Xepher ~Everlasting Time~ 作:堤花助
・エクレメス...金髪の女性。肩からは巨大な青い両翼が生えている。
・???...殺戮者。灰色の髪をした時の迷い子。18歳。
・オロロージョ...金髪の青年で、『時』の騎士の一人。
『時』の祭壇の間で金髪の青年は目の前の敵
を睨めつけた。
目の前にいるのはこの世界を混沌に陥れた
者、名を持たずただ殺戮者と呼ばれる者。王
女エクレメスを殺害し『時』の偶像『時計』
から『長針』を奪い取った大罪を負う者。色
の抜けた灰色の髪と顔の右から左に走る大き
な傷跡は間違いなく噂に聞いた殺戮者のもの
だった。
青年は『秒針』を模した剣を握り直し、目の
前の敵に向かって走り出した。
しかし振り下ろした剣はたやすく受け流さ
れ、青年は叩き込まれた『長針』をどうにか
受け止める事しかできなかった。
「どうした?『時』の騎士」
「くっ......」
「それが『時』の巫女を護る『時』の騎士団
の団長『
殺戮者の片手の攻撃を受けるのが精一杯の
オロロージョヘ、さらに叩きつけられたのは
殺戮者の振り下ろした剣だった。
「ぐうっ......!」
どうにか避け致命傷は免れたもののオロロ
ージョの負った備は浅くはなかった。
「そんなに王女の下へ逝きたいか?」
殺戮者が薄く笑う。翳む視界を頭を振って
振りほどき、オロロージョは立ち上がった。
目の前にいるのは『時』の力を奪う者、世
界の混乱を招いた者、そして最愛の王女エク
レメスの命を奪った者。両の手で剣を握り締
め、オロロージョは細く息を吐いた。
「お前だけは......お前だけは許さない!」
たとえ刺し違えてもこの男をこの世界にお
いておく訳にはいかなかった。
「......時の騎士、お前が護ってきたもの
は何だ?」
「何?」
「女か?巫女か?それともこの『時』という
力そのものか?」
「......どういう意味だ?」
殺戮者は笑みを湛え、祭壇の間の奥を顎で
しゃくった。祭壇の間の奥に一人の少女が立
ち尽くしている。大きな『短針』を抱え虚ろ
な瞳で目の前の戦闘を見つめていた。
「知らないのか?この『時』の祭壇が何処か
ら穢されていったのかを。この祭壇を穢した
のは俺達ではない」
「戯言を!」
世界を混乱に招いた者の言葉など、オロロ
ージョの耳には届くはずもなかった。だが
それでも殺裁者は言葉を続けた。
「祭壇はその内側から穢されたのだ、『時』
を憎む者連によってな。あの穢された祭壇に
いる者がこちらを見つめているのがわかる
か?」
にわかには信じられないその言葉に、オロ
ロージョは首を振った。
「信じたくなければ信じなくていい。その方
が悩まないで済むからな。尤も」
殺戮者は『長針』を構え、静かに告げた。
「お前はここで死ぬのだから考える必要もな
い」
「......お前の言葉など」
切っ先を目の前の男に向け、オロロージョ
は声を上げた。
「信じる気もなければ悩まされるつもりもな
い、俺はただこの争いをただ終わらせるためだ
けに戦う!」
そんな哀れな驕士の姿に殺觀者は小さく頷い
た。
「なら来るがいい」
かけ出したオロロージョとそれを迎え撃つ殺戮
者、互いの間合に踏み込んだその時だった。
動かないはずの少女が動いた。
濁った瞳に宿る光は歓びに満ちていた。少女
は『短針』を手に二人の間に飛ぴ込んだのだ。
少女の青い髪に遮られ、二人はありえない幻
にその剣を止めた。
「エクレメス!」
オロロージョの瞳に映ったのは巫女の大きな
青い翼を生やしている女『時』の護り手である
王女工クレメスの姿だった。
RURSUS~戻る~
少女の『短針』が動く。
その名の示す通り、彼らの時間が巻き戻され
ていく。オロロージョの前に現れたのは、彼
の『過去』の中にある最愛の人の姿だった。
そしてエクレメスの幻像の向こうにいる男、
彼もまた自身の『過去』と向き合っていた。
こことは別の世界で、焼き払われている一つの
街の中、粉のように複数の死体が散りばめられた
炎と共に紅く光るコンクリートの床の
上、そこに笑みを浮かべながら立っている
二人の間に立つ少女は笑みを浮かべたままそ
の剣を止めさせた。彼女は立っているだけだった。
ただ手にした『短針』だけは妖しく輝いてい
る。
動きを止めた二人を交互に見つめ、少女ルル
ススは『短針』を抱きしめた。
次話更新は、12月22日0時です。