くんに峰田くんも来るだろう!」
「ケロ。夏休みでも頑張ってるのね」
八百万達は飯田達に近寄り、一佳達はプールに入る。
「これなら拳暴も楽しめるかもね」
「ん」
「良かったです」
「そうだな」
一佳達は戦慈に目を向けると、轟が歩み寄っていた。
「他にB組男子はいねぇのか?」
「いるように見えるか?」
「いいや……」
「それにしても、前も食堂で飯田達といたが、随分と距離が縮まったみてぇだな。保須か?」
「……それもある」
「ま、いいことだな」
未だ他人との距離の取り方に慣れていない様だが、随分と雰囲気が和らいでいる轟。
それに戦慈は肩を竦めて、言葉を交わす。
周りは体育祭の事から、少し緊張感があったが、2人の会話を聞いてホッとしていた。
その後、八百万達もプールに入り、軽く泳ぎ始める。
A組男子陣も準備運動を始めていると、上鳴と峰田が勢いよく扉から飛び出してきた。
「「新しい水着ーー!!!」」
「遅かったじゃないか!」
「「ぶへええええ!?」」
何故か水中眼鏡を目に着けた飯田が、爽やかな笑みを浮かべて右手を上げる。
峰田と上鳴は思いっきりずっこけて、地面を滑っていく。
「な、なんでお前らまでいるんだよぉ!?」
峰田が顔を押さえながら叫ぶと、後から付いてきていた緑谷が笑みを浮かべながら答える。
「体力強化って聞いたから、皆にもメールしておいたんだ!」
「そういうことか……。真面目かよ緑谷……!」
「落ち着け上鳴。ここには確かに女子もいるんだ!」
上鳴がなにやら悔し気に右手を握り締め、峰田が囁く。
ちなみに男子陣のプール使用許可を出したのは峰田である。
提出理由は『体力強化』であったが、一番の目的は『女性陣の新しい水着』を見るためだった。
峰田は終業式の日に女性陣がプールに集まろうと話していたのを盗み聞きしていた。その時に、新しい水着を買ったのにと嘆いていたことも聞いており、それを見るために上鳴を誘って、今回の作戦を立てた。
しかし、峰田と上鳴の2人で出しても相澤に疑われるのは間違いない。だから、真面目な緑谷を誘った。それが知らぬ間に拡大していたのだ。
思わぬ事態になったが、2人は諦めず目的を思い出す。
そして、ガバァ!と目を血走らせて女性陣に目を向ける。
「あら、来たのね」
「なんでずっこけてんの?」
しかし、女性陣はスクール水着だった。
それに2人は一瞬がっかりするが、B組女性陣の姿も見つけて興奮する。
「おおお!?B組女子まで!?最高なのに……なんでスク水なんだよ……!!」
上鳴は何故ここまで揃ってビキニではないのかと小声で悔しがる。
しかし峰田は、
「スク水もええですなぁ。それにより取り見取り……」
なにやら悟ったように鼻の下を伸ばす。
それを聞き逃す耳郎ではなかった。
「あいつら……」
「スケベな目で見てるわね」
「……成敗」
蛙吹はもちろん他の者達も峰田の視線に気づき、ジト目を向ける。
そこに里琴が右手を振り、小さい竜巻を横向きに放ち、峰田の顔に当てる。
「ごはぁ!?」
「峰田ああああ!!」
峰田は後ろに壁に頭から叩きつけられ、上鳴が叫ぶ。
もちろん女性陣は同情などせず、男子陣は呆れた目を向ける。
「峰田くん!上鳴くん!失礼な視線を向けるのは紳士の風上にも置けないぞ!」
飯田は怒りながら、峰田達に迫る。
飯田の言葉に峰田はガバッ!と体を起こし、
「水着の女がいたら、視姦するのが礼儀だああ!!」
「そんなわけがないだろう!さぁ、早速訓練を始めるぞ!」
「「いやあああああ!?」」
謎の理論を高らかに叫び、飯田が再び怒鳴り返しながら、峰田と上鳴を抱えて男子の輪の中に連れていく。
その様子を八百万達は呆れながら見送る。
「こりへんなぁ」
「峰田ちゃんだもの」
「B組の皆さんにまで……申し訳ありませんわ」
「いやぁ、こっちも物間がいるしなぁ」
「ん」
麗日が苦笑いして、蛙吹が冷たく言い捨てる。八百万が頭を下げるが、一佳達も大して怒れない存在を思い浮かべて苦笑するしかなかった。
それに一佳達は先日のお台場で似たような視線を感じてきたので、慣れてしまっていた。
戦慈は呆れながら峰田達を見ていると、緑谷が近づいてきた。
「拳暴君」
「あん?」
「あ、そ、そのぉ……よ、よかったら一緒にどうかなって」
緑谷は頬を掻き、少しキョドりながら戦慈を誘う。
戦慈は拒否しようとしたが、視線を感じて目を向けると、里琴と一佳がジィっと戦慈を見つめていた。
その視線の意味をなんとなく悟った戦慈は、小さくため息を吐いて頷く。
「まぁ、程々にやらせてもらう」
「うん……!」
緑谷は嬉しそうに笑みを浮かべる。
戦慈は再び小さくため息を吐きながら、パーカーを脱ぐ。
その下から露わになる傷痕に数名が息を呑む。
「体育祭で遠くからは見てたけど……」
「間近で見ると凄まじいな……」
「覇気がある……」
瀬呂、障子、常闇が唸るように呟き、口田も頷く。
「飯田や緑谷の傷もすげぇと思ってたけど、まだマシだよな」
上鳴も顔を引きつかせる。
飯田は左肩に傷痕があり、緑谷も右手に傷が出来ている。しかし、戦慈は全身である。比較にもならない。
戦慈も緑谷の右手の傷に気づく。
「その傷はヒーロー殺しか?」
「こ、これは……ちょっと期末で……」
「演習試験でか。……オールマイトか?」
「え!?う、うん……よくわかったね」
「お前がそこまで無茶する相手なんて、あいつくらいしかいねぇだろ。リカバリーガールも怒ってたしな」
「あぁ……」
緑谷はオールマイトから演習試験で戦慈と戦ったことを聞いていた。
だから、戦慈もリカバリーガールに治療を受けたのは、すぐに推測できた。
「緑谷くん!拳暴くん!始めよう!」
「うん!」
飯田に声を掛けられて、緑谷と戦慈は飯田の元に向かう。
そして、男子は順番に飛び込み、泳ぎ始めるのだった。
その様子を一佳達は八百万達とビーチバレーで遊びながら眺めていた。
「飯田達が来てくれて助かったな」
「だね」
「ん」
「ってかさー。なんで拳暴だけ誘ってんの?」
一佳達はホッとしていると、芦戸が爆弾を投下する。
しかし、それは麗日達も思っていたようで、頷きながら一佳達を見る。
一佳達は今更な疑問に首を傾げる。
「何でって言われてもなぁ……」
「巻空とセットのイメージはあるけど、プールまでってのは思ってなかったな」
「私達からすると、もう里琴が来るなら拳暴も来るしかないって感覚だからさ」
「ん」
「この前ェもお台場行きましィた!」
「……普通」
「そこまでなんや……」
切奈の言葉に唯も頷き、ポニーが更に燃料を注ぎ、里琴も頷く。
それに麗日は慄き、蛙吹が指を顎に当てながら思い出す。
「そう言えば、学食でもよく見かけるわ」
「そーそー。学食もそうだし、体育祭の休みとかには東京観光で遊んだしね」
「違和感ない」
「先ほどのように卑猥な視線を向けませんし、悪漢から守ってくださいました」
「ん」
「……番犬」
切奈がボールを上げながら答え、柳、茨、里琴も頷く。
それに芦戸達は思った以上に仲が良い事を理解した。
「思ったより女性受けがいいんだね~」
「なんか轟や爆豪みたいに付き合い悪そうだと思ってたけどね」
「里琴と一佳のせいかな。無理矢理連れ出して、拳暴はもう諦めた感じ」
「「「なるほど!!」」」
葉隠と芦戸の言葉に切奈が苦笑しながら答え、それに納得する芦戸達。
一佳は苦笑して、里琴は胸を張る。
「仮面してるし、確かにぶっきらぼうだけどな。いい奴なんだよ。中学同じってのもあるし」
「職場体験では拳暴さんのことで焦ってましたしね」
「そ、それは言うなよ!八百万!」
「まぁ、広島の事件は仕方ないっしょ。ウチらだって保須のニュースで焦ったし」
意図してか天然か、八百万に揶揄われて少し顔を赤くする一佳。
それに耳郎がフォローして、麗日達も確かにと頷く。
「そういえば緑谷なんでしょ?この前、遭遇したの」
そこに柳がショッピングモールでの事件を話題に挙げる。
八百万達は顔を顰めて頷く。
「まさかね~。あんなところに現れるなんてね」
「本当に負傷者がいなくてよかったですわ……」
「ああいう時の緑谷ちゃんの判断力と行動力は凄いと思うわ」
「うん……」
蛙吹はその場にいなかったので、聞いただけだが緑谷は本当によく耐えたと思っている。
それを間近で見た麗日は不安そうに眉尻を下げながらも頷く。
視線を男子に向けると、丁度緑谷が飛び込んだところだった。
麗日はその姿を複雑そうに見つめるのだった。
すると、戦慈が途中で泳ぐのを止めて、女性陣のすぐそばのレーンに移ってきた。
立ち上がった戦慈の体は二回りほど大きくなっていた。
「どうしたんだ?」
「あん?ああ、体がまたデカくなりそうだったんでな」
「なるほど」
一佳が声を掛けると、戦慈は髪を掻き上げながら答える。仮面も少しだけ外して顔を拭う。
それに切奈も頷くと、首を傾げる。
「仮面外せば?」
「そこまで晒す気はねぇよ」
戦慈はゆっくりと歩いて、プールサイドを目指していく。
プールから上がると緑谷が心配そうに声を掛けてきたが、戦慈は頷くと人気のない方に体を向ける。
緑谷や他の者達が首を傾げると、戦慈は右手を握り締め、右脚を踏み出してアッパーを放つ。
ドッッッパアアアアアアァン!!!
上空に向かって巨大な衝撃波が放たれ、近くにいた緑谷は飛び跳ねて驚き、他のA組の者達も目を見開く。
もちろん一佳達はすぐに何をする気なのか分かったので、驚くことはなかった。
「あぁ~、そっか。拳暴ってあれがあったね」
「確かに海とか普通のプールで、あれをやるわけにはいかないね」
「ん」
「そりゃ行く気にならないよな」
切奈と柳が戦慈が渋っていた理由を理解し、唯と一佳達も頷く。
泳ぐ以上アドレナリンが増え、体が膨れるに決まっている。しかし、一般では基本的に『個性』の使用は禁じられており、被害が無ければ見逃して貰えるが、戦慈の場合は確実に問題視される。
被害が出ないように発散するのに、その行為が問題になるのだ。
戦慈からすれば学校であろうと、面倒に決まっている。
「わりぃな。発散しねぇと水が吹き荒れちまうんだ」
「ううん!だ、大丈夫だよ!」
体が元に戻った戦慈は緑谷に振り返りながら謝る。
緑谷は首が千切れそうな勢いで横に振る。
「少し休ませてもらうぜ。体を落ち着かせねぇと、すぐに膨れ上がっちまう」
「う、うん」
「丁度いい!!皆!一度休憩しよう!!」
いつの間にか近くにいた飯田が、男性陣に声を掛けて休憩する。
その声に峰田や上鳴はぐったりと仰向けに倒れ、他の者も持ってきていたタオルなどで体を拭いて休憩を始める。
戦慈もタオルで体を拭いて、プールサイドに座る。
すると、
「「ぶわぁ!?」」
「ケロ!?」
「きゃあ!?」
「ちょっ!?」
「ん!?」
「ワオゥ!?」
里琴が水の中で竜巻を生み出して、プールから飛び上がる。
近くにいた女子陣は水飛沫と竜巻により発生した渦潮に悲鳴を上げて、飲み込まれる。
切奈だけは首から上を切り離して、溺れるのを逃れる。
里琴はそのまま戦慈の傍に降り立つ。
「……何してんだよ」
「……アトラクション?」
「俺が知るかよ。ってか、俺のタオル使うんじゃねぇ」
戦慈は呆れながら里琴を見る。里琴は戦慈が使ったタオルで体を拭きながら、首を傾げる。
そして里琴は戦慈の隣に座る。
そこに切奈の首が飛んできて、里琴の頭頂部に頭突きする。里琴は流石に無表情のまま涙目になって、頭を押さえる。
「……うぅ」
「っつぅ~……流石に危ないよ」
切奈も顔を顰めながら、里琴に注意する。
プールサイドには女性陣が息も絶え絶えで乗り上がっており、プール内では蛙吹が救助活動していた。
一佳がガバァ!と体を起こして、里琴に叫ぶ。
「いきなりはやめろよ!?」
「……むぅ」
「……死ぬかと思った」
「ケロ。私もちょっと焦ったわ」
里琴は頭を押さえながら唸り、葉隠が仰向けに倒れながら呻く。
それに他の女性陣や水中が得意な蛙吹も頷く。
切奈も首を体に戻して、茨達の介抱を始める。
その様子を男子陣も呆れながら見ていた。
「相変わらず破天荒な2人だな」
「ってか、巻空の竜巻って水の中でも使えるのかよ」
「ブツブツ……凄いな。巻空さんの『個性』はかっちゃんと同じ空中戦や撹乱戦に特化してると思ってたけど、水中だとスクリューみたいな役割を果たしたり、渦潮を生み出せるのか。しかも竜巻を強くすれば、水を巻き込んだ竜巻も作れそうだ。それって物理的にも脅威だし、火災とかにも威力を発揮するんじゃ……ブツブツ」
「怖ぇぞ緑谷」
障子と砂藤が唸っていると、緑谷が顎に手を当ててブツブツと呟きながら推察を始めて、轟にツッコまれる。
ということで、女性陣も休憩となる。
もちろんB組女子は自然と戦慈(正確には里琴)の隣に集まる。それにつられてA組女子も一佳の近くに集まる。
すると飯田が差し入れにオレンジジュースを持ってきて、男性陣に配り始める。流石に女性陣までの分は用意していなかったが、一佳達は当然だと思っているので不満はない。
「なんでオレンジジュース?」
「飯田さんの『個性』《エンジン》のガソリンはオレンジジュースなのです」
「へぇ~」
柳が疑問を口にすると八百万が答え、一佳達は納得するように頷く。
すると、戦慈の横に再び轟がやってきて隣に座る。
「どうした?」
「お前には礼を言っとかねぇとと思って」
「あ?」
「母のことだ」
轟はジュースを飲みながら、前を向いて話しだす。
「体育祭の後、会いに行った」
「そうか。来るのが遅ぇって怒られたか?」
「いや。……いや」
「どっちだよ」
「言われなかった。それどころか笑って喜んでくれた。許してくれた。だからこそ、会いに行くのが遅かったと思い知った。もっと早く会いに行っておけばってな」
「まぁ、俺はあんなことしなくてすんだな」
「……けど、そのおかげで少しは周りを見れるようになった。親父の事も少しは客観的に見れるようになった……と思う」
轟と戦慈は前を向いたまま話す。
その話に里琴や一佳達は黙って耳を傾けている。
「だから、お前に礼を言いたいって思ってた」
「いらん。言っただろうが。あれはそこでビクビク盗み聞きしてる奴に頼まれたからしただけだ」
「えっ!?け、拳暴君!?」
戦慈は肩を竦めて、話の矛先を緑谷に向ける。
それに緑谷は肩を跳ね上げて、慌てて振り返る。
「てめぇが代わりにぶん殴れって言ったんだろうが」
「そ、それは……!そうだけど……でも、そうじゃないって言うか!?」
「落ち着くんだ!緑谷くん!」
緑谷は完全に目を回してパニックになっていた。飯田が肩を揺さぶって、正気に戻す。
話を聞いていた一佳達は、ようやく体育祭で見せた戦慈の言動の理由を知る。
妙に轟に挑発的だったし、戦いが終わると緑谷に声を掛けたりしていたのを思い出す一佳。
「なるほどなぁ」
「……お人好し」
「うるせぇよ」
その時、
「おいクソデクゥ!!」
「うわぁ!?か、かっちゃん!」
「てめぇ、クソナードの分際で俺を呼び出すたぁ、いい度胸じゃねぇか!!アァン!?」
「えぇ!?」
「やめろよ爆豪!わりぃ!緑谷!爆豪連れだすのに時間かかっちまって!」
爆豪がイキりながら緑谷に詰め寄ろうとするが、それを切島が抑えながら右手を上げて謝罪する。
爆豪は戦慈の姿も見つけると、更に目を吊り上げる。
「あぁ!?なんで仮面野郎までいやがるぅ!?」
「やめないか爆豪くん!拳暴くん達のところに僕達が割り込んだんだ!」
「うっせぇ!!知るか、んなことぉ!!」
飯田も制止するが、もちろん爆豪が止まるわけがなかった。
変わらずの爆豪に一佳達も呆れるしかなかった。
「相変わらずケンカ売るなぁ」
「ん」
「どうしてあの方は、あそこまで荒れ狂っているのでしょうか?あぁ……手を伸ばすべきなのでしょうが、未熟な私では癒せないかもしれません」
「いやいや、茨。あれは誰でも無理だと思うよ?ねぇ」
「「「「うんうん」」」」
茨が両手を組んで嘆き始めるが、切奈が慰めながら芦戸達にも声を掛け、芦戸達は力強く頷く。
茨で止まるなら、A組一同誰も苦労していない。正直、切島が凄いと思えるくらいである。
「仮面野郎!!いい機会だ!ここで決着つけてやる!!」
「こんなところで戦うわけねぇだろうが」
「あぁん!?ビビってんのかぁ?」
「最近、脳無やらオールマイトやらで体を壊しまくってんだ。必要ねぇなら戦わねぇに決まってんだろ」
「……オールマイトだぁ?」
両手で小さな爆破を炸裂させながら、挑発する爆豪。
戦慈はもちろん断るが、オールマイトの名前に爆豪はピタリと止まって、目を細める。
「……期末か?」
「ああ」
爆豪の反応から、戦慈達は爆豪も期末でオールマイトと戦ったのだと推測する。
「……ってこたぁ、お前と緑谷で組んだのか?」
「っ!!うるっせぇんだよ!!んなもん関係ねぇだろがぁ!!」
図星か、と戦慈だけでなく一佳達も見抜けるほどの反応だった。
試合内容を知っている緑谷や麗日達は、地雷を踏んだと気づいた。
「なるほどな。そりゃあ、オールマイトも派手にやるわな」
「そう言うテメェはどうだったんだよ!!無様でも晒したか!?」
爆豪の言葉に里琴はもちろん、一佳達も苛立ちを露わにした。
八百万や飯田達が止めようとしたが、それより先に戦慈が里琴の頭に手を置いて抑える。
「当たり前だろが。手も足も出なかったな」
戦慈は事実そう思っていたので、正直に答える。
ハンデありで、余裕で会話をしていたのだ。しかもドラミング・ドープを使うのを眺めていた。なので、本来なら手も足も出なかったというのが戦慈の捉え方である。
しかし、納得出来ない者達がいた。
「馬鹿言うな。あの戦いを見て、手も足も出なかったなんて認める奴なんていないぞ!」
「そうだよ。ステージ半壊するほど殴り合って、オールマイトに重り壊させるほど本気にさせて、それでも倒れずにクリアしたんだよ?あんなの拳暴以外に誰が出来るのさ」
「ん」
「それも背後に私を庇いながらです」
「そう言う爆豪は、オールマイトに2回思いっきりお腹殴られても戦えるの?」
「最後はカウンター決めてまぁシタ!」
「……くたばれ」
一佳、切奈、唯、茨、柳、ポニー、里琴の順で戦慈を庇う。最後の1人はただの罵倒だったが。
それでも、その内容は爆豪はもちろん飯田達にも衝撃を与えた。
「っ!!」
「オールマイトに本気を……!?」
「そんな……!」
「マジで!?」
爆豪は目を見開いて固まり、飯田や麗日、轟達も目を見開く。
緑谷はオールマイトから話を聞いていたので、驚くことはなかった。
「聞いたよ。デトロイト・スマッシュを2回当てたのに、反撃してきたって。しかも2回目はかなり本気だったって」
「なっ……!?」
爆豪は盛大に顔を顰める。
爆豪はデトロイト・スマッシュどころか単純な腹パンで崩れ落ち、最後は押さえ込まれて気絶した。
しかし、戦慈はそれ以上の攻撃を浴びて立っていた。戦っていた。
それは間違いなく自分では出来ないことだと理解させられた。
「まぁ、結局その後骨折やらなんやらでボロボロだ。あれじゃあ駄目だろ」
戦慈は肩を竦めて、一佳達を抑えるように手を振る。
一佳達は納得してはいなかったが、それ以上は何も言わなかった。
「でだ。どんな形で戦うにしても、俺が全力を出すとプールが崩壊する。だから本気で戦うわけにはいかねぇ。お前はそれで納得すんのか?」
「っ!……くっそがぁ!!」
爆豪は盛大に顔を顰めて歯軋りをして、翻して去っていく。
それに緑谷達はホッと息を吐き、八百万と飯田が戦慈達に頭を下げる。
「本当にすまない!」
「本当に申し訳ありません!」
戦慈や一佳は苦笑しながら首を横に振る。
「あいつが丸くなるのも変な気分だしな」
「私達もちょっと意地になったし」
「とりあえず爆豪のガス抜きしてあげれば?」
切奈の言葉に飯田が顎に手を当てて考え込む。
「そうだな。……よし!皆!誰が一番泳ぐのが速いか、競争しないか!」
飯田の提案に男子陣は乗り気になる。
「『個性』は使っていいの?」
「学校内だから問題はないだろう!」
尾白が質問すると、飯田は笑みを浮かべて頷く。
そして戦慈に顔を向ける。
「拳暴くんはどうするんだ?」
「俺はパスだな。プールを壊しそうだ」
戦慈は肩を竦めて、参加を拒否する。事実、本気で泳ぐとゴールに着くころには飛び込み台を壊しそうである。
飯田は頷いて、A組男子にルール説明と順番を決めていく。
八百万達も手伝いを申し出る。
「盛り上がってきたねぇ」
「泳ご」
「ん」
「……がし」
「「は?」」
切奈達が泳ごうと立ち上がると、里琴が左右にいる戦慈と一佳の腕を抱える。
戦慈と一佳は里琴の行動に唖然とするが、直後里琴が背中から竜巻を放つと、2人を抱えたままプールへと飛ぶ。
「うわぁ!?」
「てめぇ!!」
「……いえー」
ドッボォン!と水柱を立てて、3人はプールに落ちる。
切奈達は苦笑して、追いかけるように飛び込む。
「ちきしょおおおお……!水着女子に腕を抱えられるダトオオオオ……!」
「諦めろ峰田」
「男として許せるかあああ!!ごはぁ!?」
「峰田ああああ!?ぶへぇ!?」
峰田がいよいよ嫉妬に耐えられず、叫び始める。
それを障子が冷静に声を掛けるが、峰田は収まらず叫び続ける。しかし、再び里琴の竜巻が襲い掛かり壁に叩きつけられる。
崩れ落ちる峰田に上鳴が駆け寄るが、追撃に放たれた竜巻を浴びて、同じく壁に叩きつけられる。
「……悪は死すべし」
「おめぇもだよ」
「……ブグブグブグ」
里琴は両腕を突き出して、決め言葉のように呟くが、直後に戦慈が頭を押さえ込んでプールに沈める。
一佳は呆れながら泳ぎ始め、唯達もその周囲を泳ぐ。
そして、A組男子の競泳自由形(『個性』あり)がスタートした。
すると、やはり爆豪や轟が圧倒する。
「泳いでないじゃん」
「まぁ、『個性』ありだとこうなるよな」
「……ズル」
ゆったりと泳ぎながら切奈達は呆れて見学する。
その後も、ゆったりと泳ぎながら見ており、決勝戦は轟、爆豪、緑谷の3人となった。
そして、熱気が最高潮になり、スタートの合図が鳴らされ飛び込んだ瞬間、3人の『個性』が消えた。
「なんだ!?」
「『個性』が消えた!?」
「17時。終わりだ」
瀬呂達が慌てていると、髪を逆立てた相澤が現れる。
「そんなぁ!?」
「せっかくいいとこなのに!」
切島達がブーイングすると、ギン!!と相澤は目を鋭くして、
「何か言ったか?」
『なんでもありません!!!』
「なら、とっとと帰れ」
こうして、プールは終了した。
戦慈達も引き上げ始め、更衣室に向かう。
峰田が後ろに回り、一佳達の尻を見て鼻を伸ばそうとすると、
「……くたばれ外道」
「うぎゃああああぁ!!」
里琴が強めの竜巻を放ち、峰田はプールの外へと飛ばされていった。
流石に上鳴も同情できず、誰一人助けにはいかなかった。水着で校舎の外を歩くわけにもいかないのもある。
ちなみに峰田はその後、警備ロボに連行され、相澤から説教を受けることになるのだが、ほぼ全員が着替え終わるころには峰田の存在を忘れていた。
戦慈達は学校近くで夕食を食べることにした。
「ってことで、八百万にドレスをお願いすることになった」
「……金払えんのか?」
「レンタルだから多分大丈夫だろ」
「ついでに拳暴の分も頼んどいたよ」
「……なんでだよ。それに寸法はどうすんだよ?」
一佳と切奈の言葉に、戦慈は呆れる。
そこに柳が爆弾を放り込む。
「里琴が教えてた」
「ん」
「……ブイ」
「……俺はてめぇに教えた事も測られた記憶もねぇよ……」
「まぁ、もう里琴じゃん?」
切奈の言葉に全てが集約されていると一佳達は納得する。
正直、声真似をしても驚かない自信がある。
「とりあえず、来週まで節約だね」
「楽しみデェス!」
「ん!」
こうして切奈達は、次の楽しみに心を躍らせるのであった。
と、いうことで。
感想でも聞かれまして悩んでましたが、劇場版DVDと小説を読み込みまして、せっかくなので劇場版も書いちまえとなりました。
そして、とことんハーレムを連れていきます!
理由?
スク水まで書いたら、ドレス姿も書いてあげたいじゃないじゃないですか!
今作では緑谷の右手は体育祭でボロボロになってないので、期末で無茶をしたことにしました(__)
そして、流石にプールで男一人も可哀想と思ったので、A組を参加させました。まぁ、これは劇場版の話で、絡ませやすくするためです(__)
ちなみにもう1つの理由は、神野区騒動にどう戦慈達を絡ませるべきかとまだ悩んでいます(-_-;)職場体験のように別の場所でも、とも考えてますが、流石にヒロアカの世界で神野区は無視できない。って感じですので、少し時間稼ぎをさせてください(__)申し訳ないです(__)