転生したらヤムチャがリボンズになった件   作:GT(EW版)

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ヤムチャを爆発してまで笑えなくても……そう言って少年は腹抱えてたんだ


最終回 ヤムチャ
転生したらヤムチャがリボンズになった件(Aパート)


 この姿には、みんなの魂が集っている。だから、負ける筈はない。

 自身の内から湧き上がってくる無尽蔵な力に、孫悟空は強くそう感じていた。

 

「感謝してほしいな」

 

 蒼炎を纏う究極の超サイヤ人になった悟空の耳に、リボーンズヤムチャの耳当たりのいい声が届く。

 戦友ヤムチャと同じ顔をした彼が、挑発的とも言える口調で続けた。

 

「君がその力を手に入れたのは、ボクのおかげなんだよ? 孫悟空……」

 

 両耳のイヤリングから金色の輝きを放ちながら、神の気を放出するリボーンズヤムチャが正面に立ちふさがる。

 超サイヤ人ゴッドでも敵わなかった、今までの敵とは別次元の力を持つ強敵。悟空は初めて砂漠で出会った時のヤムチャと同じ恰好をしている彼の姿を、すがめて見つめた。

 

「そいつは、嘘だろ」

 

 はっきりと彼の「強がり」を断定した悟空の言葉に、彼が僅かに目つきを変える。

 その表情の変化が何よりも、リボーンズヤムチャの心境を物語っていると言えた。

 

「超サイヤ人ゴッドまでは予定通りだったおめえでも、ここまでは望んでなかった筈だ」

「…………」

「おめえが何でもかんでもそうやってわかったような顔をしてんのは、そうでもしなきゃやってらんねぇからだろ?」

 

 沈黙を返すリボーンズヤムチャに、青色のオーラをより激しく放出させた悟空が対峙する。

 さっきまでは彼の姿が高い場所にあるように見えたが、今は十分に手の届く場所にあるように見える。

 故に、何となく見抜くことができたのだ。

 彼が自身の戦友ヤムチャと比べて、いかに空虚な力を身に着けているのかを。

 

「おめえ、オラには勝てねぇよ」

 

 言い放った次の瞬間、リボーンズヤムチャの拳が視界に広がった。

 その腕が伸び切るよりも先に、悟空が振り払った右手が彼の拳を弾き、返す膝蹴りがリボーンズヤムチャの腹部を捉え腰を叩き折っていた。

 驚きに目を見開くリボーンズヤムチャ。その彼に、悟空は右手をかざした。

 

「だけどおめえだけは……勘弁なんねぇんだ!」

「……!」

 

 気合い砲がリボーンズヤムチャを吹き飛ばし、彼の身体を初めて地上へと叩き落していった。

 荒野に聳える幾つもの岩山を貫通しながら、体勢を立て直し、再び神次元の速度で迫ってきたリボーンズヤムチャが剛拳を乱打する。

 リボーンズヤムチャの動きは、確かに速い。今まで戦ってきた者たちと比べればまさに次元の違うレベルであり、拳の一つを取ってもさながら光の速さで飛んでくる剣山のようだった。

 だが、超サイヤ人ブルーとなった今の悟空にはそんな彼の動きにもついていくことができていた。

 そしてついていくことができるということは、攻撃の際に生じる僅かな隙を見つけることができるということだ。

 

「足元が甘ぇんだよっ!」

 

 左右交互に繰り出される彼の連打をかわしながら、本気の眼差しで睨んだ悟空が足払いを掛け、敵の体勢を崩す。

 続けざまの右ストレートで、リボーンズヤムチャの頬を狙い――

 

 

 ――次の瞬間、悟空は吹っ飛ばされた。

 

 

 否、弾き飛ばされたのだ。

 

 リボーンズヤムチャの左手が無造作に背中に背負っていた鞘から一振りの青龍刀を抜き放つと、まるでボールを打ち返すかのようにその刀身で悟空の身体を薙ぎ払ったのである。

 

 敵のパワーは、これまで見せてきた力以上に凄まじかった。

 

 跳ね返された悟空は受け身を取ることもできず、一直線に岩山の崖部へと叩きつけられていく。

 その衝撃で、悟空の肺から空気が絞り出された。

 

「つつ……ッ……なに……?」

 

 脳震盪を起こしたボクサーのように軽く頭を振り、悟空はすぐさま上空に視線を戻す。

 そこに映し出された光景を目にし、悟空は思わず言葉を失った。

 

 

「あれは……っ、超サイヤ人……?」

 

 

 敵の髪の色が変わって(・・・・・・・・)いたのである(・・・・・・)

 

 ヤムチャと同じ黒髪だった筈の長髪が、神々しい光を放つ薔薇色に染まっており、身に纏うオーラまでも同様に変質している。

 悟空を見下ろしながらゆっくりと振り返ったリボーンズヤムチャの両目は銀色に染まっており、橙色の光を放つイヤリングを輝かせながら彼は嗤った。

 

「超サイヤ人が、自分たちだけの変身だと思っては困るな」

 

 叩きつけられた岩山からようやく浮き上がった悟空に向かって、リボーンズヤムチャが言った。

 神の魂と超サイヤ人の器が合わさることで誕生する、薔薇色の神戦士。

 高次元の存在であるリボンズヤムチャが、界王神とサイヤ人のデータを基に生み出された究極の人造人間ヤムチャキャノンと合体した存在が、今のリボーンズヤムチャである。

 ならば彼もまた、その姿に至れない道理はなかった。

 

 ――超サイヤ人ロゼ。

 

 超サイヤ人ロゼのリボンズヤムチャである。

 もはやそこに、ヤムチャの要素などない。

 

「そうとも、この姿こそ……」

 

 真の姿を解放したリボーンズヤムチャが左手の青龍刀を振り上げ、急迫する。

 

「物語を導く主人公(ヤムチャ)だ!」

 

 思い切り振り下ろされたリボーンズヤムチャの剣に、悟空は青色の気で固めた自らの両腕で対抗する。

 だが、急迫した時に乗せられた彼の勢いとスピードは、そう簡単に殺し切れるものではない。

 なおも押し込まれていく青龍刀に悟空は不利を察して後退し、上空へ飛び出していった。

 しかし体勢を立て直す隙を、リボーンズヤムチャは与えなかった。

 

「遅い!」

「ぐううっ!?」

 

 青龍刀を携えた左手とは、反対側の手から素早く気攻波を乱射する。

 降り注ぐ赤い閃光に数発目までは紙一重でかわしてみせた悟空だが、立て続けに走らせた気攻波の一発が遂に彼の身を捕らえた。

 咄嗟に両腕をクロスさせることで致命傷は免れた悟空だが、その両腕はかつてない衝撃に痺れ震えていた。

 距離を取るのは、マズい!

 数多の戦いで培ってきた戦士としての直感がそう訴え、悟空は青色のオーラを噴き出し旋回しながら急速にリボーンズヤムチャとの距離を詰めていく。

 

「だりゃあっ!」

「……ふっ」

 

 青色の超戦士と薔薇色の超戦士。

 互いに異なる方法で神の力を得た二人が、お互いが放つ美しい光で夜空を照らしながら交錯していく。

 

 一瞬の接触だった。

 

 その接触によってダメージを受けたのは、悟空の方だった。

 右肩の先が青龍刀によって斬り裂かれ、鮮血が飛び散る。

 苦悶に歪む彼の顔を見て、リボーンズヤムチャが愉悦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間移動によってビッグゲテスター・ヴェーダへの侵入に成功したヤムチャは、間髪入れず襲い掛かってきたヤヤの軍勢を前に、今は敵の攻撃の回避に専念していた。

 自分がこの場所で為すべきことは、目先の雑魚を倒すことではなく、ビッグゲテスター・ヴェーダの本体である「コア」を掌握することだ。

 月ほどの大きさがあるこの機械惑星だ。どんな形をしているかもわからないコアを見つけることは、砂漠に落とした一本の針を探し出すことよりも困難を極めるかもしれない。

 

 しかし、ヤムチャは自分ならば見つけられる「当て」があったからこそ、一人この場所に乗り込んできたのだ。

 

 そんな彼に今必要だったのは、自分の行動が敵に封じられない一定時間の確保であった。

 

「アニュー! コイツらを食い止めてくれ!」

「……? ヤムチャ・ティエリアーデ!?」

 

 ヤムチャは瞬間移動する際に辿らせてもらった「気」の持ち主――既にビッグゲテスター・ヴェーダの内部にいたヤムチャアニューに対して大声で呼び掛ける。

 彼女は今、ヤヤの軍勢に対して両手から気弾を連射している最中であり、そんな彼女のいる場所の奥ではメタル化したドクター・ゲロ――アルケー・ゲロと一対一の死闘を繰り広げるトランクスの姿がそこにあった。

 

 その光景を目にして、ヤムチャは即座にヤムチャアニューがビッグゲテスター・ヴェーダの呪縛から解き放たれたのだと察し、彼女を信じて自らへの協力を頼み込んだのである。

 

 ヤムチャの登場に気づいたヤムチャアニューが、驚いた顔を浮かべた後に訊ねる。

 

「勝機があると言うの?」

「いや、俺にそんなものはねぇさ。だが、希望はある!」

「……! わかったわ!」

 

 希望(ホープ)……あのトランクスと惹かれ合った彼女は、その言葉を聞いて感慨深い思いを抱いたのだろう。

 彼女はヤムチャの頼みに応じると、突破口をこじ開けるように極太の気攻波を放ち、進行ルートに塞がっていたヤヤの軍勢を撃滅した。

 

「サンキュー! トランクスによろしくな!」

「はやく行きなさい!」

 

 もはや、軽口に反応している余裕さえ怪しいのだろう。ヤムチャアニューは彼に対して顔も向けないまま次の標的へと攻撃を放ち、何よりトランクスの戦いを邪魔しないように敵を撃ち落としていた。

 女の人って、やっぱり強い。

 あれ? そう言えば今俺、初対面の女と話しても大丈夫だったな……と、不思議と上がり症を発症しなかった自分に苦笑しながら、ヤムチャは彼女の善意に応えるように先へ向かって飛翔した。

 

 

 

 ヤムチャが侵入したビッグゲテスター・ヴェーダの内部は、まるで金属でできた鍾乳洞のようだった。

 ごつごつとした岩石の代わりに天井を構成しているのは、毛細血管のように根を張り巡らせている金属の管である。

 ただひたすらに無機質な空間は不気味であったが、そこは不思議と幻想的な雰囲気を漂わせていた。

 そのエリアに入り込んだヤムチャは、この辺りでいいだろうと判断し、舞空術で飛翔していた足をザッと地に下ろした。

 この辺りのヤヤたちは、トランクスとヤムチャアニューの二人が粗方片付けてくれたのだろう。辺りに気配はなく、ヤムチャがコアを探すには絶好の環境だと言える。

 

 

「……いくぞ」

 

 すうっと深く息を吐き、ヤムチャは地に着けた足を肩幅まで開く。

 そしてその身の周りに、六発もの繰気弾をおもむろに生成した。

 ヤムチャの意思一つで遠隔操作されるその繰気弾たちは、彼を中心として渦を描くように回転していくと、やがて足元に集まって円状のフィールドを発生させた。

 フィールドから浮き上がった光のリングがヤムチャの腰と頭上に移動し、天使の輪っかのような輝きを放つ。

 

「クオリヤム・バースト!」

 

 ヤムチャはその技名を叫ぶと、潜在能力を解放した黒髪が逆立ち、おびただしい「気」の嵐が体内から発生していく。

 だが、まだ足りない。

 

「ヴェーダの構造は全くわからねぇからな……フルパワーで行くぜぇっ!」

 

 ヤムチャはここまでお膳立てしてくれた仲間たちに感謝の思いを込めながら、潜在能力を解放したその姿に界王拳を重ね掛けする。

 そして自身が行使する二つのエネルギーを同調させると、一つのエネルギーに編み込んだそれを躊躇なく完全解放した。

 その勢いによって上着が弾け飛び、引き締まった上半身の筋肉が露出する。

 

 

 ――ハイクオリティ・ヤムチャドライヴ・バースト。通称「クオリヤム・バースト」である。

 

 

 元々はセルリジェネによって名付けられたその技名を高らかに叫んだ彼は、出力を最大限に引き上げたヤムチャドライヴを持ってその身から膨大な量のオーラを解き放っていた。

 それで終わりではない。

 ヤムチャドライヴによって紫色に染まった彼のオーラは、繰気弾によって象られたフィールドを介することによって爆発的に拡散量を増幅し、やがては「翠色」の光へと変わっていく。

 

 そうしてヤムチャから猛烈な勢いで放たれた「気」の光は、人間の視覚限界を超えた量となり、月ほどの大きさがある機械惑星そのものを包み込んでいった。

 

 

 

 

 ヤムチャが放った新技「クオリヤム・バースト」とは、ヤムチャの得意技である繰気弾の派生の一つだ。

 

 それは「浴びた者が全て繰気弾のようにヤムチャとリンクする」という効果を持つ。

 

 原理はトライアル繰気弾と同じであり、相手の身体を繰気弾のように操ることができるのも同じだ。

 ただ、このクオリヤム・バーストは従来のトライアル繰気弾とは規模が桁違いであり、ヤムチャが想定していた以上に危険な副産物が発生する禁断の技でもあった。

 気弾を浴びせた者を繰気弾にするのがトライアル繰気弾ならば、クオリヤム・バーストは光を浴びた者を「ヤムチャにする」技と言えよう。

 その「ヤムチャにする」とは身体機能の制御のみならず、思考までヤムチャとリンクすることを意味していた。

 

「おううううううあああああああああっっ!!」

 

 ヤムチャが狂乱したように咆哮を上げ、眩い光の中でもがく。

 この技はリボーンズヤムチャのような格上の相手には効果がなく、戦闘中に扱おうにも隙や消耗が多すぎて実戦的ではないが、それ以外の者――ヤムチャより力が劣る者が相手であれば、世界中全ての人間とリンクすることもでき、無機物までも制御下に置くことができる神の如き奥義だった。

 

 ヤムチャはこの巨大な機械惑星のどこかに隠されている「コア」を見つける為に、ビッグゲテスター・ヴェーダそのものを「ヤムチャにする」ことでその内部情報を読み取ろうとしているのだ。

 

 しかし、ビッグゲテスター・ヴェーダはあまりにも巨大な対象だ。

 いかにフルパワーを発動したヤムチャと言えど、一度に流れ込んでくる膨大な情報量はとても人の脳で処理しきれるものではなかった。

 

「……手伝うよ、ヤムチャ」

(リジェネ……!)

「僕とリンクするんだ……一人では無理でも、二人のヤムチャが合わさればきっとできる」

 

 想像以上に膨大であるビッグゲテスター・ヴェーダの情報に脳が焼き切れるかとさえ感じた思考の中で、ヤムチャの横から同じ声が呼び掛かってくる。

 セルリジェネ――一体いつからそこにいたのだろうか? 瞬間移動でこの場所に合流した彼が、光を放つヤムチャの肩に手を置いて語りかけたのである。

 そんな彼のメガネの奥にある瞳は、彼の知るセルリジェネとは違う目つきをしていた。

 

「あああああああっっ!」

「この情報の奔流は、元凶の()が受け止める! 余計な物を受け流し、見つけるんだ……コアの場所を……! 真実を……! こんなバカげた戦いを引き起こした……()の罪を!」

「うううう……っ! ろ……ろうが……っ、ろうがふうふうけぇぇんっっ!!」

 

 押し寄せる情報の波を掻き分けるように、狼牙風風拳を使いながら両腕をばたつかせ、ただひたすらにもがく。

 口調が変わったセルリジェネの方にまで気が回らないヤムチャの意識を、ビッグゲテスター・ヴェーダの苛烈な情報の乱流が嬲っていく。

 

 だが、ヤムチャは諦めなかった。

 

 うめきながらもゆっくりと目を開き、歯を食いしばって情報の中身を見分ける。

 ビッグゲテスター・ヴェーダの構造は、どうなっている?

 コアの場所はどこだ?

 どこにコアがある?

 どうすれば、それを掌握できる?

 砂漠のハイエナは情報という腐肉を手当たり次第漁りながら、一つずつ噛み千切っては乱雑に放り捨てていく。

 一瞬の時間の中で、何千、何億、という情報を処理し、目的の肉だけを探し求める。

 

 そしてヤムチャが一心不乱に突き出した狼牙風風拳の指先が、その情報を――真実を、掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超サイヤ人ロゼの姿で悟空と交戦していたリボーンズヤムチャは、ビッグゲテスター・ヴェーダで起こっている異変に気づき「チッ」と短く生々しい舌打ちの音を立てた。

 自分以外の存在に愛着を持つ彼ではない。ビッグゲテスター・ヴェーダはその科学力によってヤムチャキャノンという最強の矛と、ポタラドライヴという最強の盾を与えてくれた。

 間違いなく何者よりも自分に貢献してくれた存在であるが、力を得た今のリボーンズヤムチャにとってはもはや、奪われようが壊されようが痛手にはならなかった。

 

 しかし、だからと言って自分の庭で好き勝手暴れられて良い感情はしない。

 

 自分こそが唯一無二の絶対者であると確信しているリボーンズヤムチャであるが、少しずつ自分の手札が削られていくのを感じるのはどう受け取っても快いものではなかった。

 目の前の戦いも、出し惜しみをしている場合ではないか。

 そう判断したリボーンズヤムチャが左手の人差し指から放つデスビームで敵を牽制しながら、背中から四発の繰気弾を射出していく。

 リボーンズヤムチャの脳波によって操作され、鋭角的にランダムな軌道で襲い掛かっていく「新繰気狼牙(フィンファング)」。

 それに対し小刻みに挙動を変え、右へ左へとかわし続ける悟空が両手を振り上げるなり、二つの光芒が開かれては消えていった。

 超サイヤ人ブルーの姿で放つ気円斬とハンマーパンチで、四つ全ての繰気弾を破壊してみせたのである。

 

「やるじゃないか」

 

 心にもない賞賛をしながら上昇したリボーンズヤムチャの足のつま先を、青白い閃光が通り抜けていく。

 悟空のかめはめ波だ。

 隙のない現主人公の攻撃に眉をしかめながら、リボーンズヤムチャがお返しとばかりに気攻波を撃ち放った。

 

「そんな攻撃!」

 

 リボーンズヤムチャが放った赤い気攻波に対し、擦れ違うようにかわしてみせた悟空が青色のオーラを纏いながら急加速してくる。

 右腕を振り上げ拳を構えながら、彼は真っ正面から突っ込んできた。

 

「ふん……」

 

 急迫してくる彼の姿を銀色の眼光で見下ろし、超サイヤ人ロゼのリボーンズヤムチャが二つの繰気弾を射出しながら超サイヤ人ブルーの悟空と相対した。

 

「ぐあああっ!」

 

 放たれた超スピードの繰気弾が突進してきた悟空の右胸と左腕に突き刺さり、爆発を上げていく。

 苦痛の叫びを上げ、ぐらついた悟空の隙を見逃すリボーンズヤムチャではなかった。

 

「いただく!」

 

 リボーンズヤムチャは喜悦の笑みを浮かべた顔で、左手に携えた青龍刀を振り上げると、彼の身を真っ二つにせんと斬り掛かっていく。

 悟空は懸命に体勢を立て直しながら苦し紛れに右腕を突き出し、その拳でリボーンズヤムチャの剣に応戦した。

 そして――

 

 リボーンズヤムチャの青龍刀が、粉々に吹き飛んだ。

 

「――ッ!?」

「へ、へへ……」

 

 馬鹿な……と、その言葉を漏らす余裕もなくリボーンズヤムチャの思考が空白に飲み込まれる。

 我が身に降りかかった光景が、神となった頭脳を持ってしても理解できなかったのだ。

 続けざまに繰り出された悟空の回し蹴りに吹っ飛ばされた痛みを受けて、彼は初めて事態を飲み込み理性を復帰させた。

 

「こ、この力は……!」

 

 だが、それでも動揺が禁じ得ない。

 何故彼の身を真っ二つにする筈だったボクの剣が、逆に破壊されるのか、と。

 リボーンズヤムチャが体勢を立て直し、使い物にならなくなった青龍刀を投げ捨てるなり素手で躍りかかっていった。

 

「だああああっ!!」

「はああああっ!!」

 

 絶え間なく激突する、リボーンズヤムチャと孫悟空の拳と拳。 

 二人の力の差は、もはや完全に互角と成り果てていた。

 敵の攻撃を喰らう回数が徐々に増えていくこの戦いの中で、リボーンズヤムチャの双眸が憎々しげに超サイヤ人ブルーを睨みつけた。

 認めたくは、ない。

 だが、これが孫悟空という男の強さなのだろう。

 そして、これが……

 

「主人公の力か!」

 

 超サイヤ人ロゼと、超サイヤ人ブルーから溢れ出るエネルギーの波濤がさらに一段階膨れ上がってぶつかり合う。

 二人の拳がつばぜり合いのように火花を散らしていく夜空の下で、リボーンズヤムチャが悟空の青い目を見下ろしながら言った。

 

「君のその力……物語の主人公であればこそだ!」

「くっ、うあっ!?」

 

 悟空の身体を引きはがすように蹴り飛ばした後、間髪入れず「デスボール」を投げ放って追撃を掛ける。

 

「いただいていくぞ!」

「――っ、勝手にしろ!」

 

 直径50メートルはあるそれをサッカーボールのように宇宙へと弾き返した悟空が、再び神の気を解放して急迫し、リボーンズヤムチャの頬を殴りつける。

 リボーンズヤムチャもまた悟空の鳩尾を殴り返し、二色の輝きを放つ二人は螺旋を描くように地球の空を周回していった。

 

 やがて青い地球を見下ろす成層圏の高さまで上昇していった二人は、通りすがりのヤヤの軍勢を余波で消滅させながら何度となく拳を重ね合った。

 

「おめえは……わけわかんねぇ奴だけど、滅茶苦茶強ぇな……!」

「下等な二次元などの戦いにっ!」

 

 戦いの中で闘気の笑みを浮かべ始めた悟空の姿に苛立ち、吐き捨てるようにリボーンズヤムチャが叫ぶ。

 その直後、リボーンズヤムチャの胴部に悟空の蹴りが叩き込まれる。

 吹っ飛ばされた彼の身体に、超サイヤ人ブルーによる気弾の連射が襲い掛かる。

 リボーンズヤムチャは身を翻しながら対応し、左右の腕で弾き飛ばしていくが、全弾対処しきることはできず、爆発が彼の頬に擦り傷を与えていった。

 それは丁度、「原作」のヤムチャが負っていた傷痕の場所である。

 

「戦いを楽しむ気は……ないよ!」

 

 怒りに燃える超サイヤ人ロゼのリボーンズヤムチャが、その身を薔薇色よりも深い真紅へと変えた。

 ビッグゲテスター・ヴェーダを経由して、ヤムチャキャノンに植え付けられていた数多の戦技。その一つにこの技――界王拳があった。

 界王拳によって飛躍的に上昇したスピードとパワーを持って、リボーンズヤムチャの放った蹴りが悟空の身体を豪快に吹っ飛ばした。

 さらに弧を描くように旋回して回り込んだリボーンズヤムチャが追撃の手刀を振り下ろすが、その攻撃は敵の残像をすり抜けていくだけだった。

 

「界王拳!!」

 

 悟空もまた呼応するように界王拳を発動し、同様の上昇幅に染まった戦闘力でリボーンズヤムチャの手刀をかわしたのである。

 互いに赤い彗星に姿を変えた二人の超戦士が、時折通りがかったヤヤの軍勢を蹴散らしながら成層圏を駆け巡り、寄りつ離れつの軌跡を描く。

 リボーンズヤムチャは赤く染まった超サイヤ人ブルーの敵を見据え、自身の全力を込めた「新繰気狼牙(フィンファング)」を四発射出した。

 突進していく繰気弾と共にリボーンズヤムチャ自身も悟空へと飛び掛かり、交錯させた二人の拳からスパークが弾け飛ぶ。

 より勢いをつけて飛び込んだ分、力比べの軍配はリボーンズヤムチャに上がった。

 大きく吹っ飛ばされた悟空の身を、四発の繰気弾が追撃していく。

 その内の先行の一発はバックステップを踏むような悟空の動きにかわされるが、かわした先で待ち構えていた二発、三発目の繰気弾が左右から挟み撃ちに襲い掛かった。

 

「くっ……波あああっ!」

 

 それぞれの方向に両腕を伸ばした悟空が、片手から二方向に発射したかめはめ波で迎撃し、繰気弾を消滅させていく。

 しかしその間に背後から回り込んできた四発目の対処には間に合わず、繰気弾は振り向いた悟空の頭部に突き刺さり、爆発を上げた。

 

 

「リボーンズかめはめ波あああああっっ!!」

 

 

 悲鳴の叫びを上げる悟空に向かって、リボーンズヤムチャが最後の追撃を仕掛ける。

 リボーンズかめはめ波――その両手に集束させたエネルギーを一気に解放した眩い閃光は、完全にバランスを崩していた悟空の身を捉え、塵一つ残さず消滅させる――筈だった。

 

「――ッ、まだだぁ!」

 

 神の速度を持ってしても、かわすことも防ぐこともできない距離。

 にもかかわらず、リボーンズのリボーンズかめはめ波は敵のいた筈の場所を何の成果も得られず突き抜けていったのである。

 目の前の敵が忽然と姿を消してみせたその現象を見て、リボーンズヤムチャが銀色の目を見開いた。

 

 

「瞬間移動だと!?」

 

 

 ぞくりと悪寒が走り、リボーンズヤムチャは即座に後ろへ振り向く。

 そこにはなけなしの力を込めて最後の拳を振り下ろそうとする、物語(ドラゴンボール)の主人公の姿があった。

 

「龍拳ーーッッ!!」

「こォのおおおおお!!」

 

 この戦いにおける最大の威力が込められた悟空の一撃に対して、咆哮を上げたリボーンズヤムチャが神の気を纏った左腕を振り上げ、零距離から気弾を発射する。

 

 二人が放った最終攻撃は地球の成層圏上に太陽と見紛うような眩い閃光をまき散らし、地上全土に轟き渡る爆発を起こした。

 

 その勢いに乗じるように、リボーンズヤムチャと孫悟空は互いに視線を交わし合いながら左右に散っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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