転生したらヤムチャがリボンズになった件   作:GT(EW版)

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 中編になりそうなので短編から連載に変更します。


転生したヤムチャが撃ち落とせない件

 ヤムチャ・アニュー。

 

 トキトキ都に潜入し、タイムパトロールとして活動していたヤムベイドである彼女は、ビッグゲテスター・ヴェーダにとって最も有益な情報をもたらしてくれた。

 タイムパトロールは時間犯罪を取り締まるという役割上、各時代へのタイムトラベルを合法的に行うことができる唯一の組織だ。それ故に彼女はこの時代だけでは得られない情報、戦闘経験を積み重ね、それをビッグゲテスター・ヴェーダへの糧としてくれた。

 そんな彼女のことでリボンズヤムチャにとって誤算だったのは、彼女がタイムパトロールの同僚であるトランクス(ゼノ)と恋仲になったことだろう。

 

 ……驚いたことに、彼女はまるで乙女ゲームの主人公のように、彼が抱えていた誰にも知られていなかった心の闇に気づきそれを払ってみせたのである。それがきっかけとなって彼は彼女のことを同僚としてではなく一人の女性として見るようになり――その件に関しては後ほど語るとして、ここでは割合する。

 

 

 そんな彼女はこちらへ合流する際、あちらで構築した複雑な人間関係によるいざこざで数人のヤムベイドを浪費することになったものだが……彼女のおかげでそれまでトランクスにこちらの動きを疑われなかったのも事実である以上、彼女を女性型として作ったことが間違いだとは思わなかった。

 

 それに……と、リボンズヤムチャは自身の後ろに立つサイヤ人(・・・・)の姿を見やり、微笑を浮かべる。

 

 ヤムチャアニューがタイムパトロールとしての活動を隠れ蓑に、彼をこの世界に連れてきてくれたことは仮に100体のヤムベイドを犠牲にしたとしてもお釣りが来る功績だった。

 

 孫悟空の父親であり、ドラゴンボールゼノバース、ヒーローズ等のゲーム作品などではフリー素材ばりに酷使され、あらゆるIF世界で大活躍をしていた彼。

 息子に負けず己の道を極め、血塗れになりながらも戦い続けていく求道者としての姿は、さしずめ「ミスター・グドー」と呼ぶべきか。

 

 そんな彼に、リボンズヤムチャは振り向いて提案する。

 

 

 「仲間や奥さんの仇であるフリーザと、決着をつけたくはないかい?」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ナメック星編。

 

 孫悟空が原作よりもパワーアップしてしまった影響により、サイヤ人編で発生した地球戦士の犠牲者は実質餃子一人だけだった。

 一回目の死でありドラゴンボールを使えば生き返れる天津飯は、「餃子を残して自分だけ生き返るわけには……」と自らの生き返りを渋る場面があったが、そんな彼の背中を長年寄り添ってきたヒロインのように餃子がそっと押してあげた。

 

「天さん、僕は生き返れないけど……きっとまた、生まれ変わる。だから天さんは生きて。生きれなかった、僕の代わりに……」

 

 やがて別の生命に生まれ変わる餃子と、また会うために。

 餃子と交わした約束に、天津飯は男泣きする。そして、いつか訪れるその日の為にブザマな姿は晒せないと、天津飯は涙の覚醒を遂げた。彼はなんと、餃子の能力を受け継いだかのように超能力を使えるようになったのだ。

 その天津飯は地球のドラゴンボールで生き返った後、これまで以上に鬼気迫る勢いで修行を行い、そんな彼の姿勢には共に界王星での修行で思いついた重力トレーニングをしている悟空さえも唸るほどだった。

 

 ピッコロは死なかった為、今は悟空たちの家に帰った悟飯の元へちょくちょく修行をサボっていないか見張っている、という名目で見守りに来ている。

 本人は今でも悟空を殺し、悟飯を魔族にするつもりだと言っているが……彼が悟飯と暮らしたことで大魔王時代とは明らかに変わってきているのは、もはや語るまでもないだろう。

 

 ――そんな形で、地球では束の間の平和が訪れていた。

 

 ピッコロが生きており、神様も依然健在である以上、彼らにはドラゴンボールを求めてナメック星へ行く理由もない。

 故に、原作で言うところの「ナメック星編」はもはや始まりさえしなかった。

 

 

 しかし、フリーザやベジータたちはそんな地球とは関係なく暗躍する。

 

 

 彼らによって多くの犠牲者を生むこととなるナメック星編は、ヤムチャ計画からすり替えられたリボンズヤムチャの計画によって酷く歪められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空たち地球の戦士がナメック星に来なかったことで、フリーザは目的通りドラゴンボールを7つ揃えることに成功した。

 

 途中、ベジータとサイヤ人編を生き残り、再びベジータの部下に戻ったナッパの裏切りによって事態を引っ掻き回されたりもしたが、参謀リボンズの知略や派遣先から呼び戻したギニュー特戦隊の働きもあり、フリーザは数日掛けて遂に7つのドラゴンボールを手中に収めたのである。

 

 しかし、ドラゴンボールを7つ集めただけでは願い事は叶えられない。

 

 ドラゴンボールから神龍ポルンガを呼び出し、願い事を言う為には特殊言語であるナメック語を使う必要があり、大半のナメック星人たちを殺し尽くしてしまったフリーザは生き残りのナメック星人を探す為、ドラゴンボールをギニューに預け、その場から飛び立っていったのである。

 

 

 ――それこそがリボンズ……リボンズヤムチャの策略だと知らずに。

 

 

 

 

「プピリット・パロ!」

 

 フリーザがドラゴンボールをギニューに預け、飛び立った跡を見計らい、リボンズヤムチャは流暢なナメック語で呪文を唱え、神龍ポルンガを召喚した。

 

 リボンズヤムチャはこの時のために、ナメック語を習得していたのだ。

 

 リボンズヤムチャがそれをフリーザに黙り、いなくなった後で唱えたことに謀反の意志を読み取ったギニューたち特戦隊が一斉に牙を剥いたが、次の瞬間には彼らの身体は横たわり、呆気なく意識を失っていた。

 リボンズヤムチャの元に降り立った六人のヤムベイドが、彼らの意識を一瞬にして刈り取ったのである。

 

 ヤムチャ・リヴァイヴ。

 ヤムチャ・ヒリング。

 ヤムチャ・ブリング。

 ヤムチャ・デヴァイン。

 ヤムチャ・アニュー。

 セルリジェネ・ヤムチャ。

 

 それぞれに「復活(リヴァイヴ・リバイバル)」、「癒し(ヒリング・ケア)」、「安定(ブリング・スタビティ)」、「(デヴァイン・ノヴァ)」、「新たなる帰還者(アニュー・リターナー)」、「再生(リジェネ・レジェッタ)」というコードネームを与えられた彼らは、ヤムベイドの中でも特に優れた能力を持ち、言うならばヤムチャの特戦隊だった。

 

 そんな彼らを、リボンズヤムチャは「ヤムチャマイスター」と呼んだ。

 

「最初からあたしらでドラゴンボール集めれば良かったのにー」

「同感だな」

「だが、それでは物語にならない」

「そうだね、ある程度は彼らの物語を見守らないと。それが計画の為に生まれてきた僕たちの役目だ」

 

 ビッグゲテスター・ヴェーダが生み出した最高の肉体を持つ彼らの戦闘力は、一人一人が超サイヤ人を凌駕している怪物である。

 人を超えた存在――いわばヤムチャの変革者である彼らは、ヤムベイドを超えたヤムベイターとも自負する能力者たちだった。

 そのヤムチャマイスターの全員が招集され、彼らによって邪魔者が排除された場所にてリボンズヤムチャが悠々とポルンガと向き合った。

 

 ナメック星のドラゴンボールを手に入れ、願いごとを言う。

 それこそが、元少年が企てたヤムチャ計画の第三段階であった。

 

 しかし、リボンズヤムチャがこの時言い放とうとする願い事は、本来の計画にはないものだった。

 この生の中で自らが本当になすべきことを知ったリボンズヤムチャは、己が存在意義であるヤムチャ計画さえも取り込み、自らの計画へと書き換えていたのだ。

 

 その為に、ヤムチャは本来のヤムチャ計画とは違う願いをポルンガに告げた。

 

「君の持つ力の全てで、この第7宇宙を外の宇宙から隔離してくれ」

 

 それはポルンガにとって、過去最大に難易度が高い複雑な願いだろう。

 ナメック語でそう告げたリボンズヤムチャに対して、ポルンガは逡巡するように数拍の間を空けて返した。

 

「その願いは、私でも簡単に叶えられる願いではない」

「君なりに、最善を尽くしてくれればいいよ。とにかくこの宇宙を外側から見えなくし、遠くへ飛ばし、入れなくしてくれればいいんだ。十二の宇宙から、上手く除外できないかな?」

「……わかった。やってみる」

 

 地球のドラゴンボールとは違い、「それは私の力を大きく超えた願いだ」とにべもなく拒否しないのは流石本場の神龍と言ったところか。

 やはりこの星に来て良かったと、リボンズヤムチャは改めて思った。

 そんなリボンズヤムチャに、セルリジェネが訊ねる。

 

「面白い願いだね、リボンズ。そんなに外の宇宙が怖いのかい?」

「ザマスにあれだけ暴れられても動かなかった全王や大神官が、ボクたちのことで動くことはまずありえない。でも、ビルスの死に気づいたシャンパがこちらの様子を見に来る可能性はなきにしもあらずだ。いつかは彼らと戦うことを想定すれば、ボクたちヤムベイドが神を超えるまで時間稼ぎが必要だろう?」

「神を超える? あはは! さっすがリボンズ! 燃えてくるね、面白いじゃないさ!」

「君はやはり、神を超えるつもりなのか。しかしそれは、ゲンサクの孫悟空でさえ成し遂げられるか怪しい偉業ですよ?」

 

 このような願い事をしたリボンズヤムチャの思惑に共感し、女性的な外見をしたヤムチャヒリングが愉快そうに笑い、セルリジェネが薄く笑む。ヤムチャアニューとヤムチャブリング、ヤムチャデヴァインの三人は沈黙しているが反目しているわけではなく、事の重大さを理解するヤムチャリヴァイヴが問い詰めるようにリボンズヤムチャに言った。

 リボンズヤムチャは肩を竦めながら、当然のことのように答える。

 

「それは愚問だよ、リヴァイヴ。ボクらは「原作」という枠組みから外れた上位者であり、絶対者だ。神と言ってもボクたちから見れば、所詮は二次元の存在に過ぎない。負けるつもりはないよ」

 

 涼やかな瞳の中に、確かな野心の火を宿す。

 それに……と続けて、リボンズヤムチャは言った。

 

「この世界に必要な神は、いつだって一人さ。このボク……リボンズヤムチャだよ」

 

 あるいはそちらの方が、彼の本音なのだろう。

 彼と同じ遺伝子情報を持つ彼らヤムベイドたちは、そんな彼の胸中を理解し、同調していた。

 ただ一人、セルリジェネを除いて。

 

「……来たよ、リボンズ。僕は先に帰るね」

 

 こちらへ猛スピードで接近してくるフリーザの「気」を感知したセルリジェネが、そう言い残しながらそそくさと自分だけ「瞬間移動」でこの星から立ち去っていく。

 「願いは叶えてやった。では、さらばだ」とポルンガがリボンズヤムチャの願いを叶え、空に舞い上がったドラゴンボールが石になって散らばったのはその時だった。

 

 本来なら願い事は三つ叶えられる筈だったポルンガが、たった一つの願い事で消えてしまったのは、原作のように最長老が死んだからではない。

 

 今しがたリボンズヤムチャが告げた願いを叶える為には、三つ分のエネルギー全てを消費しなければ実現出来なかったからであろう。

 元よりリボンズヤムチャは、他の願いをこの場で叶える気はなかった。尤も、不老不死のような「ありきたりな願い」程度なら、わざわざドラゴンボールに頼らずともビッグゲテスターを手中に収めた時点でほとんどノーリスクで叶えられるからだ。

 故に、もはやこの星に留まる理由はなくなった。自分もセルリジェネのようにさっさと瞬間移動で去ろうと思ったリボンズヤムチャだが、それでも()上司の最期ぐらいは見届けてやろうかなと気を効かせてやった。

 

 

 

 

「遅かったですね、フリーザ様」

「……リボンズさん、やってくれましたね」

 

 自分が立ち去った後で突如暗くなった空に、現れた巨大な龍。

 戻った頃にはドラゴンボールは全て石になっており、龍はその場から消えていた。

 そして彼の周りには地面に這いつくばって倒れているギニュー特戦隊の面々と、彼に似た面影を持つ青年たちの姿がある。

 その状況を目にすれば、リボンズという部下が何をやらかしたのか疑う余地はなかった。

 やってくれましたね、とフリーザは表面上こそ常の余裕を保ったまま、冷静に口を開く。

 しかし次の瞬間、彼の形相は阿修羅すら凌駕し、両の目を血走らせながら叫び出した。

 

「許さん……絶対に許さんぞ虫けらども! じわじわとなぶり殺しにしてくれる……! 一人残さず生かしては返さんぞ覚悟しろッ!!」

 

 対界王神に備えて83万まで鍛え上げていた戦闘力を一気に解放し、フリーザが本性を露す。

 しかしそれを見ても目の前の青年は涼しい顔一つ崩さず、隣の女性に至っては拍手をしながらニヤニヤと笑っている。

 そんな彼らの姿が余計に神経に障り、フリーザの「気」はさらに増大していき、弾けた。

 

「下等生物どもが……っ、このフリーザ様を謀りやがって……! 私は三回の変身を残しているのですがねぇ……全員まとめて、最終形態で消し飛ばしてくれる!!」

 

 第二形態、第三形態を飛ばして一気に最終形態へと変身するフリーザ。

 もはやなりふり構ってはおらぬとばかりに出し惜しみをしない姿は、それほどまでに自分がリボンズという虫けらに出し抜かれたことが悔しかった証である。

 リボンズの戦闘力はおそらく、高くても1000程度であろうとフリーザは見立てている。彼の護衛として共に軍に加わったヒリングという女性のこともフリーザは知っており、その戦闘力が5万にも満たないことも知っていた。

 他の四人のことは初めて見るが、おそらくはヒリングと同程度だろう。いずれも今のフリーザが最終形態で相手をするには、あまりにもオーバーキルが過ぎる相手だ。

 しかしそれを辞さぬほどに、この時のフリーザはマジギレしていた。

 

 そのフリーザを前に、リボンズ――リボンズヤムチャは言い捨てる。

 

「そう言う君の役目は終わったよ」

 

 君は界王神様を殺した、言うならば「神殺しの大罪人」だ。

 白々しくそう言って、リボンズヤムチャは言葉を続ける。

 

「罪を犯した子には罰を与えないとね」

「罰ですって? ふふ、貴方が、この僕に? それは見物ですね」

 

 最終形態になったことで少し精神が冷静になったフリーザに、リボンズヤムチャは尚も冷笑を返す。

 そしてリボンズヤムチャは、彼に対して死刑宣告を言い渡した。

 

「君を裁く者が現れるよ」

「裁く者……? まさか!」

 

 意味深に告げられたリボンズヤムチャの言葉に、フリーザは思い当たる節を探る。

 裁く者――それはこのフリーザの力を妬んだ兄クウラか、はては破壊神ビルスに手を出すなという言いつけを破ったことに気を悪くした、父コルドか。

 ……いいだろう。どちらが来ても相手になってやろう。丁度、そろそろうるさいと思っていましたしね。

 小賢しい策謀に長けたリボンズのすることだ。大方、この時の為に僕の肉親を味方につけていたのだろう。そう推測したフリーザであったが――現れたのは、彼にとって予想だにしない人物だった。

 

 

 

 ――それは空間を疾走する流星の如き、黄金色の光だった。

 

 

 求めるべき怨敵の姿を視認していた彼は、元来堪え性のない性格である。

 そんな彼は今まで燻り続けていた感情を解放しながら、一直線に加速していく。

 リボンズヤムチャも、彼の仲間であるヤムベイドという連中も自分の到着に気づくとその場から立ち去り、彼の怨敵フリーザと自分だけをこの場に残してくれた。

 

 最高のお膳立てだ。

 

 フリーザと一対一で戦い、そして勝つ。それこそが自分が果たしたいと思っていた――もはや絶対に果たすことはできないと諦めていた、この生の悲願だったのだから。

 

 

「会いたかった……会いたかったぜ! フリーザァァァ!!」

 

 

 その身に闘気の全てを昂らせた彼――超サイヤ人2のバーダックが、万感の思いを込めてフリーザと相対する。

 しかしその手で繰り出したのは、長年待ちわびた恋人へのハグなどではない。どこまでもサイヤ人らしく乱暴な、拳の一突きだった。

 

「な、なんですか貴方は……?」

「ギネと惑星ベジータの仇、討たせてもらうぜ! この超サイヤ人で!」

「ス、スーパーサイヤ人!? まさか……まさか、貴様っ!」

 

 自分を裁く者――超サイヤ人。

 それを聞いて、フリーザは納得と同時に激怒を浮かべる。

 たかがサイヤ人が自分を裁くなどというリボンズの大ボラも気に食わなかったのだが、もはやナッパとベジータ以外存在しないと思っていた……自分が滅ぼした筈の下等な猿野郎がまだ生きていたこと自体が、彼の神経に障った。

 

 そして何より、この男の「目」だ。

 

「貴様……思い出したぞ! この僕に最後まで抵抗してきたあのサイヤ人だな!」

「覚えているとは光栄だな! やはりてめえは、この俺の手でぶっ潰さなきゃならねぇみてぇだ!」

「っ!」

 

 一撃目の拳を右腕で受け止められたバーダックは、次に膝蹴りを繰り出しフリーザのガードを力任せに破っていく。

 そしてがら空きになった彼の胸に、渾身の肘打ちを叩き込んだ。

 そうだ! とバーダックが叫ぶ。

 

「ぶっ殺し合う運命だったぁっ!」

「ぐうっ!?」  

 

 戦闘民族らしい粗野な笑みを浮かべながら、バーダックは嬉々としてフリーザを殴り飛ばす。

 今や界王神をも超えたフリーザの最終形態が、一方的に圧されているのだ。その事実に驚愕と怒りを覚えたフリーザが、身体中の筋肉を膨らませながら対抗していく。

 

 ぶつかり合う拳と拳。

 

 容赦の無い二人から迸るエネルギーの奔流に煽られ、天変地異を起こすナメック星。

 その荒れ狂う星の空でお互いの拳を塞ぎ合いながら、バーダックが叫んだ。

 

「何度でも言うぜ、フリーザ!」

「なにを……!」

「サイヤ人を滅ぼしやがった貴様だけは、絶対に許さねぇ!!」

「偉そうなことを言いやがって……!」

 

 バーダック――目の前のサイヤ人が本当に自分の恐れていた「伝説の戦士」であることを理解したフリーザが、冷静さをかなぐり捨てた目で睨み、その尻尾で彼の首を締め上げようとする。

 しかしそれを両手で受け止めたバーダックが、彼の尻尾を思い切り引きちぎった(・・・・・・)

 

「あぐっ……! このっ……戦うことしか能の無い猿野郎が!」

 

 フリーザはその尻尾に激痛が走りながらも体勢を立て直し、フルパワーでの頭突きをバーダックに喰らわせる。

 そして彼は、惑星ベジータを滅ぼした自らの正当性を示すように言い放った。

 

「貴様らサイヤ人のやってきたことが、正しかったとでもいう気か!?」

「そんなことはどうでもいいだろう!」

 

 頭突きを喰らった額――かつて同僚から託された血染めのバンダナから血流を流しながら、純粋なる青い瞳でバーダックはフリーザを睨み、迷いもなく言い切った。

 自分の息子であれば、「だから滅びた」とサイヤ人の末路に対し、因果応報だと切り捨てたところだろう。

 しかし、バーダックは違う。

 サイヤ人は戦闘種族だ。これがもし自分が望んだ戦いの中で死んでいったのであれば、後腐れなく滅びを受け入れられたと彼は考えている。

 だがフリーザは別だ。

 彼の為にサイヤ人は散々こき使われ、ゴミのように捨てられた。そして何も知らない同胞たちを、一発の騙し討ちでまとめて消し去っていったのだ。

 その卑劣な手口が、気に入らない。

 妻のギネを殺したのも、気に入らない。

 

 そしてさらに気に入らなかったのは、あのヤムチャアニューという女から聞かされた話――そのフリーザが後にバーダックの息子であるカカロットによって倒された後、そのカカロットによって数十年後、再びこの世に生き返るという未来の出来事だった。

 

 こんな父親だ。カカロットが未来でやらかすことに、説教くれるような高尚な気は無い。

 ヤムチャアニューの言葉を鵜呑みにする気も無いし、そのことでカカロットに失望したわけでももちろんない。

 

 ただバーダックという男が今もなおフリーザを憎む理由としては、この怒りを風化させない理由としては、それだけで十分だった。

 

「てめえがこの世に生きてんのが気に入らねぇ! 俺たちが殺し合う理由はそれで十分だろう!」

「野蛮な蛆虫が……いいだろう! ならば木っ端微塵にしてやる! あのサイヤ人たちのように!」

「貴様あああああああっっ!!」

 

 あの時、フリーザの攻撃で死んだと思っていた自分が何故生きていたのかはわからない。

 わからなくてもいい。

 そんなことはどうでもいい。

 バーダックにとって重要なのは、自分があの時より遥かに強くなり、こうしてフリーザと決着をつけられるという事実だった。

 リボンズヤムチャという男に操られているわけではない。

 バーダックは己自身で自分を悪人だと断じている。

 だがそれでも、彼はどこまでいってもサイヤ人であり、ある意味では息子以上に純粋な戦士だったのだ。

 

 二人は互いの煽りと拳に対し、煽りと拳で返す。

 お互いにフルパワーを解放した二人の怪物は、どちらかが殴られればお返しとばかりに殴り返し、血で血を洗う壮絶な殺し合いを演出していた。

 

「うああああああああっっっっ!!」

「キェアアアアアアアッッッッ!!」

 

 交錯する生と死。彼らの死闘は一時間に及び続き――やがて終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フリーザ、貴方はいい道化でしたよ」

「リ……リボンズ……」

 

 崩壊していくナメック星。

 そのひび割れた地には奇しくも原作通り、胴体を真っ二つにされたフリーザの姿が横たわっていた。

 

 フリーザは超サイヤ人――バーダックとの戦いに引き分けたのである。

 

 彼らは互いの最終攻撃でそれぞれの肉体を削り合い、致命傷を受け合ったのである。

 力を使い果たしたバーダックはやり切ったような顔でナメック星のマグマへと消えていき、フリーザは真っ二つになって地に崩れ落ちた。

 

 そしてその時になって、裏切り者であるリボンズ――リボンズヤムチャが這いつくばるフリーザの元へ現れたのである。

 

「ドラゴンボールは君の願いではなく、ボクの為に使わせてもらったんだ」

「きさまァ……! この俺の不老不死をッッ……!」

 

 フリーザの命はもはや風前の灯火であり、このまま放っておいても程なくして死ぬだろう。

 しかしそれでもなお衰えない、寧ろ肥大化しているような気さえする帝王の威圧感を撒き散らしながら、フリーザは憎悪の目をリボンズヤムチャに差し向けた。

 リボンズヤムチャはそんな彼の視線に対し、やれやれとでも言いたげな呆れた顔を返した。

 

「そう言う物言いだから、器量が小さいのさ」

 

 その手に気攻波を溜めながら、リボンズヤムチャは肩を竦める。

 この死に体のフリーザに、とどめを刺すつもりなのだろう。

 

「フリーザ軍の行く末は、ボクに任せてもらうよ」

 

 冗談ではない。

 貴様などに殺されるぐらいなら、俺は……! そう歯軋りし、フリーザは残るありったけの力を込めて、その拳を地面へと突き刺した(・・・・・・・・・)

 

 

「リボンズゥゥゥーーーッ!!」

 

 

 怨嗟の叫びを最後に、フリーザは――ナメック星ごと全てを消し去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり宇宙の帝王は伊達ではない、と言ったところか。

 

 原作では孫悟空に命乞いをしていた彼だが、流石の彼も戦ってすらいない人間に生き恥を晒すのは我慢ならなかったのだろう。

 

 ナメック星は原作通り、爆発して消滅することとなった。

 

 リボンズヤムチャを巻き込んでフリーザは自害し、星ごと自分たちの墓標にしてみせたのである。

 ただ、そんなフリーザにとって誤算だったのは、リボンズヤムチャがヤードラット星人の秘術である「瞬間移動」を扱えたことだった。

 ヤードラット星に送り込んだヤムベイドの働きにより、ビッグゲテスター・ヴェーダには「瞬間移動」の習得方法なども情報としてインプットされている。それを参考に予め瞬間移動を習得していたリボンズヤムチャは、一足先にビッグゲテスター・ヴェーダへ帰還していたヤムチャマイスターたちの元へ退避することで、星の爆発から逃れたのである。

 

「ねえ、そう言えばバーダックはなんで生きてたの?」

「……私がタイムパトロールをしていた頃、過去の世界から連れてきたのよ」

「ボクがそう命じたんだ。彼もある意味、原作という枠組みから超えた存在だからね」

「あ、リボンズ、おかえり」

 

 まさに、たった一人の最終決戦である。

 フリーザと相打った孫悟空の父、バーダック。

 彼はこの世界の人間ではなく、ヤムチャアニューが担当していた「トキトキ都」でのみ観測できる歪んだ時間軸から連れてきた人間だったのだ。

 異なる時代の時間軸から超戦士を引き抜き、この世界の歴史を狂わせた。リボンズヤムチャが今回フリーザに対して行ったのは、もはやどう取り繕っても言い逃れできない盛大な時間犯罪であった。それこそ、ザマスなら助走をつけて殴り掛かった後宇宙になって高笑いする案件であろう。

 しかし自分こそが絶対者であり、唯一無二の神なのだと悟っているリボンズにとって、もはや旧時代の神が定めた法などどうでも良かった。

 

「フリーザは死んだのか?」

「うん。帝王らしい最期だったよ」

 

 寡黙なデヴァインヤムチャの問いに、リボンズヤムチャが帝王の最期を簡潔に語る。

 どこまでも強く、どこまでもしぶとい。憎悪に滾った瞳は夢に出てきそうだと軽く語るリボンズヤムチャであったが、その嘲笑の裏では侮れない男だったと思い彼の死に安堵している自分がいた。

 トキトキ都――メタ的に言えば、「ドラゴンボールゼノバース2」というゲームの世界観に当たる時間軸から連れてきたあのバーダックの戦闘力は、低く見積もっても魔人ブウクラスには匹敵していた筈だ。

 そのバーダックを相手に引き分けたのだから、フリーザという男の異常な底力がなおさら際立つ。この宇宙で最も名の知れた極悪人である彼の傍は、活動の隠れ蓑にするにはうってつけの場所だったのだが……あれが将来ゴールデン化することを思えば、やはりここで始末しておいて正解だったとリボンズヤムチャは改めて自分の計画が正しかったことを再確認した。

 そんなリボンズヤムチャは大広間のソファーに腰を下ろした後、この場にいるヤムベイドが五人しかいないことに気づいた。

 

「リジェネがいないね」

「あれ? さっきまでそこにいたんだけど」

 

 セルリジェネがいない。

 セルリジェネ――その正体は、ドクター・ゲロがセルを製作する過程の中で、ヤムチャ・ティエリアーデから採取した細胞の異常性に気づき、その異常性を研究する為に生み出したヤムチャのクローン体である。

 オリジナルのヤムチャと特に酷似した容姿を持つ彼だけは、ビッグゲテスター・ヴェーダによって生み出された他のヤムベイドとは異なる出自であり、性質もまた違っていた。

 しかし、元少年が企てた本来のヤムチャ計画の中には、彼がドクター・ゲロの手で生まれることも想定されており、自身の計画に含まれていた。そう言う本質的な意味では、彼もまた間違いなく「ヤムベイド」だった。

 だがセルリジェネというヤムベイドはビッグゲテスター・ヴェーダによって生まれていないため、生誕した際にリボンズヤムチャによる命令を受けていない。

 それ故に彼は野良猫のように自由奔放な性格をしており、リボンズヤムチャが唯一思考を読み取れないヤムベイドだった。

 

「……なるほど、そういうことか」

 

 彼の危険性にはとっくに気づいていた。

 しかし彼の立ち位置があの「セル」に当たるならばと、リボンズヤムチャはこれからの計画に使えると判断しあえて手元に置いていたのだ。

 しかしフリーザが死んだ今になってこちらが掛けた招集を拒否した彼の魂胆を推測し、リボンズヤムチャは思わず苦笑を浮かべた。

 

 ……流石はセル。原作通り、演技と潜伏は上手いようだ。

 

 想定はしていたが、このタイミングで動くとは思わず、リボンズヤムチャは一杯喰わされたなと大広間に浮かぶウインドウ画面を眺めて笑った。

 爆発し、消えゆくナメック星を映していたその画面には、ほんの一筋――キラリと瞬いては画面の端へと飛んでいく、小さな光芒があった。

 

 リボンズヤムチャは、その光を見逃さなかった。

 

 

 それは消えゆくナメック星から脱出していく――宇宙船である。

 

 

「リボンズ?」

「裏切りが得意な子は、ボクだけじゃなかったってことさ」

 

 ドクター・ゲロ製のヤムベイドが、こちらに従順な筈もない。寧ろこの方がそれらしいだろうと思いながら、リボンズヤムチャはあえて宇宙船の脱出を見逃してやることにした。

 それが一時でも「親」の上を行ってみせた、「子」に対するせめてもの情けというものだろう。

 

 そんなリボンズヤムチャはその宇宙船に乗っているであろうセルリジェネと、おそらく生き返っていた(・・・・・・・)のであろうもう一人のヤムベイドに対して呟いた。

 

 

 

「ボクらを超えられるかいリジェネ? そして……ヤムチャ・ティエリアーデ」

 

 

 

 ヤムチャによる原作の改変。

 今この時、新たな変革期が訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発し、消滅していくナメック星。

 炎と化していくその星から飛び出していく一機の宇宙船の中には、総勢20人以上もの人々が敷き詰められていた。その中にはナメック星人たちだけではなく、フリーザとの対決によって意識不明の重体になっていたベジータと、ナッパも一緒である。

 

 詰め込めるだけの人間を可能な限り詰め込んで脱出したつもりだが、それでもあの星に残していった者達のことを思うと心苦しい思いはあった。

 そんな思いを胸に抱えながら――ヤムチャ・ティエリアーデは故郷である地球を目指して宇宙船を操縦していた。

 

「助けたナメック星人はデンデを含め25人。ゲンサクもこのぐらいの人数だったかな?」

「そういうことを言うんじゃない。俺達の生きている世界はゲームでも漫画でもないんだ」

「わかっているよ、ティエリア」

「ヤムチャだ。名前の意味はわからないが、俺はティエリアって名前が似合う雰囲気じゃないだろ」

「そうかい? 僕は呼びやすくて素敵な名前だと思うけど」

「お前のは呼びにくいんだよ。レジェネ・リジェッタ」

「リジェネ・レジェッタ」

 

 ヤムチャが操縦桿を握る席の隣には、足を組み、背もたれに腰を預けながら天井を振り仰いでいる青年の姿がある。

 まるで双子のようにヤムチャと酷似した顔を持つ彼の名は、セルリジェネ。リボンズヤムチャたちを裏切り、ヤムチャの「偽装死」に貢献した人造人間ヤムベイドだった。

 

 

 ――そう、あの日、彼がリボンズヤムチャに見せつけたヤムチャ・ティエリアーデの死は、彼によって仕組まれたトリックだったのだ。

 

 あの時点からセルリジェネはリボンズヤムチャに対して反旗を翻す気満々であり、逆にヤムチャ・ティエリアーデのことを「味方として」気に掛けていたのである。

 溜め息を吐くように眉間を抑えながら、今回の出来事についてセルリジェネが呟いた。

 

「しかし驚いたよ。リボンズがまさかあんな願い事をするなんてね……もう少し遅かったら、君がトキトキ都から帰ってこれなくなるところだったよ」

「ああ、この宇宙を隔離してくれって願いだろ? 正気の願いじゃねぇよな。夢もロマンもありゃしねぇ」

 

 ヤムチャ・ティエリアーデは姿を眩ましたサイヤ人編の間、リボンズヤムチャによって呼び戻されたヤムチャアニューと入れ替わるように「トキトキ都」を訪れていた。

 諸事情から事前にタイムパトロールのトランクスとの接触に成功していたセルリジェネが、彼にヤムチャを託し、トキトキ都で匿ってもらっていたのだ。

 

 ――全ては、リボンズヤムチャのろくでもない計画を阻止するために。

 

 そしてヤムチャ・ティエリアーデの力を極限以上まで高める為には、トキトキ都の存在が最適だったのだ。

 そんなセルリジェネの狙い通り、トキトキ都で匿われていたヤムチャは目当ての人物と接触し、修行をつけてもらうことに成功した。

 

 

 その人物とは――老界王神である。

 

 

 ヤムチャ・ティエリアーデはリボンズヤムチャの目が自分やトキトキ都から離れている間、彼の力で自身の潜在能力を限界以上まで引き出してもらったのだ。

 そうしてアルティメットヤムチャとなった彼は、ヤムベイドを超えた真のヤムベイターとなってこの世界への帰還を果たしたのである。

 

「新しい力は馴染んだかい?」

「いや、まったく。あっちの老界王神様にも、急いでやってもらったからな……まだ不完全だ」

「じゃあ身勝手の狼牙・兆ってところかな」

「勝手に名づけんなよ」

 

 この宇宙でヤムベイド――いや、リボンズヤムチャの恐ろしい企みを知っており、それに対抗しようとする者は今はまだ彼とセルリジェネだけだ。

 

 だが、必ず阻止してみせる。

 元少年が企てた、あまりにも無垢すぎる無茶で危険な計画を。

 リボンズヤムチャが歪ませた、野心に満ちた恐ろしい計画を――。

 

 

 

 来るべき新たなる戦いへ……希望を胸に、彼らの宇宙船は北の銀河を飛翔していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ―― to be continued ――

 

 

 

 




 これにてファーストシーズン終了です! オチが大団円じゃないのはOOファーストシーズンリスペクトです。


 今回は真面目なドラゴンボールの小説を書いていた筈なのに怒涛のヤムベイド集結シーンを書いただけで頭が変な感じになってしまいました。いや、それは元からか。

 セカンドシーズンでは「リボーンズヤムチャ! 狼牙風風拳、いくっ!!」「そうとも、このヤムチャこそ、人類を導くヤムチャだ!」「この……ヤムチャ風情があああ!!」という感じの展開になると思います。
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