Xepher ~Everlasting Time~ 作:堤花助
キラー...灰色の髪の青年。名前の意味は殺戮者。18歳。
リヒト...一見女性と見違える整った容姿の男性。ピンク色の長髪をしている。
「お前、名前はなんと言う」
少年は声の方に一瞥くれただけだった。戦
乱の通り過ぎた瓦礫の街で、少年は素足のま
まあてもなくさ迷っていた。惨劇を目の当た
りにしたその瞳に既に子供らしい輝きはない。
「聞こえているんだろう?そのまま野垂れ死
にしたいのか?」
ようやく気付いたように振り返り、少年は
おもむろに口を開いた。
「あんたオカマ?」
「第一声がそれか」
少年の一言が第一声でも仕方ないかもしれない。
少年に声をかけた人物は長い赤い髪を緩やかに結い上げ、唇には薄く紅を引いている。纏っている衣装も腰の辺りから膨らむように広がる上着のすそはまるでスカートのようにさえ見える。見えるのだが、かけられた声は間違えなく男のものであったし、その人物のしっかりとした体格は女性のものとは到底思えなかった。
「まあそのぐらいがちょうどいいか」
「あんた誰?死神?」
「......そうだな、死神で間違いないだろ
うな」
「狩り損なったか?」
「それもあるが......気に入ったよ、私と来ないか?」
「オレ殺しても何もでないよ」
少年の言葉に男は小さく笑った。
「お前にはこれからの人生の何年かを保障しよう。その間に生きる術を叩き込む、そしてお前の言う所の死神の業を教えよう」
その言葉の意味する所を理解したか。少年
は少し考えてから男をねめつけた。
「オレに死神になれって?」
「そういう事になるな。私としては死神と呼
ばれるのは甚だ不本意なんだが」
男は少年のいう死神が何を意味しているのかは
分かっていた。
はわかっていた。つい数日前まで穏やかだっ
たこの街に戦乱を持ち込み、彼以外すべての
住人を彼岸の果てに送ったもの、幼いこの少
年には政治的なやり取りなどわからない
だろうがそう言った背景、人物すべてを含んで少年は死神と呼んだのだ。
「......ついていってもいい」
少年の沈黙は思ったより短かった。
「何もわからないまま殺されるのもあんたに
利用されるのも真っ平だ。オレは自分が何で
生きているか、何で殺されるのか知りたい」
少年の声に男は満足げに笑みを浮かべた。・
「......そうか、ならついておいで。賢い子は好きだよ」
男の笑みに少年は何を思ったのか微かに眉
をしかめた。
「じゃあ行こうか。名前は?」
「......わからない」
「そうか」
瓦礫の山を見渡して、男は探し物を見つけ
たか少し離れた塵埃の中から何かを拾い上げた。
「とりあえず靴は履いておいたほうがいい、怪我をする」
しゃがみこみ少年の足に靴を履かせて、男が
立ち上がった。
「この靴の持ち主は?」
「弔うかい?そこの倒壊した家屋の下敷きに
なっているよ」
「......いや、いい」
「そう、じゃあ......やっぱり名前がないと不
便だな。そうだな」
男はしぱらく少年の顔を見つめていた。
「キラー」
「え?」
「今日からお前の名はキラーだ」
「キラー?」
「命を奪う者という意味だよ」
「......そう、死神らしい名前だな。あんた
は?]
既に靴の事は気にしていないのか、少年は男の名を問うた。
「リヒト」
「名前は普通なんだ、オカマなのに」
「これでも『光』という意味なんだけどね」
「死神の癖に?」
先ほどまでの空気は既に失われ、少年は普
通の子供のように口を開いた。
「そのうち話すよ、私の名前が意味する本当
の所を。さあ、行こうか」
男は少年を連れてその街を出て行った。リヒトの下で少年キラ一は生き延びた。
リヒトの下で少年キラ一は生き延びた。リ
ヒトの言葉通り生き抜く術と人を殺す技術を
覚え、彼は戦場で成長した。
既に青年となったキラーは以前からの疑問
を口にした。
「あんた、何故歳を取らないんだ?」
血の匂いのする虐殺の舞台で青年は現れた
男に問いかけた。夕日と言う照明装置はその
舞台を効果的に染め上げていた。
「質問が違うな、気付いているんだろう?本
当は」
リヒトは手にした剣を愛しそうに抱えた。
「.....その剣は何処にあった?」
「探してごらん、あと一本残っているよ。お前が残りの一本を手に入れたその時にすべてを話そう。ある人との約束をね」
二人の死神はかつて街だった所を去った。夕日はさらに血の色に染まっていく。
次回で最終回。更新は、12月24日0時です。