余震や倒壊、土砂崩れにはくれぐれもお気をつけて。
そんな中で殺伐とした話を投稿するのはやや忍びないですね(-_-;)
申し訳ありません。
キリがいいところまでなので、少し短めです。
雄英高校・最大の失態。
ニュースや新聞では、その一色に染まっていた。
ただでさえ襲撃された過去がある雄英ヒーロー科1年の合宿地に、再び敵連合の襲撃を許してしまった。
しかも今回の被害は今までの比ではない。
生徒40名の内、ヴィラン『マスタード』の《ガス》による意識不明の重体の者が13名。
重軽傷者が11名。
無傷だった者は15名だった。
そして……行方不明者、1名。
更に6名のプロヒーローの内、1名が頭を強く打たれ意識不明の重体。1名が大量の血痕を残し、行方不明となった。
情報が漏れないように必要最低限の人員に絞ったことが、完全に裏目に出た形となった。
爆豪とラグドールにおいては、敵連合に攫われたことも世間の知るところとなり、雄英とプロヒーローの対応の拙さが全面に非難される形となり、世間を騒がせている。
「……はぁ」
一佳はネットニュースを見ながらため息を吐く。
襲撃から2日。
一佳達はあれから東京の病院へと移されていた。
B組は意識不明の者が多い事もあり、現場から離れていてプロヒーローが集まっている東京に移送されたのだ。
鉄哲は軽傷ではあるがガスの中心部で戦っていたこともあり大事を取って入院。
戦慈も《自己治癒》である程度回復していたが、それでも鉄哲よりは重傷だったので入院となった。
一佳、唯、ポニー、柳、物間、庄田はほぼ無傷のため、簡単に診察を受けて帰宅を許された。
しかし、庄田以外は全員1人暮らしをしていることもあり、ヒーローの護衛の下、病院近くのホテルに宿泊していた。
一佳達は時間が許す限り病院に通い、未だ意識が戻らないクラスメイト達を見舞っていた。
「……酷いもんだね。皆、雄英とプッシーキャッツを責めてる」
柳もニュースを見ていたようで、顔を顰めている。
一佳も眉間に皺を寄せて頷き、これ以上見る気もなくなりスマホを仕舞う。
一佳の横には、目を閉じて酸素マスクを付けて寝ている里琴の姿があった。
里琴の隣のベッドには茨が、その隣には切奈が、里琴同様酸素マスクを付けて横たわっている。
唯、柳、ポニーもそれぞれのベッドの横に座り、3人の手を擦ったり、汗を拭いたりと出来る限りのお世話をしていた。
他の部屋には男子達も同じように入院している。
庄田や物間、そして昨日退院を許された鉄哲が、部屋を行き来して見舞っている。
戦慈は何故か今回は回復が遅く、昨日はまだベッドから降りれなかった。
「よう」
「鉄哲……」
鉄哲が神妙な顔で病室に顔を出す。
そして、未だに眠り続けている里琴達を見て、顔を顰める。
「塩崎達もまだ、か……」
「ああ……。そっちも?」
「まだ誰も起きねぇ。……くそっ!俺がもっと早くあのガキを倒しておけば……!」
鉄哲が悔し気に右手を握り締める。
一佳は「馬鹿なこと言うな!」と叫ぼうとしたが、出来なかった。それが慰めにもならないことが分かったからだ。
一佳とて同じ思いを抱いているのだから。
その時、
「こ~ら。そんなこと言わないの」
声がして、一佳達が顔を向けると、そこにはヒョウ柄のコスチュームを着た女性がいた。
「あなたは……」
「ヒョウドルよ。スサノオとシナトベの職場体験先のサイドキック」
「ミルコの……。なんでここに?」
一佳の疑問にヒョウドルは眉尻を下げながら、里琴のベッドに足を進める。
「広島の事件の後、私は敵連合を追ってたの。と言っても、全然見つけられなかったけどね。それでもスサノオ達にこれ以上敵連合の手が伸びないようにしようと思ってたんだけど、ね」
ヒョウドルはため息を吐いて、里琴の頭を軽く撫でる。
「結局、何も出来ずにこの結果。だから、少しでも埋め合わせをしようと思ってね。ミルコを連れてあなた達の護衛に来たの」
「ミルコも、ですか?」
「ええ。ミルコは今、スサノオに会ってるわ。リカバリーガールも来てくれてるから、スサノオはすぐに回復するはずよ」
「……そうですか」
一佳はホッと息を吐く。
ヒョウドルは優しく笑みを浮かべ、そして鉄哲に顔を向ける。
「で、あなた」
「は、はい……」
「さっきの『俺が』って言うのはやめときなさい。今回は『誰が』じゃない。『全員』が失敗したのよ」
ヒョウドルの言葉に一佳達も耳を傾ける。
「あの場にいた皆があなたと同じ思いをしているはずよ。中には戦うことすら出来なかった子達もいる。……友達が血を流して倒れ、攫われたっていうのにね」
「っ……!!」
「それに今、ガスで倒れている子達も起きたらあなたと同じこと言うんじゃない?あなただってこの子達のようなことになって、起きた後に事情を聞いたらそう思うでしょ?」
「……絶対に言います」
「でしょ?だから、今回は全員が何かしら出来なかった事がある。全員が悔しい想いをしているわ。だから、厳しい事を言うけど、あなただけが力が及ばなかったなんて言うのはやめなさい。あなた達は全員で戦った。今回の負けは全員の負けで、全員が力及ばなかったのよ」
「……はい」
鉄哲は項垂れるように頷く。
ヒョウドルは鉄哲の肩をポンポンと叩く。
そこに柳が声を掛ける。
「あの……」
「ん?」
「攫われた2人のことは……何か分かったんですか?」
柳の言葉に全員に緊張が走る。
ヒョウドルはまっすぐに柳を見る。
「……悪いけど、その情報は話せないわ」
「え?」
「あなた達の中にその情報を聞くと飛び出しそうな奴がいるでしょ? 暴走しやすい奴が」
「……拳暴」
一佳が里琴を見つめながら戦慈の名前を挙げる。
それにヒョウドルが苦笑しながら頷く。
「他の子達もそうだけどね。だから、あなた達には話せない。ただ、オールマイトはもちろんエンデヴァーやベストジーニストに声がかけられてるわ。警察も総動員して動いてる。きっと助け出せるわ」
「オールマイトに、エンデヴァー達が……!」
少しでも安心させるために作戦に参加するヒーローの名前を挙げるヒョウドル。
トップ2のオールマイトとエンデヴァー、そしてNo.4ヒーローのベストジーニストの名前を聞いて、一佳達の心に希望と安堵が湧き上がる。
さらにここにはNo.7ヒーローのミルコもいる。
日本で最高のヒーロー達が集まって来ている。
その事実はそれだけ大事件ということでもあるが、それでも「きっと大丈夫」という思いが湧き上がる。
「それじゃあ病院を離れる時は言ってね」
「おーっす!」
「ここは病院だよ、お馬鹿」
「いでっ!?」
ヒョウドルが病室を出ようとすると、ミルコが勢いよくドアを開けて登場し、リカバリーガールに杖で背中を突かれて悶える。
その後ろから呆れた顔で戦慈も現れる。
「拳暴!もう大丈夫なのか?」
「ああ」
戦慈は病衣ではあるが、体に巻かれていた包帯は全て解かれており、特にふらつきも見られない。
「さて、私はこれで失礼するよ」
「リカバリーガール……。やっぱり里琴や茨達は……」
「私は治せるのは怪我だけさね。それに体力も使うから、この子達には逆に危険だよ」
「ですよね……」
「安心しな。さっき担当医に話を聞いてね。命の心配も体への後遺症の可能性もないそうだ。目が覚めれば、すぐに日常生活には戻れるだろう」
「……よかった……」
一佳達はリカバリーガールの話にホッとする。
戦慈が腕を組んで、リカバリーガールを見る。
「A組の連中はどうなんだ?」
「ガスで倒れた2人はこの子達と同じだね。八百万は昨日意識が回復して、今日には退院出来るよ。緑谷もね」
「緑谷はかなりヤバそうだったが。もうか?」
「強めに治癒したからね。まぁ、それでもボロボロだ。同じような怪我が続けば、腕が使いものにならなくなるね」
「……」
「言っとくけど、あんたもだよ」
リカバリーガールが杖で戦慈の足を軽く叩く。
「今回《自己治癒》が弱かったそうじゃないか。またかなり無茶したって聞いたけど、そのせいなんだろ?《自己治癒》がなかったら、お前さんの方が先に戦えない体になってたさね」
リカバリーガールの言葉に、一佳達は改めて戦慈がどれだけ無茶をしてきているのかを理解する。
「まぁ、もうこの事件においては、お前さん達に出来る事はないよ。今はしっかりと体と心を休めな」
「そういうことね。スサノオ、無茶しちゃ駄目よ。シナトベを泣かさないように」
「元気になったら、あたしが憂さ晴らしでも付き合ってやるよ」
「やめなさい、お馬鹿」
リカバリーガール達が部屋を後にして、部屋には戦慈達が残される。
戦慈はベッドに寝ている里琴の姿を見て、背を向ける。
「拳暴?」
「着替えてくる。俺も退院だからな」
「着替えって……」
「さっき鞘伏が持ってきた。すぐに帰っちまったけどな」
「そっか……。鞘伏さんも?」
「ああ、爆豪の捜索に参加してるそうだ。情報は貰えなかったがな」
戦慈はそう言って病室を後にする。
その背中を見送った一佳達は、
「これで後は里琴達だけか」
「ん」
「A組の皆さんも大丈夫そうでよかったデェス!」
「今はみんなの回復を待つだけだね」
ひとまず全員の回復が見込めたことにホッとする。
「俺も物間達の所に戻るぜ」
「ああ」
「ん」
鉄哲も男子陣のところに戻り、面会時間終了まで里琴達の傍にいるのだった。
戦慈は病室に戻り、服を着替える。
その時、
「横浜の神野区?そこに敵連合がいんのか?」
「声がデカいわよ!」
「おお、わりぃ」
「ったく……。エッジショットやギャングオルカも召集されたらしいわ」
「マジか。あたしも行くか?」
「駄目よ。まだスサノオとシナトベを狙ってるかもしれないんだから」
「ちぇっ」
ミルコとヒョウドルの話が聞こえた戦慈。
「……横浜の神野区」
聞こえた地名を呟いて、戦慈はスマホを弄る。
位置を確認した戦慈は覚悟をした顔をして、荷物を纏める。
その夜。
戦慈の姿が病院から消え、一佳達はパニックに陥る。ヒョウドルとミルコは話が聞かれていた可能性に気づき、防犯カメラを確認させてもらい、1時間ほど前に戦慈が病院から出て行くのが確認できた。
すぐさまヒョウドルは警察や神野区近くにいるヒーローに連絡を取り、戦慈の捜索を依頼するが爆豪救出作戦もあり、敵連合を刺激する可能性があったため、大々的に捜索は難しいと言われてしまい、歯噛みする。
「あたしが行くか?」
「駄目よ!ミルコじゃ目立ちすぎる。……スサノオが敵連合の拠点を見つけるのはほぼ不可能よ。問題は作戦が始まったときに参戦する可能性があることだけど……。流石にオールマイト達にそこまで対応させるのは無理よね」
「スサノオならむしろ戦力になるだろ?」
「馬鹿!!あの子はまだ仮免も持ってないの!!襲われたならともかく、自分から飛び込んだらアウトよ!!」
「あ、そっか」
ヒョウドルは対応の難しさに頭を抱える。
とりあえず、今は一佳達まで飛び出さないようにすることに注意を払うことにした。
一応作戦本部にも連絡は入れ、見つかり次第保護をお願いしたのだった。
ある場所にて。
「可哀想に。随分と責められてるねぇ、雄英は」
「まぁ、生徒とヒーローを攫われて、意識不明者まで出れば教育機関としては致命的じゃろうて。仕方なかろう」
暗いビルにてオール・フォー・ワンとドクターが会話していた。
「オールマイトは怒ってるだろうねぇ。その表情が見られないのが残念だよ」
「しかし、どうするんじゃ?オールマイトが動き出せば、少々厄介じゃと思うが?」
「そうだね。けど、そう簡単に見つけるのは難しいだろう。平和に溺れた彼らじゃね」
オール・フォー・ワンの目の前にモニターには、隠れ家バーで爆豪と話している死柄木達の姿が映っている。
「そういえば、メイデン達はどうだい?」
「メイデンとエルジェベートはまだ厳しいのぉ。ディスペは一応回復して送り返したが、戦闘はまだ無理じゃろ」
「そうか……。メイデンはマキアほど『個性』が埋め込めなかったからな。回復系も持ってないしね」
「《金属操作》に《金属変換》、それに《膂力増強》じゃったな。十分強力な『個性』を揃えたんじゃがな」
「そうだね。まさか容量限界で『金属アレルギー』を発症するとは、流石に予想外だった」
アイアン・メイデンは脳無とは異なり、改造なしで『個性』の複数持ちに成功した数少ない例である。
しかし、1つだけ副作用が発生してしまった。
容量限界を迎えると、金属アレルギーを発症するようになってしまったのだ。
服越しであろうと金属に触ることが出来なくなり、『個性』の発動も難しくなる。
改造を施そうとしたが、その場合脳無と同じように思考能力を奪いかねないことが分かり、断念せざるを得なかった。
「エルジェベートも回復と力を溜める血がな。お主の分も考えると厳しい」
「彼女も厄介な『個性』だからねぇ」
「もう、そろそろ願いを叶えてやったらどうじゃ?」
「……確かにそろそろ潮時かな。今回の損害を補填出来たら、叶えてあげようか」
オール・フォー・ワンは両手を組んで、笑みを浮かべる。
「可哀想な子だよ。『
「戦わせたのはお前さんじゃろうに」
「違うよ。オールマイトのせいさ」
オール・フォー・ワンは力強く言う。
「
オール・フォー・ワンはオールマイトの姿を思い浮かべる。
「正義は人を救わない。……いや、正義では救える人が限られている、が正しいかな。それに気づかずに我が物顔で闊歩するのだから、あまりにも滑稽で……腹立たしいことこの上ないよ」
モニターに映る死柄木を見つめる。
「思い知るがいいよ、オールマイト。君の言う『希望』こそが、この世界に『絶望』を呼び込んでいることを……」