転生したらヤムチャがリボンズになった件   作:GT(EW版)

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 前回はヤムチャ密度が低すぎたのでかなり反省しています。ちょっと手を抜いてしまいました。
 しかし、今回のヤムチャ密度は高いです。
 過去最大人数のヤムチャが出ます。
 ヤムチャでなくともみんなヤムチャなのでどうぞよろしくお願いいたします。


YAMUCHA

 ヤムベイドたちが各地から蒐集した戦闘経験値。

 ビッグゲテスターの科学力。

 ドクター・ゲロの科学力。

 界王神の遺体。

 ポタラ。

 そして、サイヤパワーの回収。

 

 リボンズヤムチャの計画に必要な条件は、概ね揃ったと見ていいだろう。できれば老界王神の力も研究したかったところだが、この時点でも彼には既に神を超える算段がついていた。

 特に最後のサイヤパワーの回収については色々と想定外なこともあったが、結果的に最高の形で手に入れることができたので良しとしよう。

 ヤムチャアニュー、そしてトランクスは最高の働きをしてくれた。リボンズヤムチャの想定よりも、あの二人は見事な踊りを披露してくれたものだ。

 

「完成しました、リボンズ様」

 

 時は、トキトキ都から来訪したトランクスがアニューの解放に成功した直後であり、地球では悟空がバーダックに逆転勝利を収めた瞬間である。

 場所は、ビッグゲテスター・ヴェーダの工房スペース。

 町一つ分ほどの面積が贅沢に使われているその場所では、銀色の光沢を放つ一人の老人が佇んでいた。

 

 ――アルケー・ゲロ。

 

 ビッグゲテスター・ヴェーダによって物理的な肉体改造を施され、新たに生まれ変わったドクター・ゲロの姿だ。

 リボンズヤムチャはビッグゲテスター・ヴェーダの高度な科学力を取引材料に彼と手を組み、数年前から協力関係を結んでいた。

 尤も今となってはビッグゲテスター・ヴェーダ諸共ヤムベイドを支配下に置こうとしていたゲロの野心を機に、完全に破綻しきった関係であるが。

 

 彼の野心を最初から見抜いていたリボンズヤムチャは、ヤムチャヒリングを使って彼を返り討ちにし、捕縛した。

 そのまま彼をビッグゲテスター・ヴェーダの溶鉱炉に放り込み、従順な機械人形「アルケー・ゲロ」へと改造してやったのである。

 惜しむらくは脳まで機械化してしまった影響で科学者的な閃きが失われてしまったことだが、計画の為ならば新しい発想が生まれなくとも、既存の知恵だけで充分だった。

 何より彼に自由な頭脳を与えてしまう危険さを、リボンズヤムチャは十二分に理解していたのだ。

 

「遂に完成したんだね」

 

 かつてフリーザに殺された界王神の遺体を彼に引き渡し、解剖から得られるデータによって神次元の力を解析、研究を行う。

 そしてその研究から得られたデータを基に、「神次元の力を付与する」効果を持った魔改造ポタラ「ポタラドライヴ」を作り出す。

 

 アルケー・ゲロは見事にその役目を果たし、リボンズヤムチャに研究の成果を披露してくれた。

 

 彼の手から黄金色に輝くイヤリングを受け取ると、リボンズヤムチャは堪えきれない喜びを漏らした。

 

「あっちの方はどうかな?」

「これより起動します」

 

 魔改造ポタラ「ポタラドライヴ」の完成。

 そしてもう一つ――リボンズヤムチャが神を超える計画をなすものが、アルケー・ゲロによって作られた。

 

 ――ヤムチャキャノン。

 

 アルケー・ゲロによって開かれた等身大のカプセルから出てきたのは、リボンズヤムチャと全く同じ姿をした金髪の人造人間だった。

 その容貌は、さながらヤムチャが超サイヤ人になったようだ。

 彼の正体は、言わばサイヤ人と界王神をベースにして生み出した「セルの究極体」である。

 あるいは、「最高の技術と環境で作られたバイオブロリーのようなもの」と言えるかもしれない。

 これより以前に製作したセルリジェネは、欠陥品の失敗作だった。

 しかしセルリジェネを作った時よりも遥かに膨大な情報とエネルギーを注ぎ込んで完成に至ったそれは、ビッグゲテスター・ヴェーダがこれまでに生み出してきたどのヤムベイドよりも圧倒的に強く作られていた。

 その戦闘力は、魔人ブウをも超越している。

 

「わかるよ。そちらも成功したようだね、人造超サイヤ人「ヤムチャキャノン」の完成に」

「私の技術、ヴェーダの技術、そしてこれまでに得られた超サイヤ人の細胞や戦闘データがあったればこそです」

「何より、ヤムベイドの身体にトランクスが直接サイヤパワーを送り込んでくれたのがありがたかったかな」

「ええ」

 

 トランクスがヤムチャアニューに執着してくれたおかげで、超サイヤ人の研究がより加速度的に進んだのである。

 そういった意味では勝手に自宅に上がり込み、ヤムチャアニューを攫っていった彼には寧ろ感謝していた。

 たかがヤムベイドの一人、欲しければくれてやる。

 リボンズヤムチャにとって真に必要なのは優秀な配下ではなく、自らが神を超える為のきっかけに過ぎなかった。

 このように良かれと思って相手を必要以上に強くしてしまうところは、父親のベジータとそっくりだとリボンズヤムチャがせせら笑う。

 彼はこのリボンズヤムチャを倒すどころか、大きくパワーアップさせてしまったのである。

 

「さあ、始めようか」

 

 10年以上待ったのだ。この時を。

 傍観はもう十分だろう。

 リボンズヤムチャは新しい玩具を手に入れた子供のように目を輝かせながら、魔改造ポタラ「ポタラドライヴ」の一つを自らの右耳に、もう片方のポタラを人造超サイヤ人「ヤムチャキャノン」の左耳に括りつけた。

 

「ヤムチャの、真の変革を」

 

 その瞬間、意志のないヤムチャキャノンと野心に満ちたリボンズヤムチャが合体し、新たなヤムチャが誕生した。

 身体中の組織が一瞬にして変化し、自らが生まれ変わっていくのがわかる。

 高揚する気分の中で肉体は静かな気を宿し、やがて収束していくのを感じる。

 

 ――これが神の気! これがヤムチャ計画の到達点!

 

「ボクは、強いぞ……」

 

 リボンズヤムチャが、リボーンズヤムチャとなった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 切り札の龍拳爆発によって、窮地から見事バーダックを倒した孫悟空。

 しかし彼との戦いで力を使い果たしてしまった悟空にはもう、ヤムチャヒリングとヤムチャリヴァイヴを相手にできる余力は残っていなかった。

 

「これは……?」

 

 しかし、ヤムベイドたちはそんな悟空に攻撃を仕掛けてこなかった。

 二人はふと何かに気づいたように立ち止まって目を見開くと、次に歓喜の笑みを浮かべた。

 

「あっはっはっは! 終わったね、あんたたち!」

「なんだと?」

 

 ヤムチャヒリングが哄笑を上げ、ヤムチャが怪訝に眉をひそめる。

 そんな彼らの前で、ヤムチャリヴァイヴが衝撃的な発言を言い渡した。

 

「僕たちのヤムチャ計画は完了した。たった今、リボンズは神の力を得た」

「神の力だと……まさか!」

 

 その言葉を耳にした瞬間、ヤムチャが驚愕に目を見開く。

 そして今まさに、その人物がこの地球に姿を現した。

 

「そうだよ」

 

 ピシュンと、もはやお馴染みの風切り音と共に彼が地に降り立つ。

 瞬間移動とは本当に便利なものだ。遥か遠くに離れている筈の彼らの本拠地から、一瞬にして転移してみせたのだから。

 

「リボンズヤムチャ……現れやがったな!」

 

 はっと息を呑み、ヤムチャはその姿を見据える。

 胸に「樂」と描かれた緑色の服は、原作のヤムチャが初登場時に着ていたものと同じだ。

 背中には青龍刀の鞘が装備されており、髪型もまた馴染み深いロン毛である。

 傷がついていないことを除けば、その顔はヤムチャであるヤムチャ・ティエリアーデと完全に同じだった。

 

 ただ違うのは、彼の両耳にポタラらしき二対のイヤリングがついていることだ。

 

「久しぶりだねヤムチャ・ティエリアーデ。それに、孫悟空」

「おめえは……昔のヤムチャに似ているな」

「そうだよ。名前はリボンズ……リボンズヤムチャ。ボクがオリジナルのヤムチャさ」

「ってことは、おめえがそいつらの親玉なんだな。わざわざやって来たっちゅうのは、オラと決着をつけようってことか?」

「正解だよ孫悟空。君の役目はもう終わったから、そろそろ渡してほしいと思ってね」

 

 ヤムチャと同じ顔でありながら、ヤムチャでありながら――ヤムチャでは絶対にしないような涼やかな顔を見せてリボンズヤムチャが前髪を払い、優雅に告げる。

 ふっと浮かべた冷笑の奥からは、悟空に対する包み隠せない執着を感じた。

 

「物語の……主人公の座を」

 

 こうして直接会うのは初めてだが、やはり彼はヤムチャが思っていた通りの人物だったようだ。

 その目的は、この世界の物語を自分色に染め上げること。

 その為に彼は、物語の主人公である孫悟空を排除しようとしているのだ。

 ヤムチャよりも冷ややかな声でそう告げられた悟空は、バーダック戦を通した満身創痍の身体を起こし、リボンズヤムチャと対峙する。

 

「そんなのはよくわかんねぇし、はっきり言ってどうでもいいけどよ……オラの命を奪おうってんなら、いつでも相手になるぞ!」

「……カカロット……っ」

 

 力強く言い切ってみせた悟空の言葉に、バーダックが感慨深げに彼の名を呟く。

 悟空も実の父親を殺したくなかったのだろう。ギリギリのところで急所を避けたことで、龍拳を受けた彼もまだ生き残っていたようだ。

 だがそのバーダックとの戦いで消耗している今の悟空と相対しても、リボンズヤムチャはただただ呆れ顔を浮かべるばかりだった。

 

「仙豆を食べるといい。それと、悟飯とナッパもここに連れてきなよ」

 

 彼の体力回復を待ってやるのは前提として、リボンズヤムチャは意味深な言葉を後に続けた。

 その言葉の意味を即座に理解したのは、ヤムチャを含むヤムベイドたちだけだった。

 

「……っ、リボンズ、まさか孫悟空をゴッドにする気ですか?」

「あははっ、さっすがリボンズ! でもどうするの? 何故か生きてるナッパを含めても、サイヤ人は五人しかいないじゃないさ。今アニューと戦っている未来トランクスでも引っ張ってくる?」

「その必要はないよ」

 

 悟飯とナッパをこの場に連れてくる――それは今この場所に、五人のサイヤ人を集結させるという意味の言葉だった。

 悟空、ベジータ、悟飯、ナッパ、そしてバーダック。

 多くのサイヤ人を一か所に集めて行うことと言えば、彼らにとっては一つだった。

 

「超サイヤ人ゴッドって奴か……」

 

 ヤムチャからいわゆる「原作知識」を与えられた悟空が、遅れて彼の意図を察しその名を呟く。

 

 超サイヤ人ゴッド――サイヤ人の神。

 

 善の心を持った五人のサイヤ人から一人のサイヤ人がエネルギーを受け取ることによって誕生する、超サイヤ人を凌駕する存在だ。

 実現できるかどうかはさておいて、それは悟空にとって、今後有用になっていくだろうと事前にヤムチャから授けられていた知識だった。彼が精神と時の部屋で至った超サイヤ人2という変身も、元々はヤムチャの「原作知識」を経由して知ったのが始まりである。

 故に、その信憑性は疑っていない。

 

「本当ならゴッドの誕生には六人のサイヤ人が必要なんだけど……この星には一人、サイヤ人ではないけどサイヤ人の力を持つ者がいるからね」

 

 ヤムチャと同じ顔でありながらやはりヤムチャらしくなく、無性に腹が立つ竦め笑いを浮かべながらリボンズヤムチャが言う。

 そんな彼が顔を向けた先には、今しがた瞬間移動を使って孫悟飯とナッパの二人を連れてやってきたヤムベイドの姿があった。

 

「そうだろう、セルリジェネ。いや、プロトタイプ人造超サイヤ人、リジェネ・レジェッタ」

「…………」

「人造超サイヤ人だって?」

 

 セルリジェネ――ヤムチャの協力者としてこれまで主に戦い以外の面で悟空たちを助けてくれた男が、憤りを隠せない目つきでリボンズヤムチャを睨む。

 そんな彼は、事態もわからずこの場に連れてこられ、戸惑っているナッパと悟飯を置いて言い放った。

 

「後悔することになるよ、リボンズ。今まで何人もの強敵が、そうやって孫悟空に足元を掬われてきた」

「そうだね。それで彼らと同じように倒されるものなら、所詮ボクも足元がお留守……ヤムチャだったということになる」

 

 あまりにも大胆不敵かつ余裕綽々とした姿で佇む彼は、そんなセルリジェネの忠告にも肩を竦めるように言い放ち――その場から姿を掻き消した。

 

「でも」

 

 一瞬にも満たない交錯――。

 まばたきを終えた頃には、移動した彼の傍で地に屈しているベジータの姿があった。

 

「がっ……!?」

「ゲンサクより随分先取りしてしまった超サイヤ人2の彼ですら、一撃でこの有様だ。ここまで強さの次元が違うのは、ボクからしても望ましいことじゃない。それに……」

 

 悟空たちが反応すらできないスピードで動いたリボンズヤムチャが、小指一本で超サイヤ人2のベジータを失神させたのである。

 あまりにも次元が違う戦闘力である。

 そして何よりも、圧倒的な力を感じるのに「気」を感じられないのがまた、悟空たちには一層不気味だった。

 隔絶した自らの力を披露した彼は、王者の余裕を見せつけるように意図を明かす。

 

「超サイヤ人ゴッドになった孫悟空に打ち勝てば、ボクの有用性は不動のものとなる」

 

 人を物語だの駒扱いした矢先に、自らの有用性を主張する。

 目まいを覚えるような傲慢さにヤムチャが歯を軋め、悟空はただ静かに敵の姿を見据えた。

 

「あれを見なよ」

 

 その時、ふとリボンズヤムチャが、上空を見上げた。

 

「あれは……!?」

「なんだあれ? タマネギみてぇだな」

「ビッグゲテスター・ヴェーダ……ヤムベイドの故郷だ」

 

 空――夕焼けの広がる空の上には、星々とは明らかに違う物体が一つ漂っていた。

 悟空がタマネギのようだと根も葉もない表現をしたが、まさにそう言い表すのが相応しい形状をしている。

 まるで月のように巨大な物体が徐々に大きくなっていき、この地球へ近づいているのがわかる。

 それこそがリボンズヤムチャによって改造、進化を施された機械惑星ビッグゲテスターの成れの果て――ビッグゲテスター・ヴェーダの姿だった。

 

「地球圏へ移動させたのか!」

「大切に保管しておく必要がなくなったからね。ボクがここまで強くなれた時点で、アレの役目はもうほとんど終わっている。それに……見なよ」

 

 彼らヤムベイドの本拠地である機械惑星が、自ら移動してこの地球圏にやってきた。

 それだけじゃない。そう言ってリボンズヤムチャが指差すと、巨大な楕円形の物体から無数の粒のような「何か」が飛び出し、超スピードで向かってきているのがわかった。

 

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

「狼牙風風拳!」「狼牙風風拳!」

 

 下半身が存在せず、上半身だけの身体で「気」のバーニアを吹かしながら飛行している人型の編隊。

 ヤムベイドと違い、一目で機械であることがわかるメカメカしい外見をしたヤムチャ状の姿は、リボンズヤムチャによる新兵器のお披露目だった。

 

「な、なんだあれは……!」

「簡易生産型ヤムベイド、「ヤヤ」だ」

「うわっ……キモッ」

「ヒリング……気持ちはわかる」

 

 彼らの味方である筈のヤムチャヒリングが生理的嫌悪感を露わに、引きつった表情で空を眺める。

 それほどまでに、壮観かつ圧倒的な光景だった。

 ビッグゲテスター・ヴェーダから飛び立つなり数分で大気圏を抜けてきた「ヤヤ」の軍勢は、散り散りになって地球の町々へと向かっていく。それはまるで空を流れていく濁流のようだった。

 まずい! その軍勢を前に呆気に取られてしまったのが致命的となり、ヤムチャが急いで舞空術で飛び上がり都の方角に目を向ければ……そこには噴き上がる爆炎とおびただしい黒煙の姿が視界に広がっていた。

 

「早くしないと、彼らに地球人類が滅ぼされてしまうかもね」

「貴様ああああっ!!」

 

 面妖なヤヤの外見に騙されてはいけない。

 あれはこの地球人類を滅ぼす最悪の対人兵器だ。ヤムチャは怒りに任せてリボンズヤムチャに気攻波を放つが、彼はそれに反応すら返さず無傷であしらってみせる。

 

 ――本当に……本当に神の次元に至ってしまったのか!

 

 合体13号や超サイヤ人3のバーダックを持ってしても、比較にもならない理不尽な強さだ。

 リボンズヤムチャの思う壺になるのは心底癪であったが、もはや超サイヤ人ゴッドでなければ戦いの舞台にすら上がれないのは明白だった。

 

「悟空! リボンズを倒してくれ……絶対だぞ!」

 

 悔しさを滲ませた顔で戦友に言い渡すと、ヤムチャは自らの「気」を解放してヤヤの軍勢に「繰気狼牙(ファング)」を叩き込んでいく。

 今の自分にできることは、ほんの少しでも多く地球の人々への被害を減らすことだけだった。

 

 

 そんなヤムチャの思いを受け継ぎ、悟空が本気の目つきで呼び掛ける。

 

「悟飯! リジェネでもいいけど仙豆持ってるか!? ベジータと父ちゃんに食わせてやれ!」

「は、はい! あれ? お父さん今「父ちゃん」って……」

「ああ、おめえのじいちゃんだ。そのことは、後でゆっくりみんなで話そう」

 

 後があればな……珍しく弱気な言葉を、息子に聞こえないように呟きながら、悟空は怒りに染まった顔をリボンズヤムチャに向けた。

 

 さっきから言っていることはわけわからねぇが、アイツがクウラやコルドたちと似たような奴なのはわかる。

 

 自分の為に関係のない人間を次々と殺していくのであれば、もはや是非もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、悟空たちはセルリジェネ主導の下、急いでゴッド誕生の儀式に取り掛かった。

 

 仙豆で回復したバーダックが素早く事態を飲み込むと、無言で息子と孫の手を掴み、ナッパとベジータの方を睨む。

 お前らカカロットの言うこと聞かないとぶっ殺すぞと、無言ではあったがそう言っているかのような眼差しだった。敗者は勝者の言うことに従うのがサイヤ人の流儀だと口では語っていたが、その本心がどうなのかはわからない。もしかしたら単純に息子の手伝いをしたかったのかもしれないし、リボンズヤムチャのことが気に入らないだけなのかもしれない。

 その心境は本人にしかわからないが、彼があっさりと協力してくれたのは幸いだった。

 一方でナッパは悟空たちへのわだかまりは解けていないものの、このままリボンズヤムチャを放っておけば自分が大切に思っている双子の命まで危ないと理解し渋々了承。その際バーダックの顔を見て幽霊でも見たように驚いていたものだが、二人には過去に何か接点があったのかもしれない。真偽は不明であるが。

 そして、ベジータ――プライドが高くこの中で最も厄介な性格をしている彼だが、バーダックが「サイヤ人の王子のくせに、器量の大きさはベジータ王に負けているようだなぁ」と煽るなり彼は「俺がベジータだぁ!」と奮起した。そのプライドの高さはある意味純粋であるが故に、煽り方を心得れば割と扱いやすいのもまた彼なのかもしれない。

 悟空と悟飯、ナッパからも懸命に説得した甲斐があり、ベジータも渋々承諾してくれた。

 

「地球人が何人死のうが知ったことじゃないが、奴の思い通りにされるのは気に食わん!」

 

 ――というのがナッパと悟飯の手を掴んだベジータの言葉である。

 そしてそんな彼の手を掴み、最後の六人目であるセルリジェネが言う。

 

「さて、果たして上手くいくか……確かに僕はサイヤ人の細胞をベースにして作られた存在だけど、それだけで成功するものだろうか」

「まあ、なるようになるさ」

「この面子だと、善の心っていうところで引っ掛かりそうだが……はっ、俺には無縁だな」

「おじいちゃん……」

 

 孫悟空――悪の心がないのは既に、アックマンからもお墨付きだ。

 孫悟飯――優しさが仇となるほどの善人だ。間違いなく条件を満たしている。

 ナッパ――極悪人だったが心が折れてからは穏やかになった。更生したと捉えるかは微妙だが。

 ベジータ――最近悪いことはしていないが、未だ独身なので危うい。

 バーダック――どこまでもサイヤ人らしいサイヤ人。純粋ではあるが、善人とはとても言い難い。

 セルリジェネ――そもそもサイヤ人ではない。

 

 純粋サイヤ人が四人、混血サイヤ人が一人、サイヤ人の細胞を持った人造人間が一人。

 改めて見渡すと、何とも混沌とした顔ぶれである。この六人でゴッドが誕生するかどうかで言えば、提案したリボンズヤムチャサイドも大して期待しておらず、成功すれば儲けもの程度の認識だったのかもしれない。

 

 しかし五人が悟空に向かって己のエネルギーを注ぎ込んだ時、奇跡は起こった。

 

「これが、超サイヤ人ゴッド……確かにこれなら、アイツと戦えるかもしれねぇ」

 

 奇跡的な出会いが奇跡を呼んだと言えば、少しだけ合点が行くようにも思えるだろうか。

 悟空の「気」もまたリボンズヤムチャと同じように感じられなくなり、彼はその名にある通り悟りを開いたような目でリボンズヤムチャの姿を見やった。

 界王拳とは違う「赤」に染まった悟空の姿を見て、それまで空を飛び回ってヤヤの軍勢と戦っていたヤムチャが一先ずの安堵を得た。

 

 だが、それは未だ、リボンズヤムチャという「神」に挑戦する資格を得ただけに過ぎなかった。

 

「遂に審判が下される。超サイヤ人ゴッドになった孫悟空か、このボクか、そのどちらかが物語の行く末を決める。それでいい」

 

 超サイヤ人ゴッドの誕生に喜びも驚きもしないリボンズヤムチャが、淡々とそう語り戦闘の構えを取る。

 静かに構え、お互いの敵と対峙する神と神。

 その二人が同じタイミングで動き、激突した。

 

「か、め」

「リボーンズヤムチャ!」

「は、め」

「狼牙風風拳!」

「波ああああっ!」

「行く!」

 

 

 ――それぞれ全く別の方法で人を超えた者同士による、最終決戦が始まった。

 

 

 

 




【次回予告】

 リボンズヤムチャ。
 孫悟空。
 神に至った者同士が未来を賭け、最後の戦いに挑む。
 そしてヴェーダに突入したヤムチャが見たものとは……

 次回、『再生(ヤムチャ)

 ――新時代への幕が上がる。




 要は「たとえヤムチャでも、最高の科学力で作った最強の人造人間とポタラで合体すれば最強になれるよね」っていうのが、リボンズヤムチャと元少年の考えですね。「ヤムチャである意味はあるのか?」だとか「それ強化パーツ側が本体なんじゃ……」だとか突っ込まれてしまったら何も言い返せないところが彼らが世界の歪みたる所以です。

 ヤムチャの可能性を全く信じていないオリジナルヤムチャと、ヤムチャの可能性を信じている模造ヤムチャの決着。この矛盾って結構OOっぽい……わけねぇかすみません。

 次の次ぐらいで本作は完結します。
 

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