一佳達は走り続けて、120階の通路を走っていた。
何故か途中から隔壁が下りておらず、障害もなく進むことが出来ていた。
「なんかラッキーじゃね?100階からずっとシャッター開きっぱなしなんて」
「うちらのこと見失ったとか?」
上鳴と麗日の言葉に、一佳や八百万達は首を横に振る。
「正確な位置は分かってないだろうけど、多分違う」
「誘いこまれてますわね」
飯田や緑谷も頷き、それでもしっかりと前を見据えて走り続ける。
「たとえ罠でも、少しでも上に行くために向こうの誘いに乗る」
緑谷の言葉に飯田や麗日も頷いて、先に進む。
罠を警戒しながらも、足を止めない緑谷達は130階に到達する。
最上階への通り道であるフロアの扉に着き、窓があったので中を覗き込む緑谷と飯田。
実験場らしいフロアの中には、警備マシンが大量に待ち構えていた。
「やはり相手は閉じ込めるのではなく、捕縛する方針に変えたか」
「きっと僕達が雄英生であることに気づいたんだ」
「それにあれだけ監視カメラを壊したしねぇ」
「いつの間にか上の階に上がってるし」
「……後は拳暴達の戦いで、あいつらにとって想定外の事が起きたんだろうな」
「ん」
飯田と緑谷の言葉に、切奈、柳が肩を竦める。
そして一佳が顎に手を当てて、戦慈達が勝ったのだろうと推測して微笑む。一佳の言葉に唯も頷いて、他の者達も安堵するように笑みを浮かべる。
しかし、すぐに顔を引き締める。
「ということは、ヴィランも本気で襲ってくるということですね」
「だね。警備マシンもってなると、数で攻めてくるはずだよ」
茨と切奈の言葉に全員が頷く。
「でも、そうなることは予想済みですわ」
八百万が強気に微笑みながら屈み、背中から巨大なシートのようなものを創造する。
それを耳郎や飯田が掴んだ時、サイレンのような音が廊下の先から響いてきた。
「!!」
「っ!大量に何か来る!!多分、警備マシン!まずいよ!挟み撃ちにされる!」
耳郎がプラグを床に刺して、顔を強張らせる。
それに峰田が震え始め、緑谷達も顔を強張らせる。
その間にも音はドンドンと大きくなってくる。
その時、
「……八百万。悪い!後で弁償する!」
「え?」
ビリィ!!
一佳が突如八百万に謝罪すると、屈んでスカートを縦に裂く。スリットのように太ももあたりまで露出する。
目を見開いた八百万達が声を掛けようとすると、一佳は走り出し、迫って来ていた警備マシンの群れに飛び込んでいく。
「拳藤さん!?」
「はあああ!!」
八百万が呼び止めるが、一佳は構わず右手を巨大化しなら突き出して、警備マシンを押し飛ばす。続いて左腕を横に振り、同じく巨大化して薙ぎ払う。
「拳藤くん!」
「飯田達は先に行って!!ここは食い止める!!」
「けど、1人じゃ!?」
「1人ではありません」
飯田が駆け出そうと構えるが、一佳は警備マシンを殴り飛ばしながら叫ぶ。
麗日も1人で戦わせるわけにはいかないと声を上げるが、そこに力強い茨の声が届く。
声の方向に目を向けると、茨は反対側から迫る警備マシンを見つめていた。
胸の前で両手を組んでいる茨は目を鋭くすると、ツルが蠢いて通路一杯に広がりながら警備ロボット達を絡めていく。
「拳藤サン!バック!!」
ポニーが一佳に呼びかけながら《角砲》を放ち、警備マシンに突き刺す。
「ここはB組が引き受けるよ。だから、先に行って」
「ん」
切奈が飯田達に声を掛け、唯も頷くと柳と共に一佳の元へ駆け寄る。
「一佳、疲れちゃうよ」
「助かる!」
「ん!」
柳が声を掛けながら両手を前に出して《ポルターガイスト》を発動する。すると、壁に叩きつけられたり、角砲で壊された警備マシンが浮かび上がり、迫ってくる警備マシンに突っ込んでいく。
そして唯も近くの警備マシンを次々と触れ、《サイズ》によってミニチュアサイズまで小さくする。そして、踏みつけて壊していく。
「ほら!急いで!時間ないよ!中にも警備マシンいるんだよ!」
「っ!……ごめん!ありがとう!」
「気を付けて!」
切奈が緑谷達を急かす様に声を掛け、緑谷は一瞬顔を顰めるもすぐに力強く頷いて礼を言い、扉の中に入っていく。
八百万が眉を顰めて後ろ髪を引かれながらも続いて、中に入っていく。
「オッケー!行った!」
「じゃあ、さっさと倒して追いかけるぞ!」
「ん」
「茨、そっちは!?」
「ツルも乗り越えて来てますね。少し……厳しいです」
「私が行きマース!」
切奈の声に一佳は警備マシンを殴り飛ばしながら呼びかける。
それに全員が頷き、一佳は反対側で孤軍奮闘している茨に声を掛ける。
茨は次々とツルを伸ばすが、警備マシンは飛び上がってツルの地面の上を走る。流石に全ての警備マシンを縛り付けることは難しく、一纏めにしようにも次々と現れるので、間に合わない。
そこにポニーが駆けつけて角を次々と発射する。切奈も両腕を数個のパーツに切り離して警備マシンにぶつけて動きを鈍らせる。
「ああ、もう!私って殲滅戦、本当に役立たず!機械も嫌い!」
切奈が顔を顰めながら、自分にも警備マシンにも怒りをぶつける。
今は警備マシンがそこまで大きくないため、そこそこの嫌がらせになっているが、もう少し大きくなると全く意味をなさないだろう。そうなると出来ることは偵察ぐらいしかない。
しかし、こんな見通しがよく、かつ密室空間であるため偵察の意味もないし、隠密も出来ない。
苦手な分野にはとことん弱くなる切奈だった。
すると扉の向こうで、ドォン!!と音が響く。
「随分と派手だね!」
「もう少し粘れるか!?」
切奈が苦笑する。
一佳は緑谷達がまだ中で警備マシンに足止めされていることを理解して、茨や唯達に声を掛ける。
「大丈夫です」
「ファイトデス!」
「ん!」
「むしろ一佳が体力もつ?」
「頑張るさ!!」
茨達は問題なさそうに頷き、柳が警備マシンを飛ばしながら一佳に訊ねる。
確かにこの中では一佳が一番動き回っていた。
一佳は笑みを浮かべて答えて、再び警備マシンに殴りかかる。
その後もなだれ込んでくる警備マシンを倒していく一佳達。
「もう十分じゃない!?緑谷達も進んだし、中にも警備マシンが現れてきてるよ!」
「分かった!」
「ん!」
切奈の声に一佳達は頷いて、扉の中に走り込んでいく。
最後に唯が扉近くに転がっている警備マシンに触れる。
「大」
ズガン!と警備マシンが巨大化して通路を塞ぐ。
中の警備ロボは茨と柳が行動不能にしていく。
「左からいっぱい来るね!なら、右!」
切奈が右側に走り、一佳達も後に続く。
通路に入った後に再び唯が警備マシンを巨大化して、通路を塞ぐ。
「唯、一佳。手伝ってほしい」
「ん?」
「え?」
柳が走りながら声を掛ける。
唯と一佳は首を傾げて、柳から話を聞く。
その内容に2人はすぐさま頷いて、行動を開始する。
先に進んでいた緑谷達は非常階段を駆け上がっていた。
「拳藤さん達、大丈夫かな?」
「大丈夫ですわ!拳藤さん達なら……!」
「ウェイ!」
「お前は黙れ!」
「……ウェイ」
麗日が一佳達を心配しながら階段を上がり、八百万が自分にも言い聞かせるように頷く。
それに上鳴が飯田の背中でアホの顔をしてサムズアップし、耳郎に怒鳴られて項垂れる。
上鳴は実験場で最大放電をしてアホの子になってしまっていた。
警備マシンはそれでも全く止まらなかった。
そこで緑谷が殴りかかって、吹き飛ばしたのだ。さらに八百万が通信干渉が出来る発煙筒を創造して、警備マシンの動きを鈍らせてコントロールルームへの通信を鈍らせた。
そのおかげで今の所、警備マシンは緑谷達を見失っていた。
耳郎が適時、音を確認して警備が薄い所を確認して移動する。
そして移動した先は、大型コンピューターが何十台も設置されている巨大なサーバールームだった。
このサーバールームにI・アイランドの叡智が集められている。
しかし、それどころではない緑谷達は駆け抜けようとする。
その時、奥の扉が勝手に開いた。
『!!?』
警戒して足を止めた緑谷達の目に入ったのは、待機状態で佇んでいる大量の警備マシンだった。
警備マシンの大群は一斉に起動して、赤いランプを点灯させる。
そして、緑谷達に向かって動き始める。
「くっ……罠か!」
「耳郎さんの『個性』に気づかれたんですわ!」
上鳴を背負った飯田が顔を顰め、八百万も顔を顰めてウォルフラムが耳郎の存在に気づいて罠を張っていたことに思い至る。
緑谷が右手にメリッサが作ったフルガントレットを装備して、構える。
「飯田君!突破しよう!」
体に力を籠めて緑谷が叫ぶ。
そこにメリッサが慌てて緑谷を制止する。
「待って!ここのサーバーに被害が出たら、警備システムにも影響が出るかも……!」
警備システムのサーバーもこの部屋にある。
もし下手に壊せば、再設定が出来なかったり、暴走する可能性があった。
その事実に緑谷が歯軋りすると、上からもガシャン!と音がした。
上を見上げると、吹き抜けになっている上階からも警備マシンの大群が次々と飛び降りて来ていた。
「どんだけいんだよおおぉ!?」
峰田が目を見開いて絶叫する。
峰田だけでなく飯田達も顔を強張らせるが、八百万が屈んで背中から創造を開始する。
「警備マシンは私達が食い止めますわ」
それを見た飯田も背中の上鳴を降ろし、構える。
「緑谷くん!メリッサさんを連れて、別のルートを探すんだ!」
少しでも早くメリッサを最上階に連れていく。そうすれば、少なくとも警備マシンは敵ではなくなる。
覚悟を決めた飯田の顔を見て、緑谷は力強く頷く。
「飯田君……うん!メリッサさん、お願いします!」
緑谷が駆け出し、メリッサも後に続こうとして、ふと何かを思いついたのか麗日に顔を向ける。
「お茶子さんもお願い!」
「え!?でも!」
突然の指名に麗日は飯田達に顔を向ける。
上鳴も戦えない今、足止めの戦力は多い方がいいと考えていた。
しかし、飯田が麗日に声を掛ける。
「頼む!麗日くん!」
タワーの構造を知っているメリッサが声を掛けた以上、必要な人材であるということだ。
ならば、ここはメリッサの判断を尊重するべきである。
飯田の言葉に麗日も覚悟を決めて頷き、メリッサと共に走り始める。
それを見届けた飯田は腰を据えて、ふくらはぎのエンジンの回転を上げる。
ふくらはぎのエンジンから唸る音が響き、マフラーから火が噴き出す。
それと同時に飯田は高速で飛び出し、警備マシンに飛び掛かる。
「トルク・オーバー!レシプロォバーストォ!!!」
飛び出して勢いを利用して、強力な蹴りを警備マシンの集団に叩きつける。
警備マシンたちは後ろに大きく吹き飛んで壁に激突する。
飯田はそのまま高速で動き、連続で蹴りを放つ。
その背後では峰田が頭のもぎもぎをドンドンと投げて、八百万は息を乱しながら大砲を作り上げる。
「砲手は任せます。私は弾を……」
八百万はよろけながら耳郎に声をかける。
《創造》は脂質とエネルギーを使うので、限界があるのだ。それは大きな物を創造すれば当然早まる。
耳郎は心配そうに八百万を見つめるが、状況が状況なので言われた通り大砲に近づく。
耳郎は大砲の照準を定めて発射する。
撃ち出されたのは白いトリモチで、警備マシンを包み込むように覆って動けなくする。
その横で八百万がどんどんと弾を生み出していく。
直接戦えるのは飯田だけで、残りは足止めするので精一杯だった。
しかし、まだまだ警備マシンは出現する。
少しでも足止めしないとあっという間に緑谷達に追いついてしまう。
きつくても耐えるしかない飯田達だった。
しかし、現実は容赦がなかった。
バフン!!
飯田のふくらはぎのマフラーから煙が出て、エンジンが止まる。
「っ!エンスト!?」
限界を迎えた飯田は顔を顰め、警備ロボは容赦なく飯田に飛び掛かる。
「飯田!」
耳郎は大砲を撃ちながら叫ぶ。
飯田を救けようと弾に手を伸ばすが、すでに尽きていた。
「ヤオモモ、弾を!……ヤオモモ!?」
八百万もすでに限界を迎えており、創造が不可能だった。
ふらつく八百万に耳郎が慌てて近寄り抱き留める。
その近くにいた峰田も頭から血を流して、ふらついていた。
「おいらも頭皮が限界だ……」
そして耳郎達にも警備マシンが迫る。
無念そうに顔を俯かせる耳郎と八百万。
その時、後ろから大量のツルが伸びてきて警備マシンを払い退ける。
「これは……!」
「大丈夫か!?」
「拳藤!!」
駆けつけたのは一佳達だった。
一佳は両手を巨大化して、何かを包むように抱えていた。
茨がツルを操って、飯田を引っ張り出す。ポニーが角を飛ばして、飯田をワイヤーで拘束している警備マシンを壊していく。
「すまない!」
「メリッサさんは!?」
「先に行った!ここで警備マシンを足止めしている!」
「周りのサーバーを破壊しないように戦わないと駄目だよ!」
「ここも厄介だね!」
「ん」
飯田は礼を言い、一佳が頷きながら尋ねる。
それに飯田と耳郎が答えて、切奈が顔を顰める。
「けど、やらないとね!行くよ、レイ子!唯!」
「ん!」
「ほい来た」
一佳が柳と唯に声を掛けると、両手を上に振り上げて抱えていたものを空中にばらまく。
それは大量の小さいフィギュアのようなものだった。
「《ポルターガイスト》」
それに柳が両手を伸ばして『個性』を発動する。
大量のフィギュアは空中に浮かんで制止する。
バッ!と柳が両手を警備マシンたちに向けると、フィギュアたちが勢いよく飛び出す。
直後に唯が両手を合わせて呟く。
「解除」
その瞬間、フィギュアが大きくなる。
大きくなったのは警備マシンだった。
一佳達は道中で襲い掛かってきた警備マシンを壊しては小さくして回収していたのだ。
こんな時のために。
頑丈な警備マシン同士がぶつかって、壊れたり倒れて動きを止めていく。
茨がツルを伸ばして、サーバーに被害が出ないように壁を作っていた。
一佳が抱えていた全ての警備マシンを飛ばし終えると、目の前には警備マシンの小さい山が生まれていた。
「これなら、そう簡単に飛び越えられないだろ」
「茨、ポニー。悪いけど、少し頼むよ」
「お任せください」
「イエー!」
一佳は柳や唯とハイタッチをして一息つく。
切奈が茨とポニーに声を掛けて、警備マシンが飛び越えてきたときに備える。茨とポニーは頷いて、警備マシンの山に目を向けて警戒する。
「飯田はどうなんだ?」
「……すまない。しばらくは……」
「了解。なら、私達もここで足止めするしかないな」
悔しそうな飯田に笑いかけて、一佳達も足止めのためにこのまま留まることにした。
「問題はここに警備マシンが全体のどれだけ来てるかだねぇ」
「……流石に全部がここには来ないだろうな。自分達の護衛にもなるんだし」
「ん」
「轟や拳暴達にも警備マシンが行ってると思うけど……」
「あいつらなら大丈夫だろ」
「問題は緑谷達の方」
「ですわね……」
切奈が腕を組んで警備マシンの方に目を向けて、一佳も不安げに眉を顰める。
唯も頷いて、耳郎が戦慈達のことも心配する。それに一佳は苦笑して問題ないと断言し、柳が一番心配すべき名前を上げ、八百万も苦しそうに頷く。
「っ!来ます!」
その時、茨が声を上げてツルを蠢かす。
一佳も構えて茨の隣に立つ。
「とりあえず、全力で耐えるぞ!!」
『おう!』
一佳の号令に全員が頷いて、飛び出してきた警備マシンに攻撃を開始するのだった。
その様子を刃物男や眼鏡男は苦々しく眺めていた。
「クソッ!ガキ共が……!」
刃物男は眼鏡男に目を向ける。
「逃げた3人は?」
「今、探してる」
「ちっ。イライラさせやがるぜ」
刃物男は爪を噛みながら、抵抗して逃げ回る緑谷達に苛立ちを募らせていった。
緑谷達は非常階段で一気に駆け上がり、180階まで来た。
メリッサに案内された扉を緑谷が壊すと、猛烈な風が吹き込んできた。
「こ、ここは……?」
「風力発電システムよ」
タワーの空洞部分に造られた大量のプロペラ。
中央にはエレベーターが通る柱があり、その周囲を囲むように設置されている。
真上にはヘリポートもある最上階エリアがある。
メリッサはその最上階をエリアを指差す。
「タワーの中を行けば、警備マシンやヴィランが待ち構えているはず。だから、ここから一気に上層部に向かうの。あそこの非常口まで行ければ……」
メリッサが指差したのは、天井の辛うじて見えるほど小さい非常口だった。
そこまでの高さはおよそ20階分ほど。
麗日は唖然と見上げる。
「あんなところまで……」
「お茶子さんの触れたモノを無重力にする『個性』なら、それが出来る……」
毅然として話すメリッサだが、胸元に当てた手が震えているのが目に入った。
いくら無重力とはいえ、20階分飛ぶのだ。怖くないわけはない。しかも、ここは180階。一歩間違えば200階近く落ちる。
それでも麗日を信じて、必死に恐怖を抑え込んでいるメリッサに麗日は力強く頷く。
「任せて!!」
そして、緑谷がメリッサを背負う。
麗日が緑谷とメリッサに触れて、無重力にする。
浮かび始める体に緑谷は深く屈んで一気に跳び上がる。それと同時に麗日もメリッサの腰を押し上げて2人は真上に飛んでいく。
麗日はそれを見上げながら、2人が非常口に入ったらすぐに解除できるように備える。
その時、背後から扉が開く音がした。
麗日が振り返ると、少し離れた扉から警備マシンたちがぞろぞろと現れていた。
「麗日さん!」
「お茶子さん!逃げて!」
緑谷とメリッサも警備マシンに気づいて叫ぶ。
「出来ひん!そんなことしたら、皆を救けられなくなる!」
麗日は逃げずに警備マシンと向かい合う。
麗日の《無重力》は使えば使うほど吐き気が強まり、強制解除されかねない。
なので、これ以上無駄に『個性』を使えない。
「お茶子さん!!」
メリッサが悲痛に叫ぶが、麗日の姿は小さくなるだけだ。
緑谷は救けに行きたい気持ちと、ここで止まれない気持ちがぶつかり合い、胸が締め付けられる。
急ぎたくても、下手なことをして非常口から離れてしまえば、それこそ麗日の覚悟が無駄になる。
ゆっくりと近づく非常口を緑谷はただ見上げることしかできない。
そして麗日に警備マシンたちが迫り、ジャンプをして飛び掛かる。
麗日が顔を顰めて眺めていると、
「死ねぇ!!」
「……どっせい」
爆豪と里琴が横から飛び出してきて、警備マシンを爆破して竜巻で吹き飛ばす。
さらに氷の波が警備マシンたちを飲み込んでいく。
「かっちゃん!」
「巻空さん!轟君に切島君も!」
緑谷や麗日は目を見開いて驚く。
爆豪と里琴はそのまま飛び上がり、警備マシンに攻撃を開始して切島も体を硬化して殴りかかる。
轟は麗日の前に庇う様に立って、声を掛ける。
「怪我はねぇか?麗日」
「うん、大丈夫。今、デクくんとメリッサさんが最上階に向かってる」
「ああ、見えてた。ここでこいつらを足止めするぞ!」
麗日の言葉に頷きながら、轟は氷結を放って警備マシンを飲み込んでいく。
爆豪と里琴、切島も警備マシンを次々と薙ぎ倒していく。
里琴達の参戦に緑谷とメリッサがホッとする。
「ありがとう、みんなああああぁぁぁ……!?」
「きゃあああ!?」
緑谷とメリッサは突風に襲われて、タワーの外に吹き飛ばされていく。
「デクくん!メリッサさん!」
「……ヒィアウィゴー」
麗日が叫ぶと、里琴が意味不明な言葉を呟いて飛び上がる。
そして一気に緑谷達の元に飛んで、メリッサ越しに緑谷のズボンのベルトを掴む。
「せ、巻空さん……!」
「……どちらまで?」
「ありがとう!あそこよ!」
「……飛ばすぜベイベー」
「うわぁ!?」
メリッサが非常口を示すと、里琴はスピードを上げて飛ぶ。
猛スピードで迫る非常口。
「……突撃よーい」
「え!?あ、はい!!」
里琴の言葉に一瞬驚くが、すぐに顔を引き締めて拳を構える。
そして、非常口が目の前に来た瞬間、緑谷が腕を振り抜く。
「スマーッシュ!!」
ドゴォン!と非常口を殴り壊して中に入る。
それを確認した麗日は『個性』を解除するのだった。そして、警備マシンに目を向けた。
コントロールルームからの通信を聞いたウォルフラムは、僅かに顔を顰める。
「ソキル達を向かわせろ。俺が行くまでコントロールルームは死守しろ」
指示を出しながら、レセプション会場を後にするウォルフラム。
その後ろ姿をオールマイトは体から蒸気を出しながら歯を食いしばって耐えていた。
(耐えろ……耐えるんだ、オールマイト!子供たちが必ずやってくれる……!)
緑谷達を信じてひたすら耐えるオールマイトなのであった。
よ、ようやく、次回からクライマックスです(-_-;)