植物プラントの最上部にある通路に上った緑谷達は、外周通路への扉を壊して外に出るが、そこも隔壁が下りていた。
「くっ!こっちも駄目か……」
「まぁ、そりゃそうだよね」
「おいら達、完全に袋のネズミじゃねぇか!」
飯田が顔を顰めて悔しがると、切奈が肩を竦める。
峰田が今にも泣きそうな顔で叫び、他の者達は周囲を見渡している。
「他に道が何もないってのはないと思う。もし誤作動や今回みたいなことがあった場合、逃げ出せなくなるし」
「そうですわね」
「ただ問題はその道がどこにあるかってことだけど……」
一佳が細かく周囲を確認しながら呟き、八百万もそれに同意する。メリッサもそう思ってはいるが、どこに何があるか全てを把握していない。
その時、緑谷が何かに気づき、天井の一角を指差しながら声を上げる。
「メリッサさん!あの天井、何か扉みたいなものが見えませんか?」
全員が注目すると、天井の隅に小さなハッチがあった。
「日照システムのメンテナンスルーム……」
「あの構造なら非常用の梯子があるのでは!?」
メリッサも知らなかったようで唖然と見上げていると、飯田が身を乗り出して声を上げる。
確かにハッチの下には足場がなく、上がるにしても下りるにしても梯子が無ければどうにもならない。
「梯子は中からじゃないと下ろせないわ」
しかし、メリッサが残念そうに俯きながら答える。
それに他の者達も顔を顰めて悔しがる。
「まだ何かある」
一佳の声に、全員が一佳に目を向ける。一佳は顎に手を当てて考え込んでいる。
「少なくとも、上階に行く道があるのは分かったんだ。だから、どうやってあそこの梯子を下ろせばいいのかってことを探せばいいんだ」
「それがねぇから悔しがってんだろ!?」
峰田が怒鳴る様に反論するが、一佳は顔を上げて首を横に振る。
「さっきとは違う。あれを下ろすだけなら全員が行く必要はないんだ。ここにいる誰かがあそこまで行ける道を探せばいい。それなら抜け道はあるはず」
「……確かに」
「見つけましたわ」
緑谷も一佳の言葉に頷いて、再び何かないか探し始める。
すると、外周通路の天井を見上げている八百万が声を上げる。
全員が八百万の近くに駆け寄ると、視線の先に外周通路の天井にハッチのような蓋がある。
八百万が胸元に手を当て、《創造》で何かを作り出すとハッチに向けて投げつける。
すると磁石か何かでハッチにくっついた創造物は爆発して、ハッチの蓋を吹き飛ばす。どうやら爆弾だったようだ。
蓋が外れたハッチの奥には通気口と思われるダクトが見える。
「通風口を通って中から、もしくは外壁から上の階に行ければ……」
「そうか!上にも同じものがあれば!」
「中に入れるわ!」
八百万の言葉に麗日、メリッサに耳郎が顔を見合わせて笑う。
「狭い通風口を通って、外壁を伝っていくには……」
緑谷が考え込んで、ある人に目を向ける。
それに麗日達もつられて目を向ける。
「え?」
峰田が急に注目されて、ビクッとする。そして顔を青くして後退る。
もちろん何故注目されたのかは、すぐに思い至る。
「も、もしかしてオイラが……!?」
「お願い、峰田君!」
「あんたにしか出来ないんだよ!」
「じゃ、私が行くよ」
『え?』
麗日と耳郎が峰田に詰め寄って発破をかけた直後、後ろから声が聞こえて唖然と後ろを振り返る。
切奈がプラプラと右手を上げて、通気口の下に歩み寄る。
「え?で、でも取陰さんじゃあ、流石に狭いんじゃ……」
「まぁ、なんとかなるでしょ」
緑谷が戸惑いながら声を掛けると、切奈は入り口を見上げながら肩を竦める。
直後、首が切り離されて手足も切り離されて浮かび上がる。
「ひぃ!?」
ホラー系が苦手な耳郎が、生首が浮かんでいる光景に思わず悲鳴を上げる。
「じゃ、行ってくるよ」
「気を付けろよ」
「無茶はしないでください」
「ん」
生首と共に、シュルリとドレスと切り離された手足がダクトの中に消えていく。
一佳達は眉尻を下げて見送り、緑谷やメリッサ達は唖然と見送っていく。
「そうか……。取陰さんは切り離したパーツで浮かぶことが出来るのか。偵察や撹乱に向いてると思ったけど、ここまで隠密性があるなんて……」
「すごいわね……」
その後ろで上鳴がそっと峰田に近寄る。
「残念だったな、峰田。せっかくの見せ場が無くなってよ……」
「い、いいよ。別に……」
「けどよ……活躍出来ればメリッサさんに褒められて、ヴィランを倒した後女性達から大人気間違いなかったのになぁ……」
「……」
メリッサに関してはともかく、後半は絶対にありえないのだが峰田にとっては十分あり得る妄想だった。
多くの女性に囲まれて『峰田君のおかげで解決したの?すご~い!』と褒められる光景が容易に峰田の頭に浮かぶ。
すると、先ほどまで怖がっていた峰田は、悔し涙を流して崩れ落ちる。
峰田の背中を同じく全く活躍していない上鳴が慰めるように撫でる。
その様子を耳郎と麗日が呆れながら見つめていた。
「よくこの状況でアホなことばっか考えられるな……」
「うん……」
その時、ドン!!とプラント内から大きな爆発音が響く。
緑谷達が慌てて様子を窺うと、ヴィランと激しく戦う爆豪達の姿があった。
爆豪はドレッド男の周囲を、爆破を繰り返しながら高速で飛び回って攻めかかる。
ドレッド男も素早く飛び跳ねて躱し、ナイフを振るう。ドレッド男の厄介なのは、蹴りと同時に『個性』を発動し、蹴りの威力を正に跳ね上げていることである。一瞬で距離を取ったかと思えば、一瞬で距離を詰めてくる。両手でナイフを操り、鋭い蹴りを放ってくる。意外と隙が無く、爆豪は攻めきれずにいた。
「ちょこまかとウゼェんだよ!!」
「てめぇが言うなぁ!!」
爆豪が顔を顰めて叫ぶ。それにドレッド男も怒鳴り返す。
その近くで轟がノッポに氷結を放つが、やはり丸く抉られる。それに舌打ちをしながらも続けて氷結を放つ轟。
「両手の範囲だけとはいえ……!」
両手の動きを見極めるのは神経を削る。
ノッポが両手を振ったのを見て、走り出す轟。直後、轟がいた場所の地面に穴が空く。
更にその近くで体が二回りほど膨らんだ戦慈と獣男が激しく殴り合っている。その周囲を里琴が飛び回っている。
「このっ!ガキがぁ!」
「図体に振り回されてんじゃねぇよ!」
大振りで迫る獣男の拳を、ボクシングスタイルで構えている戦慈は紙一重で躱して、すぐさま鋭くジャブを数発放つ。
ほぼダメージはないが、鬱陶し気に顔を顰めて右腕を振る獣男。戦慈は素早くしゃがんで躱し、右脚で足払いを放つ。
獣男は転びかけた所を両腕で地面を押して逆立ちしながら跳び上がる。
そこに里琴が飛んできて竜巻を叩きつける。
「ウザってぇ!!」
獣男は吹き飛ばされながらも両腕を振り回して、竜巻を霧散させる。地面に降りた獣男は、すぐさま里琴に向かって突進する。
里琴は足元に竜巻を生み出して、飛び上がり獣男を躱す。
その隙を戦慈がすかさず詰め寄り、ラッシュを浴びせる。
「ダラララララララララァ!!」
「ガァ!!」
両腕を交えてガードした獣男は舌打ちをして、弾くように両腕を広げる。そして、右腕で殴りかかる。
戦慈も両腕を交えてガードするが、5mほど滑り下がる。直後、体がまた膨れ上がる。
「宍田ほど速さはねぇが、パワーは上か……!」
戦慈は小さく舌打ちをして、再び殴りかかる。
その様子を緑谷達は、不安げに見つめていた。
「かっちゃん……!」
「轟さん……」
「拳暴、里琴……!」
負けそうには見えないが、そう簡単に勝てそうでもない。
出来れば参戦したいが、今は託された思いと期待に応えることがやるべきことである。
「ハッチが開いたぞ!」
その時、飯田の声が聞こえ、緑谷達は振り返る。
天井隅のハッチが開いており、梯子が下りてきた。さらに切奈の首と右手だけハッチから出てきて、やり切った笑みを浮かべてヒラヒラと手を振る。
「お待たせ~。上がっておいで~」
緑谷達は梯子を上り、全員がメンテナンスルームに入ることが出来た。
一佳達は切奈に駆け寄り、ハイタッチする。
「やったな!」
「ん」
「お疲れ」
「コングラチュレーション!」
「いや~、頭が吹き飛ばされるかと思った」
ケラケラと笑う切奈。
全員上ったのを確認した飯田が、右手を握り締めて声を上げる。
「よし!上を目指そう!」
「「「「おー!!」」」」
最上階でのコントロールルームでは、眼鏡の男が下唇を噛みながらパネルを叩く。
モニターには次々と監視カメラの映像が表示されるが、次々と暗くなっていく。
「くそ!」
「おい、まだ見つからねぇのか!?」
「見て分からないのか!?くそ!!壊すにしても、どうやって……!」
刃物の男が苛立って怒鳴りつけてくる。
それに反論しながら、眼鏡の男は対策を考える。
ちなみにカメラを壊しているのはポニーである。切奈が片目を飛ばしてカメラの位置を確認して、ポニーが角を飛ばしてカメラに突き刺しているのだ。
しかし、壊れている以上、緑谷達はその階にいるということである。
それは同時に80階に行った部下達は何をしているのかという疑問が出る。
刃物の男が壁を殴って、通信を行う。
「おい!!80階!ガキ共が逃げてるぞ!何してるんだ!?」
その怒鳴り声を背中で聞きながら、眼鏡の男は別の作業も開始する。
「さっきまでの映像を……島のデータバンクにあるパーソナルデータと照らし合わせれば……」
眼鏡の男は緑谷達の正体を調べ始めた。
プラントでは未だに戦いが続いていた。
獣男達の耳に、刃物男の通信が届く。
「うるせぇ!黙ってろ!!」
「ツゥア!!」
「がっ!?」
獣男が叫んだ瞬間、真横から拳が迫る。
右腕でガードするも、数m滑って腕の痺れに顔を顰める。
「おおおお!!」
フルパワーの戦慈は叫びながら、獣男に詰め寄り連続で殴りつける。
シャツは完全に破けており、下に着こんでいた黒のアンダーシャツになっている。
「このガキィ……どこまでパワーが上がりやがる……!?」
獣男が左腕でアッパー気味に殴りかかる。戦慈は仰け反り、そのままバク転して脚を振り上げる。獣男は顔を傾けることで躱すと、戦慈はカポエラのように、逆立ちになった瞬間に脚を広げて腰を捻り、蹴りを放つ。獣男は左腕でガードするが衝撃波が襲い掛かり、横に吹き飛ばされる。
吹き飛んだ先には、爆豪とドレッド男が戦っていた。
爆豪とドレッド男は飛んでくる獣男に気づいて、同時に後ろに下がる。獣男は2人の間を転がる。
「何して……!?」
「死ねやあ!!」
「!?」
ドレッド男が舌打ちすると、爆豪がすかさず突進してヴィラン2人に爆破を放つ。
獣男は爆破を浴びるが、ドレッド男は後ろに飛び跳ねて躱す。しかし、その背後に巨大な影が出現する。
「っ!?」
「オオ!!」
「ちぃ!」
もちろん迫ってきたのは戦慈で、両手を組んで振り上げており、叩きつけるように振り下ろす。
ドレッド男は舌打ちをして、ナイフを振って戦慈の両腕を斬りつけるのと同時に戦慈を蹴り押して離れる。戦慈の両腕から血が噴き出す。
「ちっ!」
「ハハァ!これで両腕は使えねぇだろ!」
「んなわけねぇだろ」
「な!?」
ドレッド男はようやく切り裂いたことに笑みを浮かべるが、戦慈の両腕は白い煙を上げてすでにほぼ自己治癒しており、ドレッド男に猛スピードで迫る。
ドレッド男は目を見開いて、慌てて横に跳ぶ。直後、戦慈の左ストレートが通り過ぎるが、ドレッド男の左手のナイフの刃に拳が当たり、砕かれてしまう。
「てっめぇ!!」
「俺の腕を止めたきゃ斬り落としてみろやぁ!!」
歯軋りしながら後ろに下がるドレッド男を追いかける戦慈。
爆豪も追撃をしようとすると、爆煙の中から獣男が飛び出してきた。
「鬱陶しぃんだよぉ!!」
両腕を振り下ろす獣男に怒鳴りながら、爆破で飛び上がって躱す爆豪。すかさず爆破により獣男の背後に飛び、腕を振り爆破を叩きつける。
それでも獣男は腕を振りながら振り返り、再び爆豪は高速で飛び動いてカウンターの如く爆破を放つ。
「ちぃ!小出しじゃキリがねぇ!決めるならデカいので一撃じゃねぇと……!」
爆豪は顔を顰めて、右手を見下ろす。
その近くでは、轟が氷結で地面を滑るように移動しており、その周囲に次々と穴が空く。
里琴が上空から垂直落下し、竜巻を真下に放つ。それに続くように、轟も相手に氷結を放つ。
迫る竜巻と氷を、ノッポも高速で移動しながら躱し、両手を振って竜巻を消し、氷を丸く削って轟と里琴に投げつける。
それを見た轟はようやくノッポの『個性』を理解する。
「あいつ、空間に穴を空けてんじゃねぇ。抉ってやがる!」
「……メンドー」
「そういうことか……」
爆豪は顔だけで後ろを向き、丸く削られた氷を見て顔を顰める。
すると、爆煙から再び獣男が現れる。
「キリがねぇ……。いつまでもテメェらに構ってられねぇんだよ!!」
爆豪が叫びながら下に爆破を放って飛び上がる。
そして腕をクロスさせながら爆破して、急速回転する。
直後、
「竜巻女ぁ!!竜巻寄こせぇ!!」
「……むぅ」
里琴は嫌そうな声を上げるが、爆豪の後ろに飛んで細めで回転が強い竜巻を放つ。
すっぽりと竜巻が爆豪を包み、回転を更に強めながら獣男に迫っていく。竜巻も一気に爆煙に染まっていく。
爆豪は爆破と竜巻の勢いを乗せて右手を獣男に叩きつけながら、最大火力を放つ。
「ハウザー・インパクトォ!!!」
体育祭以上の大爆発が起こり、直撃した獣男は悲鳴を上げる暇もなく、体中から煙を上げて体を戻しながら崩れ落ちる。
「よくも!!」
ノッポが歯軋りをして爆豪めがけて腕を振る。
それに轟は体が冷えて、動きが鈍ってしまい対応できなかった。
「爆豪!」
「っ!」
轟の声に爆豪は振り向くが、横から竜巻が襲い掛かって横に吹き飛ぶ。直後、竜巻に丸く穴が空き、霧散する。
「ちぃ!」
「巻空……!」
ノッポは舌打ちして、轟は竜巻を放った里琴に目を向ける。
そして、その里琴は、爆豪同様竜巻を纏って回転しながらノッポの上に迫っていた。
「!?」
ノッポが気づいた時には、もう目の前だった。
里琴はぶつかる直前に竜巻を解除して、構えた右肘から後方に竜巻を放って勢いを更につける。
「……ジェット・ナックル」
里琴の高速右フックが、ノッポの左頬に突き刺さり、更に拳から竜巻を放ってノッポを地面に叩きつける。
「ぶぅえ!?」
轟がすかさず氷結を放ち、地面に拘束する。
一息ついた轟は、戦慈の方に顔を向ける。
「拳暴は!?」
「……もう終わる」
里琴の視線の先では、ドレッド男を追い込んでいる戦慈の姿があった。
「くっそおおお!!」
ドレッド男の両手にはすでにナイフはなく、ただ逃げ回っているだけだった。しかし、まったく離れることが出来ない。
後ろに飛んでも、上に飛んでも、すぐに追いついてくる。
ドレッド男は戦慈に背を向けて速度を上げようとするが、その直後に左肩を掴まれる。
「!?」
「終わりだ」
「うおおおお!!」
ドレッド男は『個性』を使いながら後ろ蹴りを戦慈の腹部に叩き込む。
しかし、戦慈は一切怯むことはなかった。
「わりぃが、ミルコの足元にも届いてねぇっよ!!!」
戦慈は右腕を振り上げて、右ストレートをドレッド男の背中に叩き込む。
ドレッド男は地面にうつ伏せで叩きつけられ、クレーターを作って白目を剥いて気絶する。
戦慈は小さく息を吐いて、起き上がる。
里琴が隣に歩み寄ってくる。
「他の連中は?」
「……あっち」
里琴が指差した方向を見ると、轟と爆豪は壁に叩きつけられていた切島に声を掛けていた。
切島もどうやら問題ないようで、笑みを浮かべて2人の声に答えていた。
「さて、どう追いかけるか」
「……梯子下りてる」
「あん?……あれは俺じゃあ、ちとキツイな」
戦慈は里琴が指している梯子とハッチの入り口を見て、顔を顰める。
爆豪と切島がなにやらじゃれ合いながら、戦慈達に歩み寄ってくると、どこかから機械音が響いてきた。
音がした方向を見ると、壁から赤いランプを光らせた警備マシンが大量に降りて来ていた。
「奴ら、本気になったようだな」
「上の連中にも向かってると考えるべきだな」
「じゃあ、急いでブッ倒して緑谷達追いかけねぇとな!」
「いや、俺1人で相手する。お前ら先に行け」
戦慈が前に出ながら、轟達に声を掛ける。
切島が目を見開いて、爆豪と轟が顔を顰める。
「流石に1人じゃ危険だろ!」
「俺が暴れるのにむしろ邪魔なんだよ。それにまだ上でも戦うかもしんねぇのに、ここで無駄に戦って限界になれば意味ねぇだろ」
戦慈は切島の言葉に答えながら、轟と爆豪に目を向ける。
爆豪は右手を見下ろして、轟も僅かに震える右腕を見る。
「とっとと行け。里琴、お前も拳藤達のフォローに行け」
「……ん」
里琴は戦慈の言葉に素直に頷く。
それを見た戦慈は駆け出して、先頭にいた警備マシンを殴り飛ばす。吹き飛んだ警備マシンは後ろにいた警備マシン達を巻き込んでいく。
「……さっさと行く」
「けど!」
「とっとと行くぞ。切島」
「爆豪!?」
里琴が爆豪達に声を掛ける。
切島は未だに迷っていたが、爆豪が促したことに目を見開く。
そこに轟が声を掛ける。
「拳暴の言うとおり、ここで全員戦っても無駄に力も時間も消耗するだけだ。その間に緑谷達が警備マシンに襲われて全滅してたら、本当に終わりだぞ」
「っ!!そ、そうか!」
「……早よせい」
「お、おう!!」
轟の言葉に頷き、里琴に急かされて走り出す切島。
里琴や轟、爆豪も走り出し、緑谷達を追いかけ始める。
戦慈は里琴達が走り出すのを感じながら、警備マシンを潰していた。
「ふん!」
右拳骨を叩き込んで半分近くの高さまで潰し、踏み込んで身を低くしながら左ラリアットを警備マシン数体に叩き込んで、衝撃波と共に更に10体近く巻き込んで吹き飛ばす。
そのまま流れるように右後ろ回し蹴りを放ち、衝撃波を波のように吹き荒らして警備マシンを数十m離れた壁にめり込ませ、左脚を蹴り上げて、衝撃波を鎌鼬のように飛ばし、地面を抉りながら警備マシンを破壊する。
「想像以上に硬ぇ……!雄英ロボと比べられねぇか……!」
機械故に手加減はしていない。
なのに、吹き飛びはしても跡形もなく砕けた警備マシンは見当たらない。先ほど拳骨で叩きつけた警備マシンとて、ペシャンコにするつもりだったし雄英ロボなら間違いなくペシャンコだった。
しかし、ここの警備マシンは壊れるどころか、まだ動いているものすらある。
「殺傷能力がなさそうなのが救いか」
どうやら拘束性能のみで銃などは装備されていない様だ。
なので、いきなり殺されることはないと判断する戦慈。しかし、この頑丈さは厄介だった。
「緑谷と拳藤以外は壊せねぇかもな。数で押されれば負けそうだな。くそっ!警備マシンに会わずに上まで行ってほしいが……」
その時、後方に控えていた警備マシン達が引き返していくのが目に入る。
「上に行く気か!?クソが!!」
戦慈は舌打ちをし、全力で突進して引き返し始めた警備マシンに殴りかかる。
軽く飛び上がり、拳骨のラッシュを警備マシン達に叩き込んで潰していく。
引き続き、警備マシンを殴り壊していると、
「ガアアアア!!」
「っ!!もう回復しやがったか!!」
爆豪にやられたチビが、再び獣のようになりながら吠える。
そして、猛スピードで戦慈に迫り、覆い被さる様に両腕を広げて飛び掛かってくる。
どうやら意識は朦朧としており、ただがむしゃらに攻めてきたようだ。
「グゾガギィイイイ!!」
「オラァ!」
戦慈は両脚で飛び出し、一瞬で獣男の鳩尾に右ストレートを突き刺す。
「ゴバァ!?」
獣男は体をくの字に曲げ、肺の空気と胃の中のものを全て吐き出しながら吹き飛び、地面を転がる。
それでも、よろけながら立ち上がる獣男。
戦慈はすぐさま目の前まで詰め寄り、両肩を全力で回転させて猛烈なラッシュを叩き込む。
「ヅゥラララララララララララララララララ!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
「ララララララララララララララララ!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
両肩から自己治癒を示す白い煙を出しながらも、全く勢いを落とすことなく殴り続ける。
獣男はただ大の字で拳の壁を受け止めることしか出来ず、ただただ殴られた衝撃で体が揺れるだけだった。
そして気絶したようで獣男の体が、元のチビに戻る。
「ツゥア!!」
その瞬間、両手を組んで振り上げて叩きつける。
チビは背中から叩きつけられて、地面にクレーターを作って更にめり込む。
戦慈は息を整えながら周囲を確認すると、まだ無事だった警備マシンの姿はもうなかった。
「……未だヴィラン連中の戦力も分からねぇし、それに加えて警備システムと警備マシン。向こうもこっちの戦力は分からねぇだろうが、こっちの目的もバレてるだろうしな。やっぱ、まだこっちが圧倒的に不利だな」
戦慈はため息を吐くが、すぐに切り替えて一佳達や里琴達を追いかけるために走り出すのだった。
警備マシンが動き出した直後、ウォルフラムの耳に通信が入った。
『ボス!あいつらはただの子供じゃありません!雄英高校ヒーロー科……ヒーロー予備軍です!』
眼鏡の男は緑谷達のパーソナルデータを見つけていた。
そして、慌ててウォルフラムに報告したが、ウォルフラムは全く慌てることなく冷静に問いかける。
「ガキ共の目的は恐らく警備システムの復旧だ。80階の警備マシンは起動させたな?」
『はい』
「なら、100階から130階までの隔壁を全て上げろ」
『え?』
「言う通りにしろ」
『了解』
ウォルフラムは冷静に指示を出していく。
その様子をオールマイトは体から薄っすらと煙を出しながら、焦燥に耐えていた。