Xepher ~Everlasting Time~ 作:堤花助
・エクレメス...金髪の女性。肩からは巨大な青い両翼が生えている。未来を紡ぐ時の巫女を継承した後、ほどなくして眠りにつく。
・オロロージョ...金髪の青年。エクレメスを守る『時』の騎士。
彼女は泣いていた。
祭壇の間の崩れかけた時空の中で王女エクレ
メスはいつも泣いていた。
巫女装束である大きな青い髪飾りと白い服が
時空の揺らぎに煽られはためいていた。
オロロージョが泣いているエクレメスに声を
かけるが、エクレメスはいつも悲しげに首を振るのだ。
「私には救えない」
それが彼女の口癖だった。オロロージョには
それが何の事なのか理解できなかった。膝を睡え子供のようにうずくまるエクレメスをただ見守り続けるしかなかった。
そしてある日、彼女はオロロージョを呼んだ。
『時』の祭壇を指差し、彼女は呟いた。
「時が満ちて、あの最後の針が祭壇から持ち出される日が来るでしょう。その時私の役目は終わります。すべての針が『時計』から持ち出され、再びここへ戻った時、世界は死を迎えるでしょう」
終末の預言を聞かせながらエクレメスは淡々
と語り続けた。
「オロロージョ、私はすべてを救う事はできません。そして最も救わなければならない者を救う為に私は世界と『時』を裏切る事となるでしょう。三つの針が再び一つになるとき、世界はもう一度生まれます。新しい世界が生まれる為にこの世界は一度死ななけれぱならないのです」
オロロージョには意味がわからなかった。
彼が唯一理解出来たのは、これがエクレメスの遠からずやってくる死の預言だということだけだった。
「わからなくて良いのです。ただあなたは誰も憎まないで。憎悪は呪いをより強いものにしてしまうから」
不吉な言葉に不安げに見つめるオロロージョ
に、エクレメスはただ無表情に答えるだけだった。
「この世界と『時』にかけられた呪いです。今、世界はたった一人の人間によってその呪いから免れているのです」
それは巫女たるエクレメスの事かとオロロージョはその時思っていた。
「この世界を救うには、一度すべてを無に返さなければならないのです。そして三つの針が揃った時......オロロージョ、あなたは選ばなければなりません」
そして、エクレメスは巫女として最後の言葉を告げる。
「その時『針』の持ち主を殺すのか、生かすのか。それで世界の運命は決まる」
そしてエクレメスは儚げに微笑んだ。
「私よりも、過去という名の未来を選んで............」
零れた涙が時空の風に吹かれ、虚空へと消え去った。
「お前、名前はなんと言う」
少年は声の方に一瞥くれただけだった。戦乱
の通り過ぎた瓦礫の街で、少年は素足のままあてもなくさ迷っていた。惨劇を目の当たりにしたその瞳に既に子供らしい輝きはない。
「聞こえているんだろう?そのまま野垂れ死に
したいのか?」
ようやく気付いたように振り返り、少年はお
もむろに口を開いた。
次回更新は、12月23日0時です。