ダイヤのエース Plus Ultra   作:奇述師

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今回の話は野球とはあまり関係のない日常のひとこまを描いた話なので、そんなの見たくない、求めていないという方はこの話は飛ばして下さいm(__)m

更新が遅くなってすいません。

あと、キャラクターのイメージですが山元虹稀と橘光を下に掲載しておきます。


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アカシア

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 6月7日に始まった中学体育連盟軟式野球地区予選、私達の所属する桜ケ丘北中学校は分相応な第一シード、言うならば前年度のトーナメント覇者として大会に挑むことになった。

 

 運命か偶然か、対戦相手は去年虹稀さんが完全試合で下した前々年度の地区代表校で立ち位置と戦力差が去年とは打って変わって真逆のまま迎え撃つことになってしまっていた。

 

 私達にとっての初戦は2日目の6月8日、勿論勝つつもりで挑んだ試合だったけれども、一回戦を勝ち上がってきた勢いと去年の悔しさを晴らすために向かってきた相手に対し抗う術も実力も持っていない。

 

 私達の最後の試合は勝利の女神がほほ笑むこともなく、番狂わせが起きるわけでもなく、当然のように、当たり前に、普通に敗北した。

 

 奇しくも、と言っていいのかはわからないけれど6対0で負けていた最終回の7回裏2アウトランナー無しの場面。

 

 去年の繰り返しのように私たちは誰一人として1塁ベースを踏むことなく終えようとしていた試合の最後の打席、記念にと立たせてもらった中学校最後の打席では完全試合だけは絶対にさせないと決意し挑んだ。

 

 1球目の直球には手が出なく、2球目の直球に対しバットを振るも当然のように空を切った。しかし、3球目。通称SFFと呼ばれる速いフォークボールを何故か捉えてしまった。

 

 綺麗にショートの頭を越えたヒットになるも私にはどうして飛んだのかすら訳が分からなかったし、相手バッテリーはもちろんベンチも、打った私自身でさえ驚きだった。

 

 私が塁に出れたのすら奇跡に等しくて、当然のように次のバッターは凡退。

 

 真っ青な空の下、手も足も出ず、為す術もなく、私達の夏は終わった。

 

 と、そんなことがあったのは昼間。

 

 実質虹稀さんがいたから去年と昨年は良い所に行けていたわけで、平均かそれ以下化の集団でしかない私たち桜ケ丘北中学校はあっけなく敗退した。

 

 顧問のやたらと長い話をどこか他人事のように聞いて、いつもと同じように帰路につく。

 

 最後の試合だったけれども私は最後に一打席立っていただけで、基本的にずっとスコア付けしていたのもあって、疲れていない。その筈なのに家に帰って、シャワーを浴びて横になるといつの間にか眠りについていた。

 

 その眠りから引き戻されたのはいつだったか思い出せない。

 

 覚醒しきっていない思考の中、ほとんど反射的に画面をフリックして寝ぼけまなこでスマホを触ると、どうやら虹稀さんに電話をしていた。

 

 けれどもほとんど眠っている私はしばらく寝ぼけたままでいた。

 

 もしかすると、今日の結果を報告したかっただけかもしれないし、それを口実に虹稀さんと話したかったのかもしれない。そんな自分の理性の歯止めが効かない中でしてしまった思わない行動だった。

 

 電話の向こうでは聞いたことあるような人の声でその人が言わなさそうなことを口走っていて、よく分からない状況を飲み込めないままその騒ぎが収まるまで惰眠を謳歌する。

 

 何を話せがいいのか、私は何を話したかったのか、何で態々連絡してしまったのか。それらの意味は解らずに、ようやく覚醒した頭で考えるまでもなく、口から零れた言葉が本心だと思った。

 

 1

 

 合宿が始まってようやく5日が経過した、明日からようやくピッチャーとしての練習に参加できることが出来る。これまで基本的に外野手として練習してきたけれど、クリスさんの言っていた通り身になるものが多い時間であったことは確かだ。

 

 ダッシュとノックを組み合わせたアメリカンノックや、ホームまでの返球などの遠投は足腰も鍛えられ、尚且つダイナミックな投げ方の体験や肩力強化(たかが5日でそう簡単に変わるとは思わないけれど)にもつながったと思う。

 

 バッティング練習もいいストレス発散になったし、いいことだらけだった。

 

 だから、と言うか野手としての練習はこれからもやっていって損はない、寧ろ推奨される練習だからこれからもやっていこうと思った。

 閑話休題。

 

 今日から投手としての練習が解禁されたけれど今日は投げ込みではなく、ノックが中心だった。

 

 正直言って守備に関しては自分の中ではピッチングよりも得意で(次に得意なのはバッティングで一番得意でないのはピッチング。

 

 一番好きなのはピッチングなのに一番出来が悪いというのは自分で鑑みても悲しいし、偶に凄い嫌悪感に陥る)中学時代の周りが功を奏してか他人の尻を拭うくらいのフィールディングが自然に身に付いていたことは喜んでいいことだと思う。

 

 逆に、沢村と降谷のフィールディングの酷さに驚きを隠せなかったくらいだ。

 

 まぁ話を聞いてみるとそれなりの環境のせいもあったと思うけれど、試合の中で一番ボールを持っている投手というポジションとして流石にあのレベルはどうかと思う。

 

 合宿中恒例となっている夜のベースラン、ポール間ダッシュ、ランニングを終えて恒例になっているストレッチを十分にすると、大体いつも2年生の風呂の時間が終わる時間帯になっている。

 

 寮の暗黙の了解で、3年生が1番風呂、その次に2年生、そして1年生という順番なのもあっていつも部屋に戻るころには一也さんは先に寛いでいた。

 

 部屋を開けていなければ少し待とうかな、なんて考えて一先ず部屋の方へ向かう。

 

 風呂上がりだけど、まぁボールを捕るくらいじゃほとんど汗なんてかかないだろうし、多少我儘を言ってもそれ以上の迷惑をこちらは受けているわけで、そのくらい手を煩わせることは問題ないだろう。

 

 それに、今日から投げ込みが解禁されたけれどブルペンやマウンドからは投げていない。久々に一也さんにボールを取ってもらおうと思って一度部屋に呼びに行こうとした時だった。

 

「なんで?クリス先輩に受けてもらえばいーじゃん」

 

「るせ!あの人には丁寧にお断りされたんだよ!!」

 

「じゃ…僕が先に」

 

「あ~悪い、降谷、沢村。今日は俺が先約なんだよね。今日からピッチング解禁ってこともあって、一也さんには朝から話を通してある」

 

 全部嘘だけれど。

 

 降谷は降谷で投げることに対しての執着がすごいし、沢村も向上心の塊と言うか、2軍から1軍に上がったきっかけになっているという新しいフォーム固めをするのに非常に意欲的らしいので、この二人と一緒に練習するのだけは今は避けたい。

 

「何やってんだお前ら……さっさと風呂入って来いよ」

 

 結構長い髪をタオルで拭きながらキョトンとした表情で俺たちの待ち人は現れた。

 

「いや…最近全然ブルペンに入っていないんで受けてもらおうと…」

 

「俺はクリス先輩に断られたから仕方なく!!」

 

「一也さん、この二人のことは無視してさっさと行きましょう。先約は俺が取っているんで一刻も早くキャッチャーミット持って来て受けてください」

 

 だが、そんな事情は知ったことではない。

 

 風呂上がりでさっぱりしていようが、これから寛ぎたいとか、そんな事どうでもいい。

 

 この合宿の目的は個々のレベルアップで、俺がそれを望むのならば捕手として受けてくれるのが道理だろう。

 

「は?今から?沢村と降谷は今日もベーランで死んでたじゃん。それにお前とはそんな約束一切した覚えは「一也さん、100球だけでいいんで」

 

「こっちの都合は無視かよ」

 

「人の人権無視するんだから都合の無視くらい目瞑ってくださいよ」

 

「ああ、わかったよ。それだけ元気なら大丈夫そうだな……とりあえず、風呂入ってから俺の部屋に来いよ」

 

「「え?」」

 

「こっちの都合は無視ですか?」

 

「そんな怖い顔で睨むな、絶対に、間違いなく、確実に投げるよりもきっとためになるから」

 

「絶対に、間違いなく、確実にっていう言葉を連ねれば連ねるほど信憑性は落ちますよ?」

 

「とりあえず、マジで頼む。な?」

 

 割と真剣な雰囲気を醸しながら片手を立てて懇願するように頭を下げる、ふざけるようにお茶らけてくれれば勢いで押し通せるけれども、こうなった時の一也さんは手ごわい。

 

 それならば、一旦退いて、とりあえず体を休めて自室に戻り、いつものように少し接待をして、軽くキャッチボールをしましょうと外に誘い出して投げ込めばそれでいいか。

 

 とりあえず俺たちはしぶしぶ風呂に入ることにした、合宿が始まって5日目。

 

 流石に疲労の色は濃くなり、俺自身も体がだいぶ重くなっているのは自分でも感じている。

 

 残り少ない時間を効率的に使うためには、流石に休みを取ることも大事かもしれないと、水面に器用に浮かびながら風呂場で眠る瑠偉を見て切実に思った。

 

 2

 

「お邪魔します……」

 

「遅いじゃねぇか、早くしな」

 

「お前ら元気余ってんだろ?この人たちのお相手よろしくな。毎日俺の部屋に集まられて困っているんだ」

 

「で、大事なことって……このことですか?じゃあ、キャプテン始めましょうか、今日はどうします?」

 

「もちろんハンデ無しだ、今日こそは粘らしてもらうぞ」

 

「それじゃあ、よろしくお願いします。手加減は出来ませんよ」

 

「望むところだ……よろしくお願いします」

 

「おいコラ、足揉めコラ!一年」

 

「沢村ー、ジュース」

 

「な、自分だけ狡いんだな」

 

「哲さんや、中田はいつも通いだからな。合宿の時はいつもこうして付き合わされんのよ、淳さんにはいつもマッサージさせられるし……倉持と中田はゲーム仲間だってよ、つーか、増子さん何でここで寝てんだ?でもまぁ、お前たちの後ろを守っている人たちがどんな人たちか知っとくのも悪くはねーだろ?」

 

 非常にいいことを言っている、多分沢村と降谷は「まさか、この人……」とか思っているんじゃないだろうな?俺も初日はこの言葉に若干感情を揺さぶられ感心したけれども

 

「そんじゃ、後はよろしくな!俺はゾノの部屋で寝る」

 

「ええ゛!?」

 

 あの人はそういう人だ。

 

 逆に良いことをいう時には気を付けた方がいい、清々しいほどに性格悪いから。

 

 しかし、この二人を身代わりにして逃げるとは思わなかった……。そこだけは予想外だ。

 

 性格が本当に悪い、この人キャッチャーで野球上手くて本当によかったな、まじでクソ人間だよ、この人から野球取ったら。

 

 この何日間でようやく結城さんの接待が一番楽なことに気付いた、ちなみに瑠偉は別の部屋に幽閉された。どうも伊佐敷さん曰くマッサージが上手いらしい。

 

 相変わらず結城さんはほぼほぼルールしか知らない俺には予想もつかない不可解な手を打ってくる。まるで自分の首を差し出すように。

 

「知ってます?沢村の野郎田舎に彼女がいるんすよ」

 

「こら!そこぉ!……ぁっ、いやその、あいつはただの幼馴染で……」

 

「ほう、どういうことか詳しく聞きてぇな」

 

「……詳しく、な」

 

「だから彼女じゃないっすよ!メールだって全然返せていないし」

 

 というところで、俺のスマホが電話の連絡を告げた。

 

「あ゛ん?、山元のスマホか。電話来ているぞ……ふぅん」

 

 パスワードを掛けているのだから、そう簡単にセキュリティを突破できるわけがない、なんて一瞬でも思ってしまった自分を叩きたい。

 

 電話がかかってこればパスワードなんて何の意味もなさないのは俺自身が一番よく知っていたはずだ。

 

 コミカルな機械音は紛れもなく、LINEの通知を、正確にいうなればLINE電話をかけている音がスピーカーを通して広がった。

 

「あの、なんでそんな邪悪な笑みを浮かべているんです?」

 

「そうだな、この橘光って子について話してもらおうか」

 

「ああ、ただの後輩ですけど」

 

「ただの後輩がこんな時間にかけてくるか?」

 

「さあ、来るんじゃないですかね?実際来ているわけですし。あっ」

 

 まさか本人の目の前で勝手に電話を取るなんて、2週間ぶりだ。嫌な予感しかしない。

 

『……もしもしぃ、お久しぶりですねぇ』

 

 ご丁寧にスピーカーにしたことで、その声は部屋中に拡散されてしまっていた。

 

 眠っていたのだろうか、機械を通して発せられる声音にはおっとりしているも言葉ひとつひとつがしっかりしている聞きなれた彼女の声ではなくて、どこか不安定ではっきりとしていない音だった。

 

 と、そんな感想はさて置いて、優先事項が先にある。

 

「とりあえず、返してもらって「さて、山元虹稀くん。噂の後輩の光ちゃんのことについて洗いざらい吐いてもらおうか」」

 

「黙秘します」

 

『ん~…………こーきしゃん?』

 

「光ちゃん!後でかけなおすから今は切るんだ!ちょっと、倉持さん?なんで俺の後ろにぃっ!」

 

 そもそも、この合宿に入って連絡し忘れていることすら忘れているって言うのに、悪戯半分でここまでやられるとは……!

 

 それに、疲れ切った今の状態では、(いやもしかすると万全の状態でも)倉持さんの拘束から抜け出してスマートフォンを奪還することなんて不可能だ。

 

 判別はしずらいが、寝息のようなものが聞こえてくる。

 逆にこれはチャンスかもしれない、頼むからそのまま眠ってくれ……

 

「第一先輩たち、よく考えてください。俺がここで彼女と上手くいくのが望みなんですか?違うでしょう?」

 

「彼女って、お前……」

 

「あ、彼女って言うのはSheという意味合いで、Girlfriendという意味・概念は全くないです」

 

「ボロが出たなァ。さあ、観念して洗いざらい吐いてもらおうか?それと1年のマネージャーともやたらと仲が良いらしいじゃねぇか、それについても詳しく教えてほしいな」

 

「いや、別に春乃とは普通に仲が良いだけで」

 

「ほぉう、下の名前で呼ぶなんて大層仲がよろしいようで」

 

「えっ、名前くらいで敏感になりすぎでしょ……」

 

 別に、やましいことは無い筈だけど、無い筈だけど、第六感が間違いなく告げている。これ以上まともに受け答えすると何かとんでもない、大事な何かを失ってしまいそうな予感がする。

 

 具体的に言えば非常に不名誉なレッテルを貼られる気がする。

 

 よく考えるんだ、先輩たちは何を求めているのか。俺が都合よく女の子と仲良くしてそれをからかうだけなんて幼稚な考えに至るわけがない。その程度のことではしゃぐのは中学生までと相場が決まっている。

 

 それならば出会いの欲しさか?そういえば先輩たちに彼女がいるという噂は聞いたことがないし、寧ろ野球が彼女なのではないかと疑ってしまうほどに野球にのめり込んでいる。だが、いくら長くても夏はあと2か月ほどで終わってしまう、その後を考えて予め策を練っておいてもおかしくはない。

 

 だが、後輩の後輩に手を出すか?馬鹿な、そんなことはあり得ない。

 

 クソッ、何をすれば!

 

『終わっちゃいました……意外と悔しいものですね』

 

 混乱の中、何とか最善策を見つけるために、この状況を乗り切るために必死に思考を巡らせていた時に、彼女の口から漏れた一言が空気を変えた。

 

 思わない言葉に、想定していたことと全く真逆の話の内容。それも確かに理由の一つだと思うけれど、色のついた浮ついた話ではなく、もしかすればこの夏辿るかもしれない結末を先に経験してしまっていた彼女の言葉に、ふざけた空気は霧散した。

 

「……ほらよ、きちんと話を聞いてやれ」

 

 伊佐敷さんは急に興が削がれたと言わんばかりにスマホを俺に手渡した。それとほとんど同時に倉持先輩の拘束していた力も弱くなった。

 

「いや、でも」

 

「でもじゃねぇよ、彼女が真剣に話したいことがあるんだ。聞いてやるのが男ってもんだろ」

 

「いや、彼女じゃないですけど……ありがとうございます。キャプテン、ちょっと席外します」

 

「ゆっくり楽しんでくれ」

 

 別に、本当に、そういう間柄ではないけれど、それでも俺にとっては数少ない友人と呼べる間柄の人間の1人のうちに入る。だから何だという話になるが、自分自身も一方的に彼女に話してしまった過去がある以上、この件を無視する事は出来ない。

 

 その意味では、伊佐敷さんの催促は非常にありがたいものだった。

 

 3

 

「とりあえず、お疲れ様。あの環境で3年間続けられたのは本当に尊敬に値するよ」

 

『どっかの誰かさんがそうさせたんですけどね、おかげで最後の1年は面白くありませんでしたよ』

 

「それは、誉め言葉として受け取っておこう。で、どうしたんだい?いきなり電話なんてかけてきて。負けたのが悔しいから慰めてほしいって?」

 

『いきなりとは失礼な、連絡すら碌に取れない人が良く言いますね。でもまぁ、元気そうで安心しましたよ。負けたのは確かに悔しいですけど、慰めてくれとなんて頼んでいましたか?』

 

「それは、俺の知ることじゃないよ。けど、何かの掃け口にはなると思ったんだけどね」

 

『なるほど、なるほど。いつかの時の恩返しがしたいと』

 

「あ~、あの時は助かった、おかげさまで何とか……結果的にベンチ入りできたよ。それよりも本題に移ろうか、話したいことはそういうことじゃないだろう?」

 

『女性との会話の基本は共感と同意です。全く、女心をちっともわかっていませんね』

 

「ご生憎、彼女なんていたことないし、友達すら少ないからそういう事には疎いんだよ。知っているくせに。で、この時期に終わったという事は2回戦、つまり君の代では初戦敗退という事か」

 

『はぁ、釣れないですね。そうですよ、去年先輩がボッコボコにした前年度優勝校にボッコボコにされ返せました』

 

「ふーん」

 

『ふーん、って。そんなに興味ないですか?』

 

「ああ、ちっとも。最初に言ったようにこの話で湧き上がる感情は光ちゃんに対しての尊敬と労いだけ、他の奴なんてほとんど関係なかったし、第一俺がただ在籍していただけの組織に愛着を持つとでも?」

 

『むぅ……それはそれで悪くないです。紆余曲折したんですけど、虹稀さんに電話を掛けた理由は、気まぐれです。無意識のうちにかけちゃってて、多分、声が聞きたかったんだと思います。男の人にとってこんなに嬉しいことは無いでしょう』

 

「うん、嬉しいよ。感謝カンゲキ雨嵐」

 

『ああ、そういう人でしたね。わかってましたけど。やっぱり、奏虹さんの言う通り押しが足りないのかなぁ

 

「ちょっと待って、最後らへんあんまり聞こえなかったけど、姉の名前出てこなかった!?」

 

『さぁ?気のせいじゃないですか?』

 

「あいつ……とにかく、もしあの人に何か吹き込まれているんだったら、気を付けた方がいいよ。あの人は人が苦しむのを見るのが好きなヤバい人だから」

 

『ハイハイ、善処します』

 

「わかってないやつだ……」

 

『そんなことはともかく、さっき他の人達の声がたくさんしたんですけど何かあったんですか?』

 

「そんな事……。今合宿があってね、いつも通いの先輩たちの接待をしていたんだ」

 

『おお、もしかして、それはお邪魔しちゃいましたか?』

 

「いや、今回ばかりは助かったよ」

 

『そういえば、もうすぐ甲子園に行く予選始まっちゃうんですね。もしかして、私の話って結構センシティブな話題だったり!?』

 

「甲子園で優勝するから全くもって無縁な話だね、先輩たちはちょっとセンシティブになっているけれど、俺は気にしていないから」

 

『なんか、調子戻って来てますね。前はとってもかわ……萎らしい感じだったのに』

 

「ぐっ、あの時は、マジで挫折してた時だったから…… 」

 

『私はどちらも嫌いじゃないですよ』

 

「今日一元気な声で言うな」

 

『出来ればいつもの調子と萎らしい時の比率が8:2だと最高です』

 

「ツンデレってやつか!?絶対しねぇから!」

 

『よく知っていましたね、その言葉。無関係に生きているとばかり』

 

「姉さんのせいだよ……、使う機会があるとは思わなかったけどさ」

 

『それなら良かったじゃないですか!おめでとうございます』

 

「全く喜ばしくもないし、めでたくもないよ」

 

『でもやっぱり……私はあの時の虹稀さんよりも、今の虹稀さんの方が好きですよ』

 

「急に真剣になってどうした?個人的にはそりゃもちろんあの時の方がいいと言われるのと平常時がいいと言われるのは後者の方が圧倒的にうれしいけれど」

 

『今日話して思ったことです。やっぱりこうでなくちゃ、らしくないですから!』

 

「何だよ、急に。でもまぁ、光ちゃんだってそういう風にコロコロ感情が変わる方がずっと君らしいよ。話を始めた時より少しは、元気が戻ったんじゃないかな?」

 

『さぁ、どうでしょう?でも、おかげさまで前向きになれました。本当に忙しい時間を取ってしまって申し訳ありません、ありがとうございます』

 

「どういたしまして。お嬢様の力になれたのなら光栄です」

 

『良いこと言ったと思ったらすぐそれなんですから、そういうところ他の子にしないでくださいよ』

 

「出来るような間柄の人は光ちゃんしかいないよ。ともかく、部活が終わったのならこれからのことを真剣に考えるといいよ。そっちの方がよっぽど大事だ」

 

『んんっ、恥ずかしいことをサラッと言いますね……らしいっちゃらしいですけど……。それでは、お時間とらせて申し訳ないです。虹稀さんの活躍、心から楽しみにしていますよ』

 

「うれしいこと言ってくれるね、期待にこたえられるように結果を残すよ」

 

『はい、頑張ってください!誰よりも応援していますから!忙しい時にありがとうございます。頑張ってくださいね』

 

「ああ、うん。精一杯応援してくれよ。光ちゃんの応援ってとても力になるからさ」

 

『っ……!からかわないでください!それでは、おやすみなさい』

 

「うん、おやすみ。本当にお疲れ様」

 

 

 




次から野球します。

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