No,実態は「予め書いておいたものを、推敲して時間差で出てくるように投げた」。
動画も投稿し直そうとしている二次創作スキーを舐めないでくれたまえ、そんなことしたら頭が死んじゃう。
ふむ、俺氏よ。
目の前の美少年はコスプレイヤーに見えるかね。
ベンチで横になっている、自分の好きなマゼンタとは異なる色でありながらも現実に存在しうる外国人の自然な赤髪以上に真っ赤っ赤な頭髪と、若い少年少女の髪質を文学上では緑の髪と表現することこそあれど本当に緑色の頭髪など存在するはずもないにも関わらず本当に瑞々しい緑色の頭髪を持つ、誰がどう見てもテレビで覇権を握っているアイドル事務所で大人気の数あるグループのメンバーよりも女性寄りの中性的な容姿をもつ絶世かつ紅顔の美少年が、仮にもしも万が一に頭の悪い言い方をするなら超ラッキーでマジにコスプレイヤーだと思えるのかね。
実のところコスプレイヤーというものを詳しくは知らないものの、時代劇ドラマでたまーに役者がカツラを被っていることがわかってしまうような、そういった「あ、こいつカツラつけてるんだな」というハプニングが少なからずはあるのだろうと推測はしている。
さすがに普通の人なら働いている時間帯ではあるし、何もコスプレイヤーだからといって普段の生活に支障をきたすような染髪はもちろんのこと、頭皮だけでなく頭髪にまで必要以上のダメージを与えてしまうようなコスプレは決してするものではないだろう。
コスプレイヤーというものは往々にして、ネット上の記事で取り沙汰されるような原作 キャラクター本人を思わせる美しい容姿やプロモーションというわけではなく、むしろそういった人間でなければならないというわけでもない、そのような邪な欲望とは関係なしに純粋にキャラクターを愛するヲタ人種なのであると自分は敬愛している。
もちろん、実物は知らないので、画面越しではあるが。
とはいえ、そういった知らない分野にせよ、調べようと思えば何度でも調べられる平成のご時世で、目の前の美少年を「榊遊矢ではない」と断言できる要素があると断言できるほど自分はコスプレイヤーというものを知ったかぶるつもりはない。
と、前言したにも関わらず、「コスプレとは断言しない」理由を説明しよう。
まず最初に、彼の額にカツラを着けたことを誤魔化す化粧のあとがない。
直接触って確かめた感想だ、ちなみに肌触りがきめ細かくて同じ男とは思えなかった。
では次に、彼の頭皮を掻き分けて毛根を探してみると本当に地毛だった。根本が黒いとか、そういった染め残しがあるとかもない、本当に地毛だった。
どうあがいてもコスプレとは言い難いですね、ありがとうございます。
日中から学校にも行かずコスプレして寝転んでる少年がこんなところにいるわけがない。
いるのだとしたら、自分は真っ先に警察に電話をして補導してもらうところだが、もしも本物だとすれば戸籍がないという定番の異世界人ネタで刑務所にドナドナさせることになり、誰も気が付かないうちに榊遊矢の人生がひっそりと終わることだろう。
刑務所の中にちょっとあれな人がいれば、そっちの世界にご招待であろう。
ちょっとおもしろそうだと思わなくもないが、そういうのは強引にやるものではなくお互いの合意の上でやるものだ、たとえそれが正常ではないと誰かに言われようとも。
理解がないわけでもないし、経験がなくもないので先人としては自分の意思で、幸せに自分の道を選んでもらいたい。イタズラは幸せのためのスパイスであって、不幸にさせるための劇薬では断じて無い。
さらにおまけに、彼のポケットをまさぐったところ。
見たこともない通貨やら学生証やら、年号やら化粧品の類やらがゴロゴロと出てきたからである。化粧品といっても、リップクリームのような乙女感がなくもないがエンターテイナーやアイドルとしては不可欠であろう代物ばかりであり、コスプレの化粧直しに繋がるような物品ではあるものの、そんな意識の高いコスプレイヤーが現実にいるとは思えないほどの「榊遊矢が持っていそうな度合い」に関しては、非常に高い再現、いや完成度なのだ。
通貨に至っては、紙幣にせよ日本の歴史上に存在しない偉人らしきものが印刷されており、その中でも特にシワも折れ目もない紙幣となれば、次に目に入りますはアークファイブで名高いシルクハットのデュエルマジシャン、榊遊勝らしき人物の姿見がひとつ。
ご丁寧に透かしはもちろん、偽造防止のためかシールも貼られている。
デッキを確認してみれば、カード一枚一枚がアニメ効果を再現しているだけでなく、オフィシャルカードゲームと遜色のない素晴らしい紙質。
こんなところまで本気でやるコスプレイヤーが現実にいるのだろうか?
本当にいるのならば、間違いなく自分は目の前の少年と友だちになれるであろう。
だが残念、彼の左腕に着けられているデュエルディスクらしきもの。
いちおう起動こそさせてはいないものの、中学生の頃にさんざん電子機械をいじってきた自分にはよくわかる。高専生の頃にいろんなものを実習で作らされた自分にはなおさら、嫌でも気がついてしまう。
これだけは本物だ。アクリル板を加工して外装を作っただとか、プラモデルやフィギュアを作るために使う器材を使って市販の材料から作り上げたとか、そんな完成度を遥かに超えてしまっている。
外装の素材や塗料が、手元にあるウォークマンのように市販の材料では再現のしようもない、製品開発の段階から材料の厳選を行われた代物なのだ。
これで、彼が榊遊矢でなく、コスプレイヤーであるという否定材料は、本人の自白や警察の捜索以外に存在しなくなったというわけである。
以上が、コスプレイヤーだと断言できない根拠である。いかがであろうか、俺氏よ。
パーフェクトだとも俺氏。非常に細やかで矛盾の見当たらない推理だ、死ね。
ああ、転生の神様とやらよ、あるいはこの物語を偶然思いついたであろう作者様よ。
そんなものが本当にいるならば、この千年に一度も決して起こり得ない奇跡の出会いに感謝しつつ、こんな面倒で楽しそうなことを起こしやがってと親指を下に向けてやりたい。
そして、似たような話を思いつかなかった先人の遊戯王愛好家の皆様よ。
なんだこれは。一体どうしろというのだ。
「う・・・・・・うん・・・・・・」
どう控えめに見ても男性であると言い難い容姿の少年が、これまた性別の判断に苦しい声色で意識を起こそうとベンチの上で寝転がる。
ぐらり、と少年がベンチから半分ほど身を投げかけたところで、長年の自分のドジっ子どころかドジオな経験則から、赤でもピンクでもないマゼンタ色の脳細胞に電撃が走る。
それってほとんど生肉の色なんじゃないかと思わないでもないが、とにかく電撃が走る。
このままだと、目の前の紅顔の美少年が公園の地べたに柔肌を削ることになる。
しかし、もし脳裏に浮かんだ想像を実行に移せば、一番上の妹が口角を緩ませるかもしれない上に自分も少しはそうなるかもしれない展開が現実のものになってしまう。
だが、しかし、でも、だからといって。
ええい面倒くさい。ボクは、少年の身体を屈んで抱え上げる。
「うん? ん・・・・・・」
少年の三半規管が違和感を訴えたのか、心地の良さそうな吐息に乱れが生じた。
こうして近くで見ると、やはり女性と見紛いそうだなと再確認できる。
少年はゆっくりと微睡みから覚め、その瞳を開くと、こちらを見る。
「あんた、いったい・・・・・・えっと、オレは、確か」
親父の世代であればガラスの美少年だったか、そういった言葉があったのかもしれないが、まさか自分が心の底から美しいと思える同性を、こう。
まさに割れ物でも扱うかのように抱えた上で、ベンチに戻す日がくるとは思わなかった。できればそういうのは女性に対してやりたいのだが、紅顔の美少年は乙女にも見えるからアリだと開き直ることにしよう。
いや、やっぱり無理だ。普通に女の子を抱き上げたい。
こちらが考えている間に眠気が引いたのか、少年はベンチから起き上がる。
「オレは、確か、舞網チャンピオンシップで・・・・・・それで、柚子を助けるために・・・・・・」
おっと、時間軸はよりにもよってその段階なのか。
そういう設定なのか、本当にそうなのかはともかくとして、なんともまあ運の悪いタイミングで我々の世界に迷い込んだものだ。ものすごく今更なタイミングとも言うが。
我々の世界ではすでに、遊戯王アークファイブというアニメは放送を終了し、そろそろ遊戯王ブレインズなる新シリーズが始まる頃である。
アニメの評判は炎上に炎上に炎上を三乗ぐらい重ねて、もはや歴代でもなかったことにされるやもしれぬレベルの大惨事。
そんな状況で、わざわざそんな設定を盛り込んでコスプレするファンは――というより公共の場なのに警察からの場所の許可なしでパフォーマンス寄りの言動をするという、コスプレをパフォーマンス扱いで収まるようにしないという、下手をやらかせばコスプレイヤー界隈が評判を落としかねない行いをする間の抜けた人間は――正気の沙汰ではない。
ファッションで誤魔化せなくもないものもあるが、ここまでくると流石に不味い。
そういう人間はファンではない、キチガイというのである。
原義的には間違いではないが、そういう意味でのファンは公にお呼びではない。
「そうだ、ここはシンクロ次元! ここがシンクロ次元なのか!?」
「残念ながら、そいつはちょっと違うんだよネ」
こら、いい子だからベンチの上に立つのはやめなさい。
美少年の主人公だからか、本気でそう演じているコスプレイヤーなのか。
絵面は悪くないにせよ、榊遊矢の顛末を知るこちらからすればシュールなことこの上ない。かといって、原作について本当のことを言えば、自分の幸の薄さを嘆きながら、自分の馬鹿さ加減を呪うのかもしれないが、その拍子に表情も髪色もブルーになられては困る。
どうせ本物なら、中に青髪に近いユートの亡霊もいるのだろうから。
この世界で覇王烈竜ならぬ、目から覇王濁流とか唐突にされても非常に困る。
思わず突っ込んでしまったが、まあ、この点はおいおい、オブラートに包んで苦い現実を元の世界に帰ってから飲み込めるように優しく話してあげよう。本物だったら、そういった気苦労もロマンの叶え甲斐があって悪くはない。
なあに、こういった好ましい相手から猫をかぶられて、まるでその子が自分の人生をかけるかのような本格的な大ボラに付き合わされたりするのは、別に今日が初めてというわけでもなし。
そういうことを許すのが、美しいもの、可愛いものに鼻の下を伸ばす男という生き物の果たすべき義務だ。花を愛でるからには、花粉を運ぶ蜂も愛でなくては話になるまい。
「あんた・・・・・・誰だ?」
誰とも知れぬ青年に目を丸くして、首を傾げられても困る。
せっかくだ、自分が世界一好きな悪役の名乗りを真似ることとしよう。
オレはペットの手綱を落として足で踏むと、肘を曲げたまま腰を軽く曲げた。
「美少女かと思った? 残念、いい歳をこいている普通の大学生だよ。
私のことは・・・・・・そうだね、気軽に
もちろん偽名だとも。さながらニート、もじってさながわにいと、佐奈川新斗だ」
「今の君も、大概に不審者だからねぇ。
距離感を保って、ほどほどに仲良くしようじゃないか」
え、ただの自己紹介だろって?
アイサツは大事、自己紹介は次に大事。
主人公の推理癖は分かっただろう、つまりはそういうことサ。
などと言いつつ、遊矢かわいいオンリーなの、どうにかならんかね