『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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『個性』伸ばしの特訓紹介の文章は、アニメ時をイメージしてます。プレゼントマイクさんの声ですね。

名前。

特訓内容と目標。

という部分です。



拳の五十六 『個性』を伸ばせ

 翌朝、午前5時過ぎ。

 

 一佳達は寝ぼけ眼で布団から起き上がり、顔を洗って体操服に着替えていく。

 同じくポケ~っと起き上がった里琴が部屋の備え付けの冷蔵庫からタンブラーを出して、作ってもらったカフェオレを飲む。

 

「……んふ~」

 

 そして、幸せそうな笑みを浮かべる。

 その顔を女性陣全員が目撃した。

 

「……笑った?」

「これ!これだよ!この顔!」

「ん!」

「幸せそうですね」

「本当に笑うんだねぇ」

 

 柳が首を傾げて、一佳達に顔を向ける。一佳と唯はテンションを上げてI・アイランドでの騒動のことを言い、茨はマイペースに微笑ましく里琴を見つめ、切奈が未だに信じられないのか目を見開いて見つめている。

 しかし、里琴はすぐに顔を無表情に戻して、準備を始める。

 その後も切奈が笑わそうと揶揄うが、全く里琴の表情は変わらなかった。

 

 

 

 男子陣もちらほらと起きて、着替えなどを始めていた。

 戦慈、骨抜、宍田、庄田はすぐに起きて、素早く準備を済ませていた。

 その時、

 

「鉄哲ぅパァンチ!!」

「ごっふ!!!」

 

 まだ寝ていて爆睡していた鉄哲が腕を鉄化して、準備を終えて隣で寝転んでいた物間の脇腹に拳を突き刺した。

 物間はもちろん完全に油断していたので、2mほど布団ごと横に滑り、脇腹を押さえて痛みに悶える。

 

「おおぉおおおぉ……!!」

「……今のはマジでドンマイだな」

「よく夜は誰も被害なかったな」

「早く起こそうぜ。遅れちまう」

「……殴られないよな?」

 

 鱗が憐れみの目で物間を見下ろし、回原が歯磨きしながら鉄哲に呆れ、骨抜が時間を見て注意する。

 泡瀬が起こそうとするが、さきほどのパンチがまた飛んでこないかとビクビクする。

 その時、鉄哲の顔に勢いよく枕が叩きつけられる。

 

「わぁ!?」

「ぶべ!?な、なんだ!?」

「遅れるぞ。とっとと準備しやがれ」

「マジか!?ありがとな、拳暴!」

 

 泡瀬が驚いて、鉄哲も流石に目を覚ます。

 枕を投げたのは戦慈だった。

 鉄哲は枕を当てられたことは一切気にせず、礼を言って起き上がる。

 

「流石ですな」

「俺は先に行くぞ」

「物間~、そろそろ行くぞ~」

「ぐぅ……も、もう少し優しくしてくれても良くないかなぁ……」

 

 宍田が称賛し、戦慈は肩を竦めて先に部屋を出る。それに宍田や庄田達も続き、円場が物間に声を掛けながら部屋を出ていく。

 物間はまだ痛みに呻きながらも薄笑いを浮かべて、自分を放置していくクラスメイト達に苦情を言う。

 

「ん?……物間!なにしてんだ!?早く行こうぜ!」

「……君のせいなんだけどねぇ……!」

「何か言ったか?先に行くぜ!」

 

 鉄哲にも苦情は届かず、物間は理不尽に顔を顰めながらも立ち上がって部屋を出るのだった。

 

 

 

 なんだかんだあり、集合するまで時間がかかった。

 

「全員揃ったな。よし!おはよう、諸君!」

『おはようございます』

「いよいよ林間合宿を本格的に始めていく!この合宿の目的は、お前達の強化及び仮免許の取得だ!激しくなりつつある脅威に備えるためのものだ。心して臨むように!」

 

 ブラドの言葉に一佳達は頷く。

 ブラドは説明を続ける。

 

「入学から約3か月。お前達は様々な経験を経て、間違いなく成長している。しかし!!それは精神面や技術面での話であって、『個性』自体はあまり成長していない!!故に、これからお前達の『個性』を伸ばす!!」

 

 ブラドの説明に一佳達は目を見開いたり、首を傾げる。

 

「『個性』を伸ばす……!?」

「そうだ。A組はもう始めている。俺たちも行くぞ」

 

 ブラドは背を向けて歩き出し、一佳達も後に続く。

 

「でも、突然『個性』を伸ばすと言っても……20名20通りの『個性』があるし、何をどう伸ばせばいいか分かんないんスけど……」

「具体性が欲しいな」

 

 切奈が訝しみながら質問し、鱗もその横で腕を組んで頷いている。

 

「筋繊維は酷使することで壊れ、強く太くなる。『個性』も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ衰える。すなわち!やることは1つ!」

 

 ブラドは説明を続けながら足を止める。

 そして、前方を指差して叫ぶ。

 

「限界突破ぁ!!」

『!!』

 

 一佳達は目の前に現れた光景に目を見開く。

 

 そこではA組の者達が、悲鳴や雄叫びを上げながら『個性』を使っていた。

 爆豪はお湯が入ったドラム缶に両手を入れて、しばらくすると手を出して上空に向かって爆破し、そしてまた手をお湯に入れる。

 硬化している切島を尾白が尻尾で思いっきり叩きつけたり、上鳴が発電機に繋がれ、電流を流されて痺れている。

 洞窟からは「ギャアアア!!ダークシャドオオ!!」と謎の叫び声が聞こえ、砂藤がお菓子を食べながら筋トレをして、八百万がその隣でお菓子を食べながら物を創り続けている。

 

 見た目に違いはあれど、全員の顔は苦痛に歪んでいた。

 

「なんだ……この地獄絵図は……!?」

「もはや可愛がりですな……」

 

 鱗と宍田が慄き、他の者達も顔を引きつかせている。

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型、その他複合型は『個性』に由来する器官、部位の更なる鍛錬。通常であれば、肉体の成長に合わせて行うが……」

「まぁ、時間がないんでな。B組も早くしろ」

 

 相澤が近づいてきて促す。

 それに一佳は唯達と顔を見合わせる。

 

「でも、私達も入れると40人だよ。そんな人数の『個性』、たった6人で管理できるの?」

「だから彼女達だ」

「そうなの!!あちきら四身一体!!」

 

 一佳の疑問に相澤が答えると、相澤の後ろから声が聞こえてきた。

 

「煌めく眼でぇロックオン!!」

「猫の手、手助けやってくる!!」

「どこからともなく~やってくるぅ~……!!」

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!フルver.!!」

 

 プッシーキャッツの4人が決めポーズを決めて、現れる。

 

「あちきの『個性』《サーチ》!この目で見た人の情報100人まで丸わかり!居場所も弱点も!」

「私の《土流》で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

「そして私の《テレパス》で一度に複数の人間へアドバイス!」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ……!」

「最後の『個性』関係ねぇじゃねぇか」

 

 プッシーキャッツの説明で明らかにおかしい虎に、戦慈がツッコむ。

 しかし、虎はそれを無視してビシィ!と一佳達を指差す。

 

「単純な増強型の者!我の元へ来い!」

 

 虎は少し離れた場所を指差す。

 目を向けると、そこには緑谷が必死な顔で不思議な踊りをしていた。

 

「我ーズブートキャンプはもう始まっている!」

((((古!!))))

 

 恐らく当てはまるであろう戦慈や宍田が頬を引きつかせる。

 

「雄英も忙しい。ヒーロー科1年だけに人員を割くことは難しい。この4名の実績と広域カバーが可能な『個性』は全体で底上げするのに最も合理的だ」

「よし!A組に後れを取るな!B組、行くぞ!」

『はい!!』

 

 相澤の言葉とブラドの号令に、一佳達は表情を鋭くして力強く返事をする。

 

「それじゃあ、それぞれの特訓内容を指示する!必要以上のケガをしないように、しっかりと聞いておくように!」

 

 そして、相澤達も加わって、それぞれの特訓が始まった。

 

 

 

「ヒャヒャヒャ!!」

 

 鎌切は森を背中に、岩壁に絶えず腕や足から生やした刃で斬りつけている。さらに背後の森から野球ボールが複数発射され、それを背中や体中から生やした刃で斬り落としていく。

 

 鎌切 尖。

 

 岩壁を刃で斬りつけながら、周囲からランダムで発射される野球ボールを全て斬り落とすことで『刃の硬度向上』と『刃を生み出す速度を高める』特訓!!

  

「ヒャヒャ!斬るぅ……!俺は斬るぞぉ!ヒャッヒャッヒャ!」

 

 休みなく斬り続けているため、テンションがおかしくなっていた。

  

 

 里琴は竜巻に乗って浮かびながら回転している。さらに無重力の麗日も竜巻で浮かして回している。

 

「「……うっぷ!」」

 

 巻空 里琴。

 

 吐き気を催しながらも『個性』を持続して酩酊に慣れることで『発動時間の延長』、さらに無重力の麗日を吹き飛ばされないように操ることで『竜巻のコントロール向上』を目指す特訓!!

 

「「っ!!……オロロロ……!」」

 

 2人揃って、近くに置いてある蓋付きバケツに駆け寄って同時に吐く。

 

 

 

「ふぅ!ふぅ!ふぅ!ふぅーーー!!!」

 

 円場は顔を真っ赤にしながら必死に息を吹いて、空気の壁を作っていく。

 目の前には円場と同じ高さの岩が迫っていた。円場がいるところは僅かに坂になっており、もちろん円場が下である。

 

 円場 硬成。

 

 連続で発動し続けることで『肺活量アップ』と『壁の硬さ向上』を目指す特訓!!

 

「はぁ!はぁ!シュー、シュー。はぁ……ふぅー!ふぅー!」

 

 円場の手には酸素ボンベがあり、酸欠にも備えていた。それが地獄を招いていたが。

 

 

 

「う~……う~……う~……う~……」

 

 凡戸はただただドラム缶に接着剤を垂れ流している。

 

 凡戸 固次郎。

 

 接着剤を出し続けることで『噴出量の向上』を目指す特訓!!

 

「う~……う~……」

 

 特訓中はずっと目が見えないので動けず、非常に地味である。

 

 

 

「ああ……これは自然を乱すことにならないのでしょうか……」

 

 茨は地面に跪いて両手を組みながら、背後にツルを伸ばし続けている。

 

 塩崎 茨。

 

 ツルを伸ばし続けることで『一度に操れる量の向上』、さらに伸ばしたツルを操り何があるのかを把握することで『ツルのコントロールと感応力の向上』を目指す特訓!!

 

「ああ……いいのでしょうか……」

 

 ちなみに目の前には大量の水とコップが置かれている。

 

 

 

「ふん!」

「っ!はぁ!」

「つぅ!ふぅ!」

「った!」

 

 鱗と物間は互いに両腕に鱗を展開しながら殴り合っていた。

 

 鱗 飛竜。

 

 ウロコを常に展開した状態で《コピー》した物間と殴り合うことで『ウロコの硬度向上』、『ウロコの展開時間延長』を目指す特訓!!

 

 物間 寧人。

 

 鱗の『個性』を連続で《コピー》することで『使用時間の延長』を目指す特訓!!

 これによって容量が増えて《コピー》出来る数も増え、同時発動も出来るようになるかも!

 

「づぅ!ああ、時間切れだね……!」

「じゃあ、今のうちにカルシウムとコラーゲンを……」

 

 2人の近くにはカルシウムとコラーゲンが含まれたゼリーが置かれており、鱗と物間はそれを随時補給しながら特訓を続ける。

 

「……腹はやめてくれよ?」

「……お互いにな」

 

 

 

「ん……ん……ん……ん……」

 

 唯は無表情で黙々と目の前に積まれている大量の石を小さくしていく。

 

 小大 唯。

 

 ひたすら《サイズ》を変え続けることで『限界サイズの向上』『サイズ変化時間延長』『サイズ変化数容量アップ』を目指す特訓!!

 もちろん大きくする特訓もするぞ!

 

「ん……ん……ん……ん……」

 

 無表情で続けるその姿は美人故にやや恐怖を与える。延々と石のサイズを変える作業に、唯の目も心なしか光が消えており、まるで人形が作業をしているように見える。

 

 

 

ドッカン!!ドッカン!!ドッカーン!!

 

 吹出はA組の口田の近くで全力で叫んで、擬音を飛ばしていた。

 

 吹出 漫我。

 

 大声で発動し続けることで『擬音実体化サイズ向上』『声量アップ』そして『喉を鍛える』特訓!!

 

ドッカン!!ドッカン!!ドッカン!!

 

 その足元にはのど飴が置かれている。

 

 

 

「っ!おりゃああああ!!」

 

 泡瀬は猛スピードで机の上に並べられているいくつものブロックを固めていく。

 ブロックは様々な形をしており、決まったブロック同士でないと上手く組み合わない作りになっている。そして、その泡瀬の様子をカメラが見つめており、その下にはストップウォッチモニターが付いており、時間は徐々に少なくなっている。

 

 泡瀬 洋雪。

 

 短い時間で物の形を把握してくっつけていくことで『早く正確な《溶接》』を可能にする特訓!!

 

「ギャアアアアア!?」

 

 さらに時間内に作れなかったり、組み合わせを間違えたら電流が走る仕掛けになっている謎の鬼畜仕様になっている。

 

 

 

「シュート!シュート!」

 

 ポニーは岩壁に描かれたターゲットポイントに向かって連続で角砲を発射している。

 ただし、ポニーは頭を固定されており、様々な場所にあるターゲットに向けることはできない。

 さらにポニーの周囲には常に6つの角が浮かんでいる。

 

 角取 ポニー。

 

 『角のコントロール向上』と『操る数を増やす』特訓!!

 

「シュート!シュート!あ!?」

 

 意識していると頭の角の方が発射され、周囲に浮いていた角のコントロールが乱れて地面に落ちる。

 

 

 

「……なんか私、一番地味じゃない?」

 

 切奈はテントで周囲を見えないようにされた中で、全身をバラバラにしていた。

 今の独り言も浮いている口が呟いたものだ。テントの床には切奈の体操服と下着が転がっている。

 

 取陰 切奈。

 

 分割と再生を繰り返すことで『限界時間の延長』『分割数の増加』『分割したパーツのコントロール向上』の特訓!!

 

「……アッツイ」

 

 周囲から裸やシルエットが見えないように暗い色のテントの為、熱が籠っていく。

 ゆっくりと人型に戻る切奈は暑さに項垂れながら、水分補給を行う。

 

 

 

「やっ!はっ!ぐぅ!?」

 

 庄田はサンドバックに拳を叩きつけて、殴るのと同時に《ツインインパクト》を発動する。

 サンドバックは大きく弾かれて、元の場所に戻ろうと庄田に迫る。それをさらに殴ったり、受け止める。

 

 庄田 二連撃。

 

 殴る瞬間に発動したり、連続で殴ってから発動したりすることで『威力増加』『タイムラグ短縮』『設置数増加』の特訓!!

 

「くっ……痩せないとダメかな?」

 

 と、『個性』伸ばしとは違うところで悩むのだった。

 

 

 

「む……ぐ……!」

 

 柳は唇をきつく閉じて、体に力を籠めていた。

 柳の周囲にはドラム缶が3つフラフラと浮いている。ドラム缶の中には砂が入っており、1つ20Kgほどである。

 さらに目の前の小石を見つめて、浮かせようとしている。

 

 柳 レイ子。

 

 『限界重量アップ』と『コントロールアップ』を目指す特訓。

 

「せめて……人を2人は持ち上げられる余裕はないと……ね!」

 

 

 

「……俺も地味だなぁ……」

 

 骨抜は広い所に突っ立っており、その周囲では岩が地面にゆったりと沈んでは止まり、沈んでは止まりを繰り返している。

 

 骨抜 柔造。

 

 《柔化》を1秒で出来る限りの範囲で発動・解除を繰り返すことで『発動時間の短縮』『発動範囲の拡大』を目指す特訓!!

 

 誰も近づけないので、1人寂しく行っている。

 

「……寂しー」

 

 

 

「ふっ!はっ!」

「ふん!はぁ!」

 

 回原と宍田は涙を浮かべながら体を動かしていた。

 

「よし、今だ!貴様!打って来い!!」

「っ!!ガアアア!!」

 

 宍田は虎に声を掛けられて、《ビースト》化して殴りかかる。虎は後ろに大きく仰け反って躱す。

 

「いいぃ動きじゃないかぁ!!まだまだ筋繊維が切れてない証拠だよ!」

「グハァ!?」

「違ぁう!」

「イ、イエッサ!」

 

 宍田は思いっきり顔を殴られる。

 

「もっとぉ……!プルスウルトラしろよぉ……!」

 

 宍田 獣郎太。回原 旋。

 

 我ーズブートキャンプによる『身体機能向上』『体幹強化』の特訓。

 ……頑張れ!

 

「伸ばせぇ!!へぼ『個性』を!!」

「「「イエッサー!!!」」」

 

 緑谷も含めた3人は全力で叫ぶ。

 彼らだけ違う世界にいるようだ。

 

 

 

「ふん!……はぁ!はぁ!ふん!……はぁ!はぁ!」

 

 一佳は汗をダラダラ流していた。

 台の上に上り、両手を最大化してそれぞれ巨大な鉄球を掴んで、持ち上げてはゆっくり下げる筋トレをしている。

 

 拳藤 一佳。

 

 両手最大化時に筋トレをすることで『握力と腕力強化』『最大サイズアップ』を目指す特訓!!

 

「はぁ!はぁ!はぁ!」

 

 頑張ってはいるが、頭の隅っこでは『筋肉が付きすぎるのは嫌だなぁ』と思っている。

 

 

 

「ぬぅおりゃあああ!!」

 

 鉄哲はガァイン!という音と叫び声を響かせる。

 その周囲は炎が包んでいる。

 上半身裸の鉄哲が今いるのは竈の中である。天井は穴が空いているので一酸化中毒は避けられている。竈の中には鉄球が振り乱れており、鉄哲の体に打ちつける。

 

 鉄哲 徹鐵。

 

 竈の炎の中で鉄の体を熱し、鉄球で体を叩き鍛えることで『硬度アップ』と『発動時間延長』を目指す特訓!!

 

「ぶっはぁ!!」

 

 鉄哲は視界が歪んだ瞬間、竈を出て大きく息を吐く。そして、すぐ横に置かれている水が入っているバケツをひっくり返して体に掛ける。

 ジュー!!と水が蒸発して体を冷ます。そして、更に鉄分が含まれているドリンクを一気飲みする。

 

「ぷはぁ!!よっしゃ!まだまだぁ!!」

 

 体から蒸気を上げながら鉄哲は不敵な笑みを浮かべて、また竈の中に戻る。

 彼の気合は竈の炎より燃え上がっていた。

 

 

 

 そして、戦慈は1人森の中にいた。

 

「ふっ!はぁ!」

 

 戦慈の身体はフルパワーまで大きくなっていた。しかし、その体には昔の野球漫画で見たようなバネと鉄で造られたギプスを装着していた。

 その状態でシャドーを行っており、その度に衝撃波が吹き荒れる。

 

「くっ……!ホントにこれで上手く行くのかよ……!」

 

 戦慈は顔を顰めながら、ブラドの説明を思い出す。

 

 

 

 戦慈はブラドに連れられて森の中に来ていた。

 

「……俺は宍田と一緒じゃねぇのか?」

 

 あれも嫌だが、それでも戦慈は間違いなく増強型に属しているはずだ。

 なのに、自分は違う特訓をするという。

 ブラドは頷く。

 

「そうだ。教師陣で話し合った結果、お前が今すべきことは『個性』を伸ばす事ではなく、『個性』をコントロールすることだと結論に至った」

「……簡単に言いやがる」

 

 戦慈の『個性』はアドレナリンが関わる。ホルモンをコントロール出来るわけがなく、それが出来ればとっくの昔にコントロール出来ている。

 ブラドは首を横に振る。

 

「俺達が言っているのは、衝撃波のことだ」

「衝撃波?」

「正直なところ、お前の『個性』は十分強い。パワーもスピードもプロ並みで、戦闘技術も仮免試験では十分過ぎるほどだ。だが、その副作用である衝撃波の改善をしないと共闘が難しい状況はヒーローとしては致命的扱いされる可能性がある。それに衝撃波のせいで、かなり戦える場所が制限されるのもどうにかしたい」

 

 ブラドの言葉に戦慈は一応納得するが、それでもそう簡単に衝撃波をコントロールできるとは思えなかった。

 

「というわけで、これを身に着けろ」

 

 そして、ブラドが渡してきたのが例のギプスだった。

 

「……なんだよ、これ」

「ギプスだ。お前の体が大きくなるにつれて締め付けて動き辛くなるように設計してある。これで体が大きくなった状態での体の動かし方、力の流し方を身に着けるんだ」

「……」

 

 理屈は分かるが、上手く行く気はあまりしなかった。

 

「これはオールマイトでも実験している。そう簡単には壊れないだろう」

「……分かった」

 

 あの我ーズブートキャンプよりマシだろうと考えた戦慈は、渋々受け取って身に着けていく。

 

「フルパワーで衝撃波のエネルギーを完璧に抑え込めれば、あの広島で見せた力も扱えるかもしれんぞ。それに体の負担も減るかもしれん」

 

 ブラドの言葉に頷いて、戦慈は体を動かしていく。

 

 こうして、戦慈達の特訓が始まった。

 

 




今回は導入で終わりです。次回はそれぞれの特訓をもう少し細かく書いて行きます。
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