ちなみに私はOOではヒリングとリヴァイヴが好きです。なんかあの大物ぶった小物な感じがかわいい(´・ω・`)
その力は、明らかに本来のヤムベイドが持ち得る戦闘力を超えていた。
スパイカメラを通して戦いの様子を眺めていたリボンズヤムチャが、思わず立ち上がって目を見開いたほどだ。
老界王神の潜在能力開放と、界王の界王拳。神に由来する力同士を掛け合わせることによってこれほどのパワーを生み出すことになるとは、リボンズヤムチャをしても予想外だったのである。
――名付けるならば、「ヤムチャドライヴ」と呼ぶべきか。
潜在能力の解放も界王拳も、ヤムチャには使いこなすことができない。ならば逆転の発想だ。その二つの技を50%ずつ掛け合わせることによって一つの力として同調させ、彼は全く新しいパワーアップ現象を生み出したのである。
赤い光を放つヤムチャの身体が「紫色の」オーラを身につけたのはその時だった。
「いける!」
他ならぬ自分自身の力に唖然としていたヤムチャが、自信に満ちた表情で合体13号へと挑んでいく。
ヤムチャは超サイヤ人のベジータを一方的に叩きのめしていた彼の元へ割り込むと、目にも留まらぬ早業で敵の巨体を上空へと打ち上げ、四方から連打していった。
「すげぇ……!」
元気玉を作っていた悟空が、紫色に輝くヤムチャの姿を見て賞賛の声を漏らす。
合体13号もまた、合体して最強の力を身につけた筈の自分が反応すらできないヤムチャのスピードとパワーに戦慄していた。
「グオオッ……!? ヤムチャアアアアアア!!」
「ハイハイハイハイッ! オウゥゥゥゥッ!!」
かつて孫悟空と共に戦い、レッドリボン軍の壊滅に大きく関わったヤムチャ。
そのヤムチャへの復讐心によって生み出された人造人間が、憎しみの叫びを上げて拳を振り回すと、ヤムチャが残像を残すスピードで全ての攻撃をかわしきり、カウンターで繰り出す縦横無尽の狼牙風風拳で敵を圧倒していく。
――これが、ヤムチャの力!
新たな力、ヤムチャドライヴを獲得した彼は超サイヤ人すら凌駕する存在となった。
しかしその力は肉体の限界を超えた力を無理矢理引き出している性質からか、永続的なパワーアップではなかった。
時間が経てば界王拳のように反動が襲い掛かり、発動には限界時間があったのだ。
合体13号を完全に圧倒していながらも肉体にガタが来てしまったヤムチャが、糸が切れたように地に崩れ落ちていく。
一方で、敵はボロボロになりながらもその身はまだ健在だ。合体13号の目は倒れ伏したヤムチャを睨んでおり、彼にとどめを刺そうとその腕を振り上げていた。
だが、ここにいるのはヤムチャだけではない。
「俺たちに……不可能など、あるものか……!」
「待たせたなヤムチャ! くたばっちまえーっ!!」
「ソ、ソンゴクウゥゥゥーーッ!!」
ヤムチャの時間稼ぎによって完成した悟空の超元気玉と、ベジータのビッグバンアタック。
その二つを同時に浴びた合体13号は、原作映画とは似ているようで違う最期を遂げることとなった。
「……ボクの知らないヤムチャだと……?」
その一部始終をビッグゲテスター・ヴェーダから監視していたリボンズヤムチャが、不愉快げにそう呟く。
ヤムチャ・ティエリアーデが既にヤムベイドの枠から外れた存在になっているのはわかっている。しかし、それでも今しがた彼が見せた力は想像以上だった。
それこそ、ここに来て計画に支障をきたしかねない成長である。
「そろそろ、あたしらの出番?」
「……そうだね、ヒリング。君たちに任すよ。ただ……」
彼の存在を危険だと認めるのは癪に障ったが、あえて泳がしておくのもいい加減に目障りになってきたのは確かである。
ただ、彼が獲得した「ヤムチャドライヴ」という力は、リボンズヤムチャがより高みへ昇りつめていく為に有益な情報だったのもまた確かだ。
特にリボンズヤムチャにとって、老界王神の潜在能力解放は盲点だったのだ。何故ならば「ヤムチャの潜在能力などたかが知れている」と見ていた彼は、老界王神に頼るのはヤムチャのパワーアップ手段として得策ではないと判断していた。
原作での孫悟飯があれほどまで強くなったのは、あくまでも孫悟飯の潜在能力が作中最強レベルにずば抜けていたからであり、引き出す力がヤムチャでは大したものにはならない。リボンズヤムチャの目標には遠く及ばない、最初期の時点で計画から外していたのである。
しかし、こういった使い方があるのならば話は別だった。
「ドラゴンボールが欲しくなったね」
「そう? なら持ってくるね」
――予定変更だ。
地球のドラゴンボールを手に入れて、神龍の力を使い、聖域「界王神界」へ進出することにしよう。
ヤムチャ・ティエリアーデの戦いぶりを見て、リボンズヤムチャも欲しくなったのだ。
ヤムチャの枠組みを明らかに超えさせてくれる――老界王神の力が。
「まさか、僕たちにまで出番が回ってくるとはね」
「ヤムチャ・ティエリアーデ……彼をこちらへ引き込むことはできないのか?」
「やるだけやってみれば? どうせ無駄だと思うけど」
かくして、ヤムベイドたちは動いた。
リボンズヤムチャの命を受け、ヤムチャブリングとヤムチャヒリング、ヤムチャリヴァイヴの三人がドラゴンボールを求めて地球へ向かったのである。
――だが、地球に向かったのはその三人だけではなかった。
「カカロットの相手は俺がやる」
「バーダッ……いや、今はミスター・グドーだったね」
「てめえが勝手に呼んでいるだけだろうが」
ヤムベイドの居城であるビッグゲテスター・ヴェーダの内部。
その大広間に姿を現した仮面のサイヤ人に、リボンズヤムチャが苦笑しながら指示を与える。
「いいさ、彼の相手は君に任すよ。ヒリングたちには、ドラゴンボールの収集を優先させておこう」
ヤムチャ・ティエリアーデの覚醒という予期せぬアクシデントはあったものの、合体13号が孫悟空に敗れること自体は当初の予定通りである。
そしてその戦いがきっかけとなり、原作主人公である悟空がさらなる飛躍を遂げることも。
彼がリボンズヤムチャの立派なかませ犬になるのも、もう一押しといったところか。その一押しの為には、目の前に立つ仮面のサイヤ人の存在はまさに打ってつけだった。
――かくして、リボンズヤムチャの刺客が地球へと送り込まれた。
合体13号を倒して間もなく、新たなる脅威が地球を襲ったのである。
孫悟空はあれほどの強さを誇った合体13号さえもリボンズヤムチャにとっては使い捨ての駒に過ぎないことをヤムチャに聞かされ、このままでは駄目だと危機感を抱き、短期間で大幅なレベルアップを遂げる為の手段を講じた。
――「精神と時の部屋」である。
神様の神殿にあるその部屋では一日で一年分の修行をすることができ、室内の空間もサイヤ人好みな過酷なものとなっている。
原作ではセルに対抗する為に息子の悟飯と共に入り、親子ともども大幅なレベルアップを遂げた悟空であったが……彼は「ベジータと共に」その部屋に入ることにしたのだ。
本当ならば息子の悟飯を連れていきたかったのだが、今のところは原作の人造人間編ほど目に見える脅威に襲われていない為か、チチが彼をそんな過酷な部屋に入れることを快く思わなかったのである。至ってまともな母親心であった。
ならばヤムチャと一緒に入るか、となったわけだが……彼の場合はどうしても手が離せない状況に陥っていた。
――ヤムベイドの襲来だ。
ビッグゲテスター・ヴェーダから瞬間移動でやってきた三人のヤムベイド。
彼らはブルマの家を襲ってドラゴンレーダーを奪い、散り散りになってドラゴンボールを探し回った。
そんな彼らの行動に気づいたヤムチャが、「悟空、ベジータ! 奴らの相手は俺がする! お前たちは先に入って修行していろ!」と言い渡し、一人でドラゴンボールの争奪戦に向かってしまったのだ。
最初は悟空もヤムチャに加勢しようと部屋に入ることを渋ったが、三人のヤムベイドが秘めている途方もない潜在エネルギーを察知し、「今のオラたちじゃ、どうひっくり返っても勝てそうにねぇ……」と断念。
この場合はヤムチャに言われた通り、急いで精神と時の部屋に入り修行するのが最善の選択だと判断し、彼はヤムチャの無事を信じて精神と時の部屋に入ることにした。
ベジータの方は自分がヤムチャからナチュラルに味方扱いされていることと、カカロットと同じ部屋に入ることを心底気に食わない様子だったが、伝説と謳われる超サイヤ人を超える連中が次々と現れたことに憤怒し、彼らを一斉に始末すると意気込んで部屋に入っていった。
部屋の中での悟空とベジータは、流石にまだ仲良く組稽古するような関係にはならなかったものの、二人はそうして精神と時の部屋での日々を過ごしたのである。
そして彼らが部屋で修行を行っている間、ヤムチャは誰よりも大きな負担を一身に受けていた。
「ヤムチャ・ティエリアーデ……君はヤムベイターだ!」
「ちぃっ!」
「我らと共に使命を果たせ!」
「嫌だね!」
クリリンやピッコロたち、そしてナッパまでも巻き込んだ、ヤムベイドとの壮絶なドラゴンボール争奪戦。
その最中に、ヤムチャはヤムベイドの一人である赤髪のヤムベイド、ヤムチャブリングと激闘を繰り広げた。
「同胞を討つのは忍びないが、やらねばならぬ使命がある!」
「強い……! これが、ヤムベイドの力……」
ヤムチャドライヴという新たな境地に至ったヤムチャであるが、素の戦闘力ではヤムチャブリングが全てにおいてヤムチャを上回っていた。
そんな彼の戦闘スタイルは、両手から「気」の光剣を出して戦う超スピードの斬撃攻撃だ。
サウザーブレード――リボンズヤムチャから与えられた使命により、かつてクウラ機甲戦隊に潜入していたヤムチャブリングは、その技を得意とするサウザーから習得し、本家以上に使いこなしていたのである。
ヤムベイドを超えたヤムベイター、そのさらに上位に立つ「ヤムチャマイスター」。
セルリジェネ以来初めて相まみえた「敵」の実力に、ヤムチャは改めて戦慄した。
――だが、ヤムチャは変わった。
今の彼には、ヤムベイドにも負けない力があったのだ。
「負けねぇっ! 俺は、お前たちのところにはいかねぇ!」
「なに!? これが、リボンズの言っていた……!」
悟空たちと競い合っていく中で、ヤムチャは使命に忠実なヤムベイドでは決して得られない数々の経験を積み上げてきた。
それこそが愛と、勇気と――未来へと続く「明日」だった。
ヤムチャブリングによって劣勢に追い込まれたヤムチャは、潜在能力の解放と界王拳を掛け合わせた新境地「ヤムチャドライヴ」を発動する。
紫色のオーラを放出する彼が、その力で逆にヤムチャブリングを圧倒していった。
「討つと言うのか同類を!?」
「違う! 俺はヤムチャだああああっ!!」
至近距離からの全力かめはめ波が炸裂し、ヤムチャブリングをその手で葬り去る。
それは同胞たるヤムベイドへの決別の一撃であり、覚悟の顕れだった。
「ブリング・ヤムチャさーーん!!」
「こいつ……ヤムチャのくせに!」
「はあ……はあ……っ、くそったれ、今度はリヴァイヴとヒリングか!」
ドラゴンボールの収集を中断し、ヤムチャブリングの援護に駆けつけてきたヤムチャヒリングとヤムチャリヴァイヴがヤムチャの前に現れる。
彼らはピッコロや天津飯、そしてひょんなことからドラゴンボールの一つを持っていた双子の為に、成り行きで共闘することになったナッパに足止めされていたらしく、二人が駆け付けた頃にはヤムチャブリングはヤムベイド初の脱落者となっていた。
その光景をヤムチャブリングとの途切れたリンクを介して眺めていたリボンズヤムチャが、舌打ちして吐き捨てる。
「ティエリアめ……」
ヤムチャドライヴの限界時間が訪れたことで、ヤムチャは大幅にパワーダウンした状態でヤムチャリヴァイヴとヤムチャヒリングの二人を相手取ることになる。
まさに絶体絶命の窮地――と思われたその時、精神と時の部屋から出てきた悟空とベジータが合流した。
「ヤムチャ、仙豆だ」
「悟空……早かったな。修行はもういいのか?」
「ああ、四ヶ月ぐらいで切り上げてきた。超サイヤ人2って変身を、おめえが教えてくれたからな。オラたちも修行しやすかったぜ」
一日どころか五時間程度で部屋を出てきた悟空とベジータに、ヤムチャは始めは不安に思う気持ちがあったがすぐにそれを改める。
セルゲームの際に入った原作の半年にさえ満たない、僅か四か月分の修行。それだけで二人は、原作で言うところのセルゲーム時よりも遥かに強い状態で現れてくれたのだ。
「これがその変身だろ? オラも驚ぇたぜ……超サイヤ人の上に、こんなもんがあるなんてな」
「……っ、はは、すげぇ奴だよお前は」
ヤムチャが悟空たちに与えた「ゲンサク」の情報。
驚いたことに悟空はそれを参考にすることによって自らの修行方針を改め、原作よりも効率良く鍛え上げることに成功したのである。そんな彼と同じ部屋で修行していたベジータもまた、彼に触発されたかのように共に強くなっていた。
やはり悟空とベジータは、ヤムチャの想像が及ばない天才だったということだ。ヤムチャが与えた原作知識という僅かなヒントで、あっさり「超サイヤ人2」に変身してみせた姿に改めて畏敬の念を抱いた。
「超サイヤ人2か……上等じゃないさ!」
「言っておくが、俺は女だからと言って手加減はしないぞ。とは言ってもヤムチャではな……女じゃないか」
「あ? あんた、今なに言った!? ふざけんなよこの野郎っ!」
「落ち着け、ヒリング。まったく、品のない……」
「あいつらが噂のヤムベイドって奴か……男の方は、本当にヤムチャそっくりだな」
「……孫悟空、僕を怒らせたな。沈めてやる」
「えっ? なんで!?」
超サイヤ人2になった悟空とベジータが、二人のヤムベイドと対峙する。
ヤムチャヒリングは彼女の名誉の為に言うが、女性型ヤムベイドとして作られた彼女の姿はれっきとしたかわいらしい緑髪の女の子であり、ヤムチャとの共通点と言えばせいぜいくせっ毛の加減が似ている程度だ。遺伝子情報が同じと言えど、ヤムチャアニュー共々決して女装したヤムチャのような見た目ではないので悪しからず。
一方でヤムチャリヴァイヴの容姿は髪の色が薄紫色で、目の色が赤いこと以外はほぼヤムチャと同じだった。性別が同じ男性型ヤムベイドの方が、オリジナルヤムチャと外見が似通るようだ。
尤も、二人とも自分がヤムチャと同一に見られることを酷く嫌悪している様子だった。
「今こそ修行の成果を見せてやる!」」
悟空とベジータはバチバチと黄金色のオーラを弾けさせながら、二人のヤムベイドに挑み掛かろうとする。
しかし、そんな二人の元へ上空から新たな存在が舞い降りてきた。
「この気は……」
「ミスター・グドー!」
やけにノリの良いヤムベイド二人の合いの手を受けながら、突如現れた仮面のサイヤ人が地球の大地に降り立ったのである。
ヤムベイドさえも超える新たな敵が、悟空の前に立ち塞がった瞬間だった。
仮面のサイヤ人、ミスター・グドーは悟空の姿を見据えながら、静かに息を吐く。
「何年ぶりかも忘れちまったが、見違えたな、カカロット」
「……っ、おめえ、どうしてオラのことを?」
悟空を見て「カカロット」というサイヤ人名を言い放つ仮面の男に、一体何者かと眉をひそめる。
そんな悟空の問いにくくっと笑みを漏らしながら、ミスター・グドーはその顔につけていた仮面を外した。
「これを見れば、わかるだろう?」
「――ッ!?」
露わになった素顔は、孫悟空と同じだった。
あまりにもよく似ているその姿を前に、驚きに目を見開く悟空とベジータ。
ターレスではない。やはり、お前は……と、そう呟くヤムチャの声を受けながら彼は言い放った。
「俺の名はバーダック。カカロット、お前の父親だ」
「……オラの、父ちゃんだって……?」
それは、衝撃的な告白だった。
突如この場に現れたミスター・グドー。その正体はなんと、孫悟空の父バーダックだったのである!
誰もが予想だにしなかったその展開に、悟空が驚愕しヤムベイドたちが笑う。
そんな一同の視線を浴びながら、バーダックは自らの息子に見せつけるように超サイヤ人2へと変身した。
「き、貴様……まさかあの時のサイヤ人か!?」
そこで初めて、ベジータは目の前に立つ彼こそがナメック星でフリーザと戦った超サイヤ人であることに気づく。
その問いにバーダックは言葉ではなく不敵な笑みを返し、そして悟空だけを手招きするように言い放った。
「俺の目的はカカロットだけだ。邪魔者の相手はあんたらに任せるぜ」
「了解、そういう約束でしたからね」
「じゃああたし、ベジータをやるよ。リヴァイヴはヤムチャね」
彼は実の息子と――悟空との果たし合いを所望していた。
その戦いの邪魔になるヤムチャとベジータの相手を二人のヤムベイドに押し付けた後、バーダックは悟空に容赦のない先制攻撃を仕掛けた。
「俺はカカロット……サイヤ人に相応しくねぇお前を殺しに来た!」
同じ超サイヤ人2でありながら、悟空以上に大きなパワーを持ってバーダックが優位に立っていく。
そんな彼の目は実の息子に対してとは思えないほど冷酷無比な色を映しており、非情な眼差しをしていた。
その姿に、悟空は初めて出会った肉親――ラディッツを思い出す。
「っ、あんたも、ラディッツと一緒なのか!?」
「ラディッツ? ……ああ、そうだな。俺もアイツと似たようなもんだ」
「だったらオラは、あんたを許すわけにはいかねぇ!」
「そうだ……怒れカカロット! その怒りを、この俺にぶつけてこい!」
実の父親と対面し、その父親がヤムベイドと共に自分を殺そうとしている。
その状況に少なからず動揺していた悟空が、明確に殺意が篭った彼の言葉を聞いて目つきを変える。
悟空もまた、徐々に戦意を昂らせていく。同じ超サイヤ人2である自らの父親との戦いにも、感じるものがあったのだろう。
そんな息子を煽り立てるように、バーダックが高らかに叫んだ。
「そうだ! 親が子を殺し、子が親を殺す! それがサイヤ人だ!」
「オラは……オラは地球育ちのサイヤ人だああっ!」
――出会う筈のなかった親子は青の星でぶつかり合い、それぞれの魂を解放した。
ぶつかり合う父と子。
超サイヤ人2対超サイヤ人2。
超高速対超高速。
二人の超戦士はお互いに黄金の尾を引き、8の字を描くように交錯を繰り返しながら上昇していく。
一瞬にも満たない交錯の中で、二人の拳は何度打ち合ったかわからないほどだ。
「こんなものかカカロット! 俺がサイヤ人の運命を託したてめえの力は、この程度に過ぎねぇのか!」
「ぐぐっ……! なんてパワーだ……!」
「手を抜いているのか? それとも、それがてめえの限界か!?」
始めは均衡しているように見えた二人の激突は、バーダックの叫びに呼応していくように彼の側へと傾いていく。
純粋な力の波濤に弾き飛ばされる悟空。それを追撃し、バーダックは容赦なく拳を振り下ろした。
「スーパー界王拳!」
やられる……そう感じた瞬間、悟空は身体中全てのリミッターを外した。
ただでさえ負担の大きい超サイヤ人2の状態に、界王拳を重ねがけしたのである。それはヤムチャのヤムチャドライヴをヒントに本能的に編み出した、バーダックへの対抗策だった。
寸でのところで自らのとどめを空振りにせしめた赤い姿を見て、バーダックが喜悦しさらなる変身を見せる。
「グガガガ……! があああっ!」
「! おめえ、まだ上があんのか……っ」
「……そういうことだ。さあどうするカカロット? 俺に勝てるかカカロットよォッ!」
「勝つさ!」
超サイヤ人3。
髪が長くなり、眉毛のなくなったバーダックの姿は見た目の変化だけではなく、戦闘力も異次元の上昇を遂げていた。
初めて目にした超サイヤ人のさらなる進化に慄きながらも、悟空は臆さずスーパー界王拳で挑んでいく。
互いに彗星よりも速く加速した戦士と戦士が、正面からぶつかり合う光の打ち付け合いの中で叫び、叫び返す。
「俺は純粋なサイヤ人だ!」
「おめえはラディッツとは違う!」
「運命さえ変えた!」
「オラにはわかる!」
「そしてこれからも変える……! それが俺の……」
「教えてくれ! おめえは何がしてぇんだ!?」
この地球の空で何度も力と技をぶつけ合っていく中で、悟空はバーダックの繰り出す拳から強い信念を感じていた。
それは明らかに、自らの兄ラディッツから受けたものとは違うものだ。
だから疑った。自分をサイヤ人に相応しくないから殺すと言った彼の言葉は、はたして真実なのかと。
この戦いが彼にとって、本当はどういう意味があるのか……その心に問い掛けたのだ。
「生きる意味だ!」
「父ちゃん!」
それは悟空がサイヤ人でありながらも地球人の心を持つからこそ抱いた、実の父親に対する甘さであり、優しさであった。
ラディッツでさえ一時は命乞いする彼を殺すことを躊躇い、見逃そうとした悟空だ。
自分もまた一児の父だからこそ、初めて会った実父であるバーダックへの情も人並みに強かった。
そんな彼を見下ろし、バーダックは左手の拳で悟空を吹き飛ばした。
「この限界の先を……!」
「全部犠牲にして、それでいいのか!?」
「他にどんな力がある!?」
「わかんねぇのか!? それは……!」
まるで阿修羅のように情もなく、戦闘マシンのように闇雲に力を求めるバーダックの求道。
そんな彼の、「他に何も無くなってしまった」ことから生まれた力の空虚さに触れて、悟空は悟る。
これは、同じだ。
かつてヤムチャにその力の虚しさを指摘された、天下一武道会でのピッコロと。
「大切なもんを守る……力だ!」
純粋に戦いを望むのは、悟空とて同じだ。
だが、悟空には今のバーダックにはない「守る者」があった。
純粋なだけでは駄目だ。
守る者があるだけでも駄目だ。
その二つが合わさったその時こそ、悟空は初めて「絶対に負けない為の極限」を極め続けていけたのである。
悟空の叫びに、バーダックが一瞬だけハッとした表情を浮かべる。
そんな彼に、悟空はスーパー界王拳状態で放つ全力のかめはめ波を浴びせた。
「ッ!」
近距離で放たれた渾身の一撃を、バーダックが全力で迎え撃ち、両手を振り抜いて空へと弾き返す。
かめはめ波さえ対処してみせたバーダックは急加速して悟空へ接近し、「気」を蓄積させた黄金色に輝く右手を突き出した。
「これで最後だぁっ!!」
超サイヤ人3から解放される全ての力を込めた闘志の鉄拳を、容赦なく悟空に叩き込もうとする。
紅蓮に染まる超サイヤ人2の悟空は、その一撃を――ほんの紙一重でかわしてみせた。
――残像拳。少年時代に習得したその技を、悟空は刹那にも満たない一瞬で発動したのである。
そのままバーダックの懐に飛び込んだ悟空が、ありったけの力を込めて切り札を解き放った。
「龍拳! 爆発ーッ!!」
「なっ……」
相手の力を利用し、カウンターで放つ新必殺技――「龍拳」。
直前のかめはめ波は、それを放つ為の布石に過ぎなかったのだ。悟空はこの技こそが唯一バーダックの超サイヤ人3を倒すことができる切り札として温存しながら、それを放つことができる好機を虎視眈々と窺っていたのである。
熱い心の中で、彼はそういったクレバーさも併せ持った「戦いの天才」である。
……見事だ。俺の、負けか……
歴戦の戦士である自分の上を行ってみせた
そして目の前の、自分がかつて見た「運命」さえ乗り越えてみせた息子に対して――初めて、穏やかな目を向けた。
「……強くなったな、カカロット……」
「…………っ」
何を、今更……と、我ながら自分が呟いた言葉が可笑しくなり、自嘲の笑みを浮かべる。
こんな時、サイヤ人らしからぬ穏やかな女性であった妻のギネならば、始めから息子への愛情に正直に伝え、彼をその腕で抱きしめていたのだろう。
しかし、バーダックはどこまでもサイヤ人らしく、そして不器用な男だった。
戦うことしかできない破壊者――それが自分だ。
ラディッツ以上にバーダックの血が強い息子ならば、彼もまた同じだろうと思っていた。
俺たち親子は所詮戦いの中でしか生きられず、喜びを得られない。故に、戦いの極みを目指すことしかできない者同士なのだと。
だからこそ、バーダックは仮面さえつけて息子との果たし合いに臨んだのだ。
しかし。
「父ちゃん……」
さっきまで自分の命を奪おうとしていたバーダックの手を掴み、
だが、そんなサイヤ人らしくない彼だからこそ、限界なしに強くなれるのだろう。
戦っていく中で、バーダックは「孫悟空」という男の本当の強さを感じ、理解することができた。
(そうか……)
そこに考え至ってようやく、バーダックは自分が何をしたかったのか気づく。
自分の意志を継がせる為に、カカロットをサイヤ人に相応しい男にする?
違う。
サイヤ人に相応しくないカカロットを、一族の面汚しとして処刑する?
違う。
俺は、ただ……
(俺は……お前の成長を確かめたかったのか……)
地球人の親子がキャッチボールでコミュニケーションを行うように。
彼にとっては命懸けの戦いこそが、息子と交わすことができる唯一のコミュニケーション方法だったのだ。
――だがそれでも……彼らは、わかり合うことができた。
【次回予告】
ヤムベイターとして目覚めたヤムチャアニューが、ヤムチャ抹殺を画策する。
次回、「ヤムチャ・リターン」
――戻るべきは故郷か、愛すべき男のもとか。
というわけで、次回は画面に映ると何故かギャグになるヤムチャと、画面に映ると何故かシリアスになるトランクス主体の話になります。
リボーンズヤムチャ出陣まで残りわずか。本作の話数も残りわずかなのでどうか最後までお付き合いしていけたら幸いです。