強キャラ物間くん。   作:ささやく狂人

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《障害物競走》最終結果(原作と変化無し)
1位 緑谷出久(A組)
2位 轟焦凍(A組)
3位 爆豪勝己(A組)
4位 塩崎茨(B組)
5位 骨抜柔造(B組)
6位 飯田天哉(A組)
7位 常闇踏陰(A組)
8位 瀬呂範太(A組)
9位 切島鋭児郎(A組)
10位 鉄哲徹鐵(B組)
11位 尾白猿夫(A組)
12位 泡瀬洋雪(B組)
13位 蛙吹梅雨(A組)
14位 障子目蔵(A組)
15位 砂藤力道(A組)
16位 麗日お茶子(A組)
17位 八百万百(A組)
18位 峰田実(A組)
19位 芦戸三奈(A組)
20位 口田甲司(A組)
21位 耳郎響香(A組)
22位 回原旋(B組)
23位 円場硬成(B組)
24位 上鳴電気(A組)
25位 凡戸固次郎(B組)
26位 柳レイ子(B組)
27位 心操人使(普通科C組)
28位 挙藤一佳(B組)
29位 宍田獣郎太(B組)
30位 黒色支配(B組)
31位 小大唯(B組)
32位 鱗飛龍(B組)
33位 庄田二連撃(B組)
34位 小森希乃子(B組)
35位 鎌切尖(B組)
36位 物間寧人(B組)
37位 角取ポニー(B組)
38位 葉隠透(A組)
39位 取蔭切奈(B組)
40位 吹出漫我(B組)
41位 発目明(サポート科H組)
42位 青山優雅(A組)



騎馬戦準備。

「…“緑谷出久”?」

 

無事、B組全員が二次予選を通過した事に一安心しながらモニターを眺めていると、一位の少年の名前が目に留まる。

てっきり予想では爆豪勝己が一位を取ると思っていたのだが、意外な名前が最も上に表示されている。

 

先頭集団の一位争いは中々熾烈を極めたと聞いていたが、詳しい事は見てないしわからない。

 

「…あとで誰かに聞いてみよう」

「はいは~い、お疲れ〜、物間」

 

と、呟いた時、背後から声。振り返る間もなく声の主は近づいて、僕の肩に腕を回す。やけに近い距離から顔を確認すると、そこにいたのは爬虫類顔の女子。

 

「いやー、物間の言う通りの基準(ボーダー)だったね〜、42人!」

 

出席番号14番、取蔭切奈(とかげせつな)。個性《トカゲのしっぽ切り》自身の体をバラバラにして浮かせることができる。

 

そして、骨抜や轟焦凍と同様の推薦入学者。

 

ため息をつきながら僕は言う。

 

「…何がお疲れ〜だよ、取蔭。39位なんてギリギリ攻めやがって…」

「まぁまぁ、無事通過したんだしさ」

 

推薦入学者と言われて分かる通り、彼女も当然強い。それは普段の戦闘訓練の様子からわかっているのだが、彼女にはなんというか、向上心というものがない。

 

いや、無い訳では無いのだろうが、お気楽かつ図太い性格が災いし、今回の《障害物競走》でも上位には入ろうとしない。

 

最後尾から出発した僕と拳藤よりも低い順位、これで推薦なのだから正直意味がわからない。

 

「あ、そーいえば」

 

唐突に、取蔭が指をさしながら口を開く。

 

「そーいえば、気になる個性の人がいてさ〜、ほら、あそこの!」

 

指の方向に視線を向けると、紫色の立った髪と濃い隈が特徴的な少年。順位が表示されているモニターから名前を調べる。

 

「あぁ、普通科の心操人使君ね…それが?」

 

「人を洗脳する個性っぽいよ」

 

コソっと内緒話をするように、彼女は「話しかけた人を操ってる様に見えたかな、私が見た限りだけど」と言った。心操と取蔭は順位から判断しても距離は離れてた筈だが…いや、彼女の《個性》なら不思議な事でも無いか。

 

その言葉に、少なからず僕は驚いた。その情報から鑑みるに、普通科には勿体ないくらいの“強個性”だ。

 

ただその驚きは表情に出さず、僕は取蔭に聞く。

 

「で、なんでそれ僕に教えたの?」

 

その問いに対し取蔭は爬虫類顔をニヤリと歪ませ、言葉を返す。

 

「ーーーーこういう情報が欲しかったんでしょ?」

 

「…まぁね」

 

やはり、取蔭は気づいていた。僕がB組を利用している事に。腐っても推薦入学者、と言ったところか。ただ、気づいていても何も行動しようとしないのが問題であるのだが。

 

実際、こんな風に他人の《個性》を把握するのが狙いだったので、正直助かる。多分、僕が心操に興味を持っていたことも、立ち振る舞いから察したのかもしれない。うーむ、侮れん。

 

「…ちなみに、予選1位の緑谷の《個性》は見えた?」

 

「ん〜、いや、見てないかな。てか多分、使ってないと思うよ?」

 

「は?」

 

それは可笑しな話だ。取陰の言葉を信じるなら、緑谷出久は《個性》を使わずに1位を獲ったらしい。なぜ使わなかったのか、という理由はわからない。僕と同じ思考なのか、それとも使えない理由(デメリット)があるのか。

 

「ま、いーや。あぁ、取蔭の()()()から」

 

「ん、いーよ」

 

そう言って、彼女は背を向け、手をヒラヒラと振りながら去っていく。仮にもライバルだというのに、僕の要求を何も考えずに了承する態度は、やはり心配だ。

 

取蔭切奈、彼女に関しては、僕でもよくわからない。普段のおちゃらけた雰囲気とは裏腹に、先程の様な核心を突く発言も多々見受けられるし、見込み(ポテンシャル)は充分にある。

 

だから、改善すべきはあの性格。まぁ、それが彼女の個性的な一面なのだが。

 

推薦入学者にしては、実力を発揮する気が無いってのは今後何とかしたいところだ。B組の為にも。

 

拳藤がクラスを完璧にまとめあげるのは、まだまだ先の話になりそうだ。そう考えると、思わずため息をついてしまう。

 

「ま、良い収穫もあったからいいや」

 

そう1人呟いて、僕は心操人使を見て、目を細める。

 

ーーーーーーーあの良い個性、使わせてもらおう。

 

そんな事を考えつつ、彼に視線を向けながら僕はこっそりと《トカゲのしっぽ切り(コピー)》を発動させた。

 

と、同時にミッドナイトが壇上に上がり、マイクを持って口を開く。

 

「…残念ながら落ちちゃった人も安心なさい、まだ見せ場は用意されてるわ!ーーーそして次!第二種目の説明よ!」

 

どうやら、2つ目の種目の説明のようだ。

 

《個性》の発動に意識を集中させながら、僕はミッドナイトの口から告げられた二次予選の種目を耳に入れる。ステージに浮かぶ大画面モニターに表示されたのはーー

 

 

ーーー《騎馬戦》

 

 

 

ミッドナイトによる《騎馬戦》の説明が終わり、それぞれが動き出す。

 

これから15分間、2〜4人の騎馬をつくるため、話し合いの時間が設けられている。誰もが実力者や強個性と組みたいと願い、奔走する。

 

そんな姿を眺めながら、僕も静かに歩き出す。

 

「爆豪私と組も!?」

「僕でしょ?」

 

「ーーーお前らの個性知らねぇ!何だ?」

 

周囲を見回すと爆豪勝己の周辺に、我こそは、と自己アピールをしようとA組の数人が群がっている様子が目に映る。

 

確かに汎用性も高い《個性》と、一般入試一位という実績を持つ爆豪と組もう、という考えは正しい。

 

もちろん僕だって強い個性を持つ人と組みたいし、それが第一条件だ。

 

ーーーーただ、その条件を満たした上で、僕はもう少し先を見据える。

 

見据えるのは、()()()B()()()()()

 

恐らく、今のB組の生徒殆どがA組には太刀打ちできない。

 

ヴィランの襲撃、というUSJ事件を経験したA組とは経験値が違う。現に先ほどの《障害物競走》でも、B組屈指の実力者である塩崎でも4位。推薦入学の骨抜もそれに次ぐ5位。

 

B組内での猛者がそこに甘んじているのだから、それ以外は目も当てられないレベルだろう。

 

つまり、B組はここでA組に負け、自信を失いかける。

 

「ま、完全に自信を失わせない為に、僕が優勝するんだけど…」

 

ここまで。僕が優勝するまでが決定事項だ。

 

B組はこの悔しさをバネにして更なる成長を遂げていく…って未来予想図を思い浮かべる。

 

ただ、その未来を実現する為には僕1人では力不足だ。

 

まず必要なのが、彼女の力だ。

 

歩き続けていた足を止め、僕は()()の手を握る。

 

「ーーー僕と組もう、拳藤」

 

「……へ?」

 

皆を牽引し、B組成長の要、“クラス委員長”という立場の彼女には、ここで経験を積んでもらう。

 

A組とB組の差は一言で言ってしまえば“経験”だ。

 

USJ事件の様に大きな経験値では無いだろうが、この後の決勝トーナメントは貴重な経験となる。

 

その経験の差は、B組を牽引する際に絶対に役に立ち、最終的にはB組全体の成長に繋がる。

 

僕は呆けた顔の拳藤を引き連れ、あと2人の候補を探す。

 

「ちょ、ちょっと…。物間…」

 

小さな声と抗議の目で訴えかけてくる拳藤。心なしか顔が赤い。それに構わず僕はあと2人の候補ーーーー鉄哲と塩崎を探す。

 

「物間、その、さ」

 

未だに小さな抗議を続ける拳藤が気になり、僕は振り向く。小さな不安が渦巻く中、僕は小声で聞く。

 

「…もしや、もう組む人決まってたり?」

 

「いや、そうじゃなくて…その…手」

 

視線を落とすと、握りっぱなしだった僕と拳藤の手。伏し目がちな拳藤に謝り、僕はすぐに手を放した。なんだか調子が狂うな、まったく。

 

 

 

 

結果的に言えば、僕の希望通りの騎馬メンバーとなった。

 

まず1人目。先程言った通りの拳藤。

 

「で?このメンバーで勝つつもりなの?」

 

先ほどの態度は一変、すっかり頼れる委員長の彼女だ。その方が僕としても助かる。

 

そして2人目。入試4位の実力者、塩崎だ。不安げな彼女は口を開く。

 

「私も、微力ながらお力添えしますが…物間さんからお誘い頂けるとは思ってませんでした」

 

流石塩崎、賢い。

 

B組の中でもかなりの強個性に位置する《ツル》を持つ彼女と僕の相性はあまり良くない。

 

端的に言えば、僕の《ツル(コピー)》と塩崎の《ツル》が絡まってしまい、思うように操作できなくなってしまうのだ。

 

この騎馬戦においてこの弱点は致命的にもなり得るが、僕はそれを踏まえながらも彼女を選んだ。僕は塩崎を安心させる様に告げる。

 

「…大丈夫だって。それが役立つ時がきっと来るから」

 

僕はA組の騎馬、轟チームのメンバーを見ながらそう答える。

 

そして最後の1人。鉄哲だ。

 

「オォウ!一位取りに行こうゼ!!」

 

彼に関しては下騎馬としての素質を持つ個性《スティール》と、拳藤の理由と同様、B組の精神的支柱となり得るからだ。馬鹿だし。

 

この種目を勝ち抜く力量(レベル)であり、B組の今後の成長に深く関わる主要人物。

 

拳藤、塩崎、鉄哲、そして僕。これが僕らの騎馬となる。

 

騎馬としてのptを計算すると、470ptとなる。塩崎と鉄哲の順位が高いからだろう、中々高い数値となっている。ま、それはどうでもいい。

 

なぜなら今回は鉄哲の言う通り、一位を獲るからだ。

 

つまり、狙うは《障害物競走》1位であるーーーー緑谷出久だ。

 

その為の準備は、もうほぼ整っている。

 

僕はチーム決めに難航しているのか、オロオロとしている緑色の髪をした少年の姿を見て、笑う。

 

さぁ、勝ちに行こう。

 


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