『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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お待たせしました。

GWのせいで業務が恐ろしいことになりましてね(-_-;)
私の職場は祝日など関係ないのですがね……。
職場と関係がある企業のほとんどがGWに入るので、終わらせなければならない手続きやら注文を取ったり、取られて休み前に届けたりと仕事が増える増える(-_-;)
しかし、私は今日もいつも通り出勤。
祝日があまり関係ない職種にとって10連休って地獄ですよね。

愚痴ってしまい、申し訳ないです。



拳の五十八 夕食とお肉騒動

 夕方4時。

 

 地獄の特訓を終えた生徒達は、グッタリとした姿で宿泊施設横の炊事場に集まっていた。

 

「あ~……疲れた~」

 

 切奈が項垂れながらぼやき、柳や唯もコクコクと頷いている。もう声を出すのも億劫なのだ。

 里琴はもちろん戦慈の肩の上である。顔は変わらず白い。

 戦慈は比較的周囲より元気そうだが、流石に疲れているようで全力でもたれ掛かってくる里琴に文句を言う気力はない。

 

「腹減った……。けど、横になりてぇ……」

 

 泡瀬が腹を両手で押さえてふらつきながら言う。

 その両隣にいる円場や吹出も頷く。2人は喉が限界なのだ。

 鱗と物間はゼリーを食べ続けたせいで、そもそも空腹を感じていない。空腹ではないが、体のあちこちが痛くて動きたくない。

 宍田、鎌切は互いに支え合って立っており、回原は庄田と肩を組んでいる。

 鉄哲、骨抜、凡戸は草臥れてはいるが、しっかりと立っている。

 

 そして、生徒達の前にはジャガイモに人参などの食材、そしてカレールー。鍋や飯盒が並べられていた。

 

「さぁ、昨日言ったね!世話を焼くのは今日だけだって!」

「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」

 

 ピクシーボブとラグドールが意気揚々と生徒達に言う。

 一佳達はぐったりしたまま何とか「イエッサ……」と答える。

 その様子を見たラグドールは手足をバタバタさせて大笑いする。

 

「アハハハハハ!!全員全身ブッチブチ!だからって雑なネコマンマは作っちゃ駄目ね!」

「はっ!確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……!」

 

 ラグドールの言葉に飯田がハッとして自炊の意義を考え出す。

 

「流石雄英、無駄がない!世界一美味いカレーを作ろう、皆!!」

 

 そして勝手に納得して、全員に叫ぶ飯田。

 緑谷や上鳴達が「オォ~……」と気の抜けた声で答える。

 

「……間違っちゃいねぇとは思うが、そんな高尚な理由でもねぇと思うがな」

「……食えれば何でもいい」

「災害救助中にヒーローが料理する余裕があるとも思えないしねぇ」

 

 戦慈、里琴、切奈が飯田の言葉に呆れていた。

 しかし、それに感化される者がB組にもいた。

 

「おっしゃあ!!俺らも美味いカレー作っぞぉ!!」

 

 鉄哲である。

 かなり過酷な特訓をしていたのに、叫ぶ元気があるのは流石としか言いようがない。

 

 

 その後、私服に着替えて、クラスに分かれて調理を始める。

 クラスメイトとの初めての調理ということで、意外な姿が多数目撃される。

 

「鎌切って料理出来るんだな」

 

 人参の皮むきをしていた泡瀬が、隣にいる鎌切の包丁捌きを見て感心する。

 鎌切は並べられた人参をズダダダダダ!と猛スピードでブツ切りにしていた。

 

「斬ることに関しちゃ誰にも敗けねぇぜぇ!!ただ……斬るだけだけどなぁ!!」

「ああ、うん。それは納得出来るわ」

 

 どうやら包丁だけが得意で、その後の調理は人並みらしい。包丁が得意なだけでも十分な気もするが。

 その向かい側では里琴がジャガイモを切り、隣では戦慈がジャガイモの皮むきをしていた。

 戦慈もリンゴの皮むきのようにスルスルと鮮やかに包丁を扱う。

 

「拳暴も料理出来るんだ?」

「1人暮らししてんだ。ある程度、料理くらいするだろ」

「あんまりイメージがないんだよねぇ」

「ん」

 

 肉を切っていた切奈が意外そうに戦慈を見て、戦慈は手を止めることなく答える。

 しかし、コーヒーと大食いのイメージが強すぎるせいで、戦慈が料理をしている姿が全く思い浮かばない。

 それには唯も頷いている。

 

「里琴が料理してるのは一佳から聞いたことがあったから、そこまで意外でもないんだけどさ」

「……交代制」

 

 里琴の言葉に切奈達は納得したように頷く。

 

「まぁ、そういうこった。外食なんてする余裕ないし、別々に料理すれば意外と金がかかるかんな」

「あぁ~、確かにねぇ」

 

 戦慈が肩を竦めながら言い、それに切奈が再び納得の声を上げる。

 同じ料理を多く作るのと、別々の料理を多く作るのでは前者の方が安上がりなことが多い。

 しかも里琴は戦慈の部屋に入り浸っている。なら、一緒に作った方がいいというのは、戦慈と里琴にとっては当然の結論である。

 

「拳暴って意外と多才だよな」

「多才にならねぇと施設を出てから生き辛いんだよ。戻るってわけにゃいかねぇからな」

「……這い蹲って生きる」

 

 戦慈と里琴の言葉に切奈達は2人が施設出身ということを思い出す。

 確かに施設は一度出て行くと、戻りたくなってもそう簡単には戻れないことが多い。

 しかも戦慈と里琴は職員から疎まれていたのもあって、確実に断られると考えている。

 

「……うん。帰ったら皆でどっか食い放題行こうぜ!」

「それ、いいなぁ」

「店貸し切りにでもしないと、また頭下げられそうだねぇ」

「ん」

 

 泡瀬が親指を立てて言うと、鎌切達も乗っかる。

 不器用な気の遣い方に戦慈は呆れるも、

 

「まぁ、美味い店なら行くぜ」

「……食う」

 

 と答えるのだった。

 

 

 飯盒を炊いている鉄哲は、何故か鋼質化して火が着いた薪に顔を近づけて息を吹きかけていた。

 

「ふぅー!!ふぅー!!ふぅー!!」

「いや、鉄哲。そこまでしなくていいから。もう火も十分だし、むしろこれ以上強くなったら米が焦げちまう」

 

 骨抜が呆れながら鉄哲の背中を叩く。

 

「お、そうか?」

「火傷すんなよ」

「特訓の方が熱かったから大丈夫だ!」

「全然安心できねぇよ」

 

 骨抜にツッコまれながら鉄哲はじぃ~っと火を見つめている。

 気合に燃える男、鉄哲は火が好きだったようだ。

 

 その横では宍田や円場が同じく飯盒で米を炊いていた。

 

「ふむ。このくらいで大丈夫ですかな?」

「十分十分。飯盒ってのは赤外線で炊き上げるもんなんだよ」

 

 宍田は実家が金持ちであるためか、キャンプ的なものは初めてだった。

 もちろん料理もあまりしたことがない。

 ちなみに飯盒班になったのは「毛が入りそう」という、ちょっとかわいそうな理由だった。

 

 カレーの仕上げを担当しているのは一佳、茨、回原の班と柳、ポニー、庄田の班である。

 

「やっぱ女子って料理上手いよな」

「関係ないだろ。私は1人暮らしだから料理する機会が多いから慣れてきただけだしな」

「私も好みの味を自分で作れるようになりたかっただけですので」

 

 回原の言葉に一佳は苦笑し、茨は困ったような顔をする。

 茨は一度手を出すと納得するまでしないと気が済まない性格なので、その影響が大きいだけだ。

 

「それにカレーなんて、そうそう失敗するもんじゃないだろ?スパイスから作るなら分かるけど、今回はルーを入れるだけだし」

「そうか?俺、ルーを入れるのは火を止めてからなんて初めて知ったぜ」

「……箱に書いてあるよ?まぁ、別に止めなくても、そんなに問題ないけどね」

 

 一佳は鍋を混ぜながら苦笑する。

 柳達の方は何やら騒がしい。

 

「レイ子!ショーユ、ソース、どっち入れるのデスか!?」

「入れないから」

「ホワイ!?ジャパニーズ、入れる人多いって聞いてマス!」

「それは家庭によるから。今回は駄目」

「そーデスか……。なら、シュガーを入れてみましょう!」

「ストップ、角取さん。それは皆の好みを聞いてからにしようね。だから砂糖を取りに行かなくていいよ!?」

 

 暴走気味のポニーを柳と庄田が全力で抑え込んでいる。

 凡戸と吹出はテーブルを拭いて回ったり、皿を空拭きしている。

 物間は、

 

「おやおや?A組のカレーは普通なのかい?えぇ!?それで救助者の心は満たされるのかなぁ!?」

 

 と、A組にちょっかいを掛けていた。

  

「物間~、働かざる者食うべからずって言葉知ってる~?」

「あははは!やだな、取陰。僕はA組のテーブルや皿を拭いているだけだよ」

「嘘つくなら、せめて布巾持ってからにしなね~。それにあんたは玉ねぎ係でしょ。鱗1人でやらせてるんじゃないよ」

「……」

 

 物間は完璧に論破されて、ぐうの音も出ずにクラスの元に戻っていき、その背中をA組の面々が呆れて見送るのだった。

 

 

 

 そして、カレーが完成した。

 

『いただきまーす!!』

 

 いただきますと同時に全員が一斉にカレーにがっつく。

 空腹に耐えながら作ってきたのだ。我慢はとっくの昔に限界だった。

 

「うおおお!うめーー!!」

「いい匂いを我慢してた甲斐があったー!!」

「ガツガツでウマウマだね!」

 

 戦慈と里琴もがっついている。

 里琴はもはや流し込んでいるというべきかもしれないが。

 

「お~い、おかわりも限界あるからね~」

「……ひゃうにむおうおう」

「だから、食べながら話すな。で?」

「弱肉強食だとよ。つまり早いもん勝ちって言いたいんだろ」

「……ん」

 

 切奈が呆れながら戦慈達に言うと、里琴がリス頬のまま話し、一佳にジト目でツッコまれる。

 戦慈が通訳して、里琴が頷く。

 

「今日は俺も腹減りまくってんだ!カレーのおかわりは渡さねぇ!」

「俺も!」

 

 鉄哲と回原など男子達も里琴に負けじとカレーを掻き込んでいく。

 戦慈もがっついてはいるが、おかわりするような雰囲気はなかった。

 それに一佳が首を傾げる。

 

「ん?おかわりしないのか?」

「今日はそこまで体力は使わなかったしな。他の連中に譲るさ」

「そっか。それにしても今日みたいな特訓が後4日も続くのか……」

「ん」

「ちょっと地獄」

 

 一佳はカレーを口に運びながら、うんざりする。

 それに唯や柳も少しうんざりした表情で頷く。

 一佳に関しては筋肉痛が治る気がしない。

 

「明日まず起きれる気がしないねぇ」

「これもまた特訓なのでしょうね」

 

 切奈と茨も不安そうに顔を歪める。

 昨日の疲れも取れたとは言い難い。そこに今日の地獄の特訓だ。疲れが取れる気がしない。

 今日が大変だったからと言って、明日の特訓が楽になることは決してないだろう。

 流石に少し憂鬱になる。

 しかし、それでも食欲は衰えず、カレーは美味かった。そして、着替えに行ったついでに持ってきたタンブラーでコーヒーを飲む。

 それだけでちょっと疲れが取れた気がする一佳であった。

 

 

 

 鍋と飯盒が空っぽになるまで食べて、一息つく。

 そこにブラドが立ち上がって、生徒達に声を掛ける。

 

「よし!全員食べ終わったな。では、この後の予定を簡単に説明する!まずはもちろん皿や鍋の片づけだ。その後、入浴となるが……」

「昨日、女子風呂を覗こうとした阿呆が出たんでな。男子と女子で風呂の時間をずらす」

 

 気だるげに座ったままの相澤の言葉にA組の全員が峰田を見る。

 それでB組の面々もその阿呆が誰かを理解する。

 

「本当に覗こうとしたのか……」

「懲りない奴だね」

「ん」

「物間みたい」

「流石に覗き魔と一緒にしてやんなよ」

 

「もちろん先に男子からだ。A組、B組の順で入って、男子が出たら次にA組女子って感じでいく」

「それで男子の風呂の時間が早まることになったから、男子の補習組は補習開始時間もその分早める。遅刻厳禁だぞ」

「「「「嘘だろ!?ふざけんな、峰田ー!!」」」」

「そこはオイラと関係ねーだろ!!赤点取ったお前らが悪いんだろぉ!」

 

 補習時間が早まったことに補習組だった上鳴、砂藤、瀬呂、切島が峰田に向かって叫ぶが、峰田も流石に反論する。

 地味に物間も巻き込まれたのが哀れである。

 次にマンダレイが声を上げる。

 

「じゃ、次は私からだね。明日の夕飯だけど、肉じゃがね」

「「「うおー!!」」」

 

 マンダレイの発表に歓声が上がる。

 おふくろの味の大定番と言われる肉じゃがに盛り上がる。

 しかし、

 

「お肉は豚肉と牛肉だから。A組、B組でどっちがいいか選んどいてね」

 

 という言葉に全員が顔を見合わせる。

 肉じゃがの『お肉問題』。地方はもちろん、家庭によってどっちか分かれるので、クラスの中でも意見が分かれる。

 すると飯田が腕をグルグル回しながら立ち上がる。

 

「それでは、今決めてしまおう!いいかい、拳藤くん!!」

「ああ、いいよ。じゃあ、ジャンケンで勝った方が選ぶってことで」

「異論はない。では……」

「ちょっと待った!」

 

 飯田の言葉に一佳も立ち上がって提案する。

 それに飯田も頷くと、物間が立ち上がって止める。

 

「ジャンケンなんかで決めるのつまらないだろ?ここはきっちり勝負して決めた方がいいんじゃない?」

「はぁ?別にジャンケンでいいだろ」

 

 一佳が眉を顰めて反論する。

 しかし、物間はハッと鼻で笑う。

 

「何言ってるんだい、拳藤。憎きA組と直接対決出来るせっかくのチャンスなんだよ?そんなジャンケンごときで決めるなんて馬鹿なのかい?」

「だから憎くはないっつーの」

 

 一佳はジト目で言い返す。

 そして、周囲の者達も「どっちでもいい」と言い、別にジャンケンで異論はなかった。

 

「ハァ?どっちでもいいわけないだろ。肉じゃがは豚肉に決まってるんだよ。……ああ、でもA組がどっちでもいいって言うなら、ジャンケンもしないでこっちで決めさせてもらうよ。A組はどっちでもいいなら構わないだろ?ねぇ、爆豪君」

「あぁん?」

 

 何故か自分に声を掛けてきた物間を苛立たしく睨み返す爆豪。しかし、物間は厭味ったらしい笑みを浮かべ、座っている爆豪を見下す。

 

「君は牛肉でもいいんだろ?勝負を放棄したA組を差し置いて選んだ豚肉はきっと美味しいだろうなぁ!」

「あぁん!?っざけんな、ものまね野郎!こっちだって豚肉だ!!」

 

 見事に挑発に乗った爆豪。

 物間はしてやったりとニヤリと笑う。

 

「じゃあ勝負して決めるしかないね」

「上等だぜ。クソB組なんか蹴散らかして豚肉奪い取ったるわ!」

 

 爆豪の言い方にB組男子数名もカチンときた。

 

「んだとぉ!クソB組ってどういうこったよ!」

「クソはクソだろうが!クソ鉄野郎!」

「また言いやがったなぁ!!」

 

 鉄哲も完全に火が着き、骨抜や泡瀬達も顔を顰めて爆豪を睨んでいる。

 この瞬間にお肉問題から争点がズレたが、当人達は気づいていない。

 不穏な雰囲気になったことに飯田は驚き、腕を振り回しながら叫ぶ。

 

「爆豪くん!君はまた勝手なことを……!今は神聖な合宿中なのだぞ!?それを勝負とは……」

「うっせぇ!!売られたケンカは買うしかねぇーだろが!」

「ケンカ売ってんのはそっちだろうが!」

 

 遂に骨抜も参戦する。

 普段はクールだが、仲間を馬鹿にされるのは我慢出来なかったようだ。

 戦慈は完全に呆れており、里琴は興味なしとばかりに欠伸をしている。

 

「お前ら、疲れてたんじゃねぇのかよ」

「……眠い」

「ん」

「元気だねぇ」

「一佳、どうするの?」

「……めんどくさい……」

 

 まさか副委員長の骨抜まで参戦するとは思わなかった。

 確かに爆豪の言い方にはイラっとしているが、それでも結局豚肉か牛肉かを決めるだけで、ここまでヒートアップする必要もない。

 

「訓練時間以外は自由だ。周囲に迷惑を掛けるなら論外だが」

「はっ!確か自由時間は各自の自由……。だが、そのなかで自主性を重んじつつ、生徒同士で切磋琢磨するのもヒーローとして闘争心を養う特別な時間……。そういうことですね、先生!」

「……そういうことだ」

 

 再び思考が暴走した飯田が相澤の言葉を自己解釈する。

 戦慈や一佳達から見れば、どう見ても相澤はめんどくさかっただけにしか見えなかったが。

 

「……よくあれだけで、あの理論が出てきやがんな」

「ん」

「ああ、争いはよくありません」

「やめときなよ、茨。流石に殴り合いまではいかないだろうからさ」

 

 飯田は爆豪達に顔を向けて、

 

「それでは諸君!腕相撲で勝負を決めるのはどうだろう!」

「構わねぇよ!何だろうが俺らが勝ぁつ!!」

「はっ!ねぇわ、クソ鉄。俺らが勝つに決まってんだろが!!」

 

 鉄哲と爆豪の間で火花が散る。

 挑発をしたのは物間のはずだったのに、完全に鉄哲が大将になっている。

 それはそれで、物間の人望の無さの表れかもしれないが。

 

 ということで、風呂後にA組男子 VS B組男子による腕相撲大会の開催が決定したのだった。

 

 

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