『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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拳の五十四 絡繰りの森

 【絡繰りの森】に放り込まれた戦慈達は、移動を開始しようとしていた。

 しかし、切奈が周囲を見渡しながら声を掛ける。

 

「ところで宿泊施設ってあっちでいいの?」

 

 進もうとしている方向を指差しながら首を傾げる。

 切奈の言葉に円場や回原が腕を組んで顔を顰める。

 

「言われてみれば……」

「上からでも見えなかったもんな」

「けど、崖の方向とラグドールの指差した方向からすれば、とりあえずこの方向だよ」

 

 一佳が先ほどまでいた崖の上を見上げながら、方向を確かめていた。

 

「問題は『本当にラグドールは施設の場所を指差していたのか』ってことだけどね」

 

 そこに物間が肩を竦めながら言う。

 しかし、それには一佳や骨抜は否定的だった。

 

「それはないと思う」

「だな。いくら何でも、それだと遭難するリスクが高くなっちまう」

「……見てくる」

 

 里琴が竜巻を生み出して飛び上がり、空から確認しようとする。

 すると、樹の半ばからドバン!と網が発射されて、里琴は捕獲されてしまう。

 

「……マジ卍」

 

 竜巻を放っても千切ることが出来ず、里琴はブラブラと戦慈達の上で吊るされる。

 その様子を戦慈達は呆れながら眺めていた。

 

「まぁ、やっぱ空への対策はされてるよな」

「鎌切、悪ぃが頼む」

「いいぜぇ。円場、足場作ってくれぇ」

「あいよ」

 

 円場と鎌切が協力して、里琴の元まで跳ぶ。

 そして鎌切が素早く両腕を振り、里琴を捕らえている網を切り裂く。

 里琴は素早く体勢を立て直して、着地する。そして、不服そうな雰囲気を醸し出して戦慈の元に戻る。

 

「……むぅ」

「まぁ、大人しく地上にいろってことらしいぜ」

 

 戦慈の言葉に里琴は無表情、無言で頷く。

 

「つまり、どうにかして方向を確認しながら進むしかないってことか」

「とりあえず進もうぜ。慎重かつ迅速にな」

 

 物間が顎に手を当てて呟き、骨抜がそれに頷きながら先を促す。

 

 そして、戦慈とビースト化した宍田を先頭に走り出す。

 

「出来る限り、人が通った場所を通るようにな!」

 

 骨抜が叫び、それに全員が頷く。

 直後、宍田の足元が崩れ、戦慈を挟み込むように地面から壁が飛び出してくる。

 

「ぬぅ!」

「ちぃ!」

 

 宍田が落ちる前に穴の縁に手を掛けて飛び上がり、戦慈も壁を蹴って飛び上がって回避する。

 

「いや、後ろにいても危ねぇな!?」

「見えるだけまだマシだろぉ」

 

 円場が慌てて落とし穴に『個性』で蓋をする。

 それでも背後の回原達は落とし穴を避けて進む。

 すると、物間の足元でカチッと音がした。

 

「え?」

 

 物間が足元を確認すると、ボタンのようなものが見えた。

 直後、近くの樹の間から鉄球が振り飛んできて、物間の後ろを走っていた庄田に向かう。

 

「なっ!?」

「……おんどれー」

「束縛を!」

 

 里琴が鉄球に竜巻を当てて勢いを殺し、茨がツルを地面に突き刺して鉄球の真下から包み込むように伸ばす。

 

「必ずしも押した人に罠が襲い掛かるとも限らないってことか……」

「くっそ~……隊列が難しいな」

 

 鱗が冷や汗を掻きながら止められた鉄球を見つめ、骨抜が顔を顰めて腕を組む。

 罠の起動スイッチと起動場所が異なるとなると、後方の危険度が段違いに高まる。

 かといって、戦慈と宍田のどちらかを後ろに下げるのも厳しい。

 

「後ろは里琴と茨で何とか出来ると思う。私やポニーもあれなら力づくで止められると思うし」

「イエス!」

 

 そこに一佳が骨抜に声を掛けて、ポニーがフンス!と頷く。

 その言葉を信じて、とりあえず現状維持で進むことにした骨抜達。

 

「宍田。匂いはどうなんだ?」

「まずいですな!もはや辺り一面、鉄の匂いですぞ!今のように埋められているスイッチまで見分けるのは厳しいですぞ!」

 

 戦慈に声を掛けられた宍田は顔を顰めて大声で答える。

 ビースト化中はハイテンションになるので大声になるのは、もう全員受け入れている。

 ハイテンションの宍田の言葉に、腕を組んでため息を吐く戦慈達。

 

「これ以上はどう注意しても無理だな」

「進むしかねぇなら進むだけだぜ!」

 

 再び鉄哲が飛び出す。

 目の前の茂みを突っ切ると、また足元からカチッと音がした。

 その音に戦慈達が構える。

 

ボオォン!

 

 今度は鉄哲の足元で爆発が起こり、鉄哲が爆煙に包まれた。

 

「ぐへぇ!?」

「鉄哲ぅ!!」

 

 円場が慌てて駆け寄るが再びカチッと足元で音がした。

 そして地面の下から網が飛び出して円場を捕まえて吊り上げる。

 

「おおお!?」

「何個あるの!?」

「救けにも行き辛いねぇ」

 

 吊り上げられる円場を見て、吹出が慌てて、凡戸がため息を吐く。

 鎌切が再び網を切り裂いて円場を救けだし、戦慈と宍田で鉄哲の元に向かう。

 鉄哲は爆煙で汚れてはいたが、怪我はしていなかった。

 

「イツツ……!」

「無事か?」

「おう!どうやらこけおどしみてぇだ!」

 

 鉄哲はすぐに起き上がって笑みを浮かべて無事を伝える。

 そこに一佳も近づいて地面を確認する。

 

「……地面もそこまで吹き飛んでないな。これ、体育祭で使われた地雷だな」

「ああ、確か音と見た目が派手な奴か」

「ん」

 

 一佳の言葉に切奈と唯が思い出したように頷く。

 

「……進まん」

「そうだね。もうそろそろ1時間になるけど、2km来たかどうかだよ」

「歩くのより遅ぇ~」

「あと2時間弱で施設に着けってかぁ?」

「流石にもう無理じゃない?」

 

 里琴が中々進まない状況に不満オーラを噴き出し、庄田も同意するように頷く。

 泡瀬が項垂れるように顔を下に向けてため息を吐き、鎌切も顔を顰めて唸る。

 それに柳がもはや諦めモードに移行する。

 

「実際どうすればいいの?森を壊してまで突破するのはあんまり良くなさそうだよね」

「それはなぁ……」

 

 切奈の言葉に一佳が腕を組む。

 流石に環境破壊は問題だと考える。それに森を壊すように進んだところで、どうにかなるとは思えない。

 

「とりあえず進むぞ。悩んだところで速くなるわけじゃねぇ」

 

 一回り体が膨れ上がった戦慈の言葉に頷いて、再び走り始める一同。

 すると戦慈が更に前に出て、前方の開けた地面に向かって右手の指を弾いて軽く衝撃波を叩き込む。

 直後、地面に穴が空いて落とし穴が出現して、更に爆発や網が飛び出してくる。

 

「これで出来る限り罠は減らせるだろ」

「問題はスイッチですな!」

「それはどうにかするしかねぇだろ」

 

 戦慈がそう答えた途端、足元でまた何かを踏んだ感触と音がした。

 戦慈は両腕で顔を庇うが、爆発は起こらなかった。

 すると、背後からドパパパ!と何かが発射される音がした。

 

「わぁ!?」

「ん!?」

「きゃ!?」

「ワァオ!?」

 

 さらに一佳達の悲鳴が聞こえた。

 後ろを振り返ると、青いペイントを顔や体にこびり付けて、げんなりしている一佳達がいた。

 

「……悪ぃ」

「……いや、これは仕方ないだろ」

「ん」

「避けられなかったです……」

「ノォ~ウ……」

 

 戦慈は謝罪するが、一佳達は苦笑して追及はしなかった。

 ちなみに里琴は飛んでいたので躱すことが出来、切奈は手足を切り離して浮かんで躱した。

 柳は一佳と茨のおかげで当たらなかった。

 

 一佳は右額と左脇腹。唯は胸元と左足。茨は頭頂部と腹部。ポニーは右角と右腕にペイントを浴びている。

 ハンカチで拭うも完全には取り切れずに諦めた。

 

「うおおおお!!イライラするぅ!!」

 

 鉄哲がイラつきが限界を迎えて、上を向いて叫ぶ。

 

「けどなぁ……俺の《柔化》で柔らかくしても落とし穴は防げないし、スイッチや地雷が沈むわけじゃねぇしな」

「俺の《空気凝固》も毎回毎回地面を覆うわけにはいかねぇしな」

「茨のツルでも全部覆うのは無理だしな」

 

 骨抜達がまた顔を顰めて考え込む。

 

「ここの罠は基本的なものばかり……。これが突破出来ないと本番でも足止めされる」

 

 顎に手を当てていた一佳がこの訓練の目的を理解して考え込む。

 基本的に今までの罠は、その気になれば誰にでも設置することが出来る。

 それはつまりヴィラン達でも真似が出来るということだ。

 これが楽に突破出来なければ、本番でも完全に足止めされてしまう。

 

「ここまでの罠の数はおかしいでしょ」

「『個性』次第だろ?八百万とかいるじゃないか」

「あ~……それもそうだね」

 

 切奈が呆れながら言うが、一佳は八百万の名前を出してすぐさま反論する。

 八百万の《創造》は脂質の補充が出来れば、かなりの数を作れることがI・アイランド事件で分かっている。

 複製する『個性』などがあれば、今の状況は作ることが出来る。

 そうなると20人もいて全く対処出来ていないこの状況はかなり問題である。

 

「さっきの拳暴のやり方でいいだろ。その数を増やして、全員のスピードを上げて罠を振り切ろうぜ」

 

 骨抜が提案して、鱗と吹出に顔を向ける。

 

「鱗と吹出も前に出て地面に向かって撃ちまくってくれ。物間は鱗を《コピー》、巻空も余裕があれば、っていうか拳暴の背中から竜巻撃ってくれ。円場と宍田は後ろに下がって飛んでくる罠を対処してほしい」

「了解ですぞ!」

「鉄哲と鎌切は出来る限り一緒に動いてくれ。鉄哲が捕まったら頼むな」

「おうよ!」

「任せなぁ!」

「じゃ、行くか」

 

 そして再び動き出す。

 茨はツルを伸ばして対処が難しいメンバーを囲い、ポニーは角に乗って飛んで移動する。

 戦慈は再び先を走り、開けた地面に向けて衝撃波を放ち、鱗と物間、里琴がウロコと竜巻で細い場所の地面を攻撃する。

 吹出も『ドパン!』や『ゴロゴロ!』と擬音を出して、地面を所々攻撃する。

 

 どんどん罠が発動して、後方にも罠が襲い掛かる。

 先ほどのペイント弾や鉄球、丸太などが飛んでくるが、スピードを上げたことで何とかギリギリ躱せていた。確実に当たるものは宍田が鉄球や丸太が繋がれている鎖を千切って止め、ペイント弾はもう顔でなければ諦めることにした。

 

 上手くいってはいるが、新たな問題が浮上した。

 

「これさ!着くまでこのペースで走り続けるのか!?」

「その覚悟はしとくべきじゃないかな!」

 

 回原が走りながら叫び、庄田もうんざりしながら答える。

 ただ走るだけなら問題ないが、森でしかも足元に罠があることがいつも以上に体力を奪っていく。

 それはつまり戦慈や宍田達、罠に対応しているメンバーは更に消耗が激しいということである。

 

「これさぁ!始めから昼食までに着くなんて無理だよねぇ!」

「元々3時間程度で着くっていう情報の根拠がねぇからな」

「……普通に走ってもギリ」

「プルスウルトラってか!」

 

 物間がウロコを撃ちながら叫び、戦慈と里琴もラグドールの言葉を疑い始め、鱗は教師陣が何を考えているのかを悟る。

 

 そして崖から落とされて2時間半が経過した。もちろん周りは依然として森である。

 しかし、ようやくある変化が訪れた。

 

「ん?」

「はぁ!はぁ!どうした!?拳暴」

 

 フルパワーまで大きくなった戦慈の衝撃波を浴びた地面から一切罠が出現しなくなった。

 それに気づいた戦慈の様子に息を切らせた鱗が声を掛ける。

 ちなみに里琴はフルパワーになって制服が破れている戦慈から離れて一佳達の傍にいる。

 

「罠が出なくなった」

「本当か!?少し休もうぜ!そろそろキツイ!」

 

 戦慈の言葉に鱗が笑みを浮かべて、休憩を呼びかける。

 全員がそれに同意して、罠が出なかった場所で足を止める。

 

「ふぅ。里琴、行けるなら飛んで場所を確認してくれ」

「……りょ」

「私も行く~」

 

 座り込んだ一同を横目に戦慈が里琴に呼びかける。

 頷いた里琴は飛び上がり、切奈も首だけを切り離して浮かび上がる。

 

 森の上空に出た里琴と切奈は周囲を見渡す。

 すると、だいぶ先に建物が見えた。後ろを振り返ると、スタート地点と思われる崖と道路が薄っすら見える。

 

「……半分?」

「みたいだね。昼ご飯は確実に無理。今の皆の感じだと、また2時間はかかりそうだね。罠とかが無ければ、だけど」

「……それフラグ」

「あ、やっぱり?」

 

 切奈の言葉に里琴がツッコむ。切奈も言った直後にフラグだと思って、内心呆れていた。

 すると、そのフラグはすぐに回収された。

 

「ん?」

 

 切奈の耳に何やらブーン!という音が聞こえる。

 音のする方向に目を向けると、

 

「げ!」

「……チョベリバ」

 

『ターゲット発見!ラリホー!』

 

 そこにいたのは飛行ロボだった。

 雄英の一輪ロボにプロペラを付けただけに見えるが、それでも近づいてくる脅威に切奈と里琴は急いで下に戻る。

 

「皆!ロボが来るよ!」

「「「は?」」」

 

 慌てて胴体と合体する切奈の言葉に休んでいた全員が唖然とする。

 すると、上空から音がして見上げると、ロボットが上空から猛スピードで降りてきていた。

 

「ロボォ!?」

「今度は戦闘かよ!?」

「喉乾いてるのにぃ!イガイガしてるよぉ!」

「カルシウムとコラーゲンが……!」

 

 泡瀬と回原が叫んで、吹出は喉を押さえて立ち上がり、鱗も顔を顰めながらウロコを展開する。

 すると、

 

『ピー!ピー!ピー!』

 

 と、ロボから甲高い音が鳴る。

 その音に訝しむ一同だったが、すぐ後のロボの音声に目を見開く。

 

『ターゲット共発見!場所を送信!ハンティングスタート!』

 

 場所を送信。

 その言葉が意味することはただ1つ。

 

「集団で来る!?」

「そういうことだろうよ!」

「……おんどれー」

 

 里琴が八つ当たり気味に竜巻を放ってロボを破壊する。

 ロボは地面に落ちて機能を停止する。

 しかし、問題は全く解決されていない。

 

 先を見ると、明らかに高速で迫ってくる大量の影が見え、空からもプロペラの音がする。

 

「森にロボって……いいの?」

「向こうが用意したんだ。いいんじゃないか?」

「だからって樹を折るなよ?」

「向こうが折らなけりゃな」

 

 柳が呆れ気味に首を傾げ、円場も呆れながら肩を竦める。

 一佳が戦慈に注意して、戦慈も肩を竦める。

 

「やっぱこれが一番分かりやすいぜ!!ぶん殴ってやる!」

「一番の目的は施設に行くことだからなー」

 

 鉄哲がガィン!と拳を合わせて、ニィ!と笑う。

 骨抜が声を掛けるが、あまり聞こえていなさそうだった。

 その後ろでは唯がロボの残骸に歩み寄り、ロボを小さくしていた。

 

「唯?」

「環境保護」

 

 一佳が首を傾げていると、唯が珍しくはっきりと言葉にして小さくしたロボをブレザーのポケットに仕舞う。

 さらには柳が細かい残骸を《ポルターガイスト》で浮かせる。

 

「武器ゲット」

「ん」

「なるほど」

「じゃあ、悪いけど柳と小大はロボの残骸出来るだけ処理してくれ」

「ん」

 

 一佳は2人の行動に感心するように頷き、それを見ていた骨抜が指示を出して2人も頷く。

 

「それにしてもロボも絡繰りと言えばそうなのかもしれないけどさ。わざわざここまで運んでこなくてもいいと思わない?」

「だよねぇ。面倒だよねぇ」

 

 吹出の言葉に凡戸も頷く。

 それに他の者達も頷きながら、体を解す。特に回原と庄田は今まであまり役に立ってないので張り切っている。

 

 そして、遂に目の前にロボの集団が迫り、上空からも下りてきた。

 

「ふっ!」

 

 戦慈が出来る限り衝撃波を巻き散らさないよう意識しながら一気に距離を詰めて、コンパクトに右ジャブをロボの顔面に放つ。

 ロボの頭部は一撃で粉砕されて倒れる。

 それに続くように回原と鉄哲、鱗がロボに殴りかかる。

 

「オラァ!!」

「そらよっ!」

 

 鉄哲の拳はロボの腹部を突き抜け、回原は回転させた腕をラリアット気味に放ってロボの腹部を千切る。鱗もウロコを逆に生やした腕で削る様にロボの腕を斬り落とす。

 宍田と鎌切は樹を利用して上に飛び上がり、プロペラロボに攻撃を仕掛ける。

 

「ガアアア!!」

「ヒャア!」

 

 宍田はロボの頭部を掴んで引き千切り、鎌切は両腕から刃を生やして振るい、頭部とプロペラを斬り落とす。

 

「吹出ぃ!」

「うん!ポヨン!」

 

 鎌切に声を掛けられて、吹出は『ポヨン』という擬音を生み出す。

 鎌切はそれを踏み、トランポリンのように跳ねてまた斬りかかる。

 

 茨がツルを伸ばして、ロボの動きを阻害しながら残骸を回収し、泡瀬が固めて、唯が小さくして、柳が残骸を飛ばしてロボに攻撃を仕掛ける。

 一佳、ポニー、庄田は茨や骨抜、凡戸、切奈が動きを止めたロボに攻撃を仕掛けて破壊する。

 ちなみに切奈は両腕と両脚を切り離して、ロボに当てて注意を逸らしている。

 円場は上空から迫るロボに向かって壁を作り、激突させる。その隙を宍田が狙う。

 

 里琴と物間は竜巻で飛びながらロボを破壊していく。

 

「もろさはそのままか!」

「助かるけど!数は多い!」

「体力的に厳しいね!」

 

 鱗が肩で息をしながらロボの残骸を見下ろして言い、回原はロボの上に飛び乗って頭部を掴み体を回転させて捻り千切りながら愚痴り、庄田もロボに右ストレートを叩き込み《ツインインパクト》を発動してロボを吹き飛ばしながら顔を顰める。

 

「オラァ!どりゃあ!」

 

 鉄哲は息を乱しながらもロボを殴り壊していく。

 しかし、殴り倒した直後に右手に鋭い痛みが走る。

 

「っ!?金属疲労か……!」

 

 顔を顰めて右手を見ると、指の付け根と手の甲の一部にヒビが入っていた。

 鉄分を補充したくても、食事が出来ない。

 

「くっそぉ……!」

 

 鉄哲は歯軋りをして左手で殴りかかる。しかし、左手もすぐにヒビが入ってしまう。

 まだ戦えないわけではないが、これ以上ヒビを大きくすれば《スティール》を解除すれば大量に血が流れるかもしれない。

 だが、鉄哲はすぐに「んなもん関係ねぇ!!」とばかりにまた殴りかかる。

 その時、

 

「鉄哲。1人で突っ走るなよ」

 

 骨抜が割り込んでロボの腹部に触れる。

 更に鉄哲の目の前にロボの残骸で造られた鉄球棒が投げ落とされる。

 

「それで殴れ!」

「っ!?おっしゃあ!!」

 

 鉄哲はすぐに掴んで、ロボの腹部に叩き込む。ロボの腹部は粘土のように柔らかくて簡単に上下に分断される。

 

「泡瀬と小大に礼を言っとけよ」

 

 骨抜の言葉に鉄哲は泡瀬と唯に目を向ける。

 泡瀬と唯は親指を立てる。

 

「おまえらぁ……!」

「俺が柔らかくしていくから、トドメは頼むぜ」

 

 鉄哲が感動して涙を浮かべて、骨抜が苦笑しながら声を掛ける。

 それに鉄哲は笑みを浮かべて頷き、鉄球棒を構えてまた殴りかかっていった。

 

 協力してロボを撃退しながら進んでいくB組。

 

「拳暴は……?」

 

 ロボを殴り飛ばした一佳が先頭で戦っている戦慈に目を向ける。

 

 戦慈は大きな体を縮こませるように脇を締めてボクシングスタイルで構えていた。

 そのままドパン!と砲弾のように飛び出して、ロボに詰め寄って頭部を狙ってジャブを叩き込んでいく。背後に回ったロボには素早く反転して前蹴りを突き刺す。

 さらに樹の幹に両足を乗せて、大きく揺らせながら飛び出してピンボールのように移動する。

 飛び蹴りでロボを粉砕し、ロボの間に着地して両腕を広げて左右のロボの頭を掴んで引き寄せ、挟み込むように叩きつけて潰す。そして、頭部が潰れたロボ達を両手でそれぞれ掴み、盾のように構えてロボの集団に突っ込む。重ねるようにロボ達を押し倒すと、勢いのままその上に逆立ちして、腕に力を籠めて飛び上がる。その際に衝撃波が出て、押し倒していたロボ達を圧し潰す。

 飛び上がった勢いで頭を上にした戦慈は、真上の太めの枝を掴んで脚を振り、前に飛ぶ。そして、落下地点にいるロボに掴みかかって、そのまま地面に叩きつけて破壊する。

 

「フゥー……!」

 

 ロボの残骸を踏みつけながらゆっくり立ち上がる戦慈。

 その様子を一佳達は呆れるやら感心するやらの表情で見つめる。

 

「相変わらず半端ないな」

「ん」

「あいつに疲れるって言葉はねぇのか?」

 

 円場の言葉に一佳達は頷いていたが、ふと一佳が戦慈の様子に違和感を覚えた。

 

「……拳暴?」

「ん?」

「どうされましたか?」

「いや……拳暴の様子が少し……」

 

 一佳が訝しむように見つめ、唯と茨も戦慈に目を向ける。

 

「……つぅ……!」

 

 戦慈は僅かに体から白い煙を立ち上げて、歯を食いしばって何かに耐えているように見えた。

 動き続けているとはいえ、ダメージも受けてないのにあそこまで苦しそうにしている戦慈は初めて見る。

 

「どうしたんだ!?」

「拳暴さん!?」

 

 その様子に一佳達は駆け寄ろうとするが、戦慈は手を上げて制止する。

 

「来んな。問題ねぇよ」

「嘘つくなよ!」

「ん」

 

 一佳達は明らかに嘘をついていると見抜いた。

 そこに里琴が一佳達の目の前に降り立ち、一佳達を制止する。

 

「……ストップ」

「里琴。なんでだ!?」

「……危険。……パワーが溜まり過ぎてる」

「パワーが……?」

「……森に被害が出ないように抑え込んでるから、消費が間に合ってない」

 

 つまり戦慈の体には普段以上にパワーが荒れ狂っている状態なのだ。それを抑え込んでいるため、体にダメージが入っている。

 放出しようにも木々が生い茂っていて、被害が出ないように衝撃波を出すのはかなり難しい。

 それを聞いた一佳は円場に顔を向ける。

 

「円場。悪いけど樹の上まで足場を作ってくれないか?」

「おう、任せとけ」

 

 円場は足場を作っては登り、作っては登りを繰り返して、樹の上まで道を作る。

 

「ほら、拳暴。これ登って発散して来い。ロボなら大丈夫だから」

「……悪ぃ」

 

 一佳の有無を言わせぬ雰囲気に戦慈は小さく謝罪して、大人しく登っていく。

 それを見送った一佳はため息を吐く。

 

「全く……。あいつももう少し人に頼ればいいのに」

「戦闘とかでの指示はすぐ出せるのにね」

「おーい!ロボはまだいるぞー!」

「おっと、悪い!」

 

 切奈も呆れていると、泡瀬が叫ぶ。

 それに一佳達は慌てて戦闘に戻る。直後、上空で爆音と嵐のような衝撃波が飛び、元に戻った戦慈が飛び降りてくる。

 再び全員で協力しながら進む戦慈達だった。

 

 

 

 そして、空が完全にオレンジ色になった頃。

 

 施設の近くではブラドとラグドール、虎が立っていた。

 少し離れた場所には相澤とラグドール達と同じコスチュームを着た者達もいた。

 

「……5時、か」

「そろそろ来るよ!」

 

 ブラドが時計を確認する。丁度17時を示したところだった。

 するとラグドールが腰に手を当てて言う。

 その言葉にブラドは森に目を向ける。すると、森の奥から人影が見えた。

 

「はぁ!……はぁ!……」

「つ、着いた?」

「みたいだな……」

 

 森から出てきたのは今にも倒れそうな様子の鉄哲達だった。

 鉄哲が振り回していた鉄球棒は、すでにただの鉄の棒と化しており、杖代わりにしていた。

 戦慈も草臥れた様子で、その右脇には里琴を抱えている。もちろん里琴もとっくの昔に限界を迎えており、顔が真っ青になっている。

 一佳は柳のように両手をブラブラさせており、他の者達も手を押さえていた。

 

「まぁ、及第点ってところだな。赤点ギリギリであるが」

「あははは!ボロボロだね!」

「まだまだ弱いがな!」

 

 ブラドが苦笑しながら鉄哲達を眺め、ラグドールは笑い、虎は腰に手を当てて叫ぶ。

 鉄哲達は地面に座り込む。

 

「あ、あれを3時間とか無理過ぎじゃ?」

「俺達ならば、それくらいで着けるからな」

「……プロヒーロー基準にされても……」

「まぁ、正直あそこまでロボと戦うとは思っていなかったがな」

「へ……?」

 

 回原は息を乱しながら言うと、ブラドがあっけらかんと言い放つ。

 それに切奈が顔を顰めながら文句を言うと、ブラドが少し呆れ気味に言い、それに吹出が首を傾げる。

 

「お前達に課したのは『ここに着くこと』だ。別にロボなど壊さなくても足止めして、さっさと進めばよかっただろう?それを全滅させる勢いで戦い始めるのだからな」

「……い、言われてみれば」

 

 一佳はその言葉に呆れるしかなかった。確かに全部戦う必要性は全くなかったのだから。

 

「とりあえず、よく頑張ったな。これで今日は終了だ。バスから荷物を下ろして部屋に運んだら、A組が到着次第食堂で夕食だ。ペイントで汚れている者達は濡れたタオルを用意しているから、それで拭くように。夕食後はA組の後に入浴。そして今日は就寝となる。明日の朝は早いからな。夜更かしはやめとけ」

「えぇ!?A組はまだなんですかぁ!?あれれれぇ!ってことは僕達の方が優秀ってことですかねぇ!?」

「A組とは内容が違う。だから比べるだけ無駄だ」

 

 ブラドの言葉に頷いた一佳達だが、A組の事を聞いた物間が無理矢理高笑いを上げる。

 ブラドは呆れ全開で注意し、一佳は流石に手刀を叩き込む元気はなかった。

 なので、全員で物間の言葉を無視して、バスに荷物を取りに行った。

 

「ほれ、里琴。自分で荷物持て」

「……薄情者」

「ここまで運んだだけでも感謝しやがれ」

「荷物は持ったか?では、部屋に案内する」

 

 ふらつきながら荷物を背負う里琴。

 他の者もボロボロなので、手助けする余裕はない。

 

 そして、ブラドの案内でそれぞれの部屋に荷物を置き、B組一同は体を休めるのであった。

 

 

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