『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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少し遅くなりました(__)


拳の六十一 合宿3日目

 合宿3日目。

 本日も『個性』伸ばし訓練である。

 

 そして、昨晩の相澤の『お前らは倍』発言は有言実行されたのだった。

 

「うらああああ!!」

 

 泡瀬は昨日より制限時間が短くなり、組み合わせのパーツが増えた。

 

「ぎゃあああぎゃぎゃああああ!?」

 

 そして、電流の威力も2倍にされたのだった。

 

 鎌切はボールが発射される感覚がランダムになり、発射される球数が増えた。

 

「ヒャヒャヒャ!ぶげぇ!?がふ!?デデデデデッ!」

 

 もちろん切り落とし切れずに顔や腹部に直撃して、その後は全弾命中して悶えるだけとなった。

 

 物間、鱗も引き続き殴り合いなのだが、鬼ごっこ要素が追加された。

 背中にボタンがあり、制限時間内に相手のボタンを押さなければ電流が流れる。

 そのため逃げ回って良い事はないので、2人は殴り合い、掴み合いでボタンを押そうとする。

 ちなみに同時に押したり、押される間隔が短いと本気でやっていないと判断されて、両者に電流が流れる。

 

「くっ!ちょこまかと!」

「じゃあ、諦めなよ。ヒーローを目指してるんだろぉ!?仲間を助けると思って、ボタンを押させてくれよ!」

「ふざけんな!もとはと言えば、お前のせいでこうなってんだろ!」

「えええ!?人のせいにするのぉ!?」

『時間デス。電流ヲ流シマス』

「「え。ぎゃあああああ!?」」

 

 醜く言い合って掴み合っているところに無慈悲にアナウンスが流れて、2人に電流が流される。

 掴み合ったまま痺れて、揃って倒れてピクつくのだった。

 

 他の男子達もそれぞれ昨日より内容が凶悪になっている。

 もはや命の危機を感じながら頑張って、夕飯の肉じゃがは肉無しなのだから今からもう涙目だ。

 

 女性陣も倍にはなっていないが、過酷であることは変わらない。

 すでに里琴は顔を真っ青にして竜巻の上に浮かんでおり、一佳も腕をプルプルさせながら重りを持ち上げている。

 それでも周囲から聞こえてくる悲鳴を考えればまだマシだと思えるので、彼らに敗けないように全力で取り組む。

 

 補習組を除けば唯一難を逃れた男子である戦慈は、今日もギプスを着けた状態で壁を殴る特訓をしていた。

 もちろん全く上手くいっていないが。

 

「……ちっ。どうにも中途半端だな」

 

 顔を顰めて完全に崩れた壁の残骸を見下ろす。

 力を抜けば意味はないし、全力で振るえば簡単に壁が吹き飛ぶ。

 殴る寸前に力を籠めればいいかと思ったが、あまり意味はなかった。

 

「どうにも手詰まってんな……」

 

 戦慈はため息を吐いて、再び壁に向かって拳を構える。

 手詰まってはいるが、ここは愚直に続けるしかない。力のコントロールなど使い続けるしか扱えるようになる術はないのだ。

 戦慈はまずはジャブから改めて始めることにした。

 

「ふっ!」

 

ドバン!ドバン!

 

 標的に目掛けて鋭くジャブを2発叩き込むも、やはり壁には大穴が空いて崩れていく。

 そのまま他の壁に殴りかかるも、やはり一撃で壁は吹き飛ぶ。

 ならばとミドルキックを放つも、やはり粉々に吹き飛ぶ。

 

「……本当に扱える様になんのか?」

 

 戦慈は全て砕けた壁を見下ろして、もう一度ため息を吐く。

 休憩がてらにピクシーボブに声を掛けて、壁を作り直してもらう。

 そこに相澤とブラドが近づいてきた。

 

「調子はどうだ?」

「あん?やっぱダメだな。全力で振るえばジャブでも吹っ飛ぶ」

「そうか……しかし、強化系タイプは日々の鍛錬以外に近道がないからな……。お前の場合はサポートアイテムにも限界があるし」

 

 ブラドも眉間に皺を寄せて腕を組み、今度は相澤が訪ねてくる。

 

「ギプスによる体の負担はどうだ?」

「もう動く分には全く問題ねぇな。殴るときは流石に動きづらくなるがな」

「……衝撃波の前に体が鍛えられただけか……」

 

 相澤は頭を掻いて小さくため息を吐く。

 そして、すぐに顔を引き締めて戦慈に顔を向ける。

 

「拳暴、ギプスは外していい。その後は素の状態で今の特訓を続けろ」

「イレイザー?」

「いいのかよ?」

「下手に拘束を強めると体が鍛えられるかもしれんが、衝撃波をコントロールする前にフルパワーの上限が増えるだけの可能性もある。だったら、素の状態で体に負荷をかける方がまだ可能性がある」

「……なるほどな」

「ただし、そうなるとお前の《自己治癒》に頼る形になる。だから、あまり無茶はするなよ」

「やろうとしてることがすでに無茶なんだから、無茶言うな」

「最大出力で放つなよ。あくまでフルパワー状態での攻撃だからな」

「分かってんよ」

 

 戦慈はギプスを外しながら頷く。

 相澤とブラドは背を向けて、他の生徒の所に行こうとしたところであることを思い出す。

 

「ああ、そうだ。拳暴」

「あん?」

「今日の夜はオリエンテーションとして、クラス対抗肝試しがある。だから参加できないような怪我を負うなよ」

「……分かった」

 

 戦慈はブラドの言葉にため息を吐きながら頷く。

 ブラドが去っていくと、さっそく特訓を再開する戦慈。

 

 右ストレートを放つ。

 

ドッバァン!

 

 やはり衝撃波が飛び、壁が数枚一気に吹き飛ぶ。

 しかし、戦慈は僅かに違和感を感じた。

 

「……なんだ?」

 

 別に威力が下がっているわけではない。いや、むしろ上がっていた。

 しかし、どうにも目に映る結果が今までと違う様に感じる。

 戦慈は拳を見下ろして、周囲にも目を向ける。

 そして、ようやく気付いた。

 

 周囲や地面に衝撃が流れていないことに。

 

 今までは腕を引いた時にも背後に僅かばかりに衝撃波が飛び、足元にも踏み込んだ時に衝撃が走って亀裂が入っていた。

 しかし、今のは背後に衝撃が飛んだ感覚がなかった気がする。さらに足元も僅かに凹んではいるが、亀裂は入っていない。

 

「……」

 

 戦慈は訝しみながらも、もう一度右ストレートを放つ。

 今度は周囲にも意識を向けながら。

 

 すると、前方に衝撃波が飛んでも、背後には飛ばず、足元にも今までほどの衝撃が流れていないことがはっきりと分かった。

 

「……どうやら、間違ってはなかったみてぇだな」

 

 しかし、小さな変化すぎて本当に特訓によるものかは分からなかったが。

 それでも前に進んではいるようだ。

 戦慈は僅かに笑みを浮かべて、体を動かし始めた。

 

 まずはどれだけ変わったのかの確認だ。

 

 そう考えながらシャドーを始めるのだった。

 

 

 

 

 昼休憩となり、一佳達は体を休める。

 ちなみに男子達は鉄哲、骨抜、凡戸を除く全員が岩壁に並んで座って真っ白になっている。

 

「大丈夫かねぇ、あいつら」

「昨日の倍メニューらしいね」

「ん」

 

 切奈達は少し離れたところで呆れながら見つめている。

 可哀想だとは思うが、やらかした理由が理由なので手助けの使用がない。

 ちなみに今日は里琴と一佳はぐったりしており、茨とポニーが介抱中である。

 

「そういえば、今日も拳暴は1人飯?」

「ん?」

「私は何も聞いてないよ」

 

 柳の言葉に唯は首を傾げ、切奈も首を横に振る。

 その時、

 

 

ドッッッッバアアアアアァァァン!!!

 

 

 と、離れたところから轟音と竜巻のような暴風が上空に向かって飛んで行った。

 

「お~。なんか久しぶりだねぇ」

「ん」

「相変わらず凄まじい」

 

 A組が慌てているが、切奈達や鉄哲達はすぐに戦慈であることに気づいたので全く驚かなかった。

 すると、唯が、

 

「ん?」

「どしたの?」

「ん~……」

 

 戦慈が起こした衝撃波を見て首を傾げる。

 柳が声をかけるが、唯は首を捻ったまま唸るだけだった。

 唯は何かが気になったが、何に気になったかがはっきりとしなかった。

 なので、結局答えは出ず、気のせいだと首を横に振る。

 

「ん~ん」

「そっか」

 

 柳も特に追求せずに頷いて、おにぎりを口にする。

 少しすると、ジャージを着た戦慈が戻ってきた。

 

「お、今日はこっちで食べるみたいだね」

「ん」

 

 戦慈はマンダレイから昼食のおにぎりと飲み物を受け取って、適当な場所に座ろうとするが、

 

「お~い、拳暴~」

 

 と、切奈に呼び込まれて、いつも通り女性陣の近くに座る。

 

 それを眺めていたA組陣は、

 

「ホントに拳暴って女子と仲いいよな」

「あれだろ?食堂で拳暴が淹れたコーヒーとか飲んでたんだろ?」

「昨日はヤオモモ達もいたらしいじゃん」

「ああ、うん。美味かったよ」

「補習だった三奈ちゃん以外は皆飲ませてもらったわね。お店の味に負けてないと思うわ」

「ブラック苦手な人にはカフェオレ作ってくれたしね」

 

 瀬呂、上鳴、芦戸が耳郎達に目を向けると、耳郎は思い出したように頷き、蛙吹と麗日も顎に指を当てながら答える。

 結構手間だと思うが、一度も文句を言わなかった。

 女子会での話もあり、思ってた以上に人当たりはいいようだと改めて実感した。

 

「なんか轟や爆豪みたいな奴かと思ってたけどな~」

「爆豪だって何だかんだで付き合いいいぜ?期末は勉強教えてくれたしな」

「轟だって最近は柔らかくなったと思うぞ?」

 

 瀬呂の言葉に、切島と障子が言い返す。

 それに爆豪は顔を顰め、轟は無反応だった。

 

「まぁ、巻空がべったりだからね。そこが大きいんじゃない?」

「巻空も無表情でよく分かんねぇんだよな」

「巻空さんは表情に出ないだけで、雰囲気や言動によく現れてますわ」

「そうね。結構分かりやすいと思うわ」

 

 耳郎がなんとなく理由を言うと切島が首を傾げ、八百万と蛙吹がI・アイランドや昨日の女子会から感じた印象を述べる。

 

「そういえば、拳暴は昨日の騒動にはいなかったの?」

「途中で抜けたんだよ。まぁ、参加はしてなかったけどな」

「ああ、なんか物間持ってきたな」

「あ!……しまった。俺、拳暴に助けてもらったのに、ふいにしたんだった……」

「あ、それなら気にしなくていいって言ってたよ。鉄哲君も同じことしただろうからってさ」

「そっか……。でも、後で謝っとくわ。相澤先生達に嘘つかせちまったし」

 

 耳郎が切島に訊ねて、切島は首を横に振る。

 それに瀬呂が補習室でのやり取りを思い出しながら呟くと、切島は戦慈が庇ってくれたことを思い出した。しかし、説教された時に自分も抜け出していたことを自白して、鉄哲達と共に説教を受けたのだ。

 つまり戦慈は相澤達に嘘を言ったことがバレたのだが、それについて切島は謝罪していなかった。

 もちろん戦慈は葉隠の言う通り、全く気にしていなかったのだが、切島はだからと言ってそれに甘えるわけにはいかないと思ったのだった。

 

 その後昼休憩が終わった時に、切島は戦慈に駆け寄って頭を下げたのだが、やはり戦慈は「気にすんな」の一言だけで終わらせた。

 切島はそれを超ポジティブに受け取って鉄哲そっくりな笑みを浮かべて「サンキュな!」と言うのだが、戦慈はただ本当に被害がなかったからどうでもよかっただけだった。

 

 それでも切島効果なのか、ほぼ全員に好印象で受け止められて、居心地が悪くなる戦慈なのであった。

 

 

 

 戦慈は午後も引き続き、シャドーを継続していた。

 

 嵐のように衝撃波が乱れ飛んでおり、周囲の森や岩は吹き飛ばされて更地になっていた。

 もはやピクシーボブの壁は無駄でしかなかったので、午後からは断っていた。

 

 その様子を相澤、ブラド、ラグドール、マンダレイは少し離れた高台の上から観察していた。

 

「綺麗な空き地になったねぇ」

「あっはははは!すんごいね!」

「……ふむ。完璧とは言えんが……」

「ああ。抑えられてきてるな」

「あれで?」

「前はもっと吹き荒れていて、地面もクレーターだらけだったので」

「……なるほど。それなら確かに」

「けど、体バッキバキだよ?すぐに治っていくけどね!」

「まぁ、そこは今後の課題ですね」

「オールマイトはアドバイス出来ないの?」

「あの人は感覚派だから、ああいう訓練には役に立ちません」

「ああ……」

 

 戦慈は誰かを想定してシャドーをしているようだが、それでも地面のクレーターはほぼなくヒビ割れ程度で、衝撃波も基本的に攻撃方向にしか飛んでいないように見える。

 しかし、突進すれば周囲に撒き散らすし、攻撃方向の衝撃波に関しては広範囲だ。

 まだまだ制御しているとは言い難いが、確かに最初よりは抑えることが出来ている。

 

 始めて2日でここまで出来れば、正直上出来だと相澤とブラドは考える。

 

「問題は……体を鍛えたときにフルパワー状態の最大規模が増えるのか、それとも例の赤い肌の状態になるのか、だな」

「あれは変化の原因が分からんからな……」

 

 ブラドと相澤の言葉にマンダレイが首を傾げる。

 

「怒りじゃないの?」

「いえ、そういう原因ではなくて、身体的な原因です。アドレナリンが異常なほど出ているのか、それとも別の事が原因なのかということです」

「……なるほどね」

 

 髪と皮膚の色が変わるのが、単純にアドレナリンの量がフルパワー時以上に放出されているだけならば体を鍛えても意味はない。

 しかし、アドレナリンの量だと期末試験での変化の説明が出来ない。となると、他の要因があるはずなのだが、それが全く分からない。

 なので、体を鍛えた場合どう変化するかが予想できないのだ。

 戦慈の場合は、その変化によって今後の特訓にかなり影響が出るだろうとブラド達は考えている。

 

「緑谷といい、オールマイトに似た『個性』は厄介だな」

「シンプル故の障害か。しかし、緑谷と違って拳暴は確実にその力の片鱗をモノにしてきている。もうしばらく様子を見よう」

「ああ……」

 

 ブラドの言葉に相澤は頷いて、他の生徒の所に向かうのであった。

 

 

 

 

 3日目の特訓も終えて、夕飯作りとなった。

 

「そういえば、結局肉ってどうなったんだ?」

「言うなよ。俺らは食えないんだからよ」

 

 回原が首を傾げ、泡瀬が悲壮感全開で項垂れる。

 それに他の者達も頷き、戦慈や女性陣を羨ましそうに見る。もちろんA組陣も。

 

 そこにマンダレイが前に出る。

 

「さて、今日は肉じゃがだよ!けど、その前に、昨日のお肉問題だけど……」

 

 マンダレイの言葉に男子陣は悲壮感があふれ出る。

 それにマンダレイは苦笑しながら、両手を腰に当てる。

 

「A組の八百万さんとB組の拳藤さんで話し合って、豚肉と牛肉を半分ずつ分けることにしたよ」

「へ?」

「おお!その手があったか」

「いや、でも俺ら食えないじゃん」

 

 泡瀬が首を傾げ、切島がポンと手を叩くが、円場がため息を吐きながら項垂れる。

 すると相澤とブラドが前に出て、

 

「それだが、ある者から食べられない男子達にありがたい提案があった」

「はぁ。……牛肉と豚肉でそれぞれ肉じゃがを作ると、鍋が足りなくなるから男子達の肉無し肉じゃがを作れない。ただでさえお前達のせいでプッシーキャッツの皆さんに迷惑をかけてるのに、これ以上手間をかけさせるわけにはいかん」

「え……。ってことは……?」

 

 苦笑しながらブラドが言い、相澤はため息を吐いて続ける。

 それに骨抜が2人が言いたいことに気づいて首を傾げる。

 ブラドは頷いて、

 

「物間と峰田以外は肉を食べて良し!」

『よっしゃあああああ!!!』

 

 お許しを得た者達は歓喜の雄たけびを上げる。

 そして、許されなかった2人は悲鳴を上げる。

 

「いいんですかぁ!?ええ!?いいんですかぁ!?それって差別じゃないんですかぁ!?」

「なんで、オイラだけダメなんだよぉ!?」

 

 物間と峰田はもちろん抗議をしたが、ブラドと相澤の手が2人の頭の上に置かれる。

 

「ほう?皆を煽っておきながら、卑怯な手段で勝ちを狙い、更には補習を抜け出しておいて……昨日の騒動の根源であるのに許されると?面白い。いいだろう。お前も食っていいぞ、物間。ただし…………食べ終わってから寝ずに朝まで補習となるがな」

 

「文句があるなら食べてもいいが…………昨日の覗き未遂については校長とご両親に連絡していいんだな?俺は除名を進言するぞ?」

 

「「ハイ!オニク、イリマセン!!スイマセン!!」」

 

 頭からミシミシと音が響き、ギン!!と目の前で睨みつけられた2人は顔を真っ青にして即座に罰を受け入れる。

 共に目つき最悪の教師のマジ睨みは、流石に怖かったようだ。

 

「それにしても、誰が相澤先生達を説得してくれたんだ?」

「八百万か?」

「いえ、私ではありませんわ」

「ちなみに私達でもないわ」

 

 尾白が首を傾げて、砂藤が八百万に訊ねるが八百万と蛙吹達女性陣は首を横に振る。

 それを聞いていた骨抜達は一佳達に顔を向ける。

 

「拳藤達は?」

「私は言ってないぞ?」

「じゃあ、私らは誰も言わないよね」

「ん」

「言うなら一佳に伝えてる」

「それはそれで悲しいかな!?」

 

 一佳も首を傾げ、切奈達は一佳が知らないなら自分達も知らないと男子陣にとって悲しい現実を叩きつける。

 しかし、一佳達でもないとなると、残ったのは仮面の男ただ1人。

 

 全員(物間と峰田を除く)が戦慈に視線を向ける。

 戦慈は腕を組んで我関せずと無視している。

 すると、苦笑しながらマンダレイが、

 

「コーヒーを飲みながら、そんな話になったってだけだよ」

 

 コーヒーと言うキーワードに全員がやはり戦慈であると理解する。

 そしてマンダレイの言い方からすると、あくまで戦慈は言ってみただけなのだろうということも理解した。

 つまり、受け入れたのはあくまで教師陣、ということだ。

 それも戦慈の照れ隠しなのかどうかは分からないが。

 

「け、拳暴……!」

「お前って奴は……!」

「マジヒーロー!」

「俺じゃねぇって言ってんだろうが」

 

 鉄哲、泡瀬、円場が感動して目を潤ませる。

 それに戦慈は顔を顰めて否定するが、照れ隠しにしか聞こえなかった。

 

「……照れ屋」

「知るかよ」

「あはは!」

「ん」

「はいはい!というわけで、さっそく料理開始だよ!!」

『イエッサー!!』

 

 ピクシーボブの号令に、元気よく返事をして動き出す一同。

 肉が食えるとなったので、男子達は気合を入れている。

 一佳は戦慈に近づいて、

 

「で?結局のところどうなんだ?」

「あん?……コーヒー淹れてた時にマンダレイや先公共が話してんの聞こえてただけだ。まぁ、なんか聞かれた気もするが覚えてねぇ」

「照れ屋だな」

「……素直になれ」

「アホ言ってんじゃねぇよ」

 

 バレバレな言い訳に一佳達は笑う。

 A組からも感謝されて、物間と峰田の分の肉を戦慈に分けることで両クラス同意して、その日は両クラス混じり合って楽しい時間が過ぎて行く。

 

 そして、生徒達はこの後の肝試しの話題で盛り上がる。

 

 

 待ち受けるのは楽しい肝試しではなく、真逆の肝試しであることは、まだ誰も知らない。

 

 

 世界の変革の始まりまで、あと数時間。

 

 

 

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