「長所と短所」を改稿・今後に関わる変化を入れました。(12/7)
白く眩い照明。同じく白く清潔なベッド。窓から差し込む朝日で、ヴィラン連合との戦いが終わった事を理解した。
「…ん」
今度は本物の病院である事を確認して、自分の身体の状態も確認する。麻酔で感覚の無かった右腕は問題なく動く。かなりの怪我だったが、リカバリーガールの《治癒》でもされたのだろうか。何にせよありがたい。
まだ意識は曖昧で、身体は気怠い。その身体に鞭打って僕は呼び出しボタンを押す。看護師さんに目が覚めたと報告して、あの後どうなったかを聞きたいから。
見舞い品などが見受けられない事から、あの騒動が終わってすぐの朝、ということだろうか。長い時間気を失っていた訳ではない事にホッとする。
備え付きのテーブルに置いてあったリュックは僕が林間合宿に持っていったものだった。そのリュックに手を伸ばしてスマートフォンを取り出す。電子機器に頼ってしまうのは若者の性だろうか。
「…………」
メッセージアプリにはかなりの連絡が来ている。まず母親と父親、先生に無事と謝罪の旨を伝え、あとはクラスグループに同じ文を送っただけだ。個人個人に言うのは手間がかかる。
朝の報道番組がちょうど始まる時間だな、と思いついた僕はスマートフォンをテレビ機能に切り替える。
看護師さんが来るまでの間はこれで時間を潰そう。
そう考えて小さな画面を見る。見慣れたニュースキャスター達の聞き慣れた声が僕の耳に届く。
『ーーー次は、君だ』
『以上が、実際のVTRです。何度見てもカッコいいですね!未だ闇に潜むヴィラン達へ向けたこの言葉、まさにNo.1ヒーローです!』
『え、えぇ。そうですね。…そして
スマホの電源を切る。同時に慌てて入ってきた若い看護師さんに、安心させるように笑いかけた。
⭐︎
平和だなぁ、とぼんやりと思った。
「来たよ〜」
「お、無事みたいだな。今回ばかりはさすがのお前も…って冷や冷やしたぜ?」
「ちょっと回原。病院だから静かに」
「にしても思ったより元気そうで良かったぜ!物間!」
「鉄哲!?話聞いてた!?」
「…ん。一佳。静かに」
「あはは〜。騒がしくてごめんねぇ」
昼前の11時。ぞろぞろとやってきたのはB組のみんなだった。取蔭がひらひらの手を振りながら謝罪してきたが、僕も手を振って気にするなと返す。病室が一気にワイワイと騒がしくなった。
「朝から退屈で丁度いいよ。ここには僕以外いないしね」
4人部屋を占有してるみたいで居心地が悪かったから助かるまである。そしてそんなことより聞きたいことがあった。
「そっちも元気そうだけど…。他は?」
見る限り、人が少し足りない。そりゃあ忙しくて見舞いに来れない時もあるし、朝に回復を告げたばっかりだから仕方ないとも言えるけど。一抹の不安が過ぎる。
「あの時ガスで気絶してしまった、円場さん、庄田さん、柳さん、宍田さんはまだ目を覚ましてません。お医者様は心配いらないと言ってましたが…」
「あぁ、ガス吸っちゃったのはその4人か。ま、生徒の誘拐が目的だった訳だし、命までとる効果は無いでしょ。安心して大丈夫さ、塩崎」
「…申し訳ありません。私の判断が遅れて、宍田さんがガスを…」
「《獣化》の時は鼻が利くしなぁ。こればっかりは仕方ない、そう気に病まなくていい。骨抜にも言ったけど、誰の責任とかの話じゃないからね」
《獣化》した宍田に乗っかれば早めに拳藤達とも合流出来たのだが、彼が気絶してしまったらどうしようもないだろう。塩崎班だけ僕がいる時に合流出来ていなかった疑問を解消した時、首を傾げた。また新たな疑問が生まれる。
「…あれ、その骨抜は?」
話にも出した骨抜柔造の姿が見えない。むしろ気絶した面々を除けば彼だけがこの場にいない事になる。
「その、骨抜さんは…」
と、言い淀む塩崎に、思わず僕の頬に冷や汗が流れる。…おいおい、まさか。
「ーーー物間に会わせる顔が無いってさ。思ったよりメンタル弱いっしょ?馬鹿だよね」
「ちょ、ちょっと!切奈!?」
「…あぁ、なるほどね。焦って損した」
「物間!?」
拳藤が焦ったように僕と取蔭をキョロキョロと見る。僕は別に悪口を言ってる訳じゃない。取蔭も…同じ推薦枠だし骨抜とも仲は良いから、多分悪口じゃない。違う、よな?
「大方、アイツも茨みたいに責任感じてるんでしょ」
「それは私の精神面が軟弱だと…?」
流れ弾に当たっている塩崎はともかく、そういえば骨抜には「皆を任せた」とはっきり告げた気がする。円場は僕が助けに行くから、と。
拳藤が骨抜をフォローするように口を開いた。
「でも、私が言うのもなんだけど、骨抜は頑張ってたよ。あの脳無相手にも臆さないで、真っ先に私達を逃すように動いてた」
「それで負けてるんだから、ただの力不足だよねぇ。アイツも、私も」
「おや、珍しく謙虚じゃないか?取蔭」
「あれ程コテンパンにやられたら、自信も無くすよ」
どんな戦いがあったのかは知らないが、かなり一方的な戦いになったらしい。その辺の詳細はあとで聞くとして。
「無事な姿だけ見せてくれれば充分なんだけどな。ま、今度無理やりにでも顔会わせるさ。あ、それとーーー」
拳藤の口振りをみるに、おそらく骨抜が1番重症だったのだろう。病院で治療を受けて何とかなったのなら、その姿を見せてくれるだけで僕は満足だ。
そして、
“みんなを守れなかった”という責任の他に、“あの時自分が物間についていっていれば”という後悔がもしあるとしたらーーー。
「ーーー僕が拐われたのは僕がドジっただけだ。気にする事じゃないよ、黒色」
「…」
あの時ついてくる事を拒否した黒色にも、フォローを入れておく。部屋の隅の壁に腕を組みながら寄りかかっていた彼は顔をあげ、無言で頷き、僕はそれを見て満足する。
そしてもう1人。
僕が“ついてくるな”と言った彼女を見る。
「………」
拳藤一佳。勿論彼女への申し訳ない事をしたという気持ちはある。かなり不安にさせてしまっただろう。
けど、僕は謝罪をする前に言わなければいけない事があった。
わいわい、がやがやと人数が多くなった分話し声は増える。騒がしいように見えて病院側に迷惑にならないような声量、という配慮もしていて思わず笑みが溢れる。
真面目なクラス。A組とは違ってコツコツと積み重ねていくタイプの、間違いを犯さないクラスだと思っていた。
そう、思っていたのに。
適度に騒がしい病室の中、僕は口を開いた。
「ーーー昨日はよく救けに来てくれたね、鉄哲」
「…え?」
一瞬、静寂が室内を支配する。困惑を浮かべる面々を観察しながら、僕は察する。あの夜の鉄哲の行動は、
僕は鉄哲の反応を見る。僕に感謝されたとでも思ったのか、嬉しそうだ。
「イイってことよ!ダチが拐われてるって時に、ジッとしてなんていられねェからな!」
「あっはっは。…鉄哲」
「つっても、自力で脱出したみてェだけどな!やっぱ流石だぜーーー」
僕はニコニコと笑いながら、寝ていたベッドから足を下ろす。そのまま鉄哲の近くまで行く。
気怠い身体を何とか動かし、拳を振りかぶる。それを見た鉄哲は目を見開きながら、《スティール》を発動する。
ガン、と。
1発、確かに殴った僕は、怒気を込め、吐き捨てるように告げる。
「…最悪の気分だ。君は、本当に馬鹿だった」
あぁ、良くない。言っておきながら自分でも気付いている。
これは八つ当たりだ。
いきなり険悪な雰囲気になった僕らに、周囲は困惑する。だが、それにも構わず僕は続ける。
「どんなに正当な感情だろうと、ルールを破るならヴィランの
「そ、それでも!オレはーーー」
「ーーーあの、どうかしましたか?さっき何か音がしましたけど…」
その時、朝様子を見に来てくれた看護師さんが姿を現した。鉄哲を殴った音が気になったのだろう。僕はすぐさま申し訳なさそうな顔を作る。
「あぁ、すいません煩くて。ほら、取蔭も」
「…すいませんねぇ。…それじゃ皆、物間は元気そうだし、円場達のお見舞い行こっか。さーいこいこ」
ナイス、と目で褒めるが、取蔭は何故か睨んできた。妙な空気を切り替えるように鉄哲の背を押して皆を部屋から追い出す取蔭。空気を読むスキルがあると助かる。困惑しつつも病室から出て行く皆を、僕は見送る。
少し遅れて、拳藤が最後に病室を出ようとする。
僕は重たい空気の中、その背中に声をかける。
「鉄哲は馬鹿だし、大馬鹿だ。後先なんて考えちゃいないけど、僕はそういうとこ、嫌いじゃない」
「……うん」
拳藤が足を止め、こちらを振り向く。後ろ手でドアを閉め、病室は僕と拳藤の2人きりになる。
後先を考えない鉄哲の行動。僕と彼がその論点で衝突する事はいくつかあった筈だ。今は夏休みの中盤とはいえ、彼とはよく話す方だから。
それでも今日まで、これほど本気の喧嘩になった事は、僕がここまで怒った事はない。
それは何故か。
僕と鉄哲の間に、拳藤がいたからだ。
鉄哲が決定的な間違いを犯しそうになった時は、必ず拳藤が止めていた。だからこそ、僕と鉄哲は仲のいいダチになれている。
だからこそ、僕は問う。
「ーーー君は知っていたな、拳藤。どうして止めなかった?」
鉄哲と切島の仲がいい事は承知している。そこから発展して僕と爆豪救出組に入ったのかもしれない。
だが、僕は拳藤と八百万の仲が良い事も知っている。八百万と合流して、交戦した脳無。脳無格納庫を突き止めた緑谷達。八百万の発信器が無いと出来ない芸当だ。
もし拳藤を通して八百万の発信器の存在を知り、鉄哲が僕の救出に向かったとしたら?
皆が鉄哲の行動を知って困惑する中、あの時拳藤だけが目を伏せた。
許せる訳がない。拳藤は鉄哲の暴走を黙認した。
「なんで…って。言われないとわからないの?」
「あぁ。僕には全く理解できないからね」
睨み付けるような視線が交錯する。
「いいや、同じ。アンタが私達を守りたいように、私もアンタを救けたかった」
「僕は迷惑だった」
突き放すような僕の言葉に、拳藤が怒りを露わにした。
「ーーーそんなの、関係ないでしょ!?…アンタが1人で突っ走って、いつのまにかヴィランに拐われてて…!」
「………」
「思い返せば…!アンタは私達を説得する時、“すぐ戻るから大丈夫”とは言わなかった!」
そうだっただろうか。あまり記憶に無い。けど、そうなんだろうなと妙に納得した。
だってその言葉が“嘘になる”と知っていたから。だからこそ、僕は皆から離れて単独行動を心がけていたんだから。
「何か隠してんのに何も言ってくれなくて…!私達を頼ってくれない!何もさせてくれないのに、何もするな、なんて納得出来るわけない!鉄哲を止めるなんて、出来ない…!」
言える訳がない、僕が狙われていたなんて。《ワン・フォー・オール》の事も、ナイトアイの事も。
それでも、彼女の姿に心が痛む。
わかってる。これはどっちが正しいか、正しくないかの問題じゃない。どちらが納得出来るか否か、という話なら、拳藤の方に分がある。
ただ、それよりも。
僕は間違っていたんだと、気付かされる。
そもそもの“前提”を、間違えていた。
言葉を失った僕に、拳藤は背を向けドアを開く。
「…その手も、あとで診てもらいなよ」
病室を出る前、拳藤は僕の赤くなった拳を見ながらそう呟いた。
僕だけが残った病室で、赤く腫れた手を眺める。
「…痛いなぁ」
いつもと違って、《
拳藤は気付いていたようだが、僕が自分の拳で鉄哲を殴るのは、本気で怒った時だけだ。
まぁ、こっちの方が、両方の
あぁ、ホント痛い。
⭐︎
その後、塚内という刑事さんに話を聞かれたし、こちらも話を聞いた。本当は昨日のうちに事情聴取を済ませたかったようだが、それは叶わなかった。
《ワープゲート》を発動し、僕はあの場にいた緑谷、轟、八百万の3人を雄英高校の敷地内に送り届ける事が出来たらしい。もっとも、その時には僕も気を失っていたらしいが。きっと“同調・過去視”の反動が来たんだろう。
「ーーーそれは、本当かい?」
「…証拠も何もないですけど。捜査の手掛かりにでもしてもらえれば」
オール・フォー・ワンとの会話や、“
別に隠していた訳でもない。僕だって、こんな情報が出て来るとは思わなかった。そしてこの情報は警察に渡した方がいいと思った。良いタイミングだったと思う。
「…わかった。イレイザーやプレゼントマイクには…」
ここで、僕の話を聞いていた塚内さんは悩む素振りを見せた。
「この事を話すかどうか、ですか。それは警察の判断に任せます。現状、話しても何も変わらないと思いますけど」
「そう…か。辛いだろうな」
「えぇ…。本当に」
確かに、この事実を伝えるのは心苦しい。あの人達は知らないままの方がいいとすら思える。
「わかった、協力ありがとう。誓うよ、この情報はこちらで有効に使わせてもらう」
「ありがとうございます」
僕は礼を言い、頭を下げた。とにかく、これで話しておくべき事も聞くべき事も全て聞いた。
そしてその中には、僕が伏せた情報もある。
“同調・過去視”を使った訳でもない、ただ灼かれた経験から来る荼毘についての推測。それはあまりにも根拠が薄いし、警察もノーマークって訳ではない事を察して口を閉じた。
たとえ言った所で、捜査材料にはなり得ないだろうし。
「あの、オールマイトの病室ってどこにあるかわかりますか?」
事情聴取を終え、病室を出ようとする塚内刑事に声をかける。
「二つ隣の病室だが…。すまない、次は彼の事情聴取でね、少し待っていてくれないか?」
「あ、大丈夫です。また時間を置いてから行くので」
そんな会話を交わし、塚内刑事の背を見送る。
再び1人になり、そして暇になった病室で、僕はスマートフォンを取り出した。
先程返せなかった個人個人に対する連絡を済ませていく。
中学の知り合いからも来ていたので無事と感謝の旨を送る。テレビで爆豪と僕がヴィランに拐われたという報道は当然、悪い方で反響があったようで。特に体育祭でのNo.1とNo.2だ、セキュリティは勿論、雄英の生徒の質まで疑われてるかもしれない。
と、そこでNo.3の轟から連絡が来る。『起きたって聞いたが、無事か?』という文に、『僕よりそっちの心配をした方がいい、除籍処分すら有り得るぞ』と返す。
返信が途絶えた。僕の無事は確認出来た上に痛い所を突かれて無視するつもりだろうか。まぁそれならそれでもいいけど。
そう思って轟との会話は終了、にするつもりだったが、気がかりな点があったのでそれについても聞く事にした。完全な蛇足だ。
『ちなみに、そちらの親父さんは?』
『部屋でうるせぇ』
やけに早い返信に、思わず笑ってしまった。
あの人の心中も、複雑だよな。わかるよ。
⭐︎
コンコン、と2度ノックして、「どうぞ」という返事を聞いてからドアを開ける。
「あぁ、物間少年か。すまないね、こんな姿で」
「…トゥルーフォーム見るのは初めてじゃないし、気にしてませんよ」
「それもそうか」
後ろ手でドアを閉めながら、オールマイトにそう返す。僕の言葉にオールマイトは苦笑した。
「そこに座るといい。さっきまで塚内君とグラントリノが来ていてね」
オールマイトが指差した椅子に座り、改めて様子を確認する。少し暖かい事から、本当についさっきまでいたんだな、とぼんやり思った。
痩せこけた頬、萎んで垂れ下がっている金色の髪、そして力なく笑ったその笑顔。
胸が痛んだ。
そんな僕に、オールマイトは頭を下げた。
「ーーーすまなかった。君や爆豪少年、愛する生徒の危機って時に、駆け付けてあげられなくて」
「…あぁ。それは、別に。結局救けに来てくれた訳ですし」
林間合宿の話だろうか、とぼんやり考えながら口から出たのは、そんな素っ気ない言葉だった。馬鹿、違うだろ。
躊躇いがちに口を開く。
「…貴方が謝る事じゃないですよ。僕の方こそ、なんていうか、お手を煩わせてって感じで」
「…物間少年?」
僕の煮え切らない言葉と態度に、オールマイトは目を丸くした。珍しい、とでも思ってるんだろうか。
あぁ、駄目だな。調子狂う。僕は自分の髪をくしゃりと掴み、俯いた。オールマイトから僕の表情は見えない筈だ。
まずは彼に、言っておかないといけない。
「ーーーホントに、なんで貴方が謝ってるんでしょうね」
そう呟いた。
「謝らなきゃいけないってのは、僕の方です。オールマイト」
そう続けた。
「…物間少年?いや、この怪我や引退については君の気にする事じゃ無いんだ。君もナイトアイから聞いていただろう?遅かれ早かれこうなるとーーー」
「はい、知ってました」
僕は一体、どこで間違えたのだろうか、と。散々考える時間はあった。そうして何度も、何度も、何度も、同じ答えに辿り着く。
決まってる。
僕は最初から間違えていた。
「ナイトアイは、
僕は、彼の思惑を、全て知っていたのに。
「ナイトアイにとって、都合の良い展開になると知っていた。こうなると予想も出来た…!合宿で襲われると、拐われると知っていた!オールマイトが救けに来てくれるとわかっていた!こうやって…!」
僕は知っていた。
ナイトアイが《ワン・フォー・オール》を物間寧人に継がせようとしている事も。自分自身が拐われる事も、オールマイトが救けに来て、痛手を負う事も。全部わかっていた筈なのに。
「貴方が…《ワン・フォー・オール》を緑谷じゃなく、
「…ナイトアイにとって、今が絶好のチャンス。貴方も、僕も、きっと緑谷も。もう一押しでナイトアイの望むままの展開になる」
ナイトアイはずっと、この時を待ち望んでいた。全員の心が不安定になり、少しの干渉で未来を変えられるこのチャンスを。
《ワン・フォー・オール》を緑谷が所有する物語を書き換える最後のチャンスは、ここしか無いとナイトアイは狙っていたんだ。
だからこそ、林間合宿での襲撃、この神野の悪夢を《予知》していたのにも関わらず放置した。全ては今日の為に。
何故なら、それがナイトアイにとって最も良い結果を生み出すから。
オールマイトは、僕の言葉に目を丸くした。図星だった。彼は、緑谷よりも僕を選ぶという選択肢を、確かに視野に入れていた。
さっき、オールマイト本人が言っていた事だ。“ワタシがその場にいれば”と。当たり前だ、オールマイトがいるだけで全てが変わる。林間合宿での悲劇なんて起こりようがない。そもそもの発端は未然に防げた。
そう、あの場にオールマイトが。
そうやってオールマイトの
「物間少年…君は」
「ナイトアイはヒーローとしての全てを投げ捨てて今日に賭けてきてる。それほどの覚悟が、僕にはなかった」
いや、僕には何もかも足りていなかった。覚悟だけじゃなく、力も。だからこうして、後悔している。
「──君は、知っているんだね。ナイトアイの覚悟を。…だから止めようとはしなかった」
「はい、だから、教えてください。僕はこれから──」
───どうすれば?《ワン・フォー・オール》を受け継ぐか否かという選択をする資格は、僕にはない。オールマイトは静かに口を開いた。
「ワタシの口からは言えないよ、助言も決断も。きっといつか後悔するからね」
「だから君の事は任せるよ──ワタシが最も尊敬する
そして俯く僕の手を握り───
⭐︎
そうして、暗闇の中に僕は佇んでいた。
『ーーーお師匠。実は昨日、変な夢を見まして。ある兄弟の《個性》を巡る喧嘩のようで…これってまさかーーー』
『そりゃ夢じゃない、面影だ』
『面影?』
『その《個性》はさ、きっと色々溜め込んじまうんだよ。“ああしたい、こうなりたい”ってな』
女性は続ける。
『ーーー“力”の前にはいつだって“想い”がある』
『培ってきた人達の想いが“力”の一部として記憶されてる。私はそう思ってるよ』
『…オカルトでしょうか』
『ーーー
呆然と、そんな記憶を見ながら。
横で僕と同じようにその記憶を
記憶に映る風貌と同じ、鮮やかな黒髪、白いマント、それなりに鍛えられた身体。
オールマイトの先代。
《ワン・フォー・オール》7代目継承者。
「ーーーさぁ、
明るく快活な、オールマイトにそっくりな笑顔を浮かべながら、志村菜奈はそう言った。