『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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遅くなりました。そして、ちょっと短いです(__)
出張してまして、まだもう少し出張が残ってるので、もう少し亀更新かもしれません(__)


拳の七十三 仮免試験に向けて・その2

 特訓2日目。

 

 午前中は昨日同様、運動場γでチーム戦をすることになった。

 

「今日は5人チームでの戦闘訓練だ!チームはすでにこっちで決めているので、これから発表する!」

 

 ブラドがボードを取り出して、名前を呼びあげていく。

 

「Aチーム!回原、鎌切、拳暴、庄田、鉄哲!!」

「え!?マジか!?」

「おいおいぃ」

「……そう来るかよ」

「よっしゃあああ!!」

「拳暴以外は近接戦闘タイプ。拳暴も含めると搦手一切なしチームってことだね……」

「ああ。でもこれ、私達も一筋縄じゃ行かないかもな」

「ん」

 

 告げられたメンバーに、回原、鎌切、戦慈は顔を顰め、鉄哲は気合に叫ぶ。

 それに切奈と一佳も眉間に皺を寄せて、今回のコンセプトを推測する。

 

「Bチーム!泡瀬、円場、取陰、骨抜、凡戸!!」

「うお~……マジか~……!」

「今度は逆に搦手のみチームか……」

「まぁ、これならこれで」

「やりようはあるかねぇ」

「骨抜と取陰がいるのはありがてぇな」

 

 泡瀬が慄き、一佳が腕を組んで考え込む。

 しかし、骨抜と切奈は特に驚かずに、すでに作戦を考え始めていた。

 その様子に円場は心強さを感じていた。

 

「Cチーム!拳藤、小大、宍田、角取、吹出!!」

「よろしくな」

「ん」

「頑張りましょうぞ!」

「イエーイ!」

「ガンガン行こうぜ!」

「バランスはいいけど……」

「嵌まらなかったら、一気に崩れる感じもあるな」

 

 一佳達は心地いい挨拶をする。

 切奈と骨抜はすかさず分析する。

 

「Dチーム!塩崎、巻空、物間、柳、鱗!!」

「よろしくお願いします」

「……ん」

「このチームもこのチームで癖があるな~」

「誰を軸にするかしっかり決めないとね」

「茨か里琴か、だね」

「まずはAチーム対Bチームから始める!一試合30分!制限時間内に全員捕縛、または戦闘不能にすること!そして、終了時に多く残っているチームの勝ちだ!10分後に始める!AチームとBチームは所定位置に移動しろ!」

 

 ブラドが説明し、戦慈達はそれぞれに動き始める。

 

 戦慈達は歩きながら作戦会議を行っていた。

 

「理想は骨抜と取陰をほぼ同時に捕まえることだよな」

「けどよぉ、取陰は体を分裂させてるよなぁ」

「ならば、最優先は骨抜君だね」

「よっしゃあ!速攻で行くぜ!!」

「行くな。骨抜は待ち構えてるに決まってんだろ。しかも、泡瀬、円場、凡戸までいる。トラップ仕掛け放題だ」

「だよなぁ。どうするべ?」

「……突っ込んだら罠。だが、待ち構えても骨抜が出てくるだけだ。あいつは地面に潜って移動できるしな」

 

 戦慈は腕を組んで顔を顰める。

 

 骨抜の厄介なところは踏むまで、どこが柔らかいのか分からないことだ。

 更に範囲をある程度選ぶことも出来る。

 

「……俺が骨抜に速攻を仕掛けるしかねぇか……。お前らは全員上に登れ。地面にいたら、骨抜の餌食になりかねねぇ」

「だな」

「任せろぉ」

「やってやろうぜぇ!!」

 

 鉄哲の気合の言葉に、回原達が頷く。

 戦慈はそれを横目で見ながら、

 

(問題は……骨抜と取陰が俺が思いつくことを考えてないわけねぇってことだな……)

 

 戦慈は一抹の不安を抱えながら、開始位置に向かうのだった。

 

 

 

 一佳達はモニターがある控え場所で試合が始まるのを眺めていた。

 

「正面戦闘チーム対搦手戦闘チーム。メンバーがメンバーだけにちょっと想像出来ないな……」

「拳暴氏がどう動くかでしょうな」

「いや、骨抜がどう動くかだと思う」

 

 鱗が悩まし気に腕を組みながら言い、宍田が戦慈の名前を挙げる。

 しかし、それを一佳が否定する。

 吹出が顔に『?』を浮かべて、

 

「骨抜の方なの?」

「拳暴は骨抜を狙うしかないんだよ。骨抜の『個性』を力づくで突破できるのは拳暴だけだからね」

「そうだね。骨抜を最初に倒さないと、鉄哲達がまともに動けないのさ」

「けど、それを切奈と骨抜が考えてないわけがない。だから、骨抜がどう動くかで拳暴達の動きは変わらざるを得ない」

 

 一佳と物間の説明に、周りの者達は納得するように頷く。

 

「拳暴は今、迷ってるだろうな。速攻を仕掛けても、無視されたら鉄哲達が一気にやられるかもしれないし」

「かと言って、待ち構えていても同じですな。全員をカバーするのは、いくら拳暴氏でも難しいでしょうからな」

「ん」

「そして、後は……鉄哲が作戦を立てても、その通りに動くかどうかかなぁ!!」

『あ~……』

 

 最後の物間の言葉に、その場にいた全員が納得の声を上げてしまう。

 鉄哲が熱くなれば飛び出していくだろうことは想像に難くない。

 

「拳暴のチームは索敵能力もない。それに……拳暴は頭は悪くないし、咄嗟の判断力とか、人を引っ張る力はあるけどさ。けどぶっちゃけ、参謀としては骨抜、拳藤、取陰ほどじゃあない。回原達も言わずもがな。鉄哲を抑えるだけで精一杯かもね」

「そうなれば、骨抜達の思うつぼってわけか……」

 

 鱗は腕を組んで眉間に皺を寄せる。

 

『そろそろ始めるぞ!』

 

 ブラドがマイクを握り、ステージに声が響き渡る。

 それに一佳達も話を止めて、モニターに注目する。

 

『それでは……START!!』

 

 開始が告げられて、戦慈はさっそく【ドラミング・ドープ】を使って、体をフルパワーまで膨れ上がらせる。

 

「ふぅー……!」

「お~。ホントに衝撃波出ねぇな」

「おい回原ぁ。とりあえず、上に上がんぞぉ」

「おっと、いけね」

 

 回原、鎌切、庄田、鉄哲は鉄パイプを登って、地面から離れる。

 戦慈は地面に立ったまま、周囲を見渡す。

 

「……ちっ。悪手かもしれねぇが……」

 

 戦慈は小さく舌打ちをすると、衝撃波と共に勢いよくジャンプして、一気に上空へと跳び上がる。

 跳び上がった戦慈は周囲を見渡す。

 

 見える範囲で、切奈と思われる体のパーツは見えなかった。

 

「流石に隠れてやがるか……。巻き込まれても、恨むなよぉ!!」

 

 戦慈は右拳を握り締めて、振り被る。

 それを鉄パイプに隠れて見ていた切奈は、

 

「げっ!?やばっ!?」

 

 慌ててパーツを集めて、避難する。

 

「オォラアアアァ!!!」

 

 戦慈は腕を振り抜いて、フィールド中央に向けて衝撃波を放つ。

 嵐が吹いたように工場が吹き飛び、周囲に鉄の瓦礫が吹き荒れる。

 

 戦慈は地面を下り立って、吹き飛ばした個所の中心に一気に移動する。

 

「……流石にこれ以上は破壊できねぇな……」

 

 今のは一般人がいないと分かっているからこそ、吹き飛ばすのに躊躇しなかった。

 しかし、これ以上は不必要な破壊と言われる可能性が高い。

 

 戦慈は周囲を見渡して、骨抜達の姿を探す。

 

「……これでも誰も出て来ねぇか……。やっぱ鉄哲の方か?」

 

 一度鉄哲達の元に戻ろうと考えた時、突如足元が柔らかくなって沈み始める。

 

「っ!?地中か!」

 

 戦慈は左拳を握って、地面に向かって振り被ろうとする。

 その直後、円場が戦慈の背後から現れて、両手で四角を形作って思いっきり息を吹く。

 すると、戦慈の体を透明の箱が覆った。

 

「!!」

「よっしゃ!出来たぜ、新技【エアプリズン】!」

 

 戦慈の拳は力が乗る前に壁に阻まれる。

 円場がガッツポーズをして、すぐに背を向けて走り出す。

 

 戦慈は更に体が沈み、腰まで浸かる。

 

「くっ!オラァ!」

 

 戦慈は真上に向かって拳を振り、空気の箱を壊す。

 そして、すぐに脚を振り抜いて地面を吹き飛ばそうとしたが、力を入れようとした瞬間に地面が固まって脚が動かせなくなった。

 

「くそっ!」

 

 戦慈は顔を顰めて、地面を砕こうと拳を握る。

 すると今度は白い液体が戦慈の体に降りかかる。

 

 凡戸の《セメダイン》だ。

 接着剤はすぐに乾燥して、戦慈の両手は拳状態で固定されて、地面に埋まっている腰部分が動かし辛くなった。

 

「この……!!」

「まだまだ行くよぉ」

 

 凡戸は更に接着剤を戦慈に降りかけていく。

 接着剤はすぐに固まっていき、戦慈の動きを阻害していく。

 しかも、仮面にも接着剤が付着して、視界も塞がれてしまう。

 

「ぐっ……!?」

「まだまだ行くぜ!」

「!?」

 

 泡瀬と円場が大きい鉄パイプを転がしながら現れ、戦慈の右腕にぶつける。すぐさま泡瀬が戦慈の右腕を巨大鉄パイプを接着させ、更に鉄パイプと地面も接着する。

 更に反対側から骨抜と凡戸も巨大な鉄パイプを転がして、右腕同様に戦慈の左腕と地面を固定されてしまう。

 そして、トドメとばかりに凡戸が接着剤を上から降りかけて行く。

 

「お……まえ…らぁ……!!」

「まだまだ行くぞぉ!!」

 

 円場は空中に足場を作って、戦慈の真上に移動する。

 それと同時に骨抜は地面に潜って移動し、泡瀬も走り出す。

 

 円場は戦慈の両腕と真上に、5重の空気の壁を生み出して障害物を造る。

 そこに更に凡戸が接着剤をかけて、戦慈の動きをとことん阻害する。

 

 

 

「容赦ないな~」

「ん」

「まぁ、確かにこれくらいしないと拳暴は止められないよな……」

 

 柳、唯、一佳は骨抜達の徹底ぶりに苦笑するしかなかった。

 既に戦慈の姿は見えず、不気味なオブジェがそこにあった。

 

「拳暴氏は衝撃波をあの状態から出せるのですかな?」

「いや……流石に無理じゃないか?」

「……ん。……無理」

 

 宍田の疑問に、一佳は首を傾げながら里琴を見て、里琴も頷く。

 

 流石に体を動かせない状態では、あれだけの拘束を吹き飛ばす衝撃波は放てない。

 指を弾こうにも接着剤で固定されており、関節も接着剤で動かし辛くなっている。

 

「そういえば鉄哲達は?」

「切奈サンが必死に足止めしてマース!」

 

 モニターには切奈の30にも上るパーツが飛び乱れて、鉄哲達に襲い掛かっていた。

 鉄哲達は的が小さいため、対応しようにも攻撃が当たらなかった。

 

「くっそぉ!!」

「鉄哲!飛び出すなよ!」

「けどよ、回原ぁ!このままじゃあ、状況が変わらねぇぞぉ!」

「拳暴の状況も分からない!戦闘音も聞こえないのは少し不自然と考える!」

「拳暴がやられたってのか!?くそぉ!!助けに行かねぇとぉ!!」

「無茶言うな、鉄哲!この状況じゃ俺達だって危険だぞ!?って、待てってぇ!!」

「うおおおおおお!!!」

 

 鉄哲は無理矢理突っ込んで、切奈の包囲網を突破して地面へと飛び降りる。

 回原達がそれを止めようとしたが、

 

「ハイ、しゅーりょー」

 

 切奈の声が聞こえた直後、鋼質化した鉄哲は飛び降りた勢いもあり、一気に胸元まで地面に体が沈む。

 

「がぼぼっ!?」

「鉄哲!?」

「マズイ!!骨抜だ!!」

「逃げるぞぉお!?」

 

 鎌切が逃げようとした瞬間、地面が柔らかくなったことで足場が傾いて、バランスを崩した。

 

「くっ!」

「このっ!」

 

 鎌切達はすぐにジャンプして移動をするが、そこに再び切奈のパーツが飛び掛かってきた。

 回原は体を回転させ、鎌切は刃を生やして抵抗するが、庄田は耐えきれずに押し飛ばされて地面に落とされる。

 

「うわっ!?」

 

 庄田はどうにか大勢を立て直したが、両足から地面に落ちて鉄哲同様、地面に埋まってしまう。

 

「やべぇな!!どうするよ!?」

「今は逃げるしかねぇだろぉ!!」

「そうはさせねぇよ!」

「げっ!?」

 

 回原の目の前に、泡瀬が鉄塊を携えて跳び出してきた。

 回原は目を見開き、泡瀬は回原に詰め寄りながら素早く両腕を動かす。

 

「新技!!早業着工【ウェルドクラフト】!!」

 

 回原の四肢と脇腹に鉄塊が《溶接》されて、更に周囲の鉄骨などに接着されて体を固定されてしまう。

 

「マジかよ!?」

「これで後1人!!」

 

 回原は体を完全に固定されてしまい、体を《旋回》しようとすると、皮膚が引っ張られる感覚がして発動を慌てて止めた。

 

 鎌切は歯軋りをしながら逃げ回るが、ジャンプして鉄骨を跳び移ろうとした瞬間、空気の箱に閉じ込められて顔を壁にぶつける。

 

「ぐべ!?な、なんだぁ!?」

「解除!」

「うおぉ!?」

 

 驚いていると、突然解除されて地面へと落ちて行く鎌切。

 急いですぐ近くの鉄骨に刃を伸ばして突き刺し、地面に落ちないように堪えようとする。

 

 しかし、そこに白い液体が降り注いで、鎌切の体に直撃する。

 

「ぶへぇ!?こりゃあ、凡戸か!」

「上手く行ったねぇ」

「ああ?っ!?刃が抜けねぇ!?」

 

 鉄骨に刺した刃が、接着剤で固められて抜けなくなったのだ。

 鎌切は鉄骨を切って逃げようとしたが、真上から泡瀬と円場が飛び降りてきて、思いっきり飛び蹴りを浴びせられる。

 

「げふぁ!?」

 

 鎌切は勢いよく地面に落ちて、やはり柔らかくされた地面に埋まる。

 直後、地面が硬くなり、鎌切は顔と両脚だけ飛び出した形で地面に固定された。

 

『……もうAチームは誰も動けんようだな。そこまで、勝者Bチーム!!』

 

「よっしゃあああ!!」

「拳暴に勝ったアアア!!」

 

 円場と泡瀬がガッツポーズをして叫ぶ。

 骨抜と凡戸は鎌切達を救出しており、切奈は体を戻して戦慈の下へと向かう。

 

「お~い。拳暴~、大丈夫か~い?」

「……何とかな」

「いやぁ、悪いね。あんたを押さえ込むにはこれくらいしか思い浮かばなくてさ」

 

 切奈はケラケラと笑う。

 戦慈は顔を顰めて、

 

「……俺がああやんの読んでやがったんだろ?」

「可能性の1つとしてね。私達相手に視界が悪いのは嫌だろうからね。どこかで仕掛け来るとは思ってたよ」

「だよな……。くそっ」

「まぁ、やらないならやらないで、鉄哲を挑発し続ければいいだけだしね。私達相手に孤立するのは出来る限り避けたかっただろうし」

「はぁ……。やっぱ俺の考えた作戦じゃあ限界があったか……」

 

 その後、戦慈は骨抜によって救出される。

 鉄哲達と合流し、待機場所へと向かう。

 

「拳暴、すまねぇ……!!」

「いや、俺も目論見が甘かったし、過信してた部分もある。作戦を立て直すぞ」

「そうだね。他のチームは搦手も攻撃も出来るチームだ。今のままじゃ、また一方的だよ」

「このメンバーで考えられるコンビネーション作らねぇとなぁ」

「だなぁ。これで仮免試験になったらヤバいぞ」

 

 戦慈達はすぐに反省会を始め、残りのチームとの戦闘に備えるのであった。

 

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