その日の夕方………
大塚
「で、なんで真姫姉さんは俺を指名したんだ?」
大塚(真姫)
「指名などしていない。高野総長は始めからお前を501に派遣するつもりだったんだ」
姉と弟は自宅に向かう道筋で今回の事を話していた。
大塚
「にしては、上りを迎えて横須賀でウィッチ候補生の指導責任者兼後輩達のバックについてる真姫姉がその事だけで弟の所に来る訳ないと思うけど?」
大塚(真姫)
「……坂本の事だ。坂本がそろそろ20になるのは知ってるな?」
大塚
「あぁ…坂本少佐も上りを迎える頃か……でも、あの坂本少佐なら、誰が何を言っても空へ上がるのを止めないと思うけど…」
大塚(真姫)
「そうだ。実際、先日会ってきたが、ギリギリまで飛びたいと言ってな……後輩達に後を任せ、一線を退いて、教官となってはどうかと言う誘いも、もう暫く考えさせてくれ、と言われて断られた」
大塚
「まるで姉さんみたいですね。まあ、誰もがそうなんでしょうね。あっ、だから、わざわざ扶桑へ戻って新人のスカウトに…」
大塚(真姫)
「だろうな。だからこそ、お前に坂本の事を見ててほしい。無茶をやって、死にでもしたら、後味が悪すぎる」
大塚
「空に上がっても見てろ、なんて言わないでよ、姉さん。こっては土の上を走るのが精一杯なんだからね」
大塚(真姫)
「あぁ、わかってる。さて、ひさびさの我が家だ。早く家に帰って一杯やろう。明日香も居ればいいがな」
大塚
「明日香姉さんは……昨日は病院だったから、どうだろうな? それより、先に3人の妹の夕食準備が先だよ。お酒はその後。それと程々にお願いします」
なお、大塚には真姫の他に医者になったばかりの二番目の姉、明日香(あすか)と3人の妹がいる。
これに銀行マンで世界中を飛び回っている父親と付添の母親を入れた8人家族であった。
数日後……横須賀鎮守府 近海 空母赤城甲板
大塚
「ふわ〜〜…眠いな〜」
欧州へ向かう空母赤城の甲板で大塚は欠伸をしていた。
昨夜は長女の真姫が『送別会』として酒の相手をさせられていた為、寝不足気味だった。
大塚
「うぅ〜〜〜ん…当分は酒の相手なんかしたくないな…欧州へ行けば……微妙だな…」
身体を伸ばしつつ、そんな事を呟く。
そこに……
「ん? そこに居るのは大塚ではないのか?」
その聞き慣れた声に振り向くと、長女真姫の後輩である坂本美緒少佐が居た。
大塚
「(ヤバい! 何時かは艦内で顔を合わせるだろうと思っていたが、まさか出港一時間も経たずに会うの予定外だった!)お、お久しぶりです、坂本少佐」
坂本
「はっはっは、お前も元気そうだな。それと、少佐は無しだ。それにお前の方が年上だろう?」
大塚
「たった3つ違いでしょう? ですが、上官のお言葉なので従いますが」
坂本
「それでいい。しかし、お前も欧州へ向かう様だな? 内地で何かしたのか?」
大塚
「何も出来ない広報課の窓際に居たんですから…なのに、何故だかいきなり上層部から501への異動辞令が来ましてね…いや、私も唖然とするしかありませんよ」
坂本
「501に? 私は何も聞いていないが…いや、そもそも、なんでお前なんだ?」
大塚
「通知の件は坂本さんと入れ違いになったんだと思いますよ。なんでかは…多分、真姫姉さん達の事が関係有るかと」
坂本
「なるほど…確かに、元ウィッチと医者の居る弟など珍しいからな。だが、そうなるとお前の任務は我々ウィッチのサポートと言う事になるな」
大塚
「えぇ、こんな人間を欧州に送って、上層部は何をさせたいのやら…ところで、後ろの少女は…」
その坂本少佐の後ろから付いて来ていた少女の事を訊いた。
坂本
「あぁ、お前も欧州へ行くなら知っててもいいだろう。宮藤芳佳だ」
「み、宮藤芳佳と言います…えっと、坂本少佐には私がお父さんに会うために付いて来たので…」
大塚
「お父さん…宮藤…坂本さん、まさか彼女は宮藤博士の…?」
坂本
「さすが広報課、察しがいいな。うむ、宮藤博士の娘だ」
大塚
「やっぱり…(だけど、坂本少佐は新人のスカウトに来た筈なんだが……それが宮藤博士の娘さん? そして、なんとかその方向で納得させたのか?)」
本来なら2人に訊けばいいのだが、下手に訊いても無粋な為、大塚はこの件は後で触れる事にした。
その日の夕食 食堂
宮藤
「えぇ〜! 大塚さんは5人姉妹の真ん中なんですか!?」
坂本
「あぁ、そうだ」
大塚
「坂本さん、そこは私が答えるところです」
夕食で席を共にした3人が話に華を咲かせ、話題が大塚の事になり、坂本少佐が答えた為、さっそくツッコミを入れる大塚。
宮藤
「いいな〜…わたし一人っ子だから…そう言うのに憧れちゃうんです」
大塚
「それは周りにも言われたな〜…う〜ん、宮藤さんだと真ん中の妹ぐらいの年かな?」
宮藤を見ながら大塚が言った。
坂本
「確か宮藤は14…だったな?」
宮藤
「はい。14です」
大塚
「そうか……あっ、それだと、一番下の妹と同い年だな」
坂本
「ほう、もうそんな年になったのか?」
大塚
「最後に会ったのは6年前ですよ…それから坂本さんはずっと欧州にいたんですから」
坂本
「んっ、そんなに昔だったか…ふむ、年の経過感覚に大分差があるな…」
大塚
「そうですかね? あっ、ところで、宮藤さんはなんで欧州へ?」
宮藤
「えっと……実はつい先日、お父さんから手紙が届いて……書かれた住所に行ってみようと…」
大塚
「……なるほど」
もちろん、大塚は宮藤博士が既に亡くなっている事を知っている……しかし、それを言うのは無粋だと思い黙っていた。
だが、それより……なんで宮藤博士の手紙が今になって、その娘の手に届いたのかが気になった。
しかし、芳佳自身に訊いたところで何かを知っている訳では無いので訊かない事にした。
夕食後………
大塚
「……変な話ですね」
坂本
「なにがだ?」
宮藤を部屋に送った後、大塚は坂本と共に廊下を歩いていた。
大塚
「なんで宮藤博士の手紙が今になって娘へ届いたのか、です」
坂本
「さあな。検閲が原因で配達が遅延したのではないか?」
大塚
「……坂本さん、広報課を嘗めないで下さい。広報と検閲は頻繁にやり取りしているんですよ。しかも、既に故人である人間の手紙が検閲で遅延? 何時出したかは知りませんが、死ぬ前に出した手紙が検閲で4年も遅延するなんて、普通では考えられませんよ」
坂本
「確かにな……では、扶桑への到着が遅れた…とか?」
大塚
「それは有り得ますけど……でも、それを混ぜて考えても、4年は無いと思います」
坂本
「……そうだな…まあ、可能性を上げればキリが無い。この話はここで論議しても意味は無いし…またの機会にしないか?」
大塚
「そうですね。まあ、今は無事にブリタニアへ着ける様に祈るぐらいですかね?」
坂本
「はっはっは、心配するな。私も居る。ちゃんとブリタニアへ行けるさ」
次回へ…………
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