Monster HunterXX 黒龍伝説之巻 伝説の章   作:マスクまる

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暇つぶし作品第三話です。


第三章 よみがえる黒龍伝説

「ラオシャンロンの撃退、見事だったわ。」

マスターは、そんな風に彼らを励ました。

「いえいえ。」

ハルは、一つ気になったことがあった。撃退されたラオシャンロンの様子がどうもおかしかった、という報告が幾つか挙がったことだ。

「まるでその場には居ない何かに怯え、それから逃げるように去って行った」と。

『ラオシャンロンは凶悪で最凶の"何か"から逃げている……』

ラオシャンロンは「なにかに怯えるように逃げて行った」らしい。

実際にラオシャンロンを撃退したとき、他の古龍とは明らかに様子が違っており、本当に得体のしれない何かに怯えて逃げていくように見えた。

その「何か」とは未だに不明だが、その陰には生ける災いと呼ばれた龍の名がちらつく。

その名は運命の戦争ないし避けられぬ死を意味し、古くから多くの民話や伝承に語り継がれる、この世に災厄と滅亡をもたらすとされる「伝説の黒龍」。

「ユウキさん。少しいいですか。」

「ああ。構わないが。」

「ラオシャンロンのことなんですが。」

そういうと、ユウキさんは、自分が知っていることを話してくれた。

 ラオシャンロンの撃退時の行動についてや、『黒龍伝説』との関わりについてである。

黒龍伝説とは、「キョダイリュウノゼツメイニヨリ、デンセツハヨミガエル」の一節から始まり、子どもたちが謳うわらべ歌である。

そして、代表的なものは、

数多の飛竜を駆遂せし時

伝説はよみがえらん

数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

彼の者はあらわれん

土を焼く者

鉄【くろがね】を溶かす者

水を煮立たす者

風を起こす者

木を薙ぐ者

炎を生み出す者

その者の名は ミラボレアス

その者の名は 宿命の戦い

その者の名は 避けられぬ死

喉あらば叫べ

耳あらば聞け

心あらば祈れ

ミラボレアス

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

彼の者の名を

という、この形態である。

なお、この伝説は地方によって大きく異なっており、

隣り合った地方でも節も詩もまるで違うことさえあるという。

この龍に関する伝説は遥か太古の時代より語り継がれていると思われることから、

"龍"と呼ばれる生物の始祖の姿を最も色濃く残す古き種族ではないかとも推測されている。

しかしその事実を知る者は世界的に見ても非常に少ない。

ハンターズギルドの関係者でもその存在を信じていない者がほとんどである。

と言うのも、「黒龍ミラボレアスはこの御伽話の中の存在でしかない」というのが一般常識だからである。

この詩は、数多ある黒龍伝説のほんの一例に過ぎない。これを念頭に置くと、グラン・ミラオスの引き起こした災厄こそが、タンジアの地方一帯に伝わる黒龍伝説と考えることもできる。

「ラオシャンロンが撃退された時、何かに怯え逃げるように去っていく様子を見せた。もし本当に何かから逃げているのだとすると、撃退された場合でもその何者かにとどめを刺されてしまっている可能性は…」

「否定できない。」

「そういうことなのか。でも、本当に黒龍なんているんですか?」

黒龍についての逸話は、いくつもある。

黒龍とシュレイド王国

その昔、世界に君臨し栄華を誇った大国「シュレイド」を滅ぼしたのもこのミラボレアスと推測されている。

黒龍との戦争によりシュレイド王国は文明ごと滅亡、東西に分裂してしまい、

中心部の古城はミラボレアスの住処となった。

王国の象徴であり中心であった城を乗っ取られた人々は

国を捨てるという選択をせざるを得ず、シュレイドの地を去った。

結果、かつて栄華を誇ったシュレイドは黒龍の翼下と成り果て、今では見る影も無いという。

現在では古城を中心とした旧王都は生命の息吹すら感じぬ廃墟と化しており、不気味な暗雲と空模様が異常なまでに重苦しい空気を漂わせるのみである。その異様な雰囲気からか、それともまた異なる要因からかは不明だが、旧王都一帯は強大な龍すらも近づくことを避けているらしく、付近ではこの地に踏み入ったと思しき生物が引き返してゆく姿が度々確認されるという。

 このような状態であることから、シュレイドを訪れるものは殆ど皆無であるが、過去には黒龍を討ち払うべくシュレイド城へと赴いたハンターもごく少数ながら存在したという。

黒龍征伐を期して出撃したハンターはいずれも名高い凄腕の狩人であったのだが、その殆どは討伐に向かう姿を最後に、消息を絶ち、そのまま謎の失踪を遂げた。当初、ギルドは辛うじて生還した者達から事情を聞こうとしたが、何故か全員とも証言を拒否、断固として黙秘を貫いた。故に、シュレイド城の不可解な消失現象は現在も解明されておらず、謎のままである。

 また、シュレイド城から生還したハンターの中には、何のモンスターか分からない黒い鱗や爪といった素材を「黒龍から剥ぎ取ったものだ」と主張して持ち帰って来た者もいたという。彼らは素材を工房に引き渡すと、それを元手に武具として生産してもらうことで、己の勲章の類としていた。しかし、生産された武具を身に着けてしばらくすると、黒龍の声や視線を感じる、自身の腕が黒龍の腕に見える等と主張するハンターが出始め、遂には行方不明になって消息を絶つ者や謎の狂死を遂げる者まで現れたという。古い文献などによると、黒龍の関わるそれらの武具は、ことごとく良からぬ伝承や噂がついてまわる。

片手剣、槍、大槌の三振りは「邪龍の神器」として恐れられており、

大剣を掲げし者は永遠に古龍と戦う宿命を強いられ、

太刀が刻んだ傷は100年経とうが癒える事は無いといわれる。

防具についても、前足を常に黒龍に捕まえられているような感覚が襲う、

加工に携わったものが次々不幸に見舞われるなど、武器と同様におぞましい逸話が残されている。

水晶でできているとされる「黒龍の眼」は、三大宝玉の一つとして数えられていることでも有名だが、時にはそれすら反射する光を見るだけでも怖気が走る"呪いの至宝"と称される。未解決の失踪事件を含め、あまりにも不吉な噂や出来事が多く相次いだことも重なり、各地方のギルドは黒龍に関するありとあらゆる情報を、徹底的な極秘事項に分類することを決定。

武具の生産レシピは原則非公開とし、ミラボレアス関連の依頼は表向きに発表する事を固く禁じた。

だが、更なる高みを望むハンター達の間でミラボレアスの存在は

「ハンター人生の究極の目標」として捉えられているという話もあり、どこまで効果があるのかは疑わしいのが現実である。

「もし、本当にいるとしたら、戦わねばならない。いや必ず戦うことになる。」

古語で"運命の戦争"を意味する名を持ち、古より語り継がれる伝説の黒龍。

闇の如き漆黒の身体は一目で恐怖を植え付け、その邪眼はあらゆる生物を威圧し、畏怖させるという。

存在そのものが伝説化しており、一般市民はおろかハンターたちからすらも御伽噺の中の存在と見做されている。

「黒龍ミラボレアスは空想上の怪物」というのがほぼ一般常識と化しており、

その存在に関して深く追及する者もほとんど存在しない。

ギルドの紋章にはこのミラボレアスが描かれているが、

「心構えを表しているんだな」などと考え、誰も謎に思わないのだろう。

また黒龍に関する童歌であり「黒龍伝説」についても各地に存在しているらしく、どれが真の物かも定かではない。

◦ただし、ギルドの最上部に位置する大長老やドンドルマの大臣、そして謎に包まれた赤衣の男など、

黒龍が実在することを知り得る人物はごく少数ながら存在している。

しかしながら彼らもその情報を住民やハンターに大々的に公表することはしておらず、

実在が正式に確認されてから現在に至るまで、黒龍の存在が公になったことはない。

ハルは、誰かの視線を感じ、振り返ると、赤い布に身を包んだ男が立っていた。

「伝説は甦ったのだ。運命には、抗うことしかできぬ。やつを、黒龍を。生かしておくことは、できぬのだ。」

この言葉に彼らは、ただ茫然と立ち尽くしていた。

 

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