強キャラ物間くん。   作:ささやく狂人

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長所と短所

目を開けてすぐ、薄暗い照明に気付いた。固めのベッドで寝ていた身体を起こし、自身の姿を確認する。

 

「……?」

 

青色の雄英ジャージではなく、病院で一般的に使われているような入院着を身に纏っていた僕は、右腕の裾をめくり上げて顔を顰めた。

 

僕の右腕が()()()()()。脳無に握りつぶされた肘と手の真ん中ら辺から形が歪み出し、真っ直ぐな腕とはとても言えなかった。

 

けど幸い、というか不思議なことに痛みは全くと言っていいほどなく。その代わり脳の意思と右腕が連動しない。…腕の神経が通ってない?麻酔でも撃たれたのかもしれない。

 

「…あー」

 

一応荼毘に灼かれた喉の調子を確認したところ、発声自体は問題無いようだった。少し掠れているようだが、会話に支障はない程度に回復している。…回復されたのかもしれないが。

 

「……っと、冷た」

 

ベッドからおりて裸足で冷えたコンクリートの床に立つ。無機質なコンクリートで囲まれたこの1室には、ベッドがいくつか並んでいた。今はどれも無人で、まるで病院だ。この部屋や服といい、麻酔といい、本当に。

 

薄暗いコンクリートで囲まれたこの部屋にはベッドが8つ揃えられていた。まるで重症の患者を想定しているようで気分が悪い。

 

だが、そこで気付いた。8つある内の1つ、ベッドに寝かされている女性の姿に。

 

「な…!?」

 

あろうことか裸だった。しかも見知らぬ人ではない。だが、そんな事に狼狽している時間は少なかった。

 

「…ラグドール!?」

 

4人1組のヒーローチーム「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ」の一員で、個性《サーチ》で僕らの林間合宿をサポートしていた彼女が、何故ここに…?

 

無造作に放置されていたラグドールに適当な布団をかけ、頸動脈に指を当てて脈を測る。生きてる事に安堵しつつ、ラグドールの表情を見て顔を顰めた。

 

焦点の定まっていない虚ろな目は、まるで廃人のようだった。

 

「ーーーッ!」

 

その姿に息を呑みつつ、顔や足首に付着しているヌメっとした液体に触れる。身体全身に付いている事から、この液に体を浸していたと考えられる。

 

そして最後に、僕は《サーチ》をイメージする。

 

「……」

 

不発、という結果から、僕は察する。あの時の荼毘の言葉を思い出しながら。

 

ーーー僕が実験動物リストNo.2ならば、No.1は彼女だった。

 

「…すいません」

 

僕は彼女に向かって謝り、部屋のドアに足を向ける。窓はない。出入り口と言えるのはドアだけだ。

 

右腕の使えない僕はラグドールを背負う事も出来ない。なら、ラグドールの脱出を考えるなら僕がまず脱出して、増援を呼びに行くこと。もしくはここにいるであろう爆豪と合流して背負ってもらうか、だろう。

 

それに、僕に《コピー》がまだ宿っているならば、僕と話がしたいという意思がある、筈だ。

 

歩きを進め、そのドアノブを捻り部屋から出る。

 

すると、左へ行くか右へ行くかの選択肢が現れる。だが、暗い通路を目を細めてよく見ると、左は行き止まりのように見えた。対して右に少し歩くと広い空間が広がっているようで、微かに照明も見えた。

 

「ーーーっ」

 

その広場目指して右に向かっていると、唐突に頭痛がした。続けて襲う目眩に、思わず膝をついた。力の入らない右腕は身体を支えられず、四つん這いすらもできなかった。

 

ゆっくりと立ち上がり、左手を壁につけて身体を支えながら歩く。一歩、また一歩と進むたびに、頭痛はガンガンと鳴る。灯りの無い通路をノロノロと進みながら、僕は本調子じゃなかった思考力を取り戻しつつあった。

 

ここはどこだろうか。不意に聞こえてくる機械を動かしたような重低音や、濁った鼠色のコンクリートからどこかの廃工場のようにも思える。

 

爆豪と拐われたのだから、この不気味な場所に彼もいる筈だ。とりあえず彼と合流しないといけない。片腕の使えない無個性はあまりにも無力だ、本意ではないが《爆破》に頼ればできる事は増える。

 

ヴィラン連合のアジトなら、こうやって不用意にウロつくのは悪手かもしれない。だがあのベッドで入院患者のように寝ている訳にもいかないだろう。

 

今はここが何処なのかを探るのが最優先の筈。そして次に爆豪と合流。

 

現状の方針は決まった。次考えるべき事はーーー。

 

「拳藤……」

 

脳無と交戦したと思われるクラスメイト。彼女らは無事だろうか。あの脳無が僕専用の怪物とはいえ、彼女達が手痛い被害を被った可能性は充分ある。今は誰も死んでない事を祈ることしか出来ない。

 

漠然とした不安が心を苛んでいく中、通路を進み切った僕は広い空間に出る。

 

そうして目の前に広がった地獄に、僕は顔を顰めた。

 

嫌悪感。

 

生命維持装置、なんて言葉がぴったりの容器一杯に満たされた培養液。恐らく、ラグドールに付着していた液体はあの培養液なんだろう。

 

そして、

 

その培養液に浸されていたのは紛れもない、僕の天敵。改人脳無。

 

10、いや、20体程はあるだろうか。規則正しく並べられた生命維持装置に、脳無が一体ずつ入っている。

 

「…はは」

 

冗談みたいな風景に、思わず笑ってしまう。森での改人脳無にはあんなに取り乱したのに、今の僕は余裕があるように思える。

 

それは多分、《個性強制発動》の有無に起因しているんだろうな。僕専用の脳無だと荼毘は言った。ならノーマルタイプの脳無には《個性強制発動》は搭載されていないんだろう。

 

つまり、僕が緑谷やオールマイトと対峙するようなものだ。この程度の嫌悪感なら慣れっこだ。学校で毎日顔を合わせている訳だし。

 

 

 

「ーーーあぁ、もうそんな時間か。すまないね、長く生きているとつい時間の感覚を忘れかける」

 

 

 

だからさ、わかるんだよな。

 

背後からかけられた声に、第六感が働く。

 

史上最悪の嫌悪感。“コイツだけは《コピー》するな”と脳が警報をあげている。あの脳無を超えたこの感覚は恐らく、《個性強制発動》を宿した者、ということだ。

 

そして、それだけに留まらない。きっと僕なんかには数えきれない程の、そして僕の心を破壊するには充分の量の《個性》を持っている。

 

ラグドールの《サーチ》を奪う事に何の罪悪感を覚えない、《ワン・フォー・オール》の生みの親。

 

巨悪の根源。

 

 

「…オール・フォー・ワン」

 

 

その名を呼びながら、僕は振り向いた。

 

 

⭐︎

 

黒いスーツ。顔は…特殊な黒いヘルメットを被ってるようで、見えない。最も、顔を見たところで《変装》のような個性できっと変えてしまうのだろう。

 

「こちらの事情にも詳しそうだ。誰かの《個性》に“干渉”したのかな?」

「なんで…知ってる」

 

オール・フォー・ワンはクスクスと笑いながら、楽しそうに呟いた。そんな彼に、僕は何故知ってるのかと問う。

 

“個性に干渉する個性”。果てはその記憶すら覗く事のできる《コピー》の本質に、オール・フォー・ワンは何故気づくことができたのか。

 

確信が無ければ、あんな脳無を僕に寄越さないだろう。

 

未だ上機嫌のまま、オール・フォー・ワンが笑う。

 

「僕と似ているからさ。それ以上の理由をご所望かい?」

 

雄英体育祭での《ヘルフレイム》。確かに、ナイトアイが《コピー》の本質に気付いたのもその時だったはず。あの時彼は“似てる《個性》を知っている”と言っていた。きっとそれは《オール・フォー・ワン》の事を言ってたんだろう。

 

ナイトアイが気づいたように、似ている《個性》だったから僕に目をつけた。似ている《個性》だったからこそ、違いに気付いた。そういう事だろう。

 

「…爆豪はどこにいる?」

「あぁ、彼は弔の所にいる。あっちの説得は難航しているようだが、ね」

 

なるほど。この廃工場、もしくは廃病院のような場所に爆豪もいると思っていたが、ここに彼はいないらしい。同様に死柄木も。

 

「…なんで僕をここに?」

 

僕は核心を突く。

 

《コピー》が欲しいならさっさと奪えばいい。この状況で、僕がオール・フォー・ワンに勝つ可能性など万に一つも無い。それは相手も重々承知の筈だ。

 

「本音を言うなら君の《個性》は今すぐにでも欲しい。だが、こう見えても人でね。得体のしれないモノは口にしたくないんだよ」

 

とてもそうは思えないが、という言葉は失礼になるから飲み込んだ方がいい、のだろうか。一応命を人質に取られているようなものだし、あまり抵抗するような事はしたくない。

 

僕は意味を汲み取り、オール・フォー・ワンに確認を取る。

 

「つまり、僕を研究し尽くしてから奪う、と」

 

冗談じゃない。利用されるだけされてポイ、みたいなもんだ。断るに決まっている。だが、それはそれで問題が当然ある。

 

断ったらどうなるか、をこれ見よがしに置いてあった事を思い出す。廃人のようなラグドール。視界に映る無数の脳無。用済みになったラグドールをあそこに寝かせていたのもそういう意図があったんだろう。性格悪い。

 

揶揄うように笑うオール・フォー・ワン。

 

「友好の証に、身体は治療しておいたじゃないか。一般的な医療器具しかないんだがね」

 

一般的な医療器具を何故持っているのか、という疑問が浮かんだが、すぐに消えた。麻酔の効いた右腕をチラリと見る。やはりこれは敢えて回復されたものだったか。まぁ、痛みで会話もままならないのも阻止できるからって理由もありそうだが。いや、まて……。

 

「……()()()。《コピー》を奪う理由なんてないんじゃないか?オール・フォー・ワン。知ってるはずだ、僕の《コピー》はお前の劣化だと」

 

そうだ、こいつには僕の《コピー》を奪う理由がない。なら、いよいよこの場に呼ぶ理由なんて存在しなくなる。いったいなぜ。

 

 

 

 

「───()()()()()()()()()()()()()、だろうね」

 

 

 

思考が、完全に停止した。言っている意味が分からなかった。何一つ。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()。そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、君だけが僕と対峙した!選ばれたわけでもない、選ばれることを拒んだ君が、僕の最後に立ちふさがった!」

 

「興味が沸いた。人生で最高の瞬間だった、君の眼に僕が映るあの一瞬が!」

 

「だから正式にズルをした。()()()()()()()()()()()。再び僕のもとへ辿り着くように」

 

 

 

こいつは、なにを言っている?この男が、僕を恐れている?あり得ない、こいつは殺そうと思えば、いつでも僕を殺せる。なぜ僕は今生きている?そもそも、緑谷のことまで知られているのはなぜだ?知られているのは危険じゃないのか?はやくこいつをどうにかしないと。──僕に?できるっていうのか?違う、考えるべきなのはそこじゃなくて──この口振り、まるで。

 

 

「また会おう、物間寧人。──期待しているよ」

 

少しだけ見上げるような動作をしたあと、オール・フォー・ワンはふわりと浮遊した。

 

 

 

 

 

その時、轟音と共に天井を突き破り、僕の目の前に()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

僕とオール・フォー・ワンの間を踏みつぶすように、紫色の布地で包まれた大きな足。いや、デカすぎる、人間の域を超えている。つまり、《個性》で巨大化された足。

 

そんなヒーローを、僕は知っている。

 

見上げながら、僕という小さな存在をアピールした。

 

「ーーーMt.レディ!?」

「あ、いましたー!ベストジーニストさーん!?こっちですー!」

 

大きい声が響く。状況を把握していくに連れて感謝の念に堪えない。いや、もうマジ女神に見える。助かった。と一息ついた。

 

「あっぶなー。踏まなくて良かった…。日頃の行いってヤツかな、これも」

 

ガサツすぎる…。心の中で女神発言を取り消す。そして、ここにいる救出対象は僕だけじゃない。彼女が誤って踏まれたら大変だ、と口を開く。

 

「君!雄英の生徒だな?取り敢えずここから離れるぞ。こっちだ」

「待ってください!ラグドールがまだあっちに…!」

「!…わかった。虎、聞こえたな?」

「ーーー当然!」

 

続々と姿を現すプロヒーロー、ベストジーニストにラグドールの居場所を伝え、ラグドールと同じプッシーキャッツの虎がその場に向かう。

 

その間、Mt.レディは未成熟だった脳無を嫌そうな顔で握り潰していた。

 

「うっへぇ…。気持ち悪…」

「それと、まだヴィランが少なくとも1人!さっきまでここに居たんですけど…」

 

いつの間にか、オール・フォー・ワンは姿を消していた。《サーチ》でMt.レディの奇襲は予期していたのかもしれない。

 

「その右腕…。すぐに病院に向かった方がいい、ギャングオルカ、彼を頼む」

「あぁ、任せろ」

 

僕の歪んだ右腕を見て顔を顰めたベストジーニスト。シャチっぽいヒーロー、ギャングオルカに僕の身柄を預ける。右腕は麻酔で痛みはないから見た目よりは大丈夫だ、と告げようとする僕。

 

「ーーーラグドール!返事をするのだ!」

「息はあるようだ、良かったな」

「あぁ、だが、様子が…」

 

遠くで虎がチームメイトのラグドールに声をかけている。虚ろな目に困惑している虎のもとに、ベストジーニストが駆け寄る。

 

 

 

 

「ーーーすまないね、虎。前々から良い《個性》だと思って。丁度良いから、貰うことにしたんだ」

 

 

 

そっちに居たか…!

 

そんな彼らに、その声が届く。夜に紛れた暗闇、そこからオール・フォー・ワンが姿を現した。ベストジーニストが瞬時に警戒態勢を取る。

 

「ーーーダメだッ!そいつから離れてください!」

「落ち着け、離れるのは貴様の方だ。まず安全地帯へ送り届ける」

「ギャングオルカ…!」

 

叫ぶ僕を諫めるギャングオルカに、もどかしい気持ちに襲われる。オール・フォー・ワンの姿は限られた人間しか知らない、いや、変幻自在だからこそ巨悪の根源の姿を知る者は少ない。

 

「そいつはただのヴィランじゃないんだ!」

「ーーーヴィランという事を教えてくれただけでも充分だ、少年」

 

一般人ではないという確証から、ベストジーニストが動く。

 

No.4ヒーロー、ベストジーニスト。個性《ファイバーマスター》ーーー繊維を自由自在に操る個性。繊細なコントロールで敵の拘束や強制移動が可能に。

 

「な…」

 

ベストジーニストがヒーローコスチュームの“繊維”を自在に操り、オール・フォー・ワンを拘束する光景を見て、僕は目を見開いた。

 

凄い、あまりの早業。洗練された《個性》の扱い。No.4ヒーローの名は伊達じゃなかった。

 

僕は呆然と、そのトップヒーローの風格を見ていた。オール・フォー・ワンが繊維で堅く拘束されているその様子に、この戦いの勝機を見出していた。

 

そして。

 

 

 

一瞬の、(まばゆ)い光。

 

 

 

 

辺り一帯が荒れ地と化したこの場所で、気付けば僕は地に伏していた。仰向けでのまま星空を見上げていた。

 

「…は?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

僕の身体にのしかかるように、シャチっぽい身体がそこにはあった。重い、という感覚よりも、その傷だらけの広い背中に声が震えた。

 

「ギャングオルカ…?」

 

僕を庇うように倒れ込んでいたギャングオルカの大きな身体に、声をかける。呻き声で返事が返ってきたものの、動ける身体ではないとすぐに悟った。重症だ、僕を庇ってしまったから。

 

「ーーー流石No.4、ベストジーニスト。僕は全員消しとばしたつもりだった」

 

パチ、パチと静寂の中に拍手が響く。その声に、思わず鳥肌が立つ。拍手ができるという事は繊維での拘束から抜け出したという事。

 

「咄嗟に繊維で皆を庇う洗練された技術…並の神経じゃない。長年の経験から得られる技術、か」

 

ギャングオルカの声も、Mt.レディの声も、ベストジーニストの声も聞こえない。ただ聞こえるのは、抑揚のない冷たい声。

 

「ーーー君のは、いらないな」

 

 

 

「ーーーオール・フォー・ワン…!」

 

ギャングオルカを丁寧に退かして立ち上がり、オール・フォー・ワンを睨みつける。そんな中、僕は彼に視線を逸らさず状況を確認した。

 

Mt.レディは倒れている。ベストジーニストが庇ったのなら命までは取られていない筈だ。同様に虎も重症だが、最悪の事態にはなっていない。その上チームメイトのラグドールを庇っている様子に感心する。あの状況ならラグドールも無事だろう。

 

僕はベストジーニストに目を向け、歯軋りする。

 

彼が最も危うい。腹部における重症、出血量も尋常じゃない。

 

なんで…ッ。

 

なんで僕だけが、無事なんだ…?

 

理由はわかりきっている。僕が救出対象で、彼らがヒーローだから。僕はギャングオルカに庇われた。

 

「あぁ…。折角弔が自身で考え自身で導き始めたんだ。出来れば邪魔はよして欲しかったな。だが、これが正しい道か」

 

もはや僕の事など眼中にないのか、オール・フォー・ワンは空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

「今回ばかりは仕方ない、か。ーーー()()()、弔」

 

「な…!?」

 

瞬間、黒い液体が空中に出現。その臭気に思わず顔を顰めながら、そこから突如姿を現した爆豪勝己に唖然とする。

 

「ーーーッんだコレ…!」

「なんなんですか…」

「なんかクッセぇ!良い匂い…」

 

「…《転送》系の個性か…!くそっ!」

 

爆豪に続くように次々と現れる見知ったヴィラン達。トガヒミコ、トゥワイスの姿に警戒しながら、咳き込んでいる爆豪のもとへ向かう。

 

「爆豪、これは一体…!」

「オレにもわかんねぇよクソが!」

「ぐ…一旦こっちに…!」

 

状況を聞いたらすぐ怒鳴られた。とりあえず爆豪の腕を掴んでここから離れる事を促す。

そんな僕と爆豪を、オール・フォー・ワンがしっかりと見据える。逃がさない、と言われているようなその視線に、僕と爆豪は動きを止めた。

 

「ーーーッ!」

 

そんな中、次々とヴィランが転送されてくる。Mr.コンプレスや何故か気絶している荼毘。知らないヴィランも当然いて、トカゲのようなヴィランに、赤い長髪とサングラスが特徴のヴィラン。筋骨隆々な肉体に“筋繊維”を纏わせたヴィラン。

 

そして最後に現れたのは、荼毘と同じく気絶している黒霧と、ヴィラン連合の中核、死柄木弔。

 

「また失敗したね弔…。でも決してめげてはいけないよ」

「先生…」

「いくらでもやり直せ。そのために僕がいるんだよ。全ては君のためにある」

 

そう言って死柄木に手を差し伸ばすオール・フォー・ワン。その光景は確かに教師と生徒のようにも見える。

 

「ーーーッ!行くぞ、爆豪!」

 

その錯覚を首を振って頭から振り払い、この場から立ち去るために足を踏み出す。その時だった。

 

突風と衝撃。オール・フォー・ワン目掛けて突っ込んできたその存在が到着するだけで、地面から足が浮きそうなほどの風が吹く。

 

「全てを返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!」

「また僕を殺すか?オールマイト」

 

ーーー悪夢が、始まる。

 

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