榊遊矢が俺んちにきたようです。   作:ウェットル

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 アイスブレイクで作った話です。
 さすがに、この話は本編に盛り込みきれないので(扱いが難しいので)、あくまでも本編のどこかにあったかもしれない、というか避けられない会話だと思ってください。



閑話 魂の牢獄

『己の敵は肉親か! 己の敵は他のモノか!』

 

 画面の向こう。

 蒼穹よりも深い、海底を思わせる暖色を欠いた景色。

 爆炎とともに姿を現した、社長と呼ばれる、純白のコートに身を纏う覇者然としている青年は吼えたける。

 

『だが皮肉なことに、勝者でさえも逃れることができない。』

 

 闘争の起源、根源にある、どうあがいても避けられぬ限界。

 綺麗事を重ねても、決して目を逸らすことはできない彼我の違い。

 人間であること、そのものにある戦わざるを得なくなる原因。

 それを簡潔な言葉で要約し、リアルソリッドビジョンよりも技術力は劣る・・・・・・いや、まったく別の分野で、「事故」の再現においてはリアルソリッドビジョンをも上回ってみせた「決闘」のデュエルディスクを掲げて、歓声に包まれていく。

 

『このデュエルディスクによって、魂は解放されるのだ!!』

 

 きっと、”オレ”にとって。

 一生わかりあえないかもしれない、恐ろしい道理のはずなのに。

 

 オレの積み重ねてきた、エンタメデュエリストのすべてが。

 見るも恐ろしいエンターテインメントを成し遂げた、画面の向こうにいるキャラクターでしかないはずの青年に心を震わされ。

 

 オレの中にある、もっと深く震える”何か”が。

 訴えかけてくる。「その道理こそが正しいのだ」と、「オレも同じように吼え猛りたいのだ」と。

 笑顔こそが大切なはずなのに、目の前の世界では、戦えること、デュエルできることそのものに笑顔を表せていく観衆がいて。

 

「うん、さすが『海馬社長』、さすがは原作者の『遊戯王』だね。

 当時の超能力バトルや超人的バトルから一線を引いた、殴り合わない闘争を題材にしてきた御仁なだけはある・・・・・・嫌でも心が震えるよ」

 

 オレの揺れる心をよそに、小さく歓声をあげる佐奈川もいた。

 

「いや、この場合は、デュエリストの魂が震える、が正しいのかね?

 どちらにしても、世界にデュエリストという概念を生み出した御仁の作品だ、生半可な作品と違って、デュエリストではないはずの人間にさえ、容易く闘争本能を呼び覚ますカリスマ性がある。

 して、気がつけばデュエリストになっている・・・・・・」

 

 デュエリストの魂。

 考えたこともないものだ、少なくとも、オレにとっては。

 エンタメデュエルが、アクションデュエルが、誰かと楽しみあえるデュエルが栄えた舞網市にも、かつては『デュエリスト』がいたのだろうか。

 

「なぜならば人類は、どこまでいっても動物だからだ。

 闘争本能は潜在的に、静かに鳴りを潜めるだけで、きっかけさえあれば爆発的に解放される。虐めだろうと、スポーツだろうと、受験戦争に巻き込みたがる親だろうと、結局は重火器を使わない戦争に酔いしれる。

 殴り返されることの恐ろしさを、正しく理解していないものこそ多いが、『殴り合う』ことにこそ、カードゲームの本質がある。理解していても恐れすぎたものほど、甘い綺麗事や正論に誤った呑み込まれ方をし、気がつけば集団の中で依存しあう形を取る」

 

 ぽりぽりとポップコーンをカジリ、続けていて。

 ハッ、と気がついた。そうだ、オレは佐奈川と映画を見ていたんであって、向こうの世界にいたわけじゃない。

 

「まさしく、今回のテーマは『痛み』だというわけだよ。

 どんな形であれ、エンターテインメントを極めたものは、『痛み』から解放することができてしまう。闘争の中で戦い続ける、現実のカードゲーマーでさえも、誰に笑顔にされるまでもなく、『痛み』を忘れることはできる。

 それでも、だからこそ――――『痛み』は、現実性を示す鍵でもあった」

 

 画面の向こうに振り向く。

 熱狂の渦に巻き込まれた観衆の中、確かに、そこに異物はあった。

 

「我々は、『痛み』を忘れきってはならないのだろうね。

 良心、共感性、それらに同情や恐怖が含まれていようとも、『痛み』を覚えているからこそ、できること、始まる物語もある」

 

「『痛み』を、覚えているからこそ・・・・・・?」

 

「そうだとも、同時に、『忘れられぬからこそ囚われもする』。

 肉体という具体的で、どこか抽象的な表現を使ったのは、何故なのか?

 私たちならば知ってはいるが、君はまだ理解はしていないだろう」

 

 失われた決闘王を再現するAIと戦った”海馬社長”。

 次世代型デュエルディスクを開発してまで、彼はどこに向かおうとするのか。決闘王の魂を収めていたパズルに、なぜそこまでの執着を示したのか。

 

「よく見て楽しむといい。

 これが我々の起源にあるもの、そのひとつなのだよ」

 

 楽しそうに唇の端を上げる佐奈川は、懐かしむように目を細めて。

 彼らの物語の先にある、新しい闘争を乞うように、犬歯を見せた。




 アニメキャラとのアニメ鑑賞とか、メタ構造が複雑になりすぎるんじゃよ。

 無理やり本編で、映画を見る過程まで描写できなくもないですけど、そういうの繰り返したら何年完走に時間をかけるんだと。動画だって完結しきってないのに・・・・・・!

 現在流行中の病に混沌とした現実ですが、それはそれとしてデュエルしようぜ。
 (独り回しで、パチパチとデーモンデッキを組みながら。)
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