『拳』のヒーローアカデミア!   作:岡の夢部

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遅くなりました(__)


拳の七十四 異端児と『仮面』

 午後からは昨日同様『個性』伸ばしと必殺技開発に従事した戦慈達。

 

「よし!!今日はここまでだ!!」

「ふぅ~……」

 

 特訓を終えた戦慈は、大きく息を吐く。

 そして、コスチュームの状態を確認する。

 

 やはり手甲には大きなヒビが入っており、ブーツも底が欠けたり穴が空いていた。

 

「ちっ……。やっぱコスチュームの問題は残ってやがるか……」

 

 衝撃波をコントロール出来るようになったことで、大きく破れる事は無くなったものの、逆に一部分に負荷が集中するようになったのだ。

 特に一番衝撃波を放つことが多い手足の装備の損壊は、前以上に早くなったのだ。

 

「……手甲とブーツくらいなら、サポート科に相談すりゃなんとかなるか?」

「どうしたんだ?」

「あん?」

「あ。また手甲割れたんだねぇ」

「ブーツもボロボロデェス」

「まぁ、前から壊れやすかったもんね」

「ん」

 

 サポート科の事を思い出していると、一佳達が顔を覗き込んできた。

 すぐに戦慈の手足の装備の状態を見て、それぞれコメントする。

 そこに里琴が戦慈の肩の上に座り、

 

「……サポート科行く」

「降りろよ」

「……私も頼みたいことがある」

「聞けよ」

「なに頼むんだ?」

 

 戦慈の苦情をサラッと無視する里琴と一佳達。

 戦慈は仮面の下で青筋を浮かべながら、腕を組んで黙り込む。それをさりげなく唯がポンポンと戦慈の腰を叩いて宥める。

 

「……マスク。……毒防いだり、高速飛行しても息苦しくならないように」

 

 里琴の言葉に一佳達は顔を引き締める。

 それは間違いなく林間合宿でのことを指していたからだ。

 そして、それは一佳達にとっても他人事ではない。

 

「……そうだな。私達もちょっと相談してみるか」

「ん」

「じゃあ、サポート科の工房行こうか」

 

 ということで、結局全員で工房に向かうことになった。

 もちろん里琴は戦慈の肩の上に乗ったままである。

 

「……工房ってこの人数入れんのか?」

「まぁまぁ。無理だったら、順番でいけばいいよ。それに私らは里琴と同じでガスマスクだし」

「と言っても、切奈さんの場合は少し難しいのでは?」

 

 切奈が苦笑しながら言い、茨が首を傾げる。

 ガスで倒れた切奈や茨にとっても、対策は必須である。

 難しいのは切奈の『個性』の場合、ただマスクを作ればいいわけではない。分裂・再生しても機能を維持できるようにしなければならないので、中々に手間がかかる開発になる可能性があるのだ。

 

「まぁ、駄目なら駄目で、考えるしかないね」 

 

 そして、校舎内にあるパワーローダーの工房にもうすぐ着くというところで、

 

 

ドオオォォン!!

 

 

 突如、工房と思われる扉が爆発して吹き飛んた。

 運よく戦慈達は誰も巻き込まれなかったが、全員が足を止めて唖然とする。

 煙が廊下を覆っていき、里琴が弱めの竜巻を放って、煙を吹き飛ばしていく。

 

 すると、廊下に2人の人物が倒れていた。

 1人はパワーローダー。もう1人はピンク色の髪をした女性。

 

 一佳達は恐る恐る近づいて、声を掛ける。

 

「だ、大丈夫ですか……?」

「……フフフ、大丈夫ですよ。発明に爆発はつきものですから」

「そんなわけないだろオォ。昨日と言い、いい加減にしなよ。発目!!」

 

 2人は何事もなかったかのようにムクリと起き上がる。

 そして、パワーローダーはピンク髪の女性に怒鳴るが、女性は全く堪えた様子もなく、笑みを浮かべていた。

 女性は一佳達に顔を向けて、

 

「突然の爆発失礼しましたぁ!おや?あなた方は体育祭で……え~っと……全員、お名前忘れましたぁ!」

「……うん、まぁ自己紹介したことないからな」

「では!私、ベイビーの開発がありますので!!」

 

 グリンと工房に戻っていく発目に、一佳達は唖然とするしかなかった。

 

「発目!!先に片づけからするように!!本当に出禁にするよ!!」

「ごめんなさい!!」

「なんか……凄い奴だな」

「それでも体育祭では随分スゴイアイテム使ってたよね」

「空飛んでたもんね。緑谷達」

 

 パワーローダーに怒鳴られて、元気よく謝る発目。

 それに一佳達は苦笑しながらも、体育祭で使っていたアイテムを思い出していた。

 

 体育祭では本人が開発したアイテムしか使用できないので、騎馬戦で使っていたアイテムは全て発目が開発したものだ。

 麗日の『個性』を使っていたとはいえ、戦慈達も想像以上に追い詰められた。

 

 パワーローダーは一佳達に顔を向けて、

 

「で、君達はコス変の話かな?」

「はい。まずは時間かかりそうな拳暴か――」

「興味あります!!」

「うわぁ!?」

「ん」

 

 片づけをしていた発目が勢いよく一佳に詰め寄る。

 一佳は驚いて、隣にいた唯に思わず抱き着く。

 

「発目!そうやって昨日もA組の連中に迷惑をかけただろう!先に片づけを済ませなさい!」

「ごめんなさい!」

 

 発目は拳を振り上げたパワーローダーを見た瞬間、ダッシュで片づけに戻る。

 パワーローダーはため息を吐いて、戦慈達に向き直る。

 

「すまないね。で、拳暴君はどこを変えたいんだい?小さい改良なら、こっちでやって後でデザイン会社に報告するだけだけど、大きな改良となるとこっちで申請書を書いて会社に依頼する形になる。その場合、大体3日くらいかかるよ」

「俺はガントレットとブーツだ。衝撃波で壊れちまうんだ。取陰のコスチュームみたいに再生するか、もう少し強度を上げてほしい」

 

 戦慈の言葉にパワーローダーは顎に手を当てて考え込む。

 

「ふむ……。君はそういえば、以前からコスチュームの強度に悩んでいるとブラドキングから聞いたことがあるね。君の『個性』はパワーも強いし、体の大きさも変わるからね」

「I・アイランドで会った波豪って言うデザイン会社の社長にも、難しいとは言われた。だから、無理なら無理でそれでもいい」

「いや、実はね。君のコスチュームに関しては、デザイン会社から連絡が来てるんだよ」

「あ?」

「デザイン会社から?」

 

 パワーローダーの言葉に、戦慈や一佳達は首を傾げる。

 

「もし君がコス変を希望するならば、『いっそ全部改良させてもらいたい』とね。もちろん、今のデザインは出来る限り維持するとのことだ」

「なんでまた?」

「この半年間で君の『個性』は随分と成長しただろ?ニュースにもなっていたしね。それで『今のコスチュームでは耐えきれないのではないか?』と議論になっていたらしいよ」

「へぇ~」

「それでまだ公表されてはいないが、I・アイランドのエキスポで発表予定だった技術がいくつか世界のデザイン会社でも利用を認められたそうなんだ。それを使えば、君のコスチュームの問題もある程度改善できるかもしれない」

「おぉ!!」

 

 一佳や切奈達は、戦慈のコスチューム問題が解決するかもしれない可能性に喜ぶ。

 戦慈は腕を組んで、

 

「ってことは、それが出来るまで待ってればいいんだな?」

「そうだね」

「分かった。じゃあ、俺の用事は終わりだな」

 

 戦慈は頷いて、肩の上にいた里琴を無理矢理下ろす。

 そして、一佳達の後ろに下がる。

 

 すると、後ろから誰かに抱き着かれた。

 

「あ?」

「ふむふむ。なるほど……」

 

 戦慈はもちろん、里琴達も聞こえた声に振り返る。

 

 そこには発目が戦慈に抱き着いて、体のあちこちに触れていた。

 

「な、なにしてるん…だ?」

「フフフ。体に触れてるんですよ」

「……辞世の句を読めると思うな」

「ん」

「へいへい、ストップ。落ち着きなよ、里琴」

「唯と一佳も」

 

 里琴が右手を発目に向けて、切奈が慌てて後ろから抱き着いて宥め、同じく瞳から光を消している一佳と唯を柳や茨が宥める。

 戦慈は頬を引きつかせているが、流石に振り払うことなど出来なかった。

 

「素晴らしく引き締まってますねぇ。そんなあなたには……」

 

 発目は素早く戦慈の両腕になにかを取り付ける。

 

「このベイビー!『ブラストアーム』!!」

 

 戦慈の両前腕に真っ白なガントレット型の機械が取りつけられる。

 手の甲の部分には発射口のような3つの穴が空いていた。

 

「腕をカバーして、更に振り抜いた勢いで手の甲の穴から空気砲を放つハイテクっ子です!第54子です!」

「自前で衝撃波を出せるからいらん。しかも、手がデカくなりゃ壊れるぞ」

「しかし、これならば大振りしなくても空気砲を出せますよ!」

「それはそれでありがてぇが、今はいらん」

「そうですか……」

 

 発目はややしょんぼりして、戦慈の腕からアイテムを外す。

 それをパワーローダーは小さくホッと息を吐いて、里琴達を見る。

 

「で、次は?」

「里琴」

「……ん。……マスクが欲しい。……ガス防いだり、高速飛行しても息苦しくならない奴」

「なるほど……。林間合宿でのことか……」

「で、私達も欲しいなって。ただ、それぞれのコスチュームや『個性』に合わせないといけないので」

「もちろん。とりあえず、まずコスチュームの説明書出して。それでコンセプトを確認して、こっちで出来るかどうか判断するよ」

「……ん」

 

 里琴や一佳達はコスチュームの説明書を取り出して、パワーローダーに渡す。

 すると、

 

「ならば、これはどうでしょう!?」

 

 と、発目が何かを持って里琴の前に現れた。

 手には機械仕掛けのマスクが握られていた。

 

「このベイビー!常時空気清浄機付きガスマスク!」

 

 あっという間に里琴の口元にマスクが装着される。

 

「常にマスク内の空気を清浄に保ち続けてくれる電動ガスマスクです!第61子です!どっ可愛いでしょう!」

「これは……うん」

「いいんじゃない?」

「それではスイッチオン!!」

「なんで外部からの起動?」

 

 発目がマスクのスイッチを入れる。何故かそのスイッチが発目の右手に握られており、柳がそれをツッコむも無視される。

 

 キュイィンとマスクから音がして、マスクの中に風を感じ始める。

 里琴も最初はいい感じだと思っていたが、

 

キュイイイイイイィン!!!

 

「……なぁ。なんか音が強くなってないか?」

「ん」

「大丈夫なのですか?」

 

 徐々にマスクの機械音が大きく、勢いを増していくことに一佳達は不安そうに眉を顰める。

 里琴も嫌な予感がしてマスクを外そうと、手でつかんだ時、

 

 

ギュイイイイイイイイイン!!!

 

 

 と、明らかに異常な音を発し始めて、里琴は口の中が掃除機に吸われたように圧を感じた。

 慌てて外そうにも吸引力が強すぎて全く口から離れなかった。

 

「……!?!?!?」

「「里琴!?」」

「ん!?」

 

 里琴はマスクを掴んだまま、床を転がり足をバタバタさせる。

 一佳達が慌てて、近寄ってマスクを外そうとするがビクともしなかった。

 戦慈が手を伸ばしてマスクを掴み、一気に引っ張ってマスクを引き剥がした。

 

「里琴!大丈夫か!?」

「……奴の辞世の句を聞かせろ」

「どうやら空気清浄機の吸引回路をミスったようです!ごめんなさい!!」

「もうその謝罪はただの口癖だよね?」

「ごめんなさい!!」

 

 ぐったりと一佳に抱かれながら里琴は発目に恨み言を言う。

 発目は謝罪するも、あまりにも明るく言うので、切奈はもはや発目の謝罪が勢いだけであることを見抜いた。

 

「発想はいいみたいだけど、失敗も半端ないね」

「デンジャラース……」

「失敗は成功の元と言いますが……」

「んーん」

「周りに被害が出たら流石にそんなこと言ってらんねぇだろ」

 

 柳達も発目に呆れる。

 しかし、本人は全く堪えておらず、マスクを手にして、そのまま作業台に向かった。

 パワーローダーは大きくため息を吐く。

 

「はぁ……あの子は恐ろしいまでに自分本位なんだ。失敗も次の進歩への糧としか思っていないんだよ。君達への被害も、完成への協力としか思ってないだろうね」

「それは駄目だろ」

「けど、だからこそ彼女には多くの発想が生まれ、発明が出来る。彼女は常に『良い物を作りたい』。それだけで動いている。それは……きっといつか何かを引き起こす。かのエジソンやアインシュタインのようにね」

「……けど、巻き込まれるのはなぁ」

「確かにそれは私も頭を悩ませてはいるけどね。……けど、仕方ないのさ。本当に使えるかどうかは、彼女には分からないのだから」

 

 発目はヒーローでもなければ、ヒーローを目指す者ではない。

 なので、どれだけアイテムを発明しようにも、活かせるかどうかは必要とする者でなければ分からないのだ。

 失敗かどうかも試さなければ分からない。

 しかし、発目では試すにも限界がある。

 

 結果、誰かに生贄になってもらうしかない。

 

「君達だって、本当に必要なアイテムなら協力するだろ?例えば必殺技の開発で誰かに協力してもらうだろ?それと同じさ。まぁ、彼女はその事前の許可を言わないから問題なのだけどね」

「そう言われれば……納得は出来るけど……」

「しっくりは来ないねぇ」

「ん」

 

 パワーローダーの言葉に頷けるようで頷けない一佳達。

 

「とりあえず、残りの子達の要望も聞こうか」

「あ、はい」

 

 ようやく一佳達の話も進み、数日待つことになったのだった。

 その時、

 

「あ」

 

プシューーーー!!!

 

 発目の手元から黒い煙が勢いよく噴き出す。

 

「「え!?」」

「ちょっ!?」

「ワッツ!?」

「ん!?」

「バッ!発目ぇ!!お前、また――!!」

 

ドオオオォォン!!

 

 一佳達は慌てるも一瞬で煙に呑み込まれる。

 一佳達は急に誰かに引っ張られたかと思ったら、直後爆発する。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

「だ、大丈夫か!?」

「ん」

「思ったより衝撃が来なかったねぇって、拳暴!?」

「え!?」

 

 煙に咳込みながら、各自の無事を確認する。

 切奈は音の大きさのわりに衝撃も痛みもないことに首を傾げていると、目の前に戦慈が腕を広げて背中で庇ってくれていたことに気づく。

 

「問題ねぇよ」

 

 戦慈は背中から白い煙を上げながら、一佳達から離れる。

 一佳達は慌てて戦慈の背中を確認し、コスチュームが破れており、火傷したように皮膚が赤くなっているのを確認した。

 

「拳暴……!」

「だから、問題ねぇ。この程度ならすぐに治る。それより、あの女の方が生きてるか?」

「あ!」

「……生きてる。……ちっ」

「舌打ちしない」

「怪我は……していないようです」

「なんで?」

 

 床に倒れている発目は汚れてはいたが、怪我は一切していなかった。

 それが不思議でたまらない一佳達だった。

 

 その直後、物陰に隠れていたパワーローダーの雷が落ちて、一佳達は工房を後にするしかないのであった。

 

 

 

 着替えて、寮に戻った一佳達はソファに座り込む。

 

「はぁ~……疲れた……」

「特訓より疲れたね」

「ん」

 

 戦慈は先にシャワーを浴びに行っている。

 一佳達は共有スペースにある冷蔵庫から、戦慈が作り置きしているコーヒーをコップに注いで思い思いに飲む。

 里琴は自室からカフェオレを持ってきている。

 

「しばらくは……工房に行かなくていいかな」

『うんうん』

 

 一佳の言葉に全員が頷く。

 それをテーブル側で聞いていた骨抜、回原、宍田、吹出、鉄哲は首を傾げる。

 

「そんなに大変だったのか?コス変の相談」

「いやぁ~、そこじゃなくてねぇ」

 

 切奈はソファのもたれかかってだらけたままで、発目の事を話す。

 それを聞いた回原達は顔を顰める。

 

「俺……行くの止めようかな」

「俺も」

「私や鉄哲氏はコス変しようがないですから無縁ですな」

「だな」

「僕もあまり関係ないな」

 

 宍田、鉄哲、吹出はコスチュームと『個性』はほとんどかかわりがないので、変える理由がない。

 今の所、困ったことはないというのもある。

 

 骨抜は酸素ボンベが付いているので、場合によっては工房に厄介になることがあり、回原は体に巻くサポートアイテムで相談したいことがあった。

 しかし、今の話を聞いて不安を覚える2人だった。

 

「まぁ、パワーローダー先生がいるから、勝手に改造することはないと思うよ?そこらへんはしっかりしてるって言ってたし」

「マッドサイエンティストではないね」

「しっかりと要望を言えば、考えてはくれてる」

「ん」

「素晴らしい奉仕の心と向上心をお持ちの方でした」

 

 一応誤解されないように発目をフォローする一佳達。

 先にしっかりと要望を全て伝えれば下手な暴走はしないし、未完成品を押し付ける事もしないらしい。

 そこだけが唯一の救いだとパワーローダーが言っていた。

 

 そこに戦慈が首にタオルをかけた姿で戻ってくる。

 

「あ、拳暴。背中はもう大丈夫なの?」

「問題ねぇ」

「さっすが」

「……カフェオレ無くなる」

「……はぁ。わぁったよ」

 

 タンブラーを差し出す里琴に、戦慈はため息を吐いてタンブラーを受け取る。

 その時、ふと一佳が、

 

「なぁ、拳暴」

「あん?」

「寮の中まで仮面しなくてもよくないか?ここにいる全員はもう知ってるし、ぶっちゃけ見慣れてるしさ」

 

 一佳の言葉に、そこにいる全員が戦慈の仮面に視線を向ける。

 戦慈は仮面の下で眉を顰める。

 そこに里琴が、

 

「……外せ外せー」

「……お前なぁ……」

 

 戦慈は呆れるが、里琴はフワリとソファから浮かび上がって戦慈の肩に下りる。

 そして、戦慈の仮面を奪って、肩から飛び降りる。

 

「テメ……!」

「……家でくらい外せ」

 

 里琴は仮面をポケットに仕舞って、ソファに戻る。

 戦慈は額に青筋を浮かべるが、すぐにため息を吐いて項垂れる。

 

 一佳達はその姿に笑い、

 

「まぁ、いいじゃないか」

「そーそー。別に知らない人が来るわけでもないしさ」

「ん」

「寮の中だけだったら、別にいいんじゃね?」

「確かに見慣れちまったしな!」

「そもそも、そこまで怖くねぇだろ。轟だって片目だけど火傷してるし、緑谷の手だって傷だらけだしな」

「……はぁ」

 

 戦慈は再びため息を吐いて、諦めたのかキッチンに向かう。

 

 その後ろ姿を見送った一佳達は、顔を見合わせて微笑む。

 里琴もポケットから仮面を取り出して、大事そうに撫でながら機嫌がよさそうに両足をブラブラとさせている。

 

 荒療治かもしれない。

 しかし、やはり仮面越しはどこか寂しい。

 

 もちろん、それで戦慈の印象が今更変わることはない。

 それは裏を返せば、仮面がなくても印象が変わることはないということに他ならない。

 

 ならば、無い方がいい。

 

 大好きな人の素顔を見て、過ごしたい。

 

 その想いは、当然のことではないだろうか。

 

 傷痕がある。

 

 それがどうした?

 

 その程度で、この想いが消えることは絶対にありえない。

 

 それだけは自信を持って言える。

 

 

 彼女達は、それを口にすることはなくとも、同じ想いを抱いていた。

 

 

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