翌日。
戦慈達はいつも通りの雰囲気で登校する。
すると、校門前になにやらカメラやマイクを構えた集団が待ち構えていた。
「なんだ?マスコミ?」
「うざってぇ所に立ってやがる」
「……邪魔」
「でも、行かないと入れないな」
一佳は首を掲げて、戦慈は仮面の下で顔を顰め、里琴はいつも通り無表情で校門に近づく。
すると、マスコミ達も戦慈達に気づく。
「あ!生徒だ!」
「って、あの赤仮面は!?」
「例のヴィジランテ活動してた男!」
「ねぇねぇ!オールマイトの授業はどうですか!?」
戦慈のことに気づいたマスコミ達は鼻息荒く、戦慈達に詰め寄る。
そして今年から教師として赴任したNo.1ヒーロー、オールマイトについて質問してきた。
「俺らはまだ受けてねぇし、会ってもねぇ。だから知らん。どけ」
「じゃあ、どんな授業を期待していますか!?」
「どうでもいい。だから、どけ」
「その仮面は何でつけてるんですか!?」
「関係ねぇだろ。どけ」
「その2人はクラスメイト?それとも!?」
「黙れ独身ババア。どけ」
「だ、誰が独身ババアだ!?」
「あんただ。どけ」
律儀なのか暴言なのか。なんだかんだ言葉を返しながら校門をくぐる戦慈達。
流石に校門の中まではマスコミも追いかけてこなかった。
「サンキュ」
「……それとも?」
「うっせぇよ」
一佳は戦慈に礼を言う。戦慈がああいう対応をしたのは里琴と一佳からマスコミを少しでも遠ざけるためだと分かったからだった。
里琴は戦慈をからかい、そのことに一佳の礼と合わせて顔を顰めて少し不貞腐れたように答える戦慈。
それに一佳と里琴は顔を見合わせて微笑む。里琴は無表情だが、瞳が少しだけ柔らかく思えた。
「それにしても、オールマイトの授業かぁ」
「授業なんざ誰でも同じだ。手本が派手か堅実かの違いだろうが」
「……真似できない」
「それもそうだな」
オールマイトの活動の真似が出来れば誰も苦労しない。
確かに手本を見せられても厳しそうだなと思う一佳だった。
教室に入ると一瞬周囲の目が戦慈に集中するが、戦慈は特に気にせず。
そこに物間が近づいてきた。
「拳暴」
「あん?」
「昨日はすまなかったね」
物間が頭を軽く下げて謝罪する。
それに戦慈はパタパタと右手を振る。
「気にすんな。気にしてねぇからよ。俺の態度も問題だって自覚はあるしな」
「あ、そうかい?じゃあ……」
「じゃあ、じゃない!」
「かふっ!?」
戦慈の言葉にいつもの調子に戻ろうとした物間に、一佳が素早く手刀を叩き込んで倒す。
そのまま引きずって席に座らせる。
「……恐ろしく手際が良いな」
「でも、静かになるから助かるわ」
誰も物間の心配はしない。
まだ2日しか経っていないのに、すでに扱いが決まった物間であった。
「今日は何するんだろうな?」
「昨日の戦闘訓練を受けての基本訓練じゃね?」
「でもさぁ、オールマイトの授業も受けたいよね。ドワァ!って感じな授業をババーン!ってやってくれるのはワクワクするよね!」
「わりぃ、吹出。分かんねぇ」
「シクシクだぁ!?」
他の生徒達もオールマイトのことで盛り上がっていた。
それだけオールマイトはヒーローを目指す者にとって憧れなのである。
「でもさぁ、なんだかんだでぇ普通の授業も大変だよねぇ」
「試験もあるしなー」
「ヒーロー基礎学にも座学あるんだもんな」
今後の学生生活を思い浮かべながら話し合うクラスメイト達。
戦慈と里琴は後ろでタンブラーを傾けながら、のんびりとしていた。
唯、柳と話していた一佳がそれに気づいて首を傾げる。
「あれ?里琴もコーヒー好きなのか?」
「……んーん」
「ん」
「ややこしい」
「こいつのはカフェオレだ」
「……美味い」
「それも拳暴が淹れてるのか?」
「毎朝いつの間にか部屋に来てタンブラーを掲げて、ずっと横に立たれてたら仕方ねぇだろうが」
「……そっか」
「……ブイ」
「なんの?」
得意げにピースする里琴。それに今日は柳が最初に突っ込んだ。
そして予鈴が鳴り、クラスメイト達が席に座るとブラドが教室に入ってくる。
「さて、今日はさっそくだがお前達にあることを決めてもらう」
「あること?」
切奈が首を傾げる。
それに頷いたブラドは全員を見渡して頷く。
「お前達に……学級委員長を決めてもらう!」
『いいんちょーー!!』
ブラドの言葉に盛り上がるクラスメイト達。
戦慈と里琴は特に盛り上がらない。
「うむ!やる気があっていいな!では、決めてもらおうとは思うが……自分でやりたい奴ばかりだろうしな。他の者を推薦したい者はいるか?」
ブラドの言葉に戦慈と里琴は手を上げて、一佳を指差す。
「拳暴と巻空は拳藤だな?」
「え!?」
ブラドの言葉に一佳が勢いよく2人に振り返る。
「拳藤は中学でも委員長してたかんな。経験ある奴がやるべきだろ。ダルいし」
「……面倒」
「本音は隠せ!!」
一佳が2人の言葉にツッコむ。
しかし、それに他の者達も納得するように頷く。
「1位と2位にツッコめるしなぁ」
「戦闘訓練でもいい判断してたしな」
「なにより物間を黙らせることが出来る」
「おいおい」
「え?……皆?」
「俺は異議なし!」
鉄哲が声を上げると、他の者達も頷いた。
「では、委員長は拳藤だな。いけるか?拳藤」
「……はぁ。分かりました。やります」
「では、副委員長も決めてほしい。これはどうだ?」
「普通な奴がいいです」
「じゃあ物間は駄目だな」
「おいおい」
即行で選択肢から消える物間。
「副委員長は男子に頼みたい」
「じゃあ、やっぱり物間は駄目だな」
「そろそろ泣くよ?」
「拳暴は?」
「拳藤を生贄にした意味ねぇじゃねぇか。ダルいっつってんだろ」
「だから、もう少し言葉を選べ!!」
「普通な奴って言うか、物間を止めれる奴だろ?いなくね?」
物間を止めれることを基準に決めようとされている副委員長。
名前が挙がった戦慈は一切面倒くさい事は嫌であることを隠さず、一佳に怒鳴られる。
そして最後に挙がったのは、庄田と骨抜の2人。
そこに「戦闘訓練でペアだったし、骨抜で」と一佳が声を上げたことで、骨抜に決まった。
「よし。では、2人はこれからよろしく頼む」
「「はい」」
その後は普通の授業が行われ、午前の授業は終了する。
戦慈、里琴、一佳、唯、柳、茨の6人で食堂に向かう。
「……増えてんじゃねぇか」
「気にするなよ」
「ん」
「逆に残りの2人はどうしたんだよ?」
「ポニーと切奈は先生に質問に行ったよ」
「……流石に全員揃ったら、俺は離れるぞ」
「里琴が許せばな」
「……嫌」
戦慈の裾を握る里琴。
それに仮面越しでもわかるほど盛大に顔を顰める戦慈。10秒ほどそのまま歩き続けて、ゆっくりとため息を吐きながら肩を落とし、
「…………勝手にしろ」
「……ん」
根負けした様子の戦慈に、後ろで歩いていた一佳達は笑う。
そのまま食堂にて食事を摂る6人。
戦慈は終始憮然としながら食べていたが、それを一佳は終始ニヤニヤしながらそれを眺めていた。茨は何やら天を仰いで感動していたが、誰も取り合わなかった。
その時、
ウウゥーーーーー!!
『!?』
校舎内に警報音が鳴り響く。
「なんだ!?」
「火事?」
「ん?」
「どうすればよいのでしょうか?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』
「セキュリティ3?」
「早く逃げろ!校舎内に侵入者だ!」
「マジかよ!?初めてだぞ!?」
周囲の声が聞こえて状況を理解する戦慈達。
入り口は人で溢れかえり、すし詰め状態だ。
「どうする!?」
「……緊急事態だ。許してもらえんだろ」
「拳暴?」
「里琴!そこの窓、割れ!」
「……ヤー」
戦慈の指示に里琴は細めの竜巻を放ち、近くの窓ガラスを割る。
「拳暴!?」
「そこから出るぞ。ガラスと奇襲に気を付けろよ」
戦慈が飛び出そうとすると、里琴がその背中に飛びついて張り付く。戦慈はそれを気にせずに飛び出して、窓から外に出る。
一佳達は戸惑いながらも、それに続いて外に出る。それを見ていた他の生徒達も『個性』で窓を割って、外に出始める。
一佳達は外に出ると、何故か立ち止まっている戦慈に駆け寄る。
「拳暴!どうしたんだ!?」
「……あれが侵入者みてぇだぜ」
「え?」
戦慈が指差した方向を見ると、そこにいたのはマスコミだった。
くたびれた格好の男とプレゼントマイクが対応しているが、全く出ていく気配がなかった。
「……焦らせるなよ」
「ん」
「全くだぜ」
「……馬鹿」
「逮捕じゃね?」
一佳達も呆れて、脱力してしまう。
マスコミの姿に他の生徒達も気づき、危険性はないのかと足を止める。
「ん?里琴?何してるんだ?」
「……撮影」
「はぁ?」
里琴がスマホを構えて、カメラをマスコミに向けていた。
「……晒す」
「……お前」
すると、周囲からもパシャパシャと音がし始める。
目を向けると、他の生徒達もスマホを構えて、マスコミや壊された校門を撮り、実況を行っていた。
「……まぁ、気持ちは分からんでもないが……」
「ん」
「迷惑だったのも事実」
「……あの扉をマスコミが?」
「どうされたのですか?拳暴さん」
「あの扉。セキュリティが壊されてやがる。マスコミがやるか?完全に破壊行為だぞ」
一佳達も校門を見る。
校門には防護壁が発動していた形跡があり、それがボロボロに崩されていた。
ここのセキュリティはIDカードを持っていない者が近づくと起動する。それはマスコミなら知っている者もいるはず。それを壊したということは、完全に不法侵入である。
「おい、里琴。連中の近くに竜巻出せ。当てるなよ」
「……ヤー」
「おい!?」
一佳は慌てるが、里琴はマスコミの真横に竜巻を飛ばす。
しかし、一瞬で竜巻が霧散する。
「「!?」」
戦慈達は目を見開くが、マスコミの注意は十分に引きつけられたようで、戦慈達に目を向ける。
「なんだ!?」
「生徒!?」
「攻撃してきたぞ!?」
「撮れ!」
戦慈は里琴を背中から降ろして、マスコミに歩み寄っていく。
一佳達は慌てるが、里琴がそれを止める。
「いきなりなんだ君は!?」
「こっちのセリフだ。不法侵入者共。セキュリティを壊して入り込んで、犯罪者じゃないとでも言う気か?あんたらの行動はこっちも一部始終録画した。生徒達はあんたらのせいで大混乱を起こして、昼食放り出して、怪我人まで出てんだぞ?」
『!?』
「あの扉、壊した奴はどいつだよ?」
「待て」
戦慈の言葉にマスコミは生徒達がスマホを構えていること、窓ガラスが割れている校舎、そして崩れた校門を見てようやく事態を把握する。
そこにマスコミを抑えていた教師と思われるくたびれた黒髪の男が戦慈の前に立つ。
「1-A担任の相澤だ。マスコミは学校が対応する。悪いが、任せてもらう。生徒達は教室に戻れ!大丈夫!マスコミだけだ!ヴィランの侵入じゃない!」
相澤は戦慈に声を掛け、後ろで事態を見守っていた生徒達にも声を掛けて、指示を出す。
それを戦慈は黙って聞いていたが、相澤と視線をぶつけ合って、すぐに背を向けて里琴達の元に戻る。
戦慈を見送った相澤は改めてマスコミに向き直る。
「さて、皆さんの記者魂は尊敬しますが……あの生徒の言う通り、このやり方は少々悪質だ。これ以上抵抗されるならば、こちらも生徒の安全のために対処せざるを得ない。お引き取りを」
「……くっ!」
「せ、先輩!編集長からです!」
『お前は何をしている!?ネットでお前らのことが出回ってるぞ!誰が不法侵入しろと言った!?俺達をヴィラン予備軍にしたいのか!!とっとと出て、帰ってこい!!!』
「っ!?か、帰るぞ!」
「あ、ま、待ってください!」
スピーカーモードでもないのに周囲にもはっきりと聞こえた怒鳴り声とその内容に、ほぼ全員が顔を真っ青にする。直後、どんどん携帯が鳴り、同じ怒鳴り声があちこちで響く。
それによってようやくマスコミは慌てて、外に出ていく。
それを見送りながら相澤とプレゼントマイクはため息を吐く。
「ふぅ~、やれやれだぜ。オールマイトの人気もいいことばっかりじゃねぇな」
「だから反対だったんだ。俺は……」
「それにしても拳暴と巻空だったか?正直、助かったぜ」
「荒っぽいが……まぁ、セキュリティ3の事を考えたら、言い訳にはなるか」
「それと生徒達の動画で十分マスコミは牽制出来ると思うぜ?」
「……とりあえず、あれをやった奴には注意しねぇとな」
「だな」
相澤とプレゼントマイクは壊されたセキュリティを見る。
「あの壊し方は尋常じゃあない。マスコミであれが出来る奴がいるなら、間違いなく要注意人物に挙げられてるはずだ」
「聞いたことねぇよなぁ。しかも、音もほぼ無しってか?これをやった奴、かなり手慣れてるぜ?」
「……厄介なことになりそうだな」
相澤は顔を顰めて、対策を考える。
戦慈達は教室へと向かっていた。
「はぁ~……拳暴。私がお前を止めるときは、手をデカくしてからでいいよな?」
「殴る前に掴めよ」
「だったら、無茶をするなよ」
一佳はジト目で戦慈を睨む。
それに戦慈は肩を竦める。
「先公共がさっさと抑え込めば動かなかった。けどよ、それだけじゃ引きそうになかったかんな。何よりあの扉壊した奴がいたら、厄介だと思ったからな。まぁ、必要なかったかもしれねぇが」
「……消された」
「そういえば……里琴の竜巻の消え方、普通じゃなかったよな?」
「多分、あの教師だろ。A組の担任……イレイザーヘッドって呼んでやがったな」
「『個性』を消す『個性』?」
「だろうな」
「強」
「ん」
戦慈達は教室に入る。
すると、鉄哲達が声を掛けてきた。
「拳暴!かっこよかったぜ!」
「ネットにまた上がってるぞ」
「……またかよ」
「あんな前に出て、目立たないわけないだろ?」
「それに窓もぶち破ったしな」
ネットという話にうんざりする戦慈。
しかし泡瀬達からすれば、当然の結果だった。
「今日は授業どうなるのかな?」
「あの程度じゃ、普通にやるだろ」
「だよねぇ」
庄田が首を傾げると、鱗が腕を組んで普段通りだと推測し、凡戸もそれに頷く。
他の者もそれに同意して、午後の予鈴と同時にブラドが入ってくる。
「えー……昼休みにマスコミによる強行突破があったが、すでに解決したので、午後は通常通り授業を行う」
その言葉に「だよね」と思う一同。
「拳暴」
「あん?」
「今回は突然のことだったし、混乱状態にあった中でのあの行動は素晴らしいと個人的には思うが、基本的に生徒は戦闘行為は禁止だ。ああいう場合はまずは教師に任せるようにな」
「はいよ」
「食堂の窓に関してはもちろん緊急事態だったので不問だ。マスコミに請求するから大丈夫だ。さて、では今日のヒーロー基礎学は……【避難訓練】だ!」
ブラドの言葉に首を傾げる一同。
「言っておくが、普通の避難訓練ではないぞ?今回は『工場地帯における避難誘導や救出の基礎訓練』だ!どのような危険があり、どのようなことに注意すべきか、その場合己の『個性』はどう活かせるかを現場で学んでいく」
「現場?」
「そうだ。全員、コスチュームに着替えて、運動場γに集合だ!」
ブラドの言葉に首を傾げながらも更衣室に向かう一同。
そしてコスチュームに着替え終えて、密集工業地帯を模した運動場γに集まる。
今回は歯がむき出しで、義足にコートを羽織った教師、エクトプラズムが同席している。
「集まったな。では、中に入るぞ」
「今回ノ想定ハ工場火災ダ。ソレヲ頭ニ入レテ移動中モ考エルヨウニ」
ブラド達に続いて、一佳達も後に続く。
周囲を見渡しながら歩き続ける。
「私の『個性』じゃ避難者を運ぶか、瓦礫をどけるくらいだな……。拳暴もじゃないか?」
「……だろうな」
「……活躍」
「そうだな。里琴の竜巻なら火も足止めできるし、有毒ガスも払えるか」
「下手したら火事が悪化するがな。ガスに引火して火の竜巻とか冗談にならねぇぞ」
「……確かに」
「……むぅ」
「私らって工場火災に弱くない?茨も活躍しそうだけど、ツルが燃え広がるだけだろうし。私もパーツに分けた所でだし」
「劫火に焼かれて」
「駄目じゃん」
「ん」
全員が悩まし気に顔を顰める。
他の男子達も同じで顔を顰めていた。
「俺は鉄だから大丈夫だけど、それじゃあ怪我人も背負えねぇし、火も止められねぇな!」
「鉄哲の体が鉄板になるもんな」
「柔らかくしたところで、上から落ちてくるものの質量は変わらないし」
「円場、お前の空気凝固で火事の範囲囲めねぇの?」
「俺の肺を破裂させる気か」
「僕だったらザッバアァ!ってして、ビシャー!ってして、シュー!ってすれば行けるかも!」
「ゴメン。分からない」
「火は斬れねぇ!」
「そうだねぇ。接着剤じゃ固められないねぇ」
「結構、詰んでないか?俺達」
「あははは!僕に頼らないでくれよ。僕は基本無力だからね」
「おい」
すでに絶望しか感じないB組だった。
ブラドやエクトプラズムは前を歩きながら苦笑する。
そして生徒達に話しかける。
「そう。どれだけヒーローが急いで駆けつけても、自分の『個性』だけでは限界がある。全てを行うことなど、まず無理だ」
「ダカラコソ大事ナノハ『自分ニ何ガ出来ルカ』ヲ把握シテ、ソノ役割ニ徹スルコトニアル」
「火は消せないかもしれないが、火が広がるのを防いだり、何より人を安全に避難させること。これも大事な役目だ。いや!そここそ我々ヒーローが求められていることだ!危険な火の中に飛び込んで、負傷者を安全に脱出させること!それが最優先事項だ!」
ブラドとエクトプラズムの言葉に頷く鉄哲達。
そして倉庫と思われる建物に入ると、
「ハーハッハッハッ!!」
高らかな笑い声が響いた。
それに鉄哲達は周囲を見渡す。
「わーたーしーがー!!」
「あ。あそこだ」
切奈が指差した方を見ると、工場の2階部分で、金髪巨漢の男が腰に両手を当てて仁王立ちしていた。
「10分前から待ち構えていた!!」
No.1ヒーロー、オールマイト。
その登場に盛り上がる鉄哲達。
「本当に教師してんだな!」
「やっぱデケぇな」
「あのマスコミ騒動の原因だけどな」
「……謝れ」
「そこはしょうがないだろ」
戦慈と里琴は昼休みの騒動のこともあって微妙な気持ちだった。
それに一佳は苦笑して、宥める。
「お待たせしました。オールマイト」
「気にしないでいいよ!私もさっき着いたばっかりだからさ!」
「10分前って言ってたじゃん」
「デートか」
「さて!!じゃあ早速始めようかな!!」
「え?」
オールマイトが濃い笑顔を浮かべながら、腰からなにやらスイッチを取り出す。
それに首を傾げる一同。
「ポチっとな!!『バギッ!』あ」
オールマイトはそれを押すと、スイッチのボタンがめり込んで壊れる。
直後、
ドオォン!!
ドドドドドドドオオオンン!!!
『!?』
周囲から爆発音と衝撃が轟き、更に妙に空気が熱くなってきた。
「……まさか」
「この野郎……!」
「……謝れ」
「ん」
「ハーハッハッハッ!!マジゴメン」
「……はぁ。仕方がない。お前達!周囲で工場火災が発生した!そこに倒れている負傷者達を連れて脱出しろ!!」
ブラドがため息を吐いて、工場の端に倒れている人形を指差しながら指示を出した。
それに全員が慌てて走り出す。エクトプラズムが《分身》を吐き出して、生徒達のフォローに就く。
ブラドは生徒達を見守りながら、オールマイトに声を掛ける。
「……オールマイト。予定より規模が大きいのですが……」
「ああ……うん。スイッチ壊したからかな。全部一斉に起動したみたい」
「……オールマイト」
「どうしよう!?止められない!?」
「……はぁ~」
完全にパニックに陥っているオールマイトを見て、頭を抱えて肩を落とすブラド。
頼む人を間違えた。
そう確信しながら。
1時間後、一佳達は煤だらけで荒く息を吐きながら、外で座り込んでいた。
「ぜぇ……ぜぇ……本気で焼け死ぬかと思った」
「遠回りしか出来ねぇとか、鬼畜過ぎるだろ」
「一部火を消そうにも勢いヤバいし、どんどん爆発してくんだもんな。もうガスがどうとか考えてる場合じゃねぇよ」
一気に倒壊して、爆発と着火をしたせいで、想定以上に火の勢いが強くなったのだ。
それにより道をこじ開けることも出来ず、走っている道を絶やさないことに従事するだけで手一杯だった。結局クラス全員一塊で走り続けたのだった。
「あ゛~……喉いだい」
「大丈夫か?円場」
「僕は?」
「大丈夫だろ?」
「あははは!冷たいな!」
「茨も大丈夫?」
「あぁ……不甲斐ない私への罰なのでしょうか」
「ただツルが乾燥してるだけ」
「ん」
円場と物間は《空気凝固》を連発して、道が崩れたり、火を食い止めていた。そのため、喉や肺が熱されて呼吸をするたびにキリキリと痛んだ。
茨は燃えるのも構わずにツルを壁のように伸ばし続けた。そして火事の熱でツルが乾燥して、少しげっそりとしていた。
「最後は拳暴の荒業だったな」
「まさか蹴りで衝撃波を飛ばして、出口までの道を吹き飛ばすとは……」
「仕方ねぇだろ。ああでもしなけりゃ、走るたびに衝撃波が飛んでたんだよ」
「ああ……そういうことか」
戦慈の体は明らかに膨れ上がり始めており、もうすぐというところで突如戦慈が前に出て、思いっきり右脚を振り上げた。
直後衝撃波が飛び、目の前のパイプや鉄骨を吹き飛ばした。それにより出口までの道が広がり、崩れたことで火も回らなくなったのだ。
その時、戦慈はパワーが溜まってきていることを感じており、火事による熱もあり、そろそろヤバイと感じていた。しかし、火事に向かって放つのもヤバイと思ったので、むしろまだ無事な正面を選んだのだ。
そこにブラド達が近づいてきた。
「皆、ご苦労だったな」
「うんうん!見事な連携だったぜ!」
「誰のせいだよ」
「……謝れ」
「マジゴメン」
オールマイトは直角に頭を下げる。
「今回は少し……少しイレギュラーがあったが、全員良く動いていたぞ」
「あれを少しで収めたぞ」
「雄英だからな」
「では、教室で映像を見ながら反省点や基本を教える。着替えて教室に戻るんだ」
「『まずは実戦』方式はどうなんだ?」
「雄英だからな」
「納得出来る不思議」
何か理不尽を感じながらも『雄英だから』で納得して、教室に戻る一同だった。
こうしてB組ではオールマイトがいる授業は『ポカミス危険』と位置付けられたのだった。