どうぞお付き合いくださいな。
注)方言を修正しているところです。随時修正が入ります
「ああああぁあああ!! また死んだ!!!」
はやてはPS4のコントローラーを投げ出し、そう叫んだ。
「なんだこの鬼畜ゲーム…玄人向けすぎだろ……」
そう呟いてしょんぼりしたはやては、PS4からゲームディスクを取り出し、【 Bloodborne 】
と書かれたパッケージに収めた。
「はあ、狩人さんまじきちばっかか…救いは人形だけ…つらみ……」
はやてはパッケージをゲーム棚にもどし、今度は別のゲームをしようと手ごろなものを物色し始める。
「なーんか、こうみたら、いろいろやってるなあ…バイオ、モンハン、Division、ワンピース…あ、鉄拳がある。これ達也に返さないと。うっわ、侍道3と4だ懐かしい。新作まだかこれ」
はやてはゲーム好きである。家庭の事情で海外を転々とすることが多かったはやての遊び相手といえば、たいてい姉弟たちであり、更に国によっては気軽外出できないこともあって、幼少期は家の中で姉弟たちとゲームをしていることが多かった。
ゲーム好きの父親を持っていたこともあり、ゲームの種類には事欠かない。父親が適当に買ってきたゲームを、ときに対戦、ときに協力プレイで、わいわい騒ぎながら姉弟みんなと遊んできた。
「いろいろあるな…まあでも、自分的には一番はこれかな。FFシリーズ!特に7から12と飛んで15! 14は別枠だがまあ好きである」
色々なタイプのゲームが好きだが、はやてのお気に入りはRPGであり、中でもファイナルファンタジーは彼の一番のお気に入りだった。ナンバリングされているものも、タクティクスやクリスタルクロニクルのように別枠のものも、キングダムハーツのように要素だけ取り込んだようなものでも、なんでも大好きだった。
「音楽がいいのよ、音楽が。あとキャラとかストーリーとか…あ、全部か」
何百時間とかけて、ゲームをやりこむことはない。精々隠しダンジョンを見つけたり、最強アイテムをいくつかそろえたりする程度だが、それでも多種多様なゲームの中でも「ファイナルファンタジー」に関わってきた時間は幼少期のそれと合わせると長いものである。
「‥‥懐かしいな、FFXか」
はやては数あるゲームの中からFFXを取り出した。たしか、妹がバイト先の友人にもらったものの、シューティングゲーム好きな自分にはあわないからと置いていったものだ。なんだかいらないものを押し付けられたような気分のはやてだったが、しかし彼にとってこのゲームは思い出深いものだったので、なんだかんだで大切に保管していた。
FFXははやてが初めて最後までクリアしたRPGであり、最も楽しんだゲームの一つである。
姉弟たちとああでもない、こうでもないと騒ぎながらボスを倒したり、頭をそろえてうんうん言いながら寺院の仕掛けを解いたりもした。ともすれば郷愁にかられる一品である。
個性的なキャラクターと音楽、また美しいストーリーには子供ながら強く惹かれたものだった。しかし、クリアした当時は中学生に上がったばかり。今はあれから10年ほど経つ。設定やストーリーはぼんやりと覚えているものの、正直なところ、うろ覚えであることは否めない。音楽であれば、イントロの1秒で題名を当てることもできるが、ゲームの中身にはあまり関係なかった。
登場人物の名前は挙げられるが、細かい設定などは忘れてしまった。
「主人公がティーダという青年で、ヒロインはユウナで、アーロンはしぶかっこよくて、キマリは戦力外で、ルールーも戦力外で、ワッカは遊撃担当、リュックはぽんこつかわいい。大体そんな感じ」
はやては、FFXに登場するキャラクターにそのような印象を抱いていた。あっているかどうかわからないし、思い出せるのはぼんやりとした見た目とボイスくらい。
「ザナルカンドから1000年後の世界に行って、シンを倒すためにユウナのボディガードをしながら旅をする…そんな流れだったかな」
FFXは神ゲー。間違いなく大好きなゲームのひとつだ。だけど、熱心なファンか、と問われれば案外そうでもないのだろうとはやては思う。自分はゲームそのものよりも、そのゲームを通して過ごした時間が大切だったのかもしれない。
「……ひさしぶりにやってみるか」
Final Fantasy X と書かれたパッケージを抜き取り、ディスクを取り出してPS4にセットする。
まもなくゲームのタイトルが表示されて、自動的にディスクが読み取られる。はやてはおもむろに立ち上がり、スナック菓子を取りにキッチンへ向かった。
コーラとぽてちを手にとるとソファーへと戻った。
【NEW GAME】 ←
【CONTINUE】
【OPTION】
【EXIT】
「……うん?」
テレビを見ると、黒地に白い文字で選択肢が表示されていた。背景画は一切なく、さらに選択肢が無音で表示されているだけで、妙なおどろおどろしさを醸し出していた。
「まあ、20年ほど昔のゲームはこんなもんかな。しかし、妙なレトロ感があるというか」
ゆうても昔のゲーム。
はやてはあまり深く考えず、【NEW GAME】を選択する。
しかし、歪な機械音が鳴るだけで特になにも始まらなかった。
「んー…なんだこれ」
カーソルは自由に動くようなのでフリーズしているわけではないようだ。
他の選択肢も選んでみるが、何も変わらない。すわ、バグだろうかと思い、はやてはPS4を再起動しようとするが、
「…ふわぁ。あふ、だめだ眠い」
昨夜の徹夜が響いているのだろうか、まだ寝るにはいささか早い時間だが、はやてはあくびを抑えられなかった。
まあ明日でいいか、どうせ明日も休み。
そう結論を出したはやては、コントローラーを適当に放り投げ、ソファーに横になる。
目が覚めたらFFXをやろう。せっかくだし、きちんとストーリーを理解しつつ、やりこみ要素もやってみて…
そんなことを思いながら、はやては睡魔に身を任せた。
これが、最後の安息になるとは思わずに…
ちゃぷ、ちゃぷり
水の音が聞こえる。耳に心地よい。
くくくるるるるるる
変わった音が聞こえる。動物の鳴き声だろうか。
まどろみのまま、大きく息を吸うと、磯の香りがした。
(‥‥‥‥ぅん?)
磯の香り? 鳴き声? 水の音?
小さな違和感がぼんやりした頭を覚醒に導く。
はやては自室にいたはずだ。それにしては、まるで船の上にいるような浮遊感を感じる。
「……ぅ」
はやては体を起こす。
「………っはぁえ?」
そうして、目に入ってきた光景に、頭の処理が追い付かなかった。
はやては、小さな小舟に乗っていた。湖でカップルがよく乗るアレである。
古いものなのか、ところどころ苔が生えている。よく見ると、船のふちに穴が開いていたりもする。
今にも沈没しそうな小舟に、はやてはどういうわけか、乗っていたのだ。
ぎこ、ぎぃ、ぎこ
船体をきしませながら、小舟は進んでいる。
帆を張っていないどころか、オールで漕いですらいない(そもそもオールがない)のに、不思議なことに小舟は進み続けている。
「いや、え、はあ?」
しかし、はやては小舟のことまで頭が回っていなかった。
自分はなぜここにいるのか、ここはどこなのか、なぜ船の上なのか、何が起きているのか…
周りを見渡してみると、がれきのようなものが水面から顔を覗かしていた。
がれきをよく見ると、何かの建築物だったことを思わせる形状をしていることに気が付く。
遠目には、ボロボロだが、遺跡のようなものも見えた。
「なんだこれ、なにごと」
空を仰げば、薄暗い雲しか見えない。おかげで時間感覚もおかしい気がする。
はやては自身が乗っている小舟が進んでいることに気が付いた。
薄気味悪さを感じて、小舟を揺らしたり手をオール代わりにして流れに抵抗したりしたが、一向に止まる気配がない。
早くもあきらめて、時間を要しつつも混乱を少しずつ収めたはやては、ひとまず、自身の置かれた状況を整理した。
「たしか、ゲームしようとして、眠い思って寝た…。たしか。寝室まで戻って寝たとこまでは覚えている・・・寝ているうちに、誰かが? いや、誰もしないだろこんなこと…… テレビ?いや、仮にどっきりだったとしても程度を超えてるし…」
はやては周りに目を配りつつ、思案した。
ふと、先日寝る前に見ていたアニメを思い出す。主人公は通り魔に刺されて死亡し、異世界に転生するといった内容だった。もしかして自分も死んでしまって、更に異世界に転生したのではないか...
突拍子もなくそんなことを考えて、いや二次元じゃないのだからと否定し、しかし完全に否定することもできず、思考は堂々巡りになっていった。
そうしていくらかの時間を思考に費やしていると、ボートが音を立てて止まった。
ふと顔を上げると、いつのまにか座礁していたらしいことに気が付く。
「…なんだ、ここ」
ひとまず小舟から降りたはやてはあたりを見渡す。
どうやら遺跡のようだった。規模はそれなりに大きく、ぼろぼろではあったが、かつて旅行先でみた海の町、また遠くの建造物はコロッセオを彷彿とさせた。
ぼうっとしていてもしょうがないと考えたはやては、遺跡に上がり、散策してみることにした。
なにか情報でもあればいいのだが。期待半分あきらめ半分の気持ちで遺跡を進む。
形容し難い不安を感じ、その歩みは遅い。足を動かすたびに足元からぱらぱらと音がして、いつ崩れて海に落ちるのではないかと気が気ではなかった。
「あああぁ、崩れんなよ…ほんまやめえよほんま…って、なんだあれ?」
引け腰気味に進むと、目の端に水色の球体が見えた。
近寄ってみてみると、どういう仕組みなのか、台座の上に水色の土星みたいものが浮いている。
ゆるゆると回転しながら佇むそれは神秘的で、はやては何と無しに手をかざしてみた。
あるいは、触れようとしたのかもしれない。
その瞬間、はやてが感じていた疲労が一気に吹き飛び、そして自分の「何か」がそこに残された感覚がした。
「———っ?!」
感じたことのない感覚にはやてはひどく驚き、一歩後ずさったかと思えばバランスを崩してしりもちをついてしまう。
「なんだ?!今のは?!!」
冷や汗が出る。
一体なんだと言うのだ、この得体のしれない置物は。
自分の「何か」がそこに残されてしまった感覚があったが、それは大丈夫なのだろうか。
「———いや、これはどっかで…」
驚きはしたが、しかし、不思議なことに嫌悪感は抱かなかった。一瞬、パニックになっただけだ。
残された「何か」も、なんとなく、大丈夫だと感じた。
それよりも、問題はその謎の置物の見た目である。はやては似たようなものをどこかで見かけたことがあったのだ。
どこだ、どこで見たのだろうか。
そうだ、あれは危ないモノじゃない。むしろ心のよりどころになるような、救いになるもののはずで…
はやてはおもむろに立ち上がり、今度は心の準備をしてから再度置物に手をかざした。
すると、先ほどと同じ疲労感が飛ぶような感覚のあとに、自身の「何か」が残されるのを感じた。
「なんだこれ、いやどこでこれを…」
妙な既視感とのどまで出かかっている答えにやきもきしていると、はやては下の水面から何かの鳴き声を聞いた。置物の先から聞こえてくるようだった。
きぃっ!きっっきぃい!
鳴き声はまだ聞こえてくる。置物の先に進むと、先の足元が崩れており、行き止まりになってしまっていた。はやては崩れた先で下をのぞき込む。高さは5,6mほどだろうか。意外と澄んでいる水面には海底から伸びているであろう海藻や崩れ落ちた遺跡の一部が確認できる。
鳴き声はどこから聞こえてくるのだろうか。
そう思って更にのぞきこもうとした瞬間、足元が大きな音を立てて崩れ落ちてしまった。
「おわあっ!!!!」
はやては重力に従って海まで真っ逆さまに落ちてしまう。
「がばごぼがばごぼぼぼぼっ!!」
ごつっ!
「がばぁ?!」
落水して驚いたのもつかの間、先ほどの足場が更に崩れたのだろうか、こぶし大の石がはやての頭にぶつかってしまった。あまりの痛さに浮き上がることも忘れて水中でひたすら頭をさする。
どうやら血は流れていないようだ。たんこぶは間違いなくできたが、大きなけがはない。
水中であたまをさすっているとかえって落ち着いたのか、ひとまず浮上して水中の様子を見てみようと冷静に判断する。ゴーグルがなければ水中で目を開けたところで何も見えないからだ。
「ぶはっ! げほっげほっ! くそっ! 踏んだり蹴ったりだなほんとに今日は! くそったれ!」
八つ当たりに水面をたたき、呼吸を整えてあたりを見回す。見た限りでは上に戻るのは難しくなさそうだ。しかし、ああも簡単に足場が崩れてしまうなら上がったところでまた水中に戻る羽目になるだろう。
そう判断したはやては、
「とりあえず泳いで遺跡を見て回るか。中に入れたらいいんだけど」
服を着たままにも関わらず、すいすいと平泳ぎで進み始めた。
小学生のころスイミングスクールに通わせてくれた両親と、一時期住んでいた常夏の国に感謝である。
「目が覚めたらボートの上、気が付いたら遺跡にたどり着き、訳の分からん置物を見つけたと思ったら海に落っこちて、その上頭に石が振ってきた」
そして今気が付いたのだが、水温が結構低い。というよりも、気温が低めなのだろう。
「このままじゃ寒すぎて死ぬ。シャレにならない。一先ず屋根のあるところで体を休めないと」
最悪の未来を想像したはやては、泳ぎながら周囲を見回す。一先ず体を冷やさないようにしなければ。着火器具は持ってきていないが服を脱いでおけば多少マシのはずだ。そのためにも屋根のある場所へ…
考えながら泳いでいると、はやては水中に建物への入り口らしきものを見つけた。泳ぎをやめてよく見てみると、周りにもいくつか入り口のようなものが見えた。この辺りは遺跡の玄関に当たる部分なのだろうか。それにしては水没しているように見えるがどういうわけなのだろう。
はやては疑問に思ったが、遺跡が崩れたのだろうと思考を切り上げ、水に潜って入り口のようなところへ向かう。ドアはなく、ただ遺跡内部への通路があるようだ。通路の向こうまで行ってみたいが、内部がどうなっているか予想がつかない。はやての潜水可能時間は2分弱。ダイビングスクールで鍛えた肺活量にはちょっとした自信があるが、単純計算で一分以内に遺跡内部へたどり着けなければ侵入できない経路となる。さらにゴーグルがないため視界は不良好だ。とてもではないが、無理はできない。
安全第一で進んでみよう。無理そうなら引き返して別の入り口を試すべきだ。
そう結論を出したはやてはいったん浮上し、呼吸を整え、肺に空気を取り込む。
大きく深呼吸をした後は、静かに潜水し、入口へと向かった。
主人公は広島弁をしゃべる設定でしたが現在修正中です。