『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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少し遅くなりました(__)
ちょっと今後は週1ペースになると思います。
 
理由は仕事もあるのですが。
一番は神野区編以降、つまり入寮編、仮免試験編、インターン編の構成が間に合わないかもしれないからです。入寮編からは完全に私のオリジナルの構想になりますので、原作の魅力を破壊しないように考えていきたいと思っています。
入寮編も細かく書きたいですし、仮免試験についても必殺技特訓などの描写も書きたいです。発目との絡みとかもw

そして何より!

仮免試験で考えないといけないオリキャラの数が多すぎて、設定やB組との絡みが混乱しそうなんです!
ライバル校の生徒やギャングオルカの立ち位置のヒーローなど、中々に難しい(-_-;)

という感じですので、ちょっとペースが落ちます。
ごめんなさい(__)



拳の六十二 肝試しと狼煙

 肉じゃがも食べ終えて、後片付けも終えた一同は森にやってきていた。

 

「さっ!いよいよ肝試しの時間だよ!」

 

 ピクシーボブの言葉にB組達は盛り上がったり、メンドそうだったりと様々な反応を見せる。

 骨抜は周囲を見渡して、首を傾げる。

 

「A組は?」

 

 A組の姿が見えない。それに他の者達も頷く。

 ピクシーボブは腰に両手を当てて、説明を続ける。

 

「脅かす側先行はB組だからね。どうやって脅かすかの話し合いしないといけないでしょ。だから、A組は後から来るよ」

「なるほど」

 

 一佳達は納得したように頷く。

 

「じゃあ、説明するよ!A組は2人1組で3分置きに回ってくるからね!君達はルート周辺に隠れて脅かしてもらうよ!」

「直接触るのは禁止だよ。『個性』を使って脅かすのはアリだけどね」

 

 ルートは約15分で1周出来る距離で、ルート中間に名前が書かれているお札があるとのこと。

 B組はその前後でA組を脅かしていくことになる。

 虎がビシッ!と指を指して、

 

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!!」

「「「嫌だよ」」」

 

 一佳、切奈、柳が同時にツッコむ。

 誰が好き好んで同級生の失禁シーンを見なければいけないのか。しかもヒーローを目指している者達の。

 勝ったところで申し訳なさしかないし、明日からどんな顔をして会えばいいのか分からない。

 一佳達が呆れている横で物間がニヤニヤしながら、どう驚かせるか考えていると物間の体を赤い液体が縛り付ける。

 

「え」

「物間、お前はこれから補習だ」

「ええ!?」

「日中の特訓が疎かになっていたからな。このままでは昨日と同じ時間になりそうだから、これを削る。まぁ、学校に残らされるよりマシだろ。さぁ、行くぞ」

「そ、そんなああ!?み、皆ああぁ!!絶対、絶対にA組を失禁させてくれよおおおぉ!!」

 

 叫びながらブラドに担がれて運ばれていく物間を、全員が呆れた目で見送る。

 しかし、すぐに物間の存在を頭の隅に追いやって、話し合いを始める。

 

「誰がどう組む?」

「つってもなぁ、飛び出して驚かせるとかしか思い浮かばねぇぞ?」

「だよな」

 

 悩まし気に腕を組む円場達。

 すると、上から何かが落ちてきたのでふと目を向けると、

 

 そこには生首が転がっていた。

 

「「「「うおおおおお!?」」」」

 

 突然の生首に泡瀬達が悲鳴を上げる。

 すると、生首が突如起き上がって、笑い始める。

 

「あははは!これなら十分驚かせそうだねぇ」

「と、取陰か……。脅かすなよ……」

「くくく!実験実験♪」

 

 切奈はケラケラ笑いながら首を戻す。

 未だに動悸が収まらない泡瀬達は呆れた目を向ける。

 

「破壊力抜群だな……」

「あの髪型とかも怖いよな」

「まぁ、1つは出来たから良しとしよう」

 

 その後も話し合って、チームを作って配置に着くB組一同であった。

 

 

 そして、A組もペアを決めて肝試しが開始となった。

 

 一番最初の仕掛け役には唯、一佳、骨抜の3人。

 

「いくぜ」

「ん」

 

 骨抜がルートの一部を柔らかくして、唯がその中に潜り込む。

 一佳は唯を引っ張り上げる役である。

 

 そして、A組が近づいてきたとき、唯が首だけを地面から出す。

 

「ん」

 

「「KEEEEEEE!!!」」

 

 葉隠と耳郎が悲鳴を上げる。

 

 

 その次に待ち構えるのは鉄哲、茨、泡瀬の3人。

 茨はツルを伸ばして切り離し、それを鋼質化した鉄哲に巻きつける。そして頑丈な枝に登り、泡瀬がツルを鉄哲の体や枝に固定する。

 

 そして、A組が近づいてきたときに、鉄哲が枝から飛び降りて振り子のように襲い掛かる。

 

「悪い子はいねぇーがー!!」

 

「「KEEEEEEE!!!」」

 

「なんでなまはげなんだよ」

「ああ……人を脅かして怖がらせるなんて……。なんと罪深い。後で鞭で打たねば……」

「やめて、死んじゃう」

 

 再び葉隠と耳郎が悲鳴を上げる。

 

 

 3番目は戦慈、里琴、宍田の3人。

 まずは里琴が小さく竜巻を起こして葉っぱを巻き上げてA組に襲い掛からせる。

 

「「っ!?」」

 

 突然の風に足を止めて、腕で顔を庇うことで視界を狭めた所で、

 

ドン!

 

「「!?」」

 

 戦慈がすぐ横の木の幹を殴って大きく震わせて注意を引いたところで、

 

「ガオオオオオオ!!」

 

「「KEEEEEEE!!!」」

 

 宍田が反対側からビースト化して飛び出して咆哮を上げる。

 再び葉隠と耳郎の悲鳴が木霊する。

 

 

 そして、中間地点を越えた所には切奈、回原、凡戸の3人。

 凡戸の接着剤を地面に散布し、そこに踏み入れると足が地面から離れにくくなって驚かせる。

 

「っ!」

「あ?」

 

 そこに回原が茂みを揺らし、音を立てて注意を引くと、今度は前方に何かがボトリと落ちてくる。

 もちろん切奈の頭部である。

 

「「っっ!!」」

 

 轟と爆豪は声こそ上げなかったものの、目を見開いて体を強張らせる。

 そこにトドメとばかりに切奈は2人の肩に片手を落とす。

 

「「っっっ!!!」」

 

 2人の肩が跳ね上がって反射的に振り払う。

 

「くけけけ♪」

 

 最後に首を浮かして不気味に笑いながら、茂みに戻っていく。

 爆豪と轟は切奈だと分かっても、流石にすぐには動けず固まるのだった。

 

 

 その次にいたのは鎌切、吹出、鱗の3人。

 鎌切が枝の上に登り、吹出はサポート。

 鱗は近づいてきたときに両腕にウロコを生やしてギャリギャリと擦り合わせて音を出す。

 それに足を止めた瞬間、両腕に刃を生やした鎌切が背後に飛び降りて叫ぶ。

 

「キヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「っ!このくっそがぁ……!」

 

 爆豪が一瞬肩を跳ね上げて愚痴る。

 

 

 その次は円場。

 1人悲しい円場である。

 

「……サビシー」

 

 円場の役割は単純。

 

「ふっ!ふっ!」

 

 近づいてきたA組の前に薄い空気の壁を作り、ぶつからせるだけである。

 

「っ!」

「ってぇ!」

 

 顔に衝撃を受けてたたらを踏む爆豪と轟の姿を見て、1人でほくそ笑む悲しい円場だった。

 

 

 最後はポニー、柳、庄田の3人だったのだが、彼らが人を驚かせることは出来なかった。

 

「なんか……焦げ臭い?」

「……ホントだね」

「……山火事?」

「見てきマァス!!」

 

 急に漂ってきた焦げ臭さにポニーが角に飛び乗って空へと飛ぶ。

 

「っ!!山火事デェス!!拳藤さん達がいる方角!」

「「!!」」

「それと……変なガスみたいなのも見えマァス!」

「ガス……?」

「地下から何か噴き出したのか?とりあえず、皆の所に――」

 

 柳がガスと言う言葉に訝しみ、庄田はクラスメイトの救援に向かおうとした時、

 

『皆!!!』

 

「「「!!」」」

 

 突如、頭の中に声が響く。

 マンダレイの《テレパス》だ。

 

『ヴィラン2名襲来!!他にも複数いる可能性あり!!動ける者は直ちに施設へ!会敵しても決して交戦せずに撤退を!!』

 

 ヴィラン襲来と言う言葉に庄田達は目を見開いて固まる。

 

「ど、どうしまショウ……!?」

「マンダレイが数を言ったということは、ゴール地点もすでに戦場の可能性がある。恐らく山火事とガスもヴィランの『個性』だと考える」

「迂回して施設に向かう?」

「……手薄なのが逆にヴィランがいる危険性もある。もうしばらくここで待機していよう。誰か来るかもしれない」

 

 庄田の提案に柳とポニーも頷いて、茂みの中に身を顰める。

 しかし何分待っても、激しい戦闘音が増えるばかりで、誰も現れることはなかった。

 

 

 

 マンダレイ達の前にヴィランが現れる少し前。

 戦慈と宍田は妙な匂いを感じた。

 

「おい、宍田。なんか匂わねぇか?」

「ええ、焦げ臭い匂いと妙にガスのようなも……の……が……」

「宍田!?っ!毒か!!」

 

 スンスンと鼻を鳴らして答えていた宍田が突如ゆっくりと倒れて行き、体が元に戻る。

 戦慈は有毒ガスであることを悟り、口元を押さえ極力呼吸を我慢する。

 そして、里琴に吹き飛ばさせようと思い、里琴がいる場所に顔を向ける。

 

 しかし、そこに里琴の姿はなかった。

 

(っ!?どこ行きやがった!?)

 

 戦慈は里琴がいたはずの場所に駆け寄るも里琴の姿はどこにもなかった。上を見上げても飛んでいる気配はなく、忽然と姿を消した。

 

(どういうことだ……?)

 

「悪いねぇ、拳暴君」

「!!」

 

 声がした方向に顔を向けると、枝の上に羽根つきハットに仮面を被った男が悠々と立っていた。仮面のヴィラン、コンプレスは左手でコロコロとビー玉のようなものを転がしている。

 

「彼女さんは預からせてもらうぞ。竜巻で吹き飛ばされたら困るからな」

「っ!てめぇ!!」

「おっと、戦う気はないぜ。それに、後ろのお友達はいいのかな?彼もガスで死んじゃうぜ?」

「っ……!」

「あばよ!」

「待っ――!!」

 

 宍田に意識が向いた瞬間、コンプレスは飛び出して森の中へと消えていった。

 戦慈は追いかけようとしたが、ガスが充満していき口を押さえて宍田の元に戻る。

 

(くそっ!!)

 

「拳暴!!」

「!」

 

 とりあえず宍田を抱えて、ガスの範囲から離れようとすると、ガスマスクを被った泡瀬と八百万が現れた。

 

「これを!」

 

 八百万が腕からガスマスクを作り出し、戦慈は仮面を外してガスマスクを装着して息を整える。

 

「すまねぇ」

「いえ、この事態ですから!

「宍田!しっかりしろ!」

「他にB組の方は?」

「里琴がヴィランに攫われた」

「「な!?」」

 

 戦慈の言葉に泡瀬と八百万が目を見開いた直後、マンダレイの《テレパス》が頭に響く。

 そして他にもヴィラン襲撃を知った戦慈は舌打ちをして、宍田を木の陰に移動させる。

 

「拳暴?」

「お前らは他の奴らにマスクを配れ。俺は里琴を攫った奴とこのガスの使い手を探す」

「危険ですわ!」

「このガスがあり続ける方が危険だろうが。ガスマスクには時間制限がある。全員を運んで逃げるには、このガスが邪魔だ」

「でも、どれだけのてヴィランがいるのか分からねぇんだぞ!?」

「それは他の連中を運んでても変わらねぇ。俺が暴れて注意を引く。その間に無事な奴らを集めて逃げろ」

 

「見つけましたわぁ!!クソガキィ!!」

 

「「「!!」」」

 

 押し問答をしていると、上空から声が響く。

 上を見上げるとエルジェベートが猛スピードで飛び迫っており、戦慈は舌打ちして八百万を突き飛ばして茂みに押し込み、道へと出る。

 エルジェベートは八百万達のことなど気づいていないように戦慈へと迫り、右腕と胸倉に掴みかかる。

 戦慈は素の状態なので、その力に耐えきれずに空へと持ち上げられる。

 

「くっ!」

「今度こそ殺してやりますわ!今回はあの小娘やヒーローの救けは期待できませんわよぉ!!」

「うるっせぇ!!」

 

 戦慈は左腕を振るい、エルジェベートの脇腹に拳を叩き込む。

 しかし、エルジェベートは全く怯まずに戦慈を振り回して、放り投げる。

 

「ぐぅ!」

 

 戦慈は下を確認して、着地に備える。しかし、エルジェベートが横から突進してきて、更に吹き飛ばされる。

 そして、戦慈は特訓場まで吹き飛ばされてしまい、背中から地面に転がり落ちる。

 

「がっ!くっそがっ!!」

 

 戦慈は跳ねるように立ち上がって、地面を滑って勢いを殺す。

 既に戦慈の体は2段階ほど膨れ上がっており、着ていたパーカーが弾け飛び、タンクトップ姿で体から白い煙を上げる。 

 ガスマスクを脱ぎ捨てた戦慈は構え、上空に腕を組んで浮かんでいるエルジェベートを見据える。

 

「敵連合……。どうやってここを突き止めやがった……!」

「そんなこと知ったところでどうしますの?どうせ、ここで死ぬのだから!!」

 

 エルジェベートが不敵に笑いながら、戦慈に飛び掛かる。

 戦慈は後ろに下がりながら右フックを繰り出すも、エルジェベートは左腕で受け止める。戦慈の顔に貫手が放たれ、戦慈は首を傾けて躱すが頬に掠って血が流れる。

 

「ちっ!」

「今のわたくしは広島の時より力は上ですわ!今のお前が敵うわけないでしょう!」

「つあ!!」

 

 戦慈は右脚を振り上げて、エルジェベートは軽やかに躱す。

 

「てめぇ……何が目的だ?里琴をどこにやった!?」

「……決まってるでしょう?お前達を苦しめるためですわ!あの小娘は……どうせもうすぐ死ぬでしょう。わたくしが殺したかったですが、仕方ありませんわね」

「……てめぇら……!」

 

 戦慈は怒りで拳を握り締め、額に青筋を浮かべる。怒りで更に体が膨れ上がる。

 その時、背後から風を切る音が聞こえて、全力で横に跳ぶ。

 直後、戦慈がいた場所に4,5本の剣が突き刺さる。

 

「剣……!っ!」

 

 ゾクリと背筋に悪寒が走り、足元から何かがせり上がってくるのを感じて慌てて跳び上がる。

 地面から巨大な刃が3,4本生えてきて、戦慈の足を浅く斬りつける。すぐに治癒するが、戦慈は歯軋りして剣が飛んで来た方向を見る。

 

「中々の反応を見せる」

 

 森から現れたのは全身西洋鎧を身に着けている女性と思われるヴィラン、アイアン・メイデンだった。

 メイデンはフワリと浮かび上がり、ゆっくりと戦慈の目の前に下り立つ。

 

(柳と同じ『個性』か?いや、だったら今の地面から剣が生えてきたのはおかしい……。なんの『個性』だ?)

 

 戦慈は必死にメイデンの『個性』を推測するが、エルジェベートが横から迫って来て中断せざるを得なくなる。

 

「くっ!ヅゥアアアアア!!」

 

 戦慈は吠えながら右腕を振り抜いて、衝撃波を放つ。

 エルジェベートは避け切れずに両腕で防ぎながら後ろに吹き飛ぶ。戦慈は横目でメイデンを見て、目に入った光景に目を見開く。

 剣や地面から生えた刃が浮き上がってグニャリと形を変えながら分裂し、数十本のナイフが出現する。

 メイデンが右手を戦慈に向け、ナイフが一斉に戦慈に襲い掛かる。

 

 戦慈は左腕を横に振り抜き、衝撃波を放ってナイフを吹き飛ばすが、メイデンが右手を振ると再び戦慈に襲い掛かる。

 舌打ちをした戦慈は躱せるものは躱して、当たりそうなものは殴り落として防いでいくも、すぐに視界一杯にナイフが迫ってくるのが見えた。

 

 

オオオオオオオ!!!

 

 

 戦慈は咆哮を上げて全身から衝撃波を放ち、体が最大まで膨れ上がりタンクトップも弾け飛ぶ。

 ナイフが全て吹き飛ばされ、メイデンは襲い掛かる衝撃波に庇う素振りも見せず、よろめくことなく立っている。

 エルジェベートも飛んで離れて、戦慈の隙を伺う。

 再びナイフの切っ先を戦慈に向く。

 その時、戦慈がメイデン目掛けて右腕を振り、衝撃波を放つ。

 

「ぬ」

 

 メイデンは左手を上げて、地面から金属の壁を生み出して衝撃波を防ぐ。すると、ナイフは力を失ったように地面に落ちて、衝撃波に吹き飛ばされる。

 

(金属を操る『個性』か!I・アイランドの奴が装置を使った時よりは弱ぇが、土の中の金属も操れるのは厄介だな。けど、同時に操れる金属の量には限界もある……!)

 

 戦慈はエルジェベートと組んで現れた理由を見抜いて、冷静に相手を観察する。

 

「……ふん」

 

 メイデンはゆっくりと浮かび上がり、両手を肩の高さまで上げる。

 地面に散らばっていたナイフが再び浮かび上がり、壁だった金属もまた形を変えて5本の剣となる。

 

「我が名はアイアン・メイデン。オール・フォー・ワンの剣なり。小僧、貴様に恨みはないが、情もない。故に、疾く散れ」

 

 メイデンが両手を振り下ろすと、無数のナイフと剣が戦慈に降り注ぐ。

 戦慈はギリィ!と歯を食いしばり、全力で肩を回転させてラッシュを繰り出して衝撃波の乱弾を放つ。

 

「オォララララララララララララララァ!!!」

 

 ナイフと剣が砕けながら吹き飛び、メイデンは飛翔して衝撃波の範囲から脱出する。

 そこに戦慈の背後からエルジェベートが高速で攻めかかる。

 戦慈は右腕を引いた勢いを利用して、後ろを向きながら右回し蹴りを放つ。エルジェベートは直前で真上に上がり躱すも、戦慈が左脚だけで跳び上がって左後ろ回し蹴りを繰り出す。

 

「なっ!ごぉっ!?」

 

 左脚はエルジェベートの腹部に叩き込まれ、くの字に吹き飛ばす。さらに、その反動を利用して左脚を前に振り抜き、メイデンに衝撃波を放つ。

 メイデンは舌打ちをして地面に下りて躱し、右手を振り上げる。

 戦慈は体を丸め、すぐに両腕を開いて背中から衝撃波を放ち、弾かれたように前方に飛ぶ。

 直後、地面から刃が生えるが空振りに終わる。

 

「それで避けたつもりか」

 

 地面が続く限り、戦慈の下には刃が隠れている。

 そう暗に伝えると、戦慈は右ストレートを地面に叩き込んで、地面を吹き飛ばしてクレーターを作り出す。

 

「なに?」

「ヅゥラアアアアァ!!」

 

 今度は両脚を踏み抜いて、砲弾のようにスピードを上げてメイデンに迫る。

 そして左拳を構えるが、メイデンの胸甲から数枚の刃が生えてきた。

 

「っ!?」

「我の鎧も金属であることを見て分からんか、戯けめ」

 

 メイデンの右手甲から刃が生え、戦慈の顔目掛けて突き出す。

 戦慈は左腕を更に後ろに引いて半身になって刃を紙一重で躱し、右手を弾くように開いて衝撃波を放ってメイデンを僅かに後ろに下がらせて、戦慈も後ろに下がって距離を取る。

 その真上からエルジェベートが飛び掛かってきて、戦慈の顔面を殴る。

 戦慈は仰向けに吹き飛び、メイデンが左手を振ろうとすると、戦慈はバク転して体勢を整えて地面を踏み抜いて地面にクレーターを作りながら跳び上がる。

 エルジェベートが上昇して追撃を仕掛ける。

 戦慈は右腕を振り抜いて、衝撃波を放つ。エルジェベートは素早く方向転換して躱し、再び攻めかかろうとした時、戦慈が衝撃波を利用して飛び、先ほどまでいた森に向かい始めた。

 

「っ!しまった!?」

「ちっ。思ったより冷静な奴だったか」

「追いかけますわよ!」

「我に指図をするな」

「そんなこと言ってる場合ですの!?」

 

 エルジェベートは顔を顰めて上空に舞い上がり、メイデンも浮かび上がって戦慈が飛び込んだ森に入る。

 メイデンは両手でそれぞれ木に触れる。すると、触れた所から光沢がある金属に変わっていく。

 枝や葉など全てが金属に変わると、グニャリと形を変えて巨大な丸鋸に変形する。

 ゆっくりと回転し始めて、フィイイイィンと風を切るような音がするほど回転数を上げると、それを森に向かって飛ばして森を切り倒しながら戦慈を狙う。

 

 後ろの木々が倒れていくのに気づいた戦慈は足を止める。

 背後から巨大な丸鋸が飛んできているのを見て、舌打ちをして丸鋸を上から殴って止める。

 

「くそっ!」

 

(あんなもん使われ続けたら倒れてる連中に当たっちまう……!)

 

 意識を失ったのが宍田だけとは思えない。

 もし無意識に茂みの中に倒れて、戦慈でも気づけなかった場合、最悪の可能性が起こりうる。

 戦慈は先にメイデンを倒さなければならないと覚悟を決めて、丸鋸が飛んで来た方向に戻るのだった。

 

 

 

 

 その頃、一佳と唯は鉄哲と合流していた。

 鉄哲からガスマスクを分けてもらって身に着ける。骨抜はガスで完全に意識を失い、鉄哲もまた意識を失った茨を抱えていた。

 そして、早く施設に戻ろうと言うと、

 

「俺は戦うぞ。拳藤は塩崎や骨抜達を頼む」

「は!?交戦は駄目だって……!」

「このガスだけでも止めねぇと、更に被害は広がっちまう!それに、拳暴だってきっとヴィラン達を倒そうと動いてるはずだ!」

 

 鉄哲のその言葉を一佳は否定できなかった。

 そして、その言葉である事実に気づく。

 

「……里琴はどうしたんだ?」

「は?」

「里琴なら竜巻でこんなガスなんて吹き飛ばせるはずだ!なのに、全く風が吹いてる気配がない!」

「あ!?」

「ん!?」

 

 一佳の指摘に鉄哲と唯も目を見開く。

 あの里琴がこの状況で動かないはずがない。戦慈が里琴に指示を出さないはずがない。

 なのに、未だに竜巻が出現した様子はない。

 

「まさか……巻空もガスにやられちまったのか!?ってことは拳暴も!?」

「くっ!?」

 

(けど、里琴達は竜巻を使う予定だったはず。私達よりガスにやられる可能性はずっと低いのに……。それでも何もしないってことは……!)

 

「里琴がヴィランに襲われてやられたのかもしれない!このままじゃ拳暴や宍田も危ない!」

「くそっ!俺は行くぜ、拳藤!」

「待て、鉄哲!」

「っ!なんでだよ!?仲間が危ないんだぜ!?」

「違う!!……私も行く」

 

 一佳も立ち上がって鉄哲に歩み寄る。

 まさかの一佳の参戦に鉄哲や唯は目を見開く。

 

「お前だけじゃ心配だ。ガスマスクは濃くなればなるほど使える時間が減る。里琴が負けたかもしれない奴に1人で立ち向かうなんて無茶だ」

「拳藤……」

「時間は限られてる。だから、2人で一気にガスの発生源まで行って、ヴィランをぶん殴る!!」

「……おうよ!!」

「唯、悪いけど茂みに隠れて待っててくれ。絶対戻ってくる」

「ん!」

 

 唯に茨と骨抜を任せて、鉄哲と一佳は走り出す。

 目指すはガスの発生源。

 すると遠くから轟音が聞こえてきた。

 

「今のは拳暴か!?」

「その可能性はある。けど、拳暴達がいたはずの位置からかなり遠い。……ってことは、この襲撃はやっぱり周到に計画されたもの……!拳暴や里琴の『個性』に対策されてる可能性が高い!」

「ガスを撒き散らすために巻空を無力化して、拳暴をここから引き離したってことか!?」

「そうだ。この作戦なら絶対にあの2人をどうにかしないと成立しない。厄介なヴィランかもしれない。……脳無みたいな」

「っ!!くっそぉ!!早く行かねぇと!!」

「ああ!」

 

 2人はスピードを上げて、ガスの中を突っ切っていく。

 

「教えてやるぜ……!ヒーロー科B組は拳暴と巻空だけじゃないってなぁ!!」

「そうだな……。この時のために、ずっと頑張ってきたんだ」

「そうだ!ここで立たねば、いつ立てる!!いつまでも拳暴達ばっか傷つけさせるか!」

 

 誰よりも戦慈と里琴を追いかけてきた一佳と鉄哲。

 

 雄英襲撃から3か月。

 

 2人はようやく、戦慈達と同じ戦場に立った。

 

 

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