『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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拳の六十三 夜の森の激闘

 戦慈は必死に動き回っていた。

 周囲には丸鋸やナイフ、剣が飛び交い、油断すれば地面からも刃が生えてくる。

 更に厄介なのが、メイデンが触れる木々が金属に変わっていき、武器が尽きないことだった。

 

「てめぇ!脳無の同類か!?」

「戯け。我があのようなでくの坊と同類なわけなかろう」

 

 メイデンが右手を振るい、ナイフの群れが襲い掛かってくる。

 戦慈が左腕を振って衝撃波でナイフを吹き飛ばすも、そこにエルジェベートが上空から高速で滑空してきて戦慈に蹴りを繰り出す。

 右腕で何とか防ぐも戦慈は後ろに大きく滑り下がる。

 

「くっ!」

「いくらお前でも、串刺しにされればくたばるでしょう!さっさと死になさいな!」

「ざっけんなぁ!!」

 

 戦慈がエルジェベートに殴りかかろうとするも、足元から刃が生えてきて慌てて下がる。

 

「くっそ……!(身動きがとれねぇ!どっちも無視出来る攻撃じゃねぇぞ、くそ!)」

 

 無数の鋭利な刃物を操るメイデンと、空を飛びながら恐ろしいパワーで攻めてくるエルジェベートのコンビに戦慈は手を焼いていた。

 どっちも下手に逃がすと、他の者達の命が奪われかねない。

 しかし、倒すにしても、どうにも力が足りない。

 

「オラァ!」

 

 右腕を振り、メイデンに向かって衝撃波を飛ばす。

 金属の壁で簡単に防がれてしまう。

 

「くっ!(無理をすれば死にかねねぇ……!今はこいつらをここにくぎ付けにするしかねぇか。相澤が動いてくれてりゃあいいが……)」

 

 その時、

 

『A組B組総員、戦闘を許可する!!』

 

 マンダレイの《テレパス》が再び頭の中に響く。

 許可は出たものの正直今更感しかないので、気にせず戦闘を続ける。

 しかし、その後に続いた内容には流石に耳を疑った。

 

『ヴィランの狙いの1つ判明!生徒の「かっちゃん」!!「かっちゃん」はなるべく戦闘を避けて!単独では動かないこと!!』

 

 かっちゃんと言う名称に聞き覚えがあり、思い出すのは緑谷だった。そこから連想出来たのは、爆豪の顔だった。

 

「……テメェら……。何で爆豪を狙ってんだ?」

「む……何故そのことを……?」

「確かヒーローの1人がテレパシー系の『個性』を持っていましたわね。それで知ったということは、どうやらこっちの者がバラした上にやられたみたいですわね。全く役立たずな……」

「さっさと答えやがれ」

「知らん」

「知りませんわ。死柄木が何を考えているのかなど」

 

 2人の答えに戦慈は訝しむ。

 

「……テメェら、死柄木の仲間じゃないのか?」

「我は違う。オール・フォー・ワンより手伝えと言われただけだ」

「わたくしもですわ。あのような子供の手下など冗談ではありませんわ」

 

 即座に否定する2人に戦慈は必死に頭の中で情報を整理する。

 

(……確かにあの蝙蝠女は一度として死柄木といたのを見たことはねぇ。ってことは、オール・フォー・ワンって奴……そいつが脳無を作って敵連合に流してた死柄木の背後にいる黒幕か?だったら、鎧女や蝙蝠女がここにいる理由も説明はつく)

 

 そうなると、この2人の異常性はオール・フォー・ワンによるものである可能性が高い。

 脳無という『個性』複数持ちの化け物を作り出せるなら、意思をしっかりと持ったまま複数の『個性』を手にすることも出来てもおかしくはない。

 同じような輩が他にもいる可能性が出てきたことに、歯を食いしばる。

 しかも、この2人からはこれ以上大した情報は得られそうもない。

 

 その時、再びメイデン達は猛攻を再開した。

 戦慈は舌打ちをして、反撃を始めるがやはり倒すのは時間がかかりそうだった。

 

 

 

 

 鉄哲と一佳は戦闘許可が出たことで更に気合を入れてガスの中を進む。

 

「よっしゃあ!ぶん殴り許可が出た!」

「かっちゃんって誰だろうな?」

「B組じゃねぇだろ。そんな呼ばれ方してる奴なんて知らねぇぞ」

「だよな」

 

 一佳達はかっちゃんと言う名前に心当たりはなかった。

 なので、A組の誰かということはすぐに考え付いたのだが、誰かは分からない。

 

「けど、なんで生徒なんだ?しかも特定の……。身代金を狙うならヒーロー科を狙う必要はないし、特定の人間を狙う理由はない」

 

 一佳は走りながらヴィランの狙いを考える。

 しかし、情報が少なくて確信できるほどの答えに辿り着かない。

 

「拳藤、今はこのガス使いだ!情報ならそいつをブッ飛ばして聞き出せばいい!!」

「……そうだな!」

「ところで、俺らはどこに向かってんだ!?」

「気づいてなかったのか!?」

 

 一佳は先頭を走っていた鉄哲にツッコむ。

 そして、ため息を吐いて、足を止める。

 

「いいか?マンダレイの《テレパス》にこのガスの話は出てなかったし、ガスにやられている気配もない。つまり、マンダレイ達のいる広場から、このガスは見えてないんだ」

「それがなんだよ?」

「おかしいだろ?風だって吹いてるのに、広場までガスが広がる気配がないんだ。けど、常に一定方向には流れてて、進むほどにガスが濃くなってる」

「つまり……なんだ!?」

「発生源を中心に渦を巻いてると思う。台風みたいにさ。つまり、この中心にいる奴がガスの発生源で、操ってる奴ってことだ」

 

 一佳の完璧な推理に、鉄哲は目を見開いて感心する。

 

「おお!スゲェな、拳藤!!」

「……どうも。けど、問題もある。ガスマスクのフィルターってのは、ガスの濃度が濃くなればなるほど限界が早まるんだよ。だから――」

「濃い方に全力で走って、全力でぶん殴ってさっさと倒せばいいんだな!!」

「んん……まぁ……そだけど……」

 

 短絡的に結論を出して駆け出す鉄哲に、呆れながらも一佳はそれに続く。

 

(なんちう単細胞ぶり……)

 

「塩崎や骨抜達、皆がこのガスで苦しい目に遭ってる!嫌なんだよ、腹立つんだよ!こういうの!!拳暴だって必死に戦ってる!!俺らも頑張るぞ!拳藤!!」

「……うん!」

 

 一佳は笑みを浮かべて頷く。

 そして、2人はスピードを上げる。

 

 倒すべき敵を目指して。

 

 

 

 

 ガスの中心にいるのはマスタードだった。

 

(……まっすぐにこっちに来る奴がいる……。やっぱ気づく奴も切り抜ける奴もいるんだねぇ)

 

 近づいて行く存在を感知して、懐に手を入れる。

 

「まぁ、どれだけ優秀な『個性』があっても……」

 

 取り出したのはリボルバー式の拳銃。

 それをゆっくりと右に向ける。

 直後、

 

「いいぃたああああぁ!!!」

 

 鉄哲が拳を構えてガスから飛び出してきた。

 

「人間なんだよね」

 

 そう言いながら引き金を引く。

 

バァン!! 

ガァン!!

 

 銃弾が発射され、鉄哲の頭が跳ね上がって仰け反り、ガスマスクが砕ける。

 弾かれるような音が響いたのを聞いて、マスタードは鉄哲の『個性』に気づく。

 

「ああ、いたね。硬くなる奴。銃は効果ないか……。まぁ、いいか。後は息が続くかどうかの問題だしね」

 

 ガスマスクが壊された鉄哲は息を止めて、口元を手で押さえる。

 

(拳銃とかマジかよ……!?それにしてもコイツ。学ラン!?中学かタメくらいじゃねぇか!?いや、今はそんなことどうでもいい!!)

 

 鉄哲は拳を構えてマスタードに殴りかかる。 

 しかし、マスタードは冷静に発砲して、鉄哲の脇腹に当てる。

 全身鋼質化していたので貫通はしなかったが、衝撃に動きが止まってしまう。

 

「硬化出来るって言ったってさぁ……。突進はないでしょ。名門校でしょ?高学歴でしょ?考えてくんない?じゃないとさぁ……」

 

 マスタードは鉄哲を嘲笑いながら拳銃をあらぬ方向へ向ける。

 その方向の意味を気づいた鉄哲は痛みを無視して駆け出す。

 

「殺りがいがない」

 

 銃口が向けられた先には拳を構えていた一佳がいた。

 発砲された直後、鉄哲が一佳の前に飛び出して銃弾から庇う。

 

「鉄哲!?」

「駄目だ……退いてろ!」

 

 銃弾を弾けない一佳では一方的に殺される。

 なので、鉄哲は一佳を後ろに下がらせようとした。

 

「アッハハハ!2対1で1人は身を隠して不意打ち?浅っ!あっさいよ、底が!このガスはさぁ、僕が出して、操ってる!君達の動きなんて揺らぎで感じるんだよ!」

 

 マスタードは高笑いをしながら、自慢げに語る。

 

「なぁんでそういうこと考えらんないかなぁ。雄英生でしょ?夢見させてよ。前は女の子を助けるためにかっこよく止めてたじゃないか」

「前……?」

「つまらないなぁ。あの拳暴って奴は他に取られたみたいだしさぁ」

 

 マスタードは後ろに下がってガスの中に姿を消す。

 一佳は戦慈の名前が出たことと『前』という言葉に、マスタードの正体をなんとなく思い至る。

 

(もしかして、浅草で茨達を襲おうとした奴か?確か中高生くらいで雄英生であることに嫌味を言ってきたって、茨が……)

 

 すると鉄哲が走り出してマスタードが消えた場所を目指す。

 

「んむぅ!!」

「鉄哲!ちょっ!」

 

 鉄哲を制止しようとしたが、その前に鉄哲の横から拳銃が現れて、側頭部に発砲を受ける。

 

「バァカ」

「ぐっ!?」

「さっきより柔らかくなってない?血も出てるし、金属疲労って奴?息も続かなくなってきた?踏ん張り効いてないね?」

 

 マスタードは鉄哲の頭部から流れる血を見て、鉄哲の《スティール》の性質を推測する。

 銃弾をリロードして、連続で発砲する。

 

「硬化やら筋力強化やらの単純な連中って、得てして体力勝負なところがあるもんねぇ。ねぇ……君らは将来ヒーローになるんだろ?僕、おかしいと思うんだよねぇ。君達みたいな単細胞な奴らがさぁ!学歴だけで!チヤホヤされる世の中って!!」

 

 鉄哲は体を丸めて必死に耐える。

 そして、マスタードは鉄哲に近づいて足を振り被る。

 

「正しくないよねぇ!!」

 

 不満をぶちまけながら鉄哲の脇腹を蹴ろうとした瞬間、鉄哲がマスタードの脚を掴んで止める。

 

「!?」

「んんぬうううううう!!」

「こっ!!」

 

 鉄哲は目を大きく見開いて起き上がり、無我夢中で左ストレートを繰り出した。

 マスタードは発砲して止めようとしたが、鉄哲は僅かに仰け反っただけで鉄の拳はマスタードの腹に叩き込まれる。

 

「ぐぅ!?」

 

(拳銃如きにビビるな、俺!!俺は鋼鉄!!拳暴の拳に比べれば、爆豪の爆破に比べれば、全然痛くねぇ!!)

 

 鉄哲は気合を入れ直す。

 しかし、今ので息が限界を迎え、視界が揺らぐ。

 

「ぐぅ……!」

「つぅ……!この……単細胞バカがぁ!!」

 

 マスタードが叫びながら銃口を鉄哲に向ける。

 その時、背後から一佳が飛び出て、腕を伸ばす。

 

「このっ!」

「ふん!だから、その挙動も全て筒抜けだって」

 

 ギリギリのところでガスの揺らぎを感じ取ったマスタードが冷静なふりをして、一佳の攻撃を躱す。

 しかし、一佳が《大拳》を発動して、巨大化した右手がマスタードの顔を叩く。

 

「っだ!?」

「動きだけ分かっても意味ねぇんだよ……!」

 

 マスタードは仰け反った勢いを利用して後ろに下がってガスに紛れようとする。

 

「ふん……!そんなしょぼい『個性』でドヤ顔されてもなぁ!!強がったところで、今度は拳暴は救けに来ないよ!?」

 

 一佳はガスに紛れたマスタードを見届けると、左手も巨大化して近くにある樹を掴む。

 

「しょぼいかどうかは……使い方次第だぁ!!!」

 

 一佳は一気に樹を引っこ抜いて、棍棒のように振り回す。

 葉の付いた樹が風を起こし、ガスを乱す。

 マスタードは銃を構えていたが、樹の攻撃範囲から慌てて離れる。

 

「ガ、ガスが乱れる……!?なんてパワーしてんだ、あの手……!」

 

 樹をバットのように振り回す一佳に慄くマスタード。

 

「馬鹿はお前だ、学ラン。拳銃なんか持ってよ。それじゃあケンカに自信がないって言ってるようなもんだ」

「このっ……!」

「何より……雄英の単細胞を舐めるなよ!」

 

 その時。

 

 

ドオオオォォン!!

 

 

 轟音が響き、暴風が森に吹き荒れてガスを更に吹き散らされる。

 

「なっ!?」

「あいつはな、拳暴は離れていても仲間のためなら絶対に手を尽くしてくれる凄い奴なんだよ」

 

 一佳はこれが戦慈の仕業だと直感で分かり、樹を投げ捨てて両手を戻してマスタードに迫る。

 

「それと鉄哲はな……」

 

 マスタードは暴風を堪えながら、一佳に拳銃を向けようとして、視界の端に動く鉄色の存在に気づいた。

 

「っ!?しまっ!?」

「普通なら『もう駄目だ』って思うようなとこを、更に一歩越えてくるんだよっ!!」

「んぬぅおオオオ!!」

 

 鉄哲は右手を握り締めて振り被り、一佳も左手を握り締めて振り被る。

 マスタードはどちらに対応すればいいか判断できずに、ただただ迫る拳を見つめることしか出来なかった。

 

「「オォラアァ!!」」

 

 2人揃って、叫びながらマスタードの顔面に拳を叩き込む。

 マスタードのガスマスクを粉々に砕き、頭から地面に勢いよく叩きつける。

 

「っっっ!!?」

 

 マスタードは頭が潰れたのではないかと思うような衝撃を感じて、耐えきれずに意識を失う。

 大の字で倒れたマスタードを見下ろした鉄哲は大きく息を吐き出す。

 

「ブッハァ!……ガス使いが……はぁ!……ガスマスクしてりゃあ……そりゃ壊すわな……」

 

 そして、鉄哲も横に転がって大の字になる。

 周囲からガスが霧散していくのを一佳が確認して、ホッと息を吐く。

 

「俺達の合宿潰した罪……ふはああぁ……償ってもらうぜ、ガキんちょ」

「鉄哲、大丈夫か?」

「当たり前だろ……。まぁ、流石にちょっと苦しいけどな」

 

 頭や腕から血を流しており、ずっと息を止めていたので意識も朦朧としている。

 

「とりあえず、これでガスは消えたな。これでまだ無事な皆も動きやすくなるだろ」

「ああ……!後は……拳暴の手助けを……ぐぅ!」

「もう無理だよ、鉄哲!」

 

 鉄哲は起き上がろうとするが、力が入らずにうつ伏せに倒れる。

 一佳は慌てて制止する。

 すでに鋼質化も限界を迎えており、怪我もしている。

 そして、何より。

 

「このヴィランを捕まえないと駄目だし、その怪我で拳暴の所に行っても邪魔になるかもしれないし、最悪人質にされるかもしれない。ただでさえヴィランの狙いは生徒の可能性があるんだ」

「ぐ……」

 

 鉄哲は一佳の言葉に顔を顰めて唸る。

 マスタードが目を覚ませば再びガスを振り撒く可能性がある。なので、迅速に拘束する必要があると一佳は考えている。

 そうなると、鉄哲を1人で行かせることになってしまうが、今の状態ではとてもではないが行かせられない。

 なので、一佳と鉄哲はここで前線から下がるしかない。

 

「くそっ……!」

「一番厄介なガスを消したんだ。他の皆だって、そう簡単にはやられる連中じゃないさ」

「……それは分かってるけどよ。やっぱ……情けねぇのは変わらねぇぜ。こんなガキんちょ1人で限界なんてよぉ……!」

 

 鉄哲はそれでも悔しさが込み上げる。

 一佳が片手を大きくしてマスタードを掴み上げる。

 鉄哲は自分で起き上がることが出来ず、一佳がもう片方の手で服を掴んで引っ張ることにした。

 一佳は背中で戦慈の衝撃波であろう轟音を聞き、鉄哲同様悔しさに耐えながら教師陣がいる場所を目指すのであった。

 

 

 

 戦慈はガスが消えていくのを空中で眺めていた。 

 ガスが充満する方向から銃声が聞こえたことで、メイデンとエルジェベートを横目に衝撃波をガスだまりに向かって飛ばしたのだ。

 

「こいつ!この状況で他のガキの心配ですの!」

 

 エルジェベートとメイデンが飛び迫って来て、戦慈はラッシュを放ち衝撃波を連射する。

 

「ヅゥララララララ!!」

「ちぃ!」

 

 エルジェベート達は舌打ちしながら回避する。

 エルジェベート達も戦慈の衝撃波に手を焼いていた。

 

「こ奴は衝撃波を使い過ぎれば、体が限界を迎えるのではなかったのか?」

「そのはずですが……」

 

 戦慈は地面に下りて、息を整える。先ほどからずっと体から白い煙を上げている。

 自己治癒が間に合う範囲で衝撃波を放っていたが、流石に体の負担は大きくなってきていた。

 

(それでも前よりは戦える時間が長くなってやがる。なんだかんだであの特訓は効果があったってことか)

 

 しかし、やはり決め手に欠けているのは問題であった。

 このままではずっとあの2人の相手をしなければならない。そろそろ面倒になってきていた。

 里琴の事もそうだが、先ほどの銃声も気になる。

 

「……一か八か、仕掛けるか」

 

 戦慈はメイデンに目を向けて、拳を構える。

 そして、地面を吹き飛ばしながら全力で飛び出し、メイデンに突進する。

 

「ふん」

 

 メイデンは右手を上げて、足元から戦慈に向かって刃を波のように出現させる。

 すると、戦慈の体が僅かに膨れ上がり、体が赤くなる。

 

 

ヅゥルアアアアアアアアアア!!!

 

 

 叫びながら右手を握り締め、力を振り絞ってアッパーのように右腕を振り上げる。

 

 

ドッッッパアアアァァン!!!!

 

 

 巨大な竜巻のような衝撃波が放たれる。

 地面と刃を抉りながら進み、メイデンへと迫る。

 

「まずっ!」

「ぬぅ!」

 

 エルジェベートは全力で飛翔して避難し、メイデンは金属の壁を生み出すも地面ごと吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐぅううううう!!」

 

 メイデンは両腕を交えた状態で森を抉りながら飛んでいく。

 戦慈は体がリセットされ、右腕に鋭い痛みが走るが、気にすることなくクラスメイト達がいる方向に全力で走り出す。

 エルジェベートは直撃こそは避けたものの、余波でバランスが保てずに吹き飛ばされてしまう。

 戦慈は森を全速力で走り、体がどんどん膨らんでいく。右腕からは蒸気のように煙が上がり、フルパワーまで体が膨れた時にはある程度は振るえるほどまで回復していた。

 

 戦慈は大きくジャンプをして、森の上に出る。

 すると、進行方向から巨大な氷塊が出現する。

 

「轟……!っ!!」

 

 轟の氷結であるとすぐに悟り、目を凝らすとすぐ近くの木の上に里琴を攫ったコンプレスを発見した。

 

「轟は爆豪といたな……!まさか!?」

 

 肝試し時の轟と爆豪のコンビを思い出して、最悪を想像する。

 直後、一気に両脚から衝撃波を放って飛び出し、コンプレスに勢いよく飛び迫る。

 そして、コンプレスが気付いた時には、もう戦慈が拳を構えた状態で目の前にいた。

 

「なっ!?」

「オラァ!!」

「ぐぼぉ!?」

 

 戦慈はコンプレスの顔面に拳を叩きつけ、地面に叩き落とした。

 戦慈も地面へと降りて、倒れているコンプレスを睨みつけるように見下ろす。

 

 

「さぁ……里琴を返してもらうぜ……!」

 

 

 

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