榊遊矢が俺んちにきたようです。   作:ウェットル

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 あけましておめで・・・・・・あれ、これ前に言ったっけ?
 ちがうな別の作品でだ。じゃあ、あけましておめでとうございます。(二ヶ月超え)

 どんな作品かを忘れられても、とりあえず題名で思い出せたらいいなと思ったり。


現実に驕るものは◯◯◯に泣く。

「うそ、だろ」

 

 乾いた喉から吐き出されるような、かすれた声。

 榊遊矢を構成していたものが引き抜かれていくような悲鳴にも等しいそれは、目の前の少年の顔色から血の気を絞り出したものだった。

 

「嘘ではないさ、これが真実のひとつだとも」

 

 私の手の内を離れた1枚のカードは、主たり得る決闘者を見つめている。

 見慣れた効果、見慣れたステータス、見慣れたデザインに、今や珍しくもない二色の枠。

 首長竜や鳥類の一種を思わせる首を持つ、赤いドラゴン。そこに生命の息吹はなく、ただの紙切れ(カード)として少年に掴まれているにすぎない。

 

「我々の世界でのデュエルとは。

 決闘者たる各々が信仰する英雄譚を再演せん儀式にこそ、本質はある。

 ならば、その英雄譚の魔物。それらが際限なく再現されることは言うまでもない。

 たとえそれが、そう、一冊の漫画から始まった”架空の物語”だとしても――――」

 

 だとしても、少年の瞳には。

 見慣れた姿をしたモンスターカードにしか映らない。

 やれテキストが違う、イラストの構図が違う、触った時のカードの質感が自分の知るカードの質感とぜんぜん違う。拒絶の言葉は何度でも、少年の脳裏を走りはする。

 しかし、それらの言葉が今の少年、”榊遊矢”にとっては、普段見慣れたテキストを目で追うような感覚で終わらせられてしまう、色褪せた文字の羅列にしか思えなかった。

 

「――――テレビで放送されていた、子供向けのアニメーションでの。

 ”架空の物語”の、”架空の決闘者”が使う、”架空のカード”であったとしても、だ」

 

 

 

 

 

 めくりますか? めくりませんか?

 

 そう茶化すこともできただろうが、それで笑顔になれる人間は私だけだろう。

 彼のアイデンティティに関わる真実を、面白半分に弄ぶつもりは毛頭ない。

 相手の嫌がることは悦んで選び、実行する。そんな悪意はゲーマーならば持ち合わせても不自然ではなく、勝利を得る上では必須かつ最低限の悪意なのだが。

 だからといって、実際の人付き合いにまで道理を混ぜ込んで実行し、あげく悦ぼうとするヤツは碌でもない。勝利の美酒と、敗者の不幸という蜂蜜酒は種類が違う。

 

 勝つことに喜ぶものは、敗者を見て悦ぶ暇などない。

 より困難な勝利を目指して、日々邁進していくものだ。

 

 敵の不幸に悦ぶものは、勝つことに喜ぶだけの努力も研鑽もない。

 より簡単な勝利を目指して、日々獲物を探し続けるだけに過ぎない。

 

 どうせならば、より困難な相手を引きずり落とすための悪意であればいい。

 そうであれば、勝利の美酒もメシウマな蜂蜜酒も、己の技量をもって得られる。

 目に見えた脆い砂上の楼閣に核ミサイルを持ち込んで、げたげたと笑うような趣味は持ち合わせていない。せめて、それをジェンガ・ゲームの攻防じみた戦いくらいには変えていきたいものだ。

 

 ようするに、此処から先が。

 ”架空の決闘者”なる榊遊矢の自我を保つための、ジェンガ・ゲームの開幕というわけだ

 

「・・・・・・しかし、安心するといい。

 我々の次元を”EX次元”と呼称したように、あくまで”そういう世界”だと思い給え」

 

「そういう、世界?」

 

「うむ、”そういう世界”だとも。

 例えばの話だが、我々の世界での伝記や伝承を君たちが知っていたとして、同じようなものがあるとしてだ。お互いの世界の伝記や伝承、どちらも真実性は異なるはずだ」

 

 たとえば、こちらの世界でのギリシャ神話における海の神の名前。

 たとえば、こちらの世界でのライオンハートと呼ばれた一個人。

 たとえば、こちらの世界での北欧神話やアステカ神話にまつわる諸事情。

 たとえば、こちらの世界でのローマ帝国にまつわる様々な言い伝え。

 たとえば、こちらの世界での古代エジプトにまつわる伝説。

 

 そのすべてが、それぞれの遊戯王の世界と同一のものであった試しがない。

 ポセイドンの名を関する王国があったり、ライオンハートにあたる存在が獅子心王と呼ばれるに足る人物とは異なる伝説を持っていたり、なぜか人間に使われるカードになっていたり、なぜか時の皇帝が持つに相応しいであろうとされた七つの宝石なるものは当時喪失されたとされていたり。

 

 古代エジプトに関しては、もはや言うまでもあるまい。

 

 もっとも、それらに関する、物的に実在性を証明可能な要素もまた異なるわけだが。

 それぞれの世界で以上のような差異がある以上、私の眼前に実在する人間として現れた”榊遊矢”に対してもまた、同じ道理が通用することになる。

 

「ゆえに、こちらの世界では架空の存在であったとしても。

 人間に想像可能な考案のすべてが、我々の認識可能な世界にない現状から、実現不可能、または『実在しない』と否定し断定することはできない。

 そういうものであるように、この世界では君たちは逆に、架空のものであると定義されるだけにすぎない。我々の世界もまた同じように、どこかの世界では架空のものであると定義される範疇にすぎず、『実在しない』と否定可能なものなのだよ」

 

「え、えっと? えっと・・・・・・??」

 

「我々の世界、EX次元そのものが、君にとってはあり得ざる常識を持つ世界である。

 それと根本の道理は同じだとも、我々の世界もまた架空であると否定できる、そんな視点に元々、君は立っていたのさ、榊遊矢くん。

 もっとも、その視点はEX次元を観測した今となっては成立しないのだがね?」

 

「つまり、どゆこと?」

 

「今の君にとってはともかく、君の知人にはフィクションの世界にしか聞こえない、ということなのだよ。君たちの世界と同じく、EX次元もね」

 

 誰もが忘れられがちだが、我々の世界もまた、そう見られる側でもあるのだ。

 どことも知れぬ世界の住人が現れて、突然「あなたたちの世界はフィクションです」などと我々に言ったところで、我々からすれば当の自称異世界人の言っている内容こそが、語ろうとする世界観こそがフィクションのそういう設定と解釈されやすいものだ。

 なんなら、その発言者を中学2年生ぐらいの青少年(※ この場合の少年とは、子供全般を含むため、当然未成年女性も含まれる)が言っているものとでも置き換えてみるといい。

 

 

 

 

 

 すっごい厨二病みたいだぞ。

 

 

 

 

 

 つまりは、そういうことである。

 そういうふうにも見られるからこそ、相手がフィクションで聞いたことも見たこともある相手だからといって、自分たちこそがノンフィクションにしてフィクションの創造主である、相手のことを真に理解している、などと傲慢に思うことは推奨しない。

 真偽はともあれ、どちらにせよ。ただの痛い人だからね、そんなの。

 せいぜい、ちょっと詳しいファンくらいにしかなれないものだ。こんなふうにね。

 

「なので、厳密には、そこのカードは。

 我々の世界における”榊遊矢”の物語から再現された《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》なのであって、君たちの世界における”榊遊矢”とは何の関係もない。

 いわゆる、『この物語はフィクションです、劇中に登場する個人名・団体名などはすべて架空のものであり、実在のものとは関係のないものです』・・・・・・と、いうやつだとも」

 

 元より、正義の味方が出てくる特撮番組のスーツを着た『誰か』がいるからといってだ。

 その『誰か』は、様々なスタッフと共に番組制作している最中かもしれないし、特撮番組のコスプレをしているだけかもしれないし、本当に劇中で描かれた本人かもしれないし、あるいは劇中の物語と大差のない世界を本当に生きてきた”ご本人”かもしれない。

 といった具合に、いくらでも『誰か』が『何者であるか』は想像が可能であり、蓋を開けるまでは可能性が無数にあり、夢のない話をすれば『誰か』を模倣した犯罪者であっても変な話ではない。

 どっかの海賊漫画のパチもん犯罪者が麦わら帽子を被るような、そういう事態もあり得ると言えば、しょせんメタ知識など判断材料にしかならず、その知識の所持者には絶対的な優位性を与えるわけではないと分かるだろう。

 

 原作はアニメーションやライトノベルだからといって、そのあたりの細かい話を忘れられがちな論調の作風に至った物語は珍しくもないが、現実的にこんな事態に追い込まれたら、流石に遊矢くんの錯乱も困惑もアイデンティティの危機も至って当然であると同時に、私もまた本物の榊遊矢くんであるかは信じられても断定が難しい。

 

 ただし、これだけは絶対に言える。私自身に対してもだ。

 

「“この世界での『榊遊矢』”と、“実在している『君』”には、なんも関係性がないよ。

 ただそれだけの話、偶然そっくりそのままな物語があるというだけさ」

 

「なんだぁ、そういうことかあ!」

 

 安心したのか、肩を張らせていた腕をぶらぶらと脱力させた。

 ほんの少し顔色は戻ってきたようだが、それでも思うところはあったのか、まだ本調子とは言い難い頬の色のままだ。

 

 

 

 まあ、その物語と寸分違わずの未来が待ち受けているのであれば、偶然そっくりそのまま、ほとんど物語通りという現状そのものが、絶望的な意味合いに解釈できはするがね。

 




 ジオウの夏映画みたいな話をした気がする・・・・・・!

 いちおう今回の話とは主題が違うので、気になる人はジオウの夏映画を見てね。
 冬なのに夏の映画で、令和なのに平成ライダーの映画を勧めている・・・・・・??
 書いている作品は2作品前のARC-Vで、そろそろ新しい作品が始まるって・・・・・・?
 まるで意味が分からんぞ! 式がP.A.R.T.Y.で神話だったなぁ。(混乱)

 ここをしっかり書き越えたら、次はもうちょっと気楽な話を書けたらいいな!
 もう書き終わってる? 投稿終わるまでが執筆です(自戒)



 正解は、現実に驕るものは「厨二病」に泣く、でした。
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