翌朝。
寮での初めての夜を過ごしたB組の反応は様々だった。
「ふわぁ~」
「でっけぇアクビだな」
「やっぱ違和感あって中々寝付けなかったんだよ」
円場が大きく欠伸して、骨抜が呆れながら朝食の味噌汁を傾ける。
それに対する円場の答えに、鱗や宍田も頷く。
「まぁ、初日だからな」
「一人暮らしとはまた違うのでしょうな」
「おっす!」
鉄哲がドカドカといつもの元気さで現れる。
「おっす」
「朝から元気だな」
「おうよ!今日からまた訓練だからな!」
「あぁ……気合に燃えていたのですな」
「おう!で、朝飯なんだ!?」
「ご飯とパン選べるみたいだぜ」
「漢は白米だぜー!」
「だよなー」
朝から気合爆発の鉄哲を見送って、骨抜達は苦笑しながら朝食を食べる。
ちなみに一佳達女性陣はすでに制服に着替えて朝食を食べていた。……里琴以外は、だが。
里琴は上下黄色のパジャマだった。髪も所々寝ぐせが出来ている。
「拳藤達着替えるの早くねぇ?」
「初日だから着替えるタイミングが分からなくてさ」
「朝食もいつ来るか分からないし、油断して遅刻とか嫌じゃん?」
「ん」
「けど、ちょっと早すぎたかもね」
回原の質問に一佳と切奈が苦笑しながら答える。
唯も頷くが、柳が時計を見て小さくため息を吐く。
現在は7時10分。
まだ一時間以上余裕があった。
「巻空だけ着替えてないのは?」
「さっきまで寝てたから」
「……ブイ」
里琴だけ余裕たっぷりに朝食が届くまで爆睡していたのだ。
一佳達は別に示し合わせることなく、それぞれが制服に着替えていたが、1階に下りる時にパジャマ姿の里琴を見て、少し気持ちが逸っていたことに気づいた。
「学校まで10分もかからないの忘れてたねぇ」
「ん」
「まぁ、ソファでのんびりしてようよ」
一佳が苦笑しながら言う。
里琴は朝食を食べ終えて、キッチンへと向かう。
キッチンではシャツとスウェット姿の戦慈がコーヒーを淹れていた。
「ほれ」
「……ん」
戦慈が里琴にタンブラーを渡す。
里琴は受け取って、早速一口飲む。
戦慈は一佳達に顔を向けて、
「お前らの分はここに置いとくぞ」
「あ、悪い。サンキュ」
「ん」
「ほ~い」
「ありがとうございます」
一佳、唯、切奈、茨がキッチンに向かい、タンブラーを受け取りに行く。
さりげなく切奈も参加していたが、戦慈はもうツッコまない。
一佳達は病院での宣言もあるので、文句は言わない。
「朝から大変だなぁ」
「まぁ、実際かなり美味いしな」
庄田が少し憐れみながら戦慈を見つめ、泡瀬が味噌汁を飲みながら言う。
その後、男子や里琴達も自室に戻り、登校の準備をする。
8時を過ぎた頃からぞろぞろと学校に向かい始める。
10分後には全員が教室へと入る。
「いや~、久しぶりだな~」
「ちょっと落ち着くな。教室にいると」
「教室で皆集まるのが一番いつも通りだもんね」
回原が席に着きながら教室を見渡し、泡瀬と吹出も同意する。
「今日から何をするのでしょうな?」
「林間合宿の続きって言ってたがなぁ」
「それで間に合うのかな?」
「そもそも仮免試験の中身が分からないからね。『個性』を伸ばすだけでいいのかは怪しいよね」
宍田が首を傾げ、鎌切や庄田も不安そうに眉を顰め、物間が肩を竦める。
仮免試験の内容はもちろん毎年違う。
その上、戦慈達は合宿も中断しており、ヒーローとして学び始めてまだ半年も経っていない。
実戦経験は半端ないかもしれないが、それでもヒーローとしてやっていけるとは思わない。
「A組も一緒に受けるのがねぇ」
「正直、今回は雄英全員で受かりたいよな」
「俺達なら問題ねぇよ!!」
「鉄哲、油断は禁物だぜ」
凡戸が顎に指を当てながら言い、鱗も頷く。
流石に今回の林間合宿では、色々と共に頑張って乗り越えたのだ。
あの襲撃があったとはいえ、いや、あったからこそクラス関係なく受かりたいという気持ちがある。
それに鉄哲が自信満々で言うが、流石に骨抜が窘める。
一佳達も少し不安そうに顔を見合わせる。
戦慈と里琴は自分の席でいつもどおりの雰囲気で座っている。仮面と無表情が標準装備なので、内心は不明だが。
予鈴が鳴り、全員が席に着く。
2分もせずに、ブラドが教室に入ってくる。
「おはよう、諸君!」
『おはようございます!』
「寮生活は慣れそうか?しばらくは生活リズムとか大変かもしれんが、焦らずに慣れていってくれ」
ブラドの言葉に頷く鉄哲達。
「さて!昨日話した通り、今日から仮免取得を目指していく!」
『はい!』
「仮免と言えど、人命救助に直接かかわる責任重大な資格だ。そのため、試験はとても厳しく、その合格率は例年5割を切る。雄英生と言えど、その合格は容易ではない」
ブラドの重苦しい言葉に円場や泡瀬達はゴクリと唾をのむ。
「そこでお前達には……必殺技を作ってもらう!!」
『必殺技キターー!!』
泡瀬、円場、回原、鉄哲、吹出などが興奮して叫ぶ。
もちろん一佳達も興奮しており、戦慈と里琴だけがいつも通りだった。
「しかぁし!!」
しかし、ブラドが右手を上げて、生徒達の興奮を抑え込む。
鉄哲達は興奮したポーズのまま、首を傾げる。
「俺はお前達や親御さん達と約束した!!お前達をこれまで以上に鍛えて、立派なヒーローにすると!そのために厳しい訓練を課すことになると!!」
その言葉に鉄哲達は姿勢を正す。
「先ほど言った通り、仮免試験はかなり厳しい。しかも、お前達はヒーロー科に入って、まだ半年足らず。対して、他の学校では2年生で受験するところがほとんどだ。この意味が分かるか?」
「……俺達よりヒーローとして学んでいることは圧倒的に多い……」
骨抜が僅かに顔を顰めて言い、ブラドが大きく頷く。
「その通りだ。確かにお前達がこの半年間経験したことは、他の学校より圧倒的に濃い。しかし、濃くはあっても、それを力に変えれているわけではない」
林間合宿開始時にも言われたことだ。
精神面での成長や経験は増えても、身体面や『個性』の成長につなげられてはいない。
「そこを成長させるための林間合宿だったのだが……。あの事件で中断されてしまった。そして、オールマイトの引退と神野区の悲劇は間違いなく今回の仮免試験に影響を与えているはずだ」
No.1ヒーローの引退。そして、神野区での人命救助。
これは人々の記憶に深く刻まれているのは間違いない。
「ヒーローは事件、人災、天災など様々な場面で人を救ける。仮免試験では当然、そこの適性を見られることになる。戦闘力は当然のこと、情報力、判断力、統率力、コミュニケーション能力、機動力、連携など……多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
「……それを1年も学んでいる先輩達相手に競うわけか……」
「どれもまだまだだって思い知らされたばっかだもんねぇ」
鱗と切奈が顔を顰めて唸る。
「だから、俺はお前達に……A組以上の至難を強いる!!」
「A組以上のって……」
「どういうことですかな?」
「はっきり言わせてもらえば、A組はB組と比べれば突出した『個性』が多い。もちろん、拳暴や巻空、塩崎などもいるが、やはりA組と比べれば一歩劣る。これは受け入れなければならない」
「まぁ、確かに……」
泡瀬が腕を組んで唸る。
ここで対抗心を燃やしても、『個性』が変化するわけでもない。
「しかし、お前達の団結力!!ここはA組よりも遥かに強固だと、俺はこの半年間で確信を持っている!故に俺は今日から仮免試験までの10日弱、必殺技だけでなく、お前達の連携、コミュニケーション能力、判断力を徹底的に鍛え抜く!!」
「……それはつまり……」
「林間合宿よりも半端ない辛さ……ってことですか?」
「そうだ!半端なく厳しい!しかし、お前達が抱える後悔を乗り越えた上で、試験に臨むにはそれだけのことをしなければならない!!それともお前達は、後悔を抱えたまま挑みたいか!?それで良しとしたいか!?後悔を抱えたまま、他校の先輩達と渡り合えるのか!?」
ブラドの叫びに鉄哲達は顔を引き締める。
それが嫌だから、後悔を乗り越えたいから、再び雄英に来る決意をしたのだ。
やれることやらずにあの後悔と苦しみを味わうのは、もう絶対に嫌だ。
「この後、コスチュームに着替えて、運動場γに集合だ!!」
『はい!!』
力強く返事するB組生徒の顔に迷いは一切なかった。
そして、その勢いのまま、コスチュームに着替えた戦慈達は運動場γに集合していた。
教師陣はブラド、ハウンドドッグ、13号が並んでいた。
「さて、現在A組が必殺技の特訓を行っている。なので、A組が行っている間は、我々はそれ以外の訓練を行っていく」
「皆さん、気合十分のようですが、久しぶりで、しかも病み上がりの人もいるので、今日は体の調子を確認することを重視してくださいね」
「初日から怪我するなよ!」
「しかし、もし試したい技があるなら、積極的に試していけ。それと、必殺技の構想や期末試験や林間合宿での経験を通して、コスチュームの改良案がある者はサポート科の開発工房で相談するようにな」
ブラド、13号、ハウンドドッグの順に言う。
泡瀬と切奈が悩まし気に顔を顰める。
「必殺技か~」
「私らって攻撃系の『個性』じゃないからねぇ」
「必殺技は必ずしも攻撃である必要はない。例えば角取。角に乗って空中を移動するのも立派な技と言える。それと、小大が期末試験で俺を確保する時に使った方法とて、必殺技になりえる」
「必殺技とはいかなる状況でも自分に有利な状況へとすることが出来る技と考えてください」
「なるほど……」
「ん」
ブラドと13号の説明に、一佳と唯は納得するように頷く。
鉄哲はやる気に燃えており、その横で回原が呆れながら見ている。
「それでは午前の訓練内容を説明する!それは……『追いかけっこ』だ!」
全員が首を傾げる。
ブラドは全員の反応に頷いて、説明を続ける。
「これから2チームに分かれてもらう!その後、先攻が先にフィールド内に入り、その5分後に後攻チームに入る!」
「10対10……!?」
「そうだ。1ラウンド45分!先攻チームの勝利条件は『指定された出口から5人脱出すること』!後攻チームの勝利条件は『5人捕えて、指定の檻に投獄すること』!」
「半分か……」
「出口は先攻チームにのみ伝えられます。そして、注意してほしいのは『捕らえられた者は、仲間が救出すること』が出来ます」
ブラドと13号の説明に一佳達は顔を顰める。
「後攻チームはどこが出口かを先攻チームの動きから推測して、しかも捕まえた奴を逃がさないように警戒もしなきゃいけないのか……」
「厳し」
「ん」
「しかも半分逃げられれば負けってのもな」
「……面倒」
「それではクジでチームを決める!」
出席番号順にクジを引いて行く。
先攻チーム:鉄哲、宍田、鎌切、唯、里琴、物間、泡瀬、庄田、回原、鱗
後攻チーム:一佳、戦慈、柳、円場、骨抜、吹出、切奈、茨、ポニー、凡戸
となった。
「先攻厳しくね?」
「拳藤、骨抜、取陰の参謀組に、拳暴に塩崎もいるしな」
「頑張れば、なんとかなる!!」
「無茶言うなって鉄哲。ちゃんと作戦考えるぞ」
「下手したら10分もせずに負けますぞ」
「ん」
回原と泡瀬が腕を組んで顔を顰め、鉄哲が元気づけるように叫ぶが、鱗と宍田が危機感を露わにする。
そこに物間が肩を竦めながら、
「全員逃げるのは諦めるべきかもね。拳暴と塩崎を抑え込まないと、どうにも厳しいだろう」
「……戦慈は速攻で止めないと面倒」
「ん」
「しかし、拳暴と塩崎さんを止めるには、それこそ5人以上で挑まないと厳しいと考える」
「けどよぉ、拳暴達に気を取られてたら、拳藤や骨抜にだってやられかねねぇぞぉ?」
庄田と鎌切の言葉に、宍田や鱗達も顔を顰める。
戦慈で目立ってはないが、一佳のパワーとてかなりの脅威だ。骨抜の《軟化》も見た目では判断出来ないので、一度嵌まればそう簡単には抜け出せない。
もちろん、他の者達だって脅威である。
「まさに必殺技が欲しい時だね」
「今回は同意だな」
物間の言葉に回原も頷く。
その頃、戦慈達も作戦会議を進めていた。
「拳暴は巻空を何とか見つけてくれねぇか?巻空を抑えられれば、ポニーや取陰が上空に上がりやすくなる」
「物間も抑えねぇと《コピー》されれば、厄介だぞ?」
「そうだけど、あいつの《コピー》は5分が限界だからな。逆に言えば、物間は無視して他の連中を捕まえれば、あいつは無効化できる」
骨抜が戦慈に作戦を説明し、質問に答えていく。
「後は宍田だな」
「あいつの鼻は厄介だからねぇ」
「それは取陰と吹出でいけると思ってる」
「私が体をバラバラにして、匂いを分散させるってこと?」
「そ。で、吹出は匂いが出せる《擬音》とか出せねぇか?」
「う~ん……頑張ってみるけど、皆も被害出ちゃうかもよ?」
「まぁ、そこは頑張るしかねぇな」
「けど、それには誰がどこにいるか素早く把握しないと厳しいぞ?」
一佳が首を傾げる。
「今回は小型無線アリだし、頑張って連絡を密にするしかないな」
「じゃあ、ある程度それぞれ動く範囲をある程度決めておくか」
「だな」
「檻はどうするんだ?」
「逃げられたら厄介だよねぇ」
「向こうも小型無線持ってるし、気絶でもさせないとバレちゃうよ」
骨抜、切奈、一佳の頭いい集団の作戦会議に、なんとか円場、凡戸、柳も参加する。
「3人捕まえたら、防衛に力を入れよう。それまでは全員で出口を探ることが最優先だ」
「だな。多分向こうは拳暴と塩崎を一番警戒してるだろうから、2人は逆に目立って注意を引いてほしい」
「要は拳暴と茨は正面から暴れてくれってことだね」
一佳、骨抜、切奈の言葉に全員が頷く。
そして、訓練が始まり、鉄哲達が先にフィールドに入っていく。
出口は『フィールド右角端の鉄塔の下』。
檻は『フィールド左中央』に設置されていた。
『それでは……START!!』
耳からブラドの声が響き、全員が動き出す。
ポニーや切奈が早速空に浮かび、周囲の探索を始める。
すると、
ドドドオォン!!
突如、フィールドの一角が崩れ始める。
「オラアアア!!」
鉄哲の声が響き渡る。
「やっぱ鉄哲だね。どう思う?」
『微妙だな~。出口から目を逸らす囮かもしれないし、誘いかもしれねぇし。俺が行ってみる』
『大丈夫か?』
『潜っていけば、宍田の鼻にも引っかからないだろ』
切奈が体をバラバラにしながら、片目だけを動かして鉄哲の姿を確信して骨抜達に無線を送る。
骨抜が宍田を警戒して、地面に潜って鉄哲の偵察を引き受ける。
「じゃあ、こっちは引き続き他の連中を探そうかね!」
『俺も騒いで注意を引く。巻き込まれるなよ』
切奈は引き続き、周囲の探索をしようとしたところに、戦慈の声が無線機から届く。
直後、切奈の眼に工場地帯から何かが勢いよく飛び出してきた。
「オオオオオオオォォ!!!」
フルパワーまで体を膨らませた戦慈が空中で雄たけびを上げる。
周囲に衝撃波を放出して、周囲に自分の存在を示す。
「ひゃ~……!相変わらず凄いねぇ」
『あ!!里琴サンが出てきまぁシタ!』
「!! 里琴が拳暴を抑える?まぁ、それが一番か!」
『おい!どうすんだ!?』
円場が参戦するかどうか訊ねてきた。
「しばらく2人でやらせたら?あの2人の戦いは派手だろうし。それよりもその周囲を注意しといた方がいいよ」
『分かった!』
『拳暴!無理するなよ!』
『分かってる。あいつの厄介さは誰より知ってんよ』
「そりゃそうだ」
一佳の忠告に冷静な声で返す戦慈。
切奈はそれにケラケラと笑い、引き続き周囲の観察を続ける。
戦慈は地上に下りながら、迫ってくる里琴を見据える。
「里琴だって1人で俺を抑え切れるとは思ってねぇはず……。向こうもこっちと同じように他の連中をもっと引き付けたいってところか?」
戦慈は里琴の行動理由を推測していると、里琴が右腕を振り竜巻を放ってきた。
「……てぇい」
戦慈を呑み込んで囲い込むように迫ってくる竜巻に、戦慈は勢いよく前方に飛び出して、砲弾のように鉄筋を砕きながら猛スピードで竜巻の範囲から脱出する。
もちろん里琴がそれを読んでいないわけもなく、連続で竜巻を放ってくる。
ドパン!ドパン!ドパン!ドパン!
しかし、戦慈は足から衝撃波を放ってスピードを上げ、跳ねるように組み敷かれた鉄筋や鉄パイプを蹴って、スピードをほぼ落とさずに移動していく。
戦慈が蹴った鉄筋や鉄パイプは砕けるが、その周囲にはほとんど衝撃波が飛んでおらず、被害が出ていなかった。
「……!!」
里琴は仮面の下で僅かに目を見開く。
モニターで見ていたブラド達も僅かに目を見開いていた。
「拳暴の奴……!」
「衝撃波がほとんど出てませんよ!」
「林間合宿での戦いで見せたって奴か?」
「いや……あれは違う。が……それがきっかけで何かを掴んでいたのかもしれん……!」
戦慈の体から紅い蒸気は出ていないし、皮膚も赤くなっていない。
だから、今は通常状態の筈だ。
しかし、緑谷達が見たという姿がきっかけで、衝撃波のコントロール方法を掴んだのかもしれないとブラドは考えた。
ちなみに戦慈は、
(……うまく力が乗る様になったな)
と、本人も驚いていた。
神野区ではそこまで感じる余裕もなかったし、むしろ衝撃波を広範囲に放つことを意識していたので、全く気づいていなかった。
それ以降は暴れていないので、自分がどれだけ変化したのか試す機会がなかったのだ。
(なら……次は……)
戦慈は上空にいる里琴の姿を確認し、右拳を握り締める。
そして、両脚で踏み込んで、地面を砕きながら真上に跳び上がる。
ロケットのように空高く跳び上がった戦慈。
里琴は一瞬にして上を取られ、急ブレーキをかけて両腕を振るい、2本の竜巻を放つ。
「オオォラァ!!!」
ドッパアアァン!!
叫びながら右腕を捻って突き出すように振り抜いて、衝撃波を放つ。
放たれた衝撃波は、砲弾のようにうなりながら竜巻を抉りながら里琴へと迫る。
里琴は足裏の竜巻を強めて躱す。
衝撃波は4mほどの穴を作りながら、地面へと突き刺さる。
「……!!」
(まだ捻りはいるが、全力じゃなければかなり収束できる!次は……!)
戦慈は地面に下りながら、素早くジャブを2発放つ。
すると、バスケットボール大ほどの衝撃波が、里琴に向かって飛ぶ。その際、肘や体から衝撃波が出るも、今までのように周囲に被害を出すようなものではなかった。
里琴は衝撃波を避けながら、地上へと下りていく。
里琴は体を回転させながら、両手を大きく広げて両腕を伸ばした状態で勢いよく体を捻る。
指と指の間からそれぞれ竜巻を生み出し、計8本の竜巻を放つ。
「!!」
「……
8本の竜巻がうねりながら戦慈に迫る。
戦慈が両腕を構えて再び衝撃波を放とうとした時、
里琴の背後から大量のツルが襲い掛かった。
「!!」
「
ツルが纏まりながら里琴を覆い隠そうとする。
里琴は隙間から逃げ出そうとするが、突如何かに掴まれたように体が動かなくなった。
「……っ!!」
「《ポルターガイスト》インビジブルロック」
茨の隣に、柳が立っており両腕を里琴に突き出していた。
里琴は体が動かせなくなり、そのままツルに包まれながら縛られていった。
「里琴さんを確保しました」
『ナイス!』
「拳暴は他の所に行って」
『ああ。助かった』
『拳暴!そこから東に100mのところに鎌切と回原!私と円場で対応してるけど、ちょっと厳しいかも!』
『おう』
『こっちも鉄哲と鱗を固定した。誰か来てくんね?』
「里琴さんを檻に入れたら、向かいます」
『すまん。頼む』
茨と柳は連絡を入れて、一佳や骨抜達と素早く互いに指示を出し合う。
方針を決めた茨達はすぐに行動を開始する。
ツルの大玉の中では里琴が暴れている。
「急ぎましょう。同じ方法が里琴さんに使えるとは思えません」
「だね」
「……出せやー」
「諦めて」
茨と柳は駆け足で里琴を檻へと運ぶ。
一佳は両手を巨大化させた状態でドラム缶を投げたり、拳を振るう。
円場はその背後から《空気凝固》で一佳を援護する。
「わりぃ……!足引っ張ってるな!」
「それは言いっこなし!援護も十分助かってる!」
一佳と円場は攻めきれず、その場に留めることだけで精一杯だった。
ちなみに回原と鎌切は、
『ぬおおお!抜けろおおお!』
『だから、いきなり暴れるなって言っただろ!?』
『……捕まった』
『あははは!……ごめん。凡戸に捕まった』
『どうする、宍田!?』
『いやはや……少し対応する事案が多すぎますな』
『ん』
「どうすんだぁ!?」
「離脱するぞ!この状況はヤバイ!援軍もないし、出口も分かってないんだ!」
完全に混乱状態に陥っていた。
すでに4人捕まったようで、しかもその場所もバラバラで助けに行こうにもいけない。
しかし、出口も見つかってないので、逃げようにも逃げる方向も決められない。
「それにこれ以上戦ってると、拳暴か塩崎が来る!」
「もう遅ぇよ」
「「!!?」」
戦慈が2人の真横から現れる。
鎌切と回原は目を見開いて対応しようとするが、戦慈は一瞬で両肩を全力で回転させて猛ラッシュを繰り出す。
鎌切は腕に刃を生やし、回原は腕や体を旋回させて防ごうとする。
しかし、戦慈は拳が直撃する直前で引っ込ませて、衝撃波を繰り出す。
回原と鎌切は、全身に衝撃を浴びて吹き飛ばされる。
2人は背後の鉄柱に体を叩きつけられて崩れ落ちる。
戦慈は着地して、肩から白い蒸気を出しながら油断なく2人を見下ろす。
一佳と円場が駆け寄る。
「ふぅ……」
「助かったよ、拳暴」
「これで5人は越えたか?」
「多分ね。って言うか、拳暴。いつの間に衝撃波を抑えられるようになったんだ?」
「今日知った。林間合宿でのブチ切れが原因かもな」
「マジかよ……。もう強くなったのかよ……」
円場が呆れて、戦慈を見つめる。
その後、戦慈が気絶した回原と鎌切を運んで檻へと叩き込む。
そして、鉄哲、鱗も茨に運ばれてきて、檻へと入れられる。
宍田、唯、庄田が脱出し、泡瀬は迷い続けていた。
物間は凡戸の接着剤で固定されたまま放置されて、戦慈達の勝利となった。
あまりにも一方的だったので、もう一度チーム編成を行い、第2戦を行うことになったのだった。